平成八年度指定

板絵著色三十六歌仙絵馬

絵馬一覧
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福岡市中央区天神二丁目2番20号

 福岡城の鎮守として歴代藩主の崇敬が篤く、また城下町福岡の氏神として福岡町人に崇敬された警固神社に所蔵される。柿本人麻呂・紀貫之ら和歌の名人三十六人の肖像に各人の歌を添えた絵馬である。

 縦54.2cm、横39.2cm、枠幅4.8cm、材質は楠。

 裏面の墨書によって嘉永6(1853)年に、本町・大工町・魚町の町人が奉納したものであることが分かる。和歌の筆者は大隈言道(1798〜1868)とみられる。

裏面に「霄玉」と墨書するものがまじるが、絵の作者かどうかは確認できない。

 裏面墨書にみえる「霄玉」は作者名かどうか確認できないが、この頃「霄」の字を有する福岡藩の御用絵師に尾形洞霄(1791〜1863)がおり、その門人に「霄」の字をもつ絵師が複数知られており、「霄玉」もあるいは尾形家門人の一人である可能性がある。いずれにしろ本絵馬の作者はその筆致から狩野派の流れをくむ絵師と考えられる。和歌の筆者とみられる大隈言道(1798〜1868)は〈福岡のものは福岡の歌を詠え〉と主張した福岡を代表する歌人である。

 本絵馬は、福岡の町人たちが、おそらく福岡に関わる絵師、並びに歌人大隈言道に依頼して氏神である警固神社に奉納したものであり、城下町福岡の貴重な資料といえる。

 なお本市には、連句等の文字額を入れて、約2,500点の絵馬の所在が確認される。このうち、一人一面、四人一面等の形式で、歌仙を画題とした絵馬は9社(百人一首を画題とした4社を除く)に残るが、いずれも断片的であるか保存状態が悪いかであり、警固神社のみに一揃いが極めて良好な状態で残る現状である。