林床の木漏れ日率と林内の見通し

(1)林床の木漏れ日率

(1.1)木漏れ日率の定義
林床の日射量が林外の何%であるかの測定は非常に難しい。木漏れ日率として、観測点の 周囲約20m範囲内を目視する。林内には、一般に低木などが生えているので、林床面上 の高度1m以下の範囲を見たとき「強い直射光」が当たっている面積の割合(%) を「木漏れ日率」と定義する。

注意1:かすかな木漏れ日は無視する。針穴写真機(ピンホールカメラ)の原理 により、林床には弱い木漏れ日も見える。この木漏れ日はエネルギー的に微弱で あるので、木漏れ日率の目視では除外する。

注意2:林内の見通しが非常に悪い場合、見通しのできる範囲内、 たとえば10m以内の木漏れ日率とする。この定義による木漏れ日率は雲量の測定に似ている。 山で囲まれた山峡では天空の見える範囲は狭く、その見える範囲内に占める雲の割合を 雲量とする。

(1.2)木漏れ日率の測定方法
具体的な測定方法として2つがある。
直接測定・・・・高度1m以下の高さの草・低木の水平面および林床に「強い直射光」が 当たっている個々の明るい範囲を正方形または円に換算した面積を測り、それらの 合計面積をもとめる。その合計面積の半径20mの面積(=1256m)に 対する比(%)が木漏れ日率である。

目視測定・・・・少し慣れてくると、目視によって木漏れ日率をもとめることができる。 試してみると、個人差は許容誤差の範囲内である。許容誤差は、木漏れ日率=40~100% 範囲で10%程度、木漏れ日率=0~10%範囲で3%程度あってもよい。

雲量の測定に慣れるまでには数か月程度かかるが、木漏れ日率の目視は1~2日間の練習で ほぼ習得できる。

(1.3)木漏れ日率と天空率の関係
木漏れ日率と現在多用されている天空率の関係を明らかにする必要がある。 物理的な意味では、林床に到達する放射量が林内気温を決める主な要素であり、 天空率は木漏れ日率と強い相関関係があるものの、林内気温を決めるパラメータとしては 精度に劣る性質を持つ。

それゆえ、木漏れ日率と天空率の関係をもとめる作業を行なうよりは、木漏れ日率と林床の 放射量の関係を明確にすることが重要である。

(1.4)放射温度計を用いた森林遮蔽率の測定
快晴または薄曇り条件において、放射温度計を「天頂±天頂角30度」範囲に向けて 測る場合、天空の放射温度と葉面の放射温度の差は10℃~50℃程度で大きく、つまり コントラストが明瞭である。それゆえ、全天カメラによる天空率の測定に比べて、 放射温度計(例えば波長範囲:8~14μm)による森林遮蔽率の測定は桁違いに楽で、 しかも写真の明暗のような曖昧さがない。

この方法による森林遮蔽率をもとめることを推奨したい( 「K65.北の丸露場の風速減率と周辺の森林遮蔽率」)。

(2)林内の見通し

(2.1)見通しの定義
目の高さ≒気温観測用の通風筒吸気口の地上高=1.5mで林内を水平に見たときの見通し の良し悪しによって、「見通し良好」と「見通し不良」の2つに大別する。 方位の50%以上の範囲の見通しが、おおむね30~50m以下の場合を「見通し不良」、 おおよそ50m以上まで見える場合を「見通し良好」とする。

「見通し良好」では、根元から高さ2~3m程度までは視界を遮る枝はなく、目の高さには 太い幹のみがあり、50m以上あるいは100mの遠方まで見通しがきく。

「見通し不良」では、高木の中に低木があり、高度2~3m以下に下枝・背丈の高い下草も ある。
また、全体の樹高が低く、例えば3~5m程度の低木が多ければ、気温計の高度1.5mは 樹冠層(葉面層)内であり、葉面・小枝が太陽光で熱せられて気温は高くなっている (「K83.気温観測に及ぼす樹木の加熱効果ー実測」)。

(2.2)見通しと林内風速(風通し)の関係
見通しは、林内の風通しを表す簡易パラメータであり、現在まだ見通しと風通し間の明確な 関係は付けていない。しかし概略であるが、樹木の影響のない風上の風速に対する林内 風速の低減比は0.1前後(見通し不良林)である(「K56. 風の解析 ―防風林などの風速低減率」の図56.12)。また、モデル計算によればahc (=葉面積指数×個葉の抵抗係数)の大きな林では0.2 (ahc=2m2/m3)~小さな林では 0.5(ahc=0.3m2/m3)が目安である( 「K56. 風の解析―防風林などの風速低減率」の図56.13」)。

さらに、水平方向に測った防風林の力学的厚さawc(=水平葉面積指数×個葉の抵抗 係数)を用いれば幅のある森林つまり風の通り抜ける距離が数10m以上 (awc>10m2/m3)の場合、風速の低減率は0.05~0.45の間に入る。 この幅の中で、密林は小さなほうに、疎林は大きなほうに入る( 「K56. 風の解析―防風林などの風速低減率」の図56.21を参照)。

見通しと林内風速(風通し)の間の明確な関係をつけることは今後の課題である。


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