相続税の基礎知識

 

 相続税額の計算
   
 

1.相続税法上の法定相続人と法定相続分

 

 相続税は実際に誰が遺産を取得したかに関わらず、一度法定相続分で遺産分割したと仮定して税額を計算します税法上の法定相続分民法上の相続分とは異なりますので、注意が必要です。

 相続税には一定の基礎控除額があります。控除額は (平成27年1月1日からは3,000万円+600万円×法定相続人の数)で算出された金額となります。したがって、法定相続人の数が多いほど基礎控除額が大きくなります。相続税法における法定相続人とはどのような人をいうのでしょうか。民法では、相続を放棄した者は相続人とはなりません。しかし、相続税法上の法定相続人は、相続放棄があってもその放棄がなかったものとして相続人の数を決めます。

 民法上、相続人となる子には養子も含みます。以前、何人もの人と養子縁組をし、法定相続人の数を作為的に増加させた事例がありました。そのため、相続税を計算する際の法定相続人の数に算入する養子の数は次のように制限されています。

       被相続人に実子がいる場合   ………  一人まで
       被相続人に実子がいない場合 ……… 二人まで

       ()特別養子縁組による養子は実子とみなします。

 特別養子縁組:家庭裁判所は,申立てにより,養子となる者とその実親側との親族関係が消滅する養子縁組(特別養子縁組)を成立させることができます。
 
特別養子縁組とは原則として6歳未満の未成年者の福祉のため特に必要があるときに,未成年者とその実親側との法律上の親族関係を消滅させ,実親子関係に準じる安定した養親子関係を家庭裁判所が成立させる縁組制度です。そのため,養親となる者は,配偶者があり,原則として25歳以上の者で,夫婦共同で養子縁組をする必要があります。また,離縁は原則として禁止されています。

 

 

 

2.課税価格の計算

   相続税は以下に記載するように、段階を追って計算していきます。
 

 

1)本来の財産

 被相続人が死亡する前に保有していた財産で、土地、建物、株式など金銭で見積もることのできる経済的価値をいいます。

 

2)みなし相続財産

 死亡時に被相続人の財産ではなかったが、死亡によって相続人等の財産となるもので、その経済的効果が実質的に相続したと同じような財産をいいます。

 ・生命保険金等  ・退職手当金等  ・生命保険契約に関する権利など

 

3)非課税財産

 次のような財産は、社会的配慮から相続税は非課税とされています。

   ◎墓所・霊廟など(お墓や仏壇、仏具など)
 ◎生命保険金、退職手当金等のうち次の金額(相続人のみ適用)

     500
万円×法定相続人の数=非課税限度額
(生命保険金、退職手当金等別に計算します)

 法定相続人の数については、放棄があってもその放棄がなかったものとした場合の相続人の数です。この生命保険金等、退職手当金等の非課税は誰でも適用を受けられるわけではありません。非課税の適用が受けられるのは相続人だけです。放棄をしたら非課税も受けられません。

 なお、退職手当金等のうち弔慰金については、次の金額が非課税となります。
         業務上の死亡……普通給与の36ヶ月(3年)分
         非業務上の死亡…普通給与の6か月分

 

4)債務・葬祭費用

 被相続人の債務(借金など)や葬式にかかる費用は、正味の財産に課税するという考えから控除します。

 @債務

  被相続人の債務を控除できるのは、相続人と包括受遺者(遺言で遺産の何割をあげるといわれた人。債務も含まれる。)に限られます。

  それ以外の人は、債務を引き継ぐ必要がないのに、本人の自由で引き継いだと考えられますから、控除する必要はないと考えられています。

 A葬式費用

  被相続人の葬式にかかる費用は、相続開始時にあるものではありませんが、その後必然的に生じるため控除します。控除ができる人は相続人、包括受遺者と実際のその費用を負担しているのであれば相続放棄者、相続権喪失者(欠格・廃除となった人)となります。葬式費用に関しては、債務と違い国民感情の面から控除対象者を相続人、包括受遺者に限っていません。

 

適用対象者

控除できるもの

控除できないもの

債務

相続人、包括受遺者

借入金、未払いの所得税・贈与税・固定資産税、未払医療費 など

墓地購入未払金など

葬式
費用

相続人、包括受遺者、相続放棄者・相続権喪失者で実際に負担している者

本葬式・通夜費用、お布施、遺体運搬費用など

初七日・四十九日法会費用、香典返戻費用、墓地等購入費など

 

 

5)相続開始前3年以内の贈与財産(生前贈与加算財産)

相続や遺贈により財産を取得した者が、その相続開始前3年以内に被相続人から贈与によって取得した財産がある場合、その贈与財産の贈与時の時価を相続税の課税価格に加算します。その後の税額控除でその分の贈与税を控除しますので、相続税と贈与税の二重課税にはなりません。

   
 

3.相続税の総額の計算

 

1)課税遺産総額の計算

 

2)相続税の総額の計算

  ※税法上の法定相続分(放棄があってもなかったものとした場合の相続分)

 相続税の税率表 (平成27年1月1日から)

各法定相続人の取得金額

税率

控除額

 1,000万円以下

10%

    −

 1,000万円超3,000万円以下

15%

50万円

 3,000万円超5,000万円以下

20%

    200万円

 5,000万円超1億円以下

30%

   700万円

   1億円超2億円以下

40%

1,700万円

   2億円超3億円以下

45%

2,700万円

   3億円超6億円以下

50%

4,200万円

 6億円超

55%

   7,200万円

 
 

3)各人の算出相続税額

 

 

4)税額控除

 各人が実際に納付する相続税額は先に計算した算出相続税額から次の各税額控除等を加減算して求めます。

(1)相続税額の2割加算

 兄弟姉妹や友人が遺産を取得することは偶然性が高いため税負担能力があり、また孫に遺贈したような場合には相続税の課税を1回まぬがれる(本来は親→子→孫、この場合は親→孫)結果となります。そのため、次の加算対象者の相続税額は、その2割を加算します。

 2割加算対象者

2)贈与税額控除

 相続または遺贈により財産を取得した者が、その被相続人から相続開始前3年以内に贈与によって取得した財産がある場合は、その価値を課税価格に 算入するとともに、それにかかった贈与税額を控除します。(贈与税と相続税の二重課税の排除)

(3)配偶者の税額軽減

 配偶者は被相続人の財産形成に大きく貢献しており、老後の生活保障のためにも、算出相続税額から一定額を控除します。なお、この控除の結果相続税がゼロになっても申告をしなければこの適用は受けられません。

  ※平成27年分「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」を適用した相続税申告書の記載例(国税庁)

(4)未成年者控除

 未成年者の養育費の負担等を考慮するために、一定額を控除します。

適用要件

控除額

・相続または遺贈により財産を取得

・全財産に課税される者

・法定相続人

6万円×(20歳−その者の年齢)(注)平成27年1月1日以降から10万円になります。

(注)1年未満端数切上

【例】65ヶ月

6万円×(20歳−65ヶ月)(注)84万円 (注)1年未満端数切上(137ヶ月→14歳)

 

(5)障害者控除

 障害者の生活安定や日本の社会福祉の増進のために一定額を控除します。
  相続人が一般の心身障害者である場合
   満85歳に達するまでの年数×10万円
=控除額
  相続人が重度の心身障害者である場合
   満85歳に達するまでの年数×20万円=控除額

(6)相次相続控除

 10年以上に2回以上相続が続いた場合には、1回目の相続で課税された相続税の一部を控除します。

  相次相続控除(国税庁)

(7)外国税額控除

 相続財産に国外財産があり、その国の相続税に相当する課税を受けた場合は、原則としてその税額相当が控除されます。(国際間の二重課税の排除)

(8)相続時精算課税に係る贈与税額控除

※すでに納めた相続時精算課税に係る贈与税額が相続税額から控除しきれない場合には、その控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税額は還付を受けることができます。

     相続税の申告が必要?〜申告要否の簡易判定シート(平成27年分用)〜(国税庁)
      相続税の申告が必要であるか否かの判断は、上記の申告要否の簡易判断シートをクリックして数値を入れるとわかります。
    相続税要否判定コーナーチラシ(平成27年5月)国税庁
    相続税要否判定コーナー(国税庁)
    相続税の申告のしかた(平成27年分用)
    相続税のあらまし(平成27年分用)
    平成27年分「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」を適用した相続税申告書の記載例
    タックスアンサー相続税(よくある税の質問 国税庁)
    タックスアンサー贈与税(よくある税の質問 国税庁)
    

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