==== 1996年7月のお話し ====


 7月はカルチャーショックの話題をふたつ。

 先々月のお話で、細君が東京都「緑の相談所」主催の「ハーブ教室」へ行った話を書きましたが、その後、「ベランダで野菜作り」などにも出席していましてすっかりお世話になっているのですが、今回は小生自身も「スパイス入門」なる教室へ参加してみました(参加費700円)。
 個人的な話ですが、学生時代の研究室に配属された時分、何故かそこの慣例で、毎週土曜日のランチタイムには車で近くのカレー専門店へ皆で出向いて、汗を垂らしながらその手の料理を貪り食っていたのです。その影響か社会人になっても、都内近辺の専門店はチェックしていたのですが(そういうリストがあるホームページもありますね)、その元となるカレー粉自身を自ら調合できたらという野心も併せて持っていました。
 まあ、そういう背景があったので、この教室の案内を見て、細君に頼んで、直ぐに参加申し込みをした次第なのです。
 講師の方は、朝岡香辛料株式会社の朝岡久美子女史で実際に自社にで取り扱っているスパイスたちの実物を回覧しながら説明を受けて、調合されたカレー粉よりスペシャルチキンカレーを舞台裏で作って試食する、という催しでした。

こりゃ何だあ? サボってはないです 上のは10倍の効め
こういう形で甘草四郎 ナツメグは固い・・・ 胡椒3兄弟揃い組

 そりゃまあ、スパイスの種類なんて数多くあるのですが、当日に調合したスパイスを順に書き並べますと・・・
・ターメリック・コリアンダー・シナモン・ジンジャー
・デイル・サボリ・セージ・ローレル
・甘草・レッドペッパー・フェネグリーク・クミン
・フェンネル・ナツメグ・陳皮(チンピ)・カーダモン
・クローブ・黒胡椒・スターアニス(八角)・オールスパイス
 これらを粉末にして適量に混ぜ合わせて、元となるカレー粉が産まれるのですが、その調合比によってその店(その家)特有のカレーが仕上がるわけでして、それがシェフによっての秘密のレシピとなるのです。スパイスは、大まかには、原型のものは始めから、粉末のものは後から(香りを出すため)加えるそうな。
 少しずつにせよ、お店の専門家ではないのでこれだけの沢山の種類のスパイスを揃えるのは大変です。が、初心者向けに粉末になったパックのセットも販売しているみたいで、安心というものです。

 実際の調理の方法についての記述は省きますが、出来上がりはご覧の通りです。一緒にサフランライスを頂戴しました(サフランは1kgで数十万円!)。少量をお湯で戻して、ローレルを加えて普通にご飯を炊きます。
 辛さが足りない人は、ビンダルペースト(唐辛子のペースト)を加えるといいみたいで、小生は当然加えました。カレーライスは、文字どおりのスパイシーで、流石にうまかったです。
 最後には、スパイスティーを嗜みました。うむむ、これは・・・という感じでしたが、慣れない人は、牛乳や砂糖を加えるといいみたいでして。
 以上駆け足で、全然スパイス自体の核心には触れていませんが、さらに詳しく知りたい方は、次の本などをどうぞ(当日に紹介されて、販売もしていた)。
 「日曜日の遊び方 スパイス名人宣言」朝岡勇、朝岡和子著/平松洋子文・構成 雄鶏社 1500円


 酒類の中で何が一番好きかというと、自分の中でも賛否両論が分かれるわけですが、ビールはその筆頭にあたります。いや、ビールは酒ではないとおっしゃるのなら、ありがたや、それは置いておいて、日本酒をあげましょう。でも、まあ、この世のアルコール類の中でこれから一生1種類しか飲めないとなったら、やはりビールにしてくれるように頼みます、多分(誰に頼むというのだ)。
 戦うマッキントッシュプログラマである青木さんのヨタ話を読むと、こんなに酒を飲んでしまって大丈夫なのかしらん、と心配する話が時折載っていたりするのですが、かくいう小生も、飲まずにはいられないものです(色々な意味で)。細君との約束で、健康のためかつ経済のため、週に2回は飲まない日(飲めない日)を設けているのですが、裏を返せば、それ以外の日は必ずと言っていいほど、飲んでいるのですねえ。
 そこで、アルコール類の恩恵にあずかっている身としては、その相手のこともよく知らないと失礼であろうという姿勢から、工場見学にはよく出向いているのですが、ビール工場でいうとキリンビールサッポロビールのそれには細君と出かけました(アサヒビールはまだ行っていませんねえ)。
 今回は、サントリービールの武蔵野工場に行って来ました(ユーミンが「中央フリーウェイ」で唄っているそこです)。それもただの工場見学ではなくて、「ビール一日大学」に入学して、実践的に講義を聴きながらというものです(抽選:参加費2000円)。

 はじめの講義は、「ビール製造工程」。
 OHPとスライドと原料の実物でもって、懇切丁寧なお話が聴けました。ビールの主原料は麦芽とホップです。
 ビール用の麦は、主に二条(実が大きい)だそうで。収穫後、休眠期間を経た麦は、製麦で、精選→浸麦→発芽→焙燥(乾燥)→除根という工程を経るそうな。乾燥工程によって麦芽は、淡色麦芽・濃色麦芽・特殊麦芽に分類されて、この配合によって、製品となるビールもまた、異なったものとなるそうです。
 ビールにあの独特の香りや爽やかな苦みがなかったら・・・。ホップがその大きな立役者です。写真からわかるように、毬花と呼ばれる部分を使用します。大きさは3〜4cmで、触ると花弁の部分がバラバラになります。一般には、乾燥・粉砕・圧縮整形したペレット状のものを用いるみたいです。アロマホップとビターホップという品種があります。
 しかしながら、ホップというものをよくぞ見つけて試したものですなあ。ちなみにホップは、雌雄異株でビールに使用するのは雌株の方だそうで、そのせいかビールには女性ホルモンに近いものがあり、ビール好きな人の子供には女のお子さんが多いそうな(と、後の雑談で根拠はないのですけど、と言いながらスタッフの方がおっしゃっていた)。
 で、製造に移ります。
 簡単に工程を記しますと、仕込み(粉砕・糖化・麦汁濾過・麦汁煮沸・オリ分離)→発酵→貯酒→濾過→詰め、です。
 その各々の過程のビール(とはまだ呼べませんが)を飲ませてもらいました。左から順に述べますと、
1)麦汁その1・・・麦芽糖化後まもなくのもの。とっても甘くべたべたしている。こりゃカロリー高そうだわって感じ。
2)麦汁その2・・・煮沸してホップを添加したもの。確かに多少苦みが加わったが、まだとても飲めた代物ではない。
3)若ビール・・・発酵が終わったビール。やっとビールらしくなってきた(アルコールが生まれたためか?)。刺々しいが、これはこれでいいかも。
4)貯酒ビール・・・若ビールを熟成させたビール。だいぶまろやかになって、深みが出てきました。
5)濾過ビール・・・やっぱりこれが一番うまいですね。のど越しもすっきりです。

 次の講義は、「世界のビールの試飲」。
 8種類のビールをテイスティング。色・香り・味・苦みの項目で、5段階の個人的な評価をいたしました。

モートサービット
[ベルギー]
(グーザランビック)
自然発酵ビール

色 :☆☆☆☆
香り:☆☆☆
味 :☆☆
苦み:☆☆

オルヴァール
[ベルギー]
(トラピストビール)
上面発酵・瓶内2次発酵

色 :☆☆☆
香り:☆
味 :☆
苦み:☆☆☆

ヴァイヘンステファン
[ドイツ]
(ヴァイツェンビール)
上面発酵・小麦ビール

色 :☆☆☆
香り:☆☆☆
味 :☆☆
苦み:☆☆☆☆
サミュエルスミス
ブラウンエール
[イギリス]
(エール)
英国型上面発酵

色 :☆☆☆
香り:☆☆☆☆
味 :☆☆☆☆
苦み:☆☆☆☆

エンゲル
[ドイツ]
(ボックビール)
下面発酵・高アルコール

色 :☆☆☆
香り:☆☆
味 :☆☆☆☆
苦み:☆

シュパーテンピルス
[ドイツ]
(ピルスナー)
典型的な下面発酵

色 :☆☆
香り:☆☆☆
味 :☆☆☆
苦み:☆

コロナエキストラ
[メキシコ]
(ピルスナー)
下面発酵・清涼飲料的

色 :☆☆
香り:☆☆☆
味 :☆☆☆
苦み:☆

モルツスーパープレミアム
[日本]
(ピルスナー)
典型的な下面発酵

色 :☆☆
香り:☆☆☆
味 :☆☆☆☆
苦み:☆☆☆
 ・・・てなとこですか。

 次は、工場内を歩き回ってのラインの案内を。
 製造工程順に見て回ったのですが、間近に見たモルツの缶たちが走り回っている姿が妙に印象的でした。

 最後に、卒業式を兼ねたビアパーティ。
 講習の講師の方々や工場のスタッフの方々を囲んで、ビールに関するよもや話を咲かせながら、出来立てのビールを何倍も飲みながら食事をして、楽しい時間を過ごせました。クイズ大会もなかなかでしたね。ビールの注ぎ方もその場で教えていただいたりなぞも。
 最後に、卒業証を模したテレカとおみやげをいただいて、皆で記念写真を撮って解散です。
 帰りは、ビールバスで、JRの駅まで送ってもらいました。



秋谷裕之ホームページ / ri7h-aky@asahi-net.or.jp