「蜂のくれた」物

■ペンネーム「ether」さんからの投稿です。

 etherです。
 今回は「蜂」絡みの、お話(前編)をお送りしたいと思います。
 
 蜂とは「居なければ困る生物」だそうで、将来人間が、地球以外のところで生活するようになる場合、いわゆる「ノアの箱舟」に乗せて、一緒に連れて行く予定があるほどの大変重要な生物だそうです。
(etherは刺される方がいやなので、「駆除」を考えてしまいますが…)
 
 そんな「蜂」がもたらす二段活用なお話をお送りいたします。題して「蜂のくれた」物です。お付き合いください。
 
 それは、ご近所さんのこんな「悲鳴」から始まりました。
 確か、日曜日だったと思います。
 
「あーーーーーー、たっ大変だーーーーー」
 お隣のご主人がそう叫んでいます。
 どうしたんだろうと思い、声をかけますと屋根の方を指差し
「○☓△■/¥◎ーーーーーー」
 と言葉にならない言葉を発しています。
 
 不審に思いよく見ると、なんとスズメバチの巨大な巣が、お隣の軒下に出来ているでは有りませんかーーーー。
 大きさはたて50センチくらい、はば30センチくらいでしょうか。
 
E 「先週はこんな物、なかったですよね。それにしても大きいですね????」
隣 「なんだこれー、◎△■☓◎☓■△☐」
 
 お隣さんは、ものすごい錯乱しています。
 お子さんはまだ1歳になってませんし、万が一の事を考えると、その混乱ぶりには同情できる物があります。
 
「撤去、役所へ依頼なさるんですか」と伺おうとすると、家の中へ走り去ってしまわれました。
 お宅の中からは、なにやら大声で話し合っておられます。
 害虫の駆除は、自治体によっては役所で受け付けてくれる場合があり、その方向での、お話をなさっているのかな?と考えていました。
 
 厄介な物が出来てしまって、大変だなあと心配もしましたし、ether宅の2階にある、物干し場の位置と非常に近いため
「うちも状況は同じで、危ないんだなあ」
 としばらくは「巣」を意識して、洗濯物を出しに行かなくてはと、思いました。
 
 あのお隣さんの事だから、しっかり対処くださるだろうし、多分、大丈夫だろうと…(確かな根拠は有りませんが)楽天的に考えることにし、しばらく様子を見ておりました。
 
 そうしましたら、お隣さんは早々に手をうってくれました。
 4日後にはもう、「駆除業者」を名乗る方々が来訪され、来週には巣の撤去作業をすると聞かされました。町内会にも話しが行き、日時も蜂の件も、周辺住民の知る事となりました。
 こちらも話が決まるまでの間、物干しに行くのに冷や汗物でしたから
「あー良かったーーー安心だー」
 そう思っていましたら、
 
 これがそうでもなかったんです。
 実はこの方々は、「色々企んでいた業者」だったんです。
 
 まず最初に変に思ったのは、業者が挨拶に来た時です。
 手にはなぜか「額縁に入った害虫駆除業者の許可証」なる物があり、私達に見せながらの挨拶で、駆除作業の説明も、何かこう、作業説明ではなく誘導している様な、不審に思わせる内容がありました。
 
 たとえば、
 
 1.強力な殺虫剤をつかうので、作業中には雨戸と家の窓を閉めて欲しい。と言うのですが、
 
 そこまでしなければならないほど、そんな強力な殺虫剤、販売されているのか?と思いました。
 
 2.床下にハチの巣がある可能性があるので、床下を点検させて欲しい。と言うのですが、
 
 !!!!!?????…。句読点から後ろの部分、どこかのサイトで読んだような気が……。
 
 3.作業終了後1時間くらいは、雨戸と窓を閉めていて欲しい。との事ですが、
 
 なぜ雨戸もなのでしょう?…この雨戸という言葉に、ずーーーっと引っ掛かっていました。
 
 メジャーな手口としては、床下に入って、ポケットに忍ばせておいた「シロアリ」をターゲット宅に放し、
「奥さん、シロアリがいますよ!!!」
 とやる業者は結構有名(!)ですが、そんな可愛いものじゃ有りませんでした。
 
 みなさん、どういう手口だと思いますか?
 すっっっっっごかったんですよー!、いや、本当に。
 外側の「害虫駆除」は、まあまともだったんです。
 彼らは「内側の害虫駆除」をなんとかして、受注したかった様でして、事前説明の項目はすべて、シ・コ・ミ のために用意されたものだったんです。
 
 その手口ですが、
 1.まず、外側の害虫駆除を実施します。必要な装備は3点で、殺虫剤、  防護服(宇宙服のようなごつい物)それと発炎筒です。
(防護服を宇宙服のようなスタイルにしたのは、演出の為でしょう。大変なんですよと)
 
 2.作業者が巣に近づき、作業を開始したのを窓越しに確認すると、各お宅に来ている「担当者」が、雨戸と窓を閉めるように促します。
(ここでピーンと来たあなた。すごいです。名探偵コナン並の頭脳の持ち主です。弟子にして下さい)
 
 3.外との視界が断たれた所で、担当者が話を始めます。
 話の内容は世間話がほとんどですが、ある程度時間が経った時(30分位でしたね)
「床下に巣がないか、確認させて欲しい」
 と切り出します。
(etherはこの時、おかしいと思いました。だって1時間経ってないんですよ)
 
 4.何だか面白そうなので(爆)、OKしてみました。
 すると部屋中に「防汚用カーペット」をひき始め、床下へと作業員が入っていきました。
 床下から「蜂の巣はありませんねーーー」と声がします。
 普通は、「ああ安心」と思います。ところがどっこい、つづきがあるんです。
 
「気になる箇所があるので、見ておきますねーーー」ときました。←これがターゲットだと、確信しました。
 
 床下ではもぞもぞと、なにやらやってます。
 かなり体格の良い方が入っていかれましたので、相当窮屈だったと思います。
 
 実はetherは、床下がどういう状況になっているか知ってます。
 車のタイヤや、使っていない工具箱、くぎ、ペンチなど、物置代わりに使っていますから、散々な所です。
(まあ、見させてくれって言うんですから止めませんでしたが)
 ここは狭いとこ、ここは広いとこも分かってますので、狭いところを通っている時に、わざと上を移動したり、(うって聞こえましたが…)物を落としてみたりしてみました。
 
 10分ほどで戻られ、その姿をみて笑いを堪えるのに必死でした。
 小枝や土、泥のまみれで、顔面は真赤々でした。
 普通の業者であれば「配慮」するんですが、この方々は悪徳だと確信してましたので…
「おつかれさま」
 とだけ、言っておきました。
 
 5.床下から戻った方が「床下の映像をカメラに収めたので、見て欲しい」と言ってきました。
 準備万端ですね。さすがです。それでハチの巣を撮影するつもりだったんですよねえって、絶対違いますよね。
 テープの内容は当然、床下の映像なんですが、この映像に写っている「床下の風景」は、ether宅の物(映像)ではありません。
 つまり他所で撮影して、我々に「お宅の床下だ」と言ってるわけです。
 
 業者の映像を信じるのであれば、床下は水浸し、床板の裏はカビだらけで、基礎の土台は崩壊寸前。
 まさに姉歯ってました。
 業者さんは映像を見せながら、
「このままだと危険です。カビを防ぐためにも”消毒”して下さい」
 とここで、メインの商品(?)を売り込んできました。
 もしここでOKしたら、湿気とりの薬剤やら換気扇やらのオールインワンセットを、売りつけられていたでしょう。
 
 ここでetherは、家族の反応を見ました。
 私以外はどうも、すっかり信じているようで、顔面蒼白になってました。
 そこでだますにはまず、身内から。家族もだます事にしました。
 
ether 「これは大変だ。ちょっと〇○さんに話聞いてみないとなあ……。ちょっと話し合いますので今日はご遠慮願えませんか?」
 
 と言って見ました。(注:ハリウッドスター並の演技で)
 
業者 「分かりました。私たち株式会社○○と申します。名刺置いていきますので」
 
 と、ここで初めて業者は名を明かし、すべて撤収していきました。
 
 業者がいなくなった後、家族はまだパニック状態でした。
「ねえーどうしよー、ねえどうする」
 この繰り返しです。
 
ether 「あれ、全て嘘っぱちだから。気にしないの」
家族 「え!?!???、だってあの映像…」
ether 「我が家の床下じゃないでしょ。他の家のでしょ」
家族 「え…………、え!!!、何それ???」
ether 「床板の色、違ってたでしょ。それにいまはパソコンで、何でも出来るし、あんなに水漏れてたら、今頃床ごと抜けてるでしょ」
家族 「…………………」
 
 ちなみに、家族の洗脳が解けるのに一週間くらいかかりました。
 実は家族のケアが、一番大変でした。
 全体の話が長いので、前編は、ここまでにします。
 
 後編(戦闘編)は、また次の機会にお送りします。
 楽しみに待っていてくださいね。

■etherさんから、7回目の投稿です。本当にいつもありがとうございます!
 
■おおお、床下の写真が嘘写真ですか。絵に描いたような悪徳商法ですね。後編が楽しみ(ぉぃ)です。
 
 ところで、一点だけ。
 宇宙服みたいな防護服というのは、どうも対スズメバチ戦ではデフォルトのようですよ。幾つか、蜂防護服メーカーのウェブサイトを見つけたので、ご紹介いたします。
 株式会社ディックコーポレーション
 株式会社倉本産業
 
 と思ったら、「都市のスズメバチ」というサイトの「スズメバチ防護服」というページに詳しく記載されていました。というわけで、そちらに丸投げいたします(笑)。
 
 自治体によっては、スズメバチの駆除に限っては私有地でも無料で行ってくれるというところがあるみたいです。それだけ危険性の高い蜂ということなんでしょうね。
 昔。我が愚弟が小学校の夏休みの自由研究に、昆虫標本を提出したことがありますが、なんとその標本の中にスズメバチが入っていて、友達から英雄扱いを受けていたみたいです・・・。
 スゲエよアンタ・・・。

(2006.3.29)

■と、言うわけで、話の顛末は「「蜂のくれた」物(戦闘編)」へと続きます。悪徳業者の手口や如何に。

(2006.10.23)