フェラチオが一番うまい♀職は――殴りプリお姉さま編

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『Lex Aeterna!』
 凛と叫んでお姉さまが跳んだ。
 空中で大きな鳥のように僧衣の裾をひるがえして、魔獣の側頭部にアイスソードメイスを叩きつけた。グシャッ! と角が折れて足元がふらつく。
 ミノタウロスは巨木のように倒れた。その向こうにお姉さまがふわりと降り立つ。
 振り向いて、額の汗をぬぐう。
「二百体達成。時間は?」
「い、一時間三十一分です。すごい……」
「あら、そう」
 お姉さまに駆けよって、私は手ぬぐいを差し出す。長い紺の髪を振って汗のしずくを飛ばしてから、お姉さまは手ぬぐいで顔をふいた。ほのかに香るそれを受けとって、私は胸に抱きしめる。お姉さまの、サフランと潮の香り。
 あこがれのひと。騎士も暗殺者もかなわない、攻防兼ね備えた戦闘プリースト。
 私には文句のつけようもないタイムトライアルに思えたんだけど、お姉さまは不満そうだった。細い筆で描いたみたいな形のいい眉をしかめて、つぶやく。
「九十分、切れなかったわね」
「でも、すごいです」
「力を出しきっていなかったってことよ。道理でまだ体がうずいてるわ。鎮めたい……」
 そう言って、お姉さまは思わせぶりに私を見つめる。とくん、と私の胸が鳴る。
 目標を達成できて喜ぶお姉さまは好き。
 でも、不満ができてぶつけどころを探しているお姉さまはもっと好き。
 私は、喉にからむ声を無理に押し出す。
「わ……私でよければ」
「鎮めてくれる?」
 ソードメイスをらくらくと振り回すくせに、小魚みたいに細い指が、私の桃色の髪をくしけずる。
 私は、小鳥のように震えながらうなずく。

 場所はいつもモロク城の地下。神様なんか見ていそうもない、クモの巣の張ったほこりっぽい牢屋。
 そこでお姉さまは、私をはけ口にする。
 壁にもたれたお姉さまが、ひざまずいた私を見下ろして訊く。
「いいこと……死ぬまで誰にも言わないのよ」
「はい」
「あなたはアコライト。人の罪を引きうけるのがつとめ」
「はい」
「私の罪と汚れを引きうけるのは、あなたを高めること」
「はい」
「よくわかって?」
「はい。心から思います……」
 私は敬虔にうなずく。いつもと同じ、儀式めいたやり取り。初めての時から今まで、ずっとそうだった。お姉さまはこれを、正しいこととして私にやらせる。
 でも、私は知ってる。
「さあ……始めてちょうだい」
 僧衣の裾をつまみあげるお姉さまの手が、震えているから。
 お姉さまは、これが禁じられたことだって知ってる。自分も私も汚れてしまうことを知ってる。そして、それを心の中で泣きたいほど悔いている。
 悔いているけど抑えられない、そんなどうしようもない性を持つ人だから、私は従う。
 白い下着と太ももの合わさるところが、不自然に盛りあがっている。私はそこに顔を寄せ、柔らかな木綿に頬ずりをする。爽やかな汗の香りに、ツンとおしっこの匂いが混ざる。お湯にひたしたスポンジみたいに、温かくて柔らかかったそれが、下着の中でむくむくと大きくなる。硬く、形がはっきりしてくる。
 男の人のあれ。
 これがお姉さまの罪。そして抑えられない気持ちの源。このせいでお姉さまは男の人より強い。このせいで、男の人みたいに私に邪心を抱いてしまう。
 それでもいい。この人のこんな汚れを知るのは、私だけなんだから。
 頬ずりしたことで、そのモノが私に気づいた。獲物を見つけた蛇のように、くっきりと下着を持ち上げて、私に鎌首を向ける。それの声が聞こえるような気がする。
 乙女がいる。汚したい。汚させろ。肉を貫かせろ。内に入りこませろ。
 柔らかく包め、たっぷりとひたせ、これから吐き出すものを一滴のこさず体内におさめろ。
 私はお姉さまの顔を見上げる。天使の羽を髪につけた、上気したきれいな顔が、罪悪感に眉をひそめて見下ろしてる。お姉さまは、本当はしたがっていない。
 したがっていないのに、この凶暴なものに操られて、私を求めている。
「苦しい、ですよね……」
「え、ええ。はやく……」
「わかってます。今、楽にしてあげます……」
 私はお姉さまの下着の上端を噛んで、ずるっと下げた。
 ピタン! と小さめのバナナぐらいある熱い棒がはねあがる。お姉さまの真珠のように白いおなかに、赤黒いそれがそりかえって食いこむ。詰まっているのは血のはず。でも私には、毒でいっぱいにみえる。お姉さまを苦しめる毒。
 吸い出してあげなきゃ、と胸が締めつけられる。
 幹に指をかけて、上を向いたそれを無理やり手前に傾けた。そうするとそれは、ますます張り詰める。つるつるに光る丸い先端が私をにらむ。切れこみに小さなしずくが浮いている。
「あ……い、入れて、おねがい……」
 お姉さまが、誰かに無理やり動かされてるみたいに腕を下げて、私の頭をつかんだ。腰がぐいっと前に出てきて、先端が私の視界いっぱいになった。ううん、本当に操られてるんだ。このものに。
 私の唇に当たって、そこで止まらず、じわじわと中に押し入ってくる。
 ずる、ずぬぬぬぬ、ずむぅ……
「ひはぁ……」
 お姉さまがぐっと手に力をこめて、私の頭を股に押しつけながら、安心したような息を吐く。
「いいわぁ……あなたのおくち、あったかいゼリーみたいに溶けてて……」
「あいあおぅ、おあぃまふ……」
「お礼は、私こそ……こ、こんな素敵な感じ、一生味わえないって思ってた……」 
 そう、お姉さまはこれがあるから、還俗して普通の人と結婚することもできないと思ってた。ひととつながる喜びを知らないまま死んで行くって覚悟してた。それでも欲望は抑えきれないから、毎日、人目を忍んで、自分の手で処理していた。
 この誇り高いお姉さまが、あさましく手で。
 痛々しいと思う。でも、その想像はすごくみだらで、一度見てみたいとも思う。
 私は見られないかもしれない。私がいる時は、お姉さまは私を使うから。
 ああ、もの思いしてる場合じゃない。お姉さまが待ちきれずに、腰を動かしてる。
 私は唇と舌を唾液でたっぷりと濡らして、頭を動かし始める。
 ずぶっ、ずぶっ、ずぶっ、とこわばったものが口をこする。今、これは、先端と幹の全体で、私の口の中を楽しんでいる段階だ。満足させてあげられるよう、できるだけぴったりとくるんで、いやらしくしゃぶりあげて、刺激を与える。
「くふぅ、き、気持ちいい……唇、ぴったりしててぇ……」
 ふ、ふ、ふ、と私は無心にしゃぶる。
「みだら、みだらよ、あなた。……そんなかわいい唇に、こんな不浄なものを入れて、喜んでるんだから……し、失格っ、アコライト失格よっ」
 みだらでもいい。お姉さまのほうがずっとみだらなんだから。もっとみだらになって追い付きたい。
「うぁ、すごい……い、言えば言うほど、あなたはげしっ……くうぅぅぅんっ……」
 くわえたまま見上げると、お姉さまが片手の小指を噛んで、切なさに泣きそうな顔で見下ろしている。滑らかな頬を汗が滑って、おとがいからぽたぽたと滴がしたたってくる。
 それを鼻の頭に受けて、私はさらに情熱を込める。
 じゅぷっ、ちゅぶっ、ぬちゃっ、とあられもない湿った音が上がる。私のあごへ、唾液と、お姉さまの汗と、お姉さまのおつゆの混ざった液が、とろとろと流れて落ちる。もうお姉さまのタイツに包まれた太ももも、私の服事衣装のひざも、垂れ落ちた液でべたべただ。
「あ……来た……もうすぐ……」
 お姉さまがうつろな目でつぶやき、こちこちにこわばったものの根元が、びくっ、びくっ、と脈動した。溜まってきてる。お姉さまの欲望が。
「出したい……出したいわ、出るの、出そうなのぉ……」
「ふぁい。おふきならけ、どうほ……」
 ここから先は、もうお姉さまに言葉は通じない。お姉さまのいつも明晰な頭の中は、欲望でドロドロに濁ってしまっていて、射精することだけが渦巻いてる。
 拒んでもだめ。逃げてもだめ。獣のような目をしたお姉さまに襲いかかられて、力ずくで注がれる。
 でも、そんなことはさせない。させたら正気に戻ったお姉さまが、自殺しそうなほど後悔するから。
 私が望んでいるから注ぐ、そう思わせてあげる。
 ううん、私も本当に望んでいる。
 頭の動きを止めて、こわばりの上半分だけを、唇と舌でしっかり、優しく包んであげる。そのまま、親指と三本の指で輪を作って、根元近くを丁寧にこすりあげる。これが一番気持ちよくさせられる。出る量と出るまでの時間でお姉さまの気持ちよさがわかるから、何度も練習してうまくなった。
 今回は、かなりうまくやれたみたいだった。
「もうすぐ……もうすぐよ、もう、あとちょっと……」
「ふぁん……」
「す、すごく溜まってる。多いわよ、ほんとにたくさんよ、おぼれっ、溺れないでねっ!」
「ふぁい、くあさい……」
「ふぁあっ、きっ、きたっ、きたきたっ、い、イクからぁっ!」
 ぎゅうっ、とお姉さまが頭に爪を立てて、すり合わせた太ももを力いっぱい引き絞った。
「イっくううぅんんっ!」
 びゅううっ、と注射器で絞り出したみたいな細い流れが喉に飛び込んだ。すかさずごくっと飲み干す。
 びゅうっ、びゅううっ、と二度目も、三度目も出てくる。そのたびにごくごく飲む。飲まないとすぐにあふれてしまう。ためるのも味わうのも、もっと後でだ。
 それにこの瞬間のお姉さまは、細かい感触なんか味わってない。あれの中を突っ走る精液の感じだけに魂を奪われて、叫びまくってる。
「出てるっ、出てるぅ! おくちに白いのっ! びゅくびゅくってぇ! 出るぅっ、もっとぉっ! 気持ちイイっ、きもちぃきもちぃのおぉぉっ!」
 本当に多かった。飲んでも飲んでも追いつかなくて、口に溜まった液の中にさらに液が飛び込んできて、じゅるっ、じゅるっ、と渦を巻いた。頬をふくらませてもすぐにいっぱいになって、唇からびしゃっとあまりが噴き出した。
「はぁっ! はぁっ! はあぁぁぁ……っ!」
 ポーション一本分ぐらいのすごい量を出して、お姉さまはようやく落ちついてきた。まだ吐き出している先端を口の粘膜に押しつけて、楽しむぐらいに余裕が出てきた。
 私もやっと落ちついた。舌をねっとりとくるんだ液を存分に味わう。ほのかに潮っぽい味がして、舌で押しつぶせそうなぐらい濃い。お姉さまが作った、お姉さまの胎内と同じ温度の、お姉さまが出してくれた精液。お姉さまの生命のエキス。
 ぞくぞくするほど嬉しくておいしかった。私は赤ちゃんみたいに、目を細めてこくこくと飲んだ。
「はふぅ……」
 お姉さまが最後の一滴を出して息を吐いた。口の中のものが次第に優しく、おとなしい眠りに帰っていく。口の中から去るそれを、私は唇で清めながら送り出した。
 ちゅぽん、と顔が離れると、横にたくし上げられていた裾がぱさりと降って来て、お姉さまの前を隠した。
 お姉さまは、もとのきれいな人に戻った。
 顔を見上げる。お姉さまははぁはぁと小さく息をして、私をじっと見ていた。事の終わりもいつもと同じ。一時の狂熱をなかったことにして、そしらぬ顔で話しあう。
「……全部、飲んだわね?」
「はい」
「ひざ、拭いておくのよ」
「はい」
「それですべての痕はなくなる。私たちの罪も汚れも」
「はい」
「では、これで終わり」
 お姉さまは乱れた髪に手をやって、ずれた天使の羽を直した。そのまま先に立って出ていこうとする。いつもなら本当にそれで終わりだ。
 でも今日は、途中で振り向いた。何度か口を開けて、私に声をかける。
「あの……」
「はい?」
「あのね、あなた……嫌なら、いつでもよそへ行っていいのよ。これを……このことを、耐えられないって思うなら」
 ゆれる松明の光に照らされた顔。美しいはずなのに、迷子みたいに頼りない顔。
 そんな顔、私は見たくなかった。お姉さまは凛としていてほしい。強いお姉さまがいい。
「笑ってください」
 私は言った。
「笑って、私に命令してください。そうしてくれるなら、私は従えます。たとえお姉さまが善でも悪でも。私は、それだけが……」
 おずおずと近づいて、お姉さまを見上げた。お姉さまは驚いたように私を見下ろしていたけど、じきに、その顔に表情が戻ってきた。
「……いい子ね」
「お姉さま……」
「なら、来なさい。その代わり離さないわ。たとえ死地でも、地獄への道でも」
「……喜んで」
 お姉さまが身をひるがえす。大きな鳥の翼のように僧衣の裾が広がる。伸ばした背筋も美しく、確かな足取りで外へ出ていく。
 私の胸が温かいもので満たされる。
 この人になら何をされてもいい。犯されても、注がれても――殺されても。


終わり

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