綿津見神社仏像群



所在地:福岡市東区三苫6丁目21番19号


 玄界灘を眼下におさめ、西に志賀島、北に相ノ島を望む宮山(旧字名)に位置する綿津見神社の仏像群です。近世地誌類にも紹介される境内の大日堂、虚空蔵堂に祀られています。小振りながらも保存状態の良好な一木造の不動明王立像、吉祥天立像、風化が進んでいますが四尺を越える如来形立像(伝大日如来像)、伝虚空像菩薩立像、これら4像は平安時代後期の作とみられ、さらに、南北朝時代の作とみられる伝薬師如来坐像の5躯からなります。玄界灘沿岸の仏教圏を想定させる貴重な仏像群です。

  本仏像群の内、木造如来形立像(伝大日如来像)と 木造伝虚空蔵菩薩立像の2躯については、江戸時代の地誌である『筑前国続風土記附録』、『筑前国続風土記拾遺』に紹介されています。それによれば、崇徳院(1119〜64)時代或いは崇光院時代(14世紀中頃)、南北朝時代に海中から引き揚げたものとの所伝があったことが知られています。また、永享七年(1435)に次郎四郎が虚空蔵堂に施入した鰐口が「こくう蔵の古やしきの圃中」から江戸時代に掘り出されたことが伝えられており、本像等の存在を窺わせています。
 木造不動明王立像、 木造吉祥天立像、木造如来形立像(伝大日如来像)、 木造伝虚空蔵菩薩立像いずれも平安時代後期の製作と考えられ、木造伝薬師如来坐像は南北朝時代の製作と考えられるものです。袖を「8」の字型に彫出する点など、平安期の大宰府文化圏に入り得る作品群であり、近年宗像、津屋崎で発見された平安後期の仏像と同系統とも考えられるものです。
 神仏分離の際、破壊を免れたものと思われますが、本地域における古代・中世の宗教文化を物語る貴重な仏像群です。


木造不動明王立像 木造吉祥天立像 木造如来形立像 木造伝虚空蔵菩薩立像 木造伝薬師如来坐像