はじめての障害(ジャンプ)レース
障害(ジャンプ)レースのABC

 
障害(ジャンプ)レースの安全対策って?
  
 障害レースは、平地レースと比べて馬にとっても騎手にとっても危険度の高いレース。そのため、さまざまな安全策をほどこしてあります。

障害に(少しだけ)ぶつかっても大丈夫
 まず、障害そのものに施された安全策から。各障害の手前約40cmの場所には、丸太を半分に割って横に寝せた感じの「踏み切り板」が設けられています。これは、人間の陸上競技・走り幅跳びのそれと似た役割を持ち、障害をミスなく飛ぶための目安になります。なお、「竹柵」「ハードル」障害では「いけ垣」障害などに比べ台座の幅が若干広いため、台座の下部にそのまま踏み切り板がくっついていて、見た目は一体になっています。

 また、障害の台座部分をよく見ると、上部に白い帯状のものがありますが、これはゴム製のラバー(二重表現ですが・・・)です。馬の跳びが低すぎて脚先を台座にぶつけた際に、衝撃をやわらげる役割を持っています。

 
「いけ垣」障害に設けられた安全策。右手地面にある丸太状のものが「踏み切り板」、台座上部にある白帯がラバー。
 
雪が降ると真っ先に中止
 競馬開催日に雪が降ると、中央競馬では降り具合によって「障害レースのみを中止(または順延)、平地レースは予定どおり実施」→「芝コース使用予定の平地レースをダート(砂)コース使用に振り替え、ダートコースのみを使用して実施」→「競馬そのものを中止(順延)」という段階を踏みます。つまり、雪が降ると障害レースは真っ先に「消される」のですが、これは障害をジャンプ、着地した途端「雪でツルリ」で馬が転倒しては、笑い事ではなくなるのが理由です。
 主だったところでは、'03年暮れに行われるはずだった「中山大障害」競走が、レース当日の未明に降った雪の影響(雪は夜明け前に止み、日中は快晴だったのだが・・・)のため、翌年1月に順延になった例があります。

その他の安全対策
 安全面の観点から、コース上に設置される障害の平均的な大きさは、時代によって変わっています。
 サラブレッドのレースは、馬の血統面や調教面での改良によってスピード化が進んでいったため、設置される障害の平均的な大きさを小さめにして、スピードが乗ったままでも飛びやすくするという危険防止策をとっていた時代もありました。しかし、最近では逆に「負担重量」(=馬の背中に載る重量)を重めに設定してそのぶんスピードを抑えさせ、設置される平均的な障害の大きさをやや大きめにして「じっくりと確実に飛ぶ」ということを重視させるという危険防止策に転換しています。

 
 
障害(ジャンプ)レースで騎手が落馬すると?
  
 障害レースにおいては、騎手の落馬はつきもので、「落馬は障害の華」とまでいわれています。そして、障害レースにおいて騎手が落馬するパターンとして、着地に失敗して馬が転倒する、あるいは着地の際に馬がつまづいて、騎手がバランスを崩し落馬するなどというものがあるというのは、最初に書いたとおりです。

 さて、障害レースに限らず、平地レースでもそうなのですが、レースの途中で騎手が落馬すると、成績的には通常「競走中止(着順なし)」という扱いになります。たとえ、騎手が乗っていない「空馬(からうま)」のまま先頭でゴールしても扱いは同様です。

 ただし、「落馬したそので馬に再騎乗してゴールへ向かう」「任意の場所で馬に再騎乗して、落馬した場所へいったん引き返してからゴールへ向かう」ことをしてゴールを果たせば「競走中止」の扱いにならず、その着順は有効となります(もっとも他に落馬した騎手とかがいない限り、ビリでしょうけど・・・)。しかし、野生の状態で「群れで行動する」習性のある馬は、騎手が落ちても(馬群を追いかけて)そのまま走り去ってしまう(=逸走する)ことがほとんどであるため、騎手が馬に再騎乗できるケースは少なく、競馬ファン歴13年目('03年現在)の作者 まるしん も「再騎乗→ゴール」のシーンは、わずか1回しか、まのあたりしたことがありません。

 ところで、落馬で心配なのは、騎手のケガ。落馬した騎手が地面の上を派手にゴロゴロ転がっていると、見た目は大変なようですが、これは柔道でいう「受け身」が取れている証拠で、案外大丈夫なもの。逆にケガの危険性のあるのは、地面にたたきつけられて転がらないときや、後続を走る馬に蹴られたとき。ちなみに、落馬の多そうな場所(中山競馬場の「大竹柵」障害の脇とか)にはもしものために、あらかじめ担架がスタンバイされています。くれぐれもその世話にならぬよう・・・。

 もし、馬が転倒して騎手が落馬した場合は、馬のほうのケガも心配ですが、もし馬が「逸走」すれば、その多くは無事であるケースです。もし、馬がケガした場合は逸走すらできず、その場でいかにも痛そうな仕草をすることが多いです。


 
日本の障害(ジャンプ)レースの特徴は?
   
高速障害レース!
 日本の障害レースと海外のそれとを比較した場合、日本のレースの大きな特徴は、全体として「低めの障害・スピード重視」であることです。逆に言うと世界的な傾向は、「高めの障害・飛越技術&スタミナ重視」であるということ。最近では、前にもあげたとおり、日本でも障害を高めにして飛越技術を重視するようになってきましたが、やはり世界的にみれば「低めの障害・スピード重視」であることには変わりありません。
 そのため、日本の障害レースに見慣れている人間が、イギリスで行われる世界で最も大きな障害レース(注:ただし、賞金は高くない)「グランドナショナル」のVTRなどを視ると、まるでスローモーションのように見えてしまいます。

海外では、どの国が日本の形態に近い?
 まず、「障害レースの本場」ヨーロッパ。イギリスアイルランドでの障害レースは、日本とかなり異なる形態のようです。一方、フランスで行われている障害レース(・・・というか、障害レースのコースや設置されている障害の形状)は日本の形態に近いらしく、'99年から実施された日本の障害レース改革にあたってはこれを範にしたそうです。
 また、アメリカオセアニアの障害レースは、ヨーロッパに比べてスピード重視の傾向で、そのぶん日本の形態に近くなっています。

日本の競馬場、どこが海外の形態に近い?
 国内の競馬場の中で、「スピードだけでは勝てない」世界一般的な形態に近い障害コースをもつ(ほぼ唯一の)競馬場は、中山競馬場です。実際、他の競馬場の障害レースで連勝を重ねてきた馬が、中山競馬場の大レースに乗り込んであえなく惨敗、というケースも多く見られます。ちなみに、2000年からはここで日本馬・外国馬をまじえた国際障害レースも行われています。
 逆に、人間の陸上でいう短距離ハードル競走をほうふつさせる「連続障害・スピード命」が特徴の新潟競馬場・東京競馬場の障害レースは、世界的にみるとかなりトリッキーな部類に入るコースといえるのではないでしょうか。

 

「障害レースのABC」スタート頁へもどる  前へもどる
 

「馬のコーナー」 表紙へ