D-07aは、いまはアナログレコードを聴くときのADコンバータとして使っています。以下の記載は2007当時の記載です。(2016年6月) 昔のオープンリールデッキによる録音を吸い上げるために、私のシステムにはDATデッキとしてパイオニアD-07aを導入してあります。いったんDATに吸い上げた後は、ライブラリーが増える理由もないわけで、せっかく導入したパイオニアの最高級DATであるD-07aは、ずーと私のシステムの日陰者でした。 しかし、新CDシステムの導入によって、予想もしない事態が発生。D-07aが重要な役割を果たし始めています。 それはDATではなく、DACとしての役割でした。 主力であるDAC64-Mk2は、もちろんいまもすばらしい音でなっています。いまさら他のDACなんてまったく不要に思えます。 ただ、最近気がついたのですが、非常に稀ではありますが、DAC64-Mk2と相性が悪いCDがあるのです。 代表的なのは声楽独唱です。キリ・テ・カナワの声が別人に変わってしまう。音が良い悪いの問題でなく、ほかの人の声になってしまう。美しい声ではあるのですが、「え、こんなハスキー声だっけ・・・」という差があるのです。 人の声の聞き分けに関して人間の耳は大変な能力を持っていますから、楽器では許容される(というか、よくなったと普通は感じる)わずかな変化でも、声楽独唱では、変化を敏感に感じ取ります。大勢の声が混ざった合唱に関しては、違和感はありません はじめからDAC64で聞いていれば、なんの疑問も感じないのでしょう。しかし、DAC64のレポートでも書いたように、このDACの音はかなり特殊です。もちろん、そこが最大の魅力でもあるので、文句は言えません。 そこで、声楽専用に「普通の音のDAC」を導入しよう、と考えました。新しいものを買うことをもちろん考えましたが、とりあえず、どんな変化をするものなのか、D-07aのDACにもオラクルの出力をつないてみました。 D-07aにはDACモードというボタンがあり、これを押せば、デジタル入力をDA変換してアナログ出力してくれます。 このDACは、10年前のものとしてはかなり優秀。96KHzまで同期します。
![]() D-07aの登場時期は、SACD登場直前、CDが究極の音を目指した時代でした。CDには含まれない20kHz以上のデータを補い、アナログに匹敵する音を出すべく、D-07aには、「レガート リンク コンバーターS」なる機能が組み込まれています。 これは倍音成分をはじめとする高調波成分を予測して追加する機能。 D-07aのアナログ出力はC46の「Tape」に接続されているので、CDの内容によってDACを切り替えることにしました。 D-07aは録音機なので、余計な色付けは極力避けるようになっているのは当然です。その意味で、いまの目的にはぴったりだったのでしょう。まさに、LPでむかしに聞いたキリ・テ・カナワの声です。 1円の投資もせずに、この音を手に入れられるなんて、なんと幸運なのか。ま、正確には接続ケーブル代数万円はかかったのですが。 と、感激はしたものの、やはり声楽独唱以外のCDでは、ほとんど、どのCDでも、その分解能、透明感、音場感、どれをとってもDAC64が圧倒的に上です。 ただ、独唱に加え、ごく一部のデジタル臭〜いぎらぎら録音のCDが、D-07aでかけると、「お、こんなによかったのか」というすばらしい音でなります。 DAC64でもD-07aでも、どちらでもよい音でなる、というCDは今のところ出合っていません。オーディオとは面白いものです。 今回、この両極端の2台の音の魅力を聞いてしまうと、どんな高級DACでも、1台で全部のCDをカバーするのは無理なのではないか、と思ってしまいました。 LP時代にはカートリッジを交換して音の変化を楽しむのが普通でした。CDでもDACを切り替える、という考え方が必要かもしれません。
(2007年6月14日記)
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