1  次頁へゆくまへがきへ戻る       *                                                                       ながら遠ざかつてゆく 早稲田の季節の雁の声よ  秋の長雨が休みなく降り続く その中を 雲に隠れて鳴き                                 鳴きぞゆくなる早稲田雁が音 八|一五六六                          ひさかたの雨間も置かず雲隠り                            秋の歌                *                                              雲隠れて かすかに聞こえることです  聞いたかと貴女がお尋ねになつた雁の声は ほんとに遠く                                  まことも遠く雲隠るなり 八|一五六三                            聞きつやと妹が問はせる雁が音は                                       大伴家持の和ふる歌                                                           く雁の 連れ合ひを呼ぶ声が羨ましく思へるのです  誰かさんも聞いたでせうか 我が家の上を通つて鳴いてゆ                                 嬬呼ぶ声の羨しくもあるか 八|一五六二                          たれ聞きつ此ゆ鳴きわたる雁が音の                            巫部麻蘇娘子の雁の歌一首           *                                           家持秀歌選