22.ウィジャ盤


「この世界と死者の世界との境界付近は、邪悪で精神を病んだ存在のうごめく、ある種のサイキックジャングル、もしくは無法地帯であるように思われます。もし彼らが誰か生け贄を見つけて波長を合わせたなら、その破壊的な性質が生きていたときよりも増幅されて現れるのです。」
イアン・キューリー


ヴィ:ウィジャ盤(日本でいうこっくりさん)は、霊との「訓練のいらない」交信方法として最も広まったもののひとつです。この名前はフランス語とドイツ語の「はい」−oui(ウィ)とja(ジャ)からきています。

 アルファベットと数字、句読点、さらに「はい」と「いいえ」が印刷された平らな板でウィジャ盤はできています。グループのそれぞれがポインターの上に指を軽く乗せると、それはやがて、そこにいる人々が意識している知識には関係なく、急速に動き出し、一連のメッセージを指し示します。合衆国でのウィジャ盤の販売は第一次世界大戦の間に頂点に達し、30年代、40年代、そして60年代には、国中の学生たちがこの「神秘的な話をする託宣者」、ウィジャ盤に熱狂しました。

O:ヴィクター、この話はやめよう。

ヴィ:どうしてです?

O:私はこっくりさん自体は信じないが、その危険性は十分に信じている。

ヴィ:私もその危険性は十二分に指摘するつもりです。

 ウィジャ盤はしばしば、アマチュアが死後の世界を探求する最初の方法として<安易に>使われがちなため、この本の議論に含めることにしました。人々が一定のやり方に従う限り、似たような結果を得ることが望めるという意味で、この現象は科学的だといえます。世界中でたくさんの人々が同じ手順に乗っ取って試し、他と同じ結果−質問に対する知的な答を受けとってきました。当然のことながら、質問する人、質問の内容によって、回答の質は変わってきます。

O:確かにこの現象は科学的に考えることができる。たくさんの精神障害を生んだ事実は残っているからな。君は過去の日本で、こっくりさんに関して何が起こったか知ってるかね。

ヴィ:いいえ、知りませんが。

O:こっくりさんの起源については、1534年生まれの織田信長がやったのが初めてだとか、1884年ごろアメリカ船の乗組員が伝えたものだとか諸説あるが、まあ、そこらへんは研究者たちに任せておこう。とにかく、最初に流行ったのは明治20年(1887年)頃で、このときには特に問題になっていない。しかし、あれはもう20年以上前か、「うしろの百太郎」という漫画が流行ってな。あるときその漫画の中でこっくりさんのやり方を詳しく紹介したんだ。そのときに何が起きたと思う?

ヴィ:おそらく、あちこちのティーンエイジャーたちがおもしろ半分にやって、たちの良くない霊にとり憑かれたりしたのではありませんか。

O:いや。霊などという存在しないものにとり憑かれたりはしないが、奇行に走り、精神病と診断された人たちがたくさん現れた。そのため大きな社会問題にもなってな。あちこちの学校でこっくりさん禁止令が出たんだよ。それにも関わらず、エンゼルさんとかキューピッドさんとか名を変え、やり続ける子供たちは減らず、終いにはこっくりさんリンチ事件も起きた。

 ある小学校にSというとても乱暴者がいて、クラスの他の者たちがその子をどうしたらいいのか、こっくりさんで占なったそうだ。その結果、彼を殺さないとみんなを呪うというメッセージが出て、リンチが行われ、彼の後頭部には後に視力障害が出るほどのけがができた。とにかくこっくりさんは、人間の潜在意識の危険性を証明する重要な証拠で、絶対にやらない方がいい。

ヴィ:正にたちの悪い霊の仕業ですね。

O:だから、霊なんていないって。

ヴィ:私もこっくりさん、いや、ウィジャ盤という西洋の名前に戻しましょう。このすべてが霊の仕業だとは言いません。しかし、無視できないパーセントが明らかに心霊現象として位置づけられます。

 超能力者や経験豊かな霊媒たちは、霊との交信が実在することを信じていて、ウィジャ盤に答えてくるのは色々なレベルの、人間やそれ以外の霊で、大抵は我々の「波長」に近い、一番レベルの低い存在が交信してくると言っています。交信がより洗練された存在から来るときは、応答も通常は洗練されています。洗練されていない、非常に低いレベルの霊から来る情報は、通常、地球にいる野卑で、教養がなく、愚かで横柄で、周りの人たちを傷つけるために悪口を言うような人が口にする言葉と同じです。

 初期の頃、これらのメッセージは単に「プレーヤーたち」の潜在意識か無意識が生み出す「自動作用」の結果だというのが、物質主義者たちの公式見解でした。ウィジャ盤がアメリカ合衆国のおもちゃ売場で売られていたときには、人々はそれを「娯楽」として、ときには単に賭け事に勝つための数字を得るなどの個人的利益のために、これを使う傾向にありました。

 けれども、このようなごく普通の標準的な人々がウィジャ盤から受けてきた、冒涜やのろい、他のありとあらゆる恐ろしい脅迫の言葉は、無意識の産物として生まれるメッセージとしては極めて異例のものであり、すべてに反論しようとする人たちもこの事実を説明できませんでした。

 ウィジャ盤の影響を研究したストーカー・ハントは、操作者と「力」との間に発展する交信について、その共通パターンを要約してます:

「侵略者は、犠牲者の性格の弱点を突いてきます。・・・もしうぬぼれの強い人がいれば、その虚栄心に訴えかけます。『あなたの助けが必要です』 そう言った誘惑者はさらに続けるでしょう。『私を助けられるのはあなただけなのです』・・・その存在には悪意があり、平気で嘘をついたり、自分の身を偽ったり(通常は亡き愛する人をよそおう)、お世辞を使ったりします。犠牲者が一人で孤立し、疲れ切って病気になっていた方が、侵略者にとっては都合がよいのです。」

 そのため、存在は犠牲者に親友を捨てさせ、ウィジャ盤とだけ相談し、助言を受け交流を深めるようにしていきます。最後に、犠牲者はウィジャ盤を使いたいという思いの虜になるか、四六時中、昼夜を選ばずに自動書記を続けるようになります:

「侵略者が犠牲者を怖がらせる必要があるときには、ぞっとするような形で実体化したり、奇怪な幻覚を誘発し、ポルターガイスト現象を扇動して、だしぬけに物体を現われさせ、嘘や悲劇的なニュースを届け、物体を空中に浮かばせ、ときには犠牲者をも空中に浮かばせたりします。これらすべてのこと、もしかしたらそれ以上のことが起きるかもしれません。しかもこれらの出来事は彼らの最終目的ではありません。これらは侵略者が最終的に、完全に憑依するための手段なのです。」


O:ちょっと聞き捨てならない言葉があるな。なんだと。だしぬけに物体を現われさせたり、空中に浮かばせ、ときには犠牲者をも空中に浮かばせたりします? ウィジャ盤をやっているとそんな経験ができるのか。私もやってみようかな。

ヴィ:そうやって興味本位でやった人たちが悲惨な目にあったのは、教授も言っていたことじゃないですか!

 世界中の霊媒たちからくる首尾一貫した報告によれば、地球に最も近い、より低い波動の領域−しばしばアストラル界下層と呼ばれる領域−で死後の生活を絶望とともにおくる人々は、地球に住んでいる人たちをものすごい嫉妬の念で見ています。

 彼らは、地上では容易に波動を上げることができるのに比べ、自分たちがいる霊界の下層領域では、それが非常に難しいことを知っています。しかも、地上にいたときに楽しんでいた事柄−興奮させる刺激、飲酒、アルコール、喫煙あるいはセックス−を経験できないため、絶望は頂点に達します。もしウィジャ盤に反応している洗練されていない存在たちが、愛を受け入れることができれば、もしくは優しい考えとか、その他の前向きでスピリチュアルな特質を持っていたなら、彼らが現在いるようなところにはいなかったでしょう。また、他界の存在からの情報によれば、彼らにその悲惨な状況から救いを求めるだけの度量があれば、助けが与えられたことでしょう。

 ラザロの「The Case Against Death(死に反する事例)- 1993」には、多くのEVP実験者が、このレベルの存在たちからくる猥せつな言葉や不吉なささやき、ときには完全に敵意を持った調子で話す声を録音してきたと書かれています。

 あなたが霊魂仮説と潜在意識仮説のどちらを受け入れようと、ウィジャ盤で遊んだ直接の結果として精神的な病に陥った事例がたくさんあるという事実は、真剣に受けとめられなければなりません。ウィジャ盤は非常に危険なものとなり得ます。特に、とても暗示にかかりやすい人、情緒的・肉体的な不安を持つ者、ドラッグを常用してきた人、などは絶対に手を出すべきではありません。専門家たちは、子供や、大人でも自己をしっかりと確立していない人たちは、どんな状況であってもウィジャ盤をやるべきではないと助言しています。

 アメリカの精神科医カール・ウィックランド博士は1924年に、精神的な病に関しての古典的な本「Thirty Years Among the Dead(死者に囲まれた30年)」を書き表しています。その中で彼はこう警告しています;

「よく知らずに心霊実験を行った際に見られる、深刻な孤立感と精神錯乱が、まず私の注意を引きました。一見無害な自動書記とウィジャ盤を経験することで、人によっては精神病院に収容せざるを得ないほどの、あれほどの狂気が生み出されるとは・・・。無邪気な玩具だとされているウィジャ盤の使用後に引き起こされた、多くの悲惨な結果が、私を心霊現象の研究へと駆り立て、これらの妙な事象に対してどのような説明が可能なのかを調査させることになったのです。」


 ウィックランドは、完全に昏睡状態になって体を明け渡すことのできる霊媒(彼の妻)が、患者を支配している霊を引き受けることによって、精神異常と診断されたものの多くを治癒できることに気付きました。彼は、こうした存在たちのほとんどは、自分たちが死んだことに気づかず、死後の世界に対する何の知識もなく、一種の薄明のような状態に漂っている事実を発見しています。他界にいる、より進化した知的存在たちの力を借りながら、彼はその存在たちに、自分たちを魅了して引きつける光、つまり患者のオーラから離れるように説得してきました。

 ヒュー・リン・ケイシー、有名なアメリカのサイキック、エドガー・ケイシーの息子である彼は、ウィジャ盤に関して否定的な事例記録をたくさん持っています。彼の「Venture Inward(内への冒険)- 1964」には自動書記とウィジャ盤の章があり、そこで彼は、この二者を試みたために極度の困難に陥る人々についてこう述べています;

「不幸なことに、これは珍しくないことなのだ。さらに恐ろしいのは、世界中の精神病院で、現在いる患者の記録から、何千と同じ事例を見つけることができることだ。」


O:ヴィクター、ちょっと待った。

ヴィ:はい?

O:ウィジャ盤の危険性はいい。それは私もよくわかっている。しかし、ウィックランドの治療法がちょっと気になるな。

ヴィ:ああ、彼の奥さんに憑依させて直すやり方ですね。

O:憑依っていうのは要するに、患者の症状がその奥さんに移るということなの?

ヴィ:正にその通りです。そして、その症状が転移した奥さんに対して治療を行うことによって、患者も奥さんも症状が治る、つまり霊から解放されるのです。

O:霊だとかいう世迷いごとはおいとくとして、実際、本当にそんなことが起きたら、精神科医の歴史に残る偉業だよ。で、どんなトリックだったの?

ヴィ:トリックなんかではありません! この本は「精神科医ウィックランド博士の迷える霊との対話」という題で日本語でも出ていますから、是非読んでみてください。

O:迷える霊? いきなり読みたくなくなるようなタイトルだな。本当に読む価値あるのかね〜。

ヴィ:ウィックランド博士は超心理学的な、厳密な調査方法を取った人ではなく、あくまでよりよい治療を目指す立場から体験した事柄を書いた本なので、厳しい目を持った人からすればいくつかのアラが見えてくるのは否めません。それでも、これだけの実体験資料はそうそうありませんので、私は読むことをお勧めします。

O:そう。じゃあ、君が貸してくれたら読んでみよう。

ヴィ:でも私は日本語の本を持っていないのですが。

O:日本人を説得しようと言うのなら、日本語の本のひとつやふたつは持たなくちゃならんだろう。

ヴィ:(なんでわざわざ教授のために6000円もする本を! 私は原書を持っているのに!)そうですか。それでは近々、教授のために購入させていただきましょう。そろそろウィジャ盤に話を戻します。

 イギリスのサイキック研究大学の会長であるパウル・ベアードは、ウィジャ盤が原因となった憑依事例を多数研究し、ウィジャ盤や自動書記の習慣化は悪意のある死者との長期的な交信を確立し、犠牲者たちのオーラは死者に冒され、彼らの話を「声」として、また頭に浮かぶ「思考」としていつでも受けることになると結論しています。これは「幻覚を伴うかもしれない、ほとんど絶え間ない悪への誘い」になり得ます。イアン・キューリーは、自分の赤ん坊を責めたてて殺してしまう、鮮明な幻覚を見せられた若い母親の事例に言及しています。

O:本当に恐ろしいもんだな。

ヴィ:そうです。安易に霊と交信しようとするのは非常に危険なことなのです。

O:いや、私が言っているのは潜在意識の恐ろしさだ。そんな風に鮮明な幻覚を見せられたら、それだけで心がまいってしまうだろうな。下手すると、その幻覚通りに実現してしまうかもしれない。本当に人間の精神というのは不思議なものだ。

ヴィ:では教授、潜在意識が未来を予測したりするのでしょうか。次の例を考えてみてください。

 マーティン・イーボンは「The Satan Trap(サタンの罠)- 1975」で彼の悲惨な経験を概略しています。彼は、オカルトに関するものはすべて懐疑的に考えていたのですが、1973年のニューヨーク洪水が正確に予測され、有名なゴシップ記者の死について正確な「内部」情報が与えられたとき、ウィジャ盤に病みつきになってしまったと主張しています。

 また、数年前に私は、賭事に勝つためにウィジャ盤を使っていた若者の重要な事例に出会いました。彼はしばらくの間実際に勝ち続け、この新しい「友人たち」によってもたらされる情報に驚喜していました。けれども、ウィジャ盤をやめようとした彼は見えない声にとり憑かれ、深夜の1時や2時にものすごい恐怖と共に目覚め、完全に震え上がり、これが見返りだと訴える復讐心に燃えた存在に息の根を止められそうになったのです。

 こういった事例も潜在意識で説明するのでしょうか?

O:どっちも単なる作り話だろう。

ヴィ:どうしてもっと建設的に、科学的に話せないのでしょう。

 とにかく、私は自分自身の経験から、ウィジャ盤を「安全に」使うことができるという保証はどこにもないのだということを強調しておきます。ウィジャ盤と遊んでいた11歳の少女が、13歳で死ぬと予言された件を考えてみてください。彼女の性格はまるで変わってしまい、2年後にウィジャ盤が間違っていたと知るときまで、家族と共に憂鬱な恐怖の日々を過ごすことを強いられるようになったのです。

 それでも、経験豊かなサイキックたちがウィジャ盤の脅威を警告し、そこに現れる交信相手のほとんどは、絶対にその主張通りの存在ではないと指摘する一方で、ウィジャ盤を通して有益で建設的な長期に渡る交信を実現した人たちも少なくありません。

 ウィジャ盤から発展したポジティブな事例の中でも特に素晴らしいのは、1912年7月12日に隣人と一緒にウィジャ盤を試みたパール・カランの件です。何年かの実験の後に、彼女はペイシェンス・ワースと名乗る、1649年にイギリスのドーセットシャーで生まれたと主張する霊のメッセージを受け始めました。

O:ほう。そこまで生年と場所を特定するからには、そのような人物が存在したことの裏はとれているんだろうね。

ヴィ:ええ。家や環境に関する供述のいくつかは実証されています。このパール・カランとペイシェンス・ワースの事例を研究した人たちが書いた本が何冊か出ていますが、その中でも一番有名なのはウォルター・フランクリン・プリンスが書いた「The case of Patience Worth(ペイシェンス・ワースの事例)- 1927」でしょう。

 プリンス博士は懐疑的な心霊研究家として知られ、とくに偽の物理心霊現象のトリックを見破ることにかけては当代随一でした。その彼はペイシェンス・ワースの事例を調査した結果、これを説明するには、従来の潜在意識の概念を根本的に変更するか、潜在意識を通じて作用する何らかの外的要因が存在することが認められなければならないと結論しています。

O:ふん。全くの嘘でもないようだな。で、そのペイシェンス・ワースの名前でどんな通信が送られてきたというんだ。

ヴィ:1912年から1919年までの間、彼女はウィジャ盤を通して後期中世英語を用いながら5百万の単語―エピグラム、詩、寓話、短編小説、本格的な長編小説―を伝えてきました。彼女の作品は4375ページに及び、全29冊にまとめられています。本格的な5冊の長編小説の中でも最も成功したのは、ワシントン大学の歴史学教授アシャー博士によって「福音書が書かれて以来最高の、キリストの生涯と時代を書いた物語」と表された作品「The Sorry Tale(悲歌)」でしょう;

「この長く複雑な物語は、キリストの当時のユダヤとローマの生活を、完璧に正確かつ緻密に描いている。本当に素晴らしく、美しい高貴な本だ(ニューヨーク・タイムズ 1917年7月8日)。」


 ペイシェンス・ワースはまた、2,500以上の詩を書いています。彼女は、4万人の競争者がそれぞれ複数の詩歌を提出した、国が主催するコンテストで優勝しました。彼女の詩は、毎年発行されるアメリカで最も名誉ある銘詩選集に定期的に載っています。

 彼女の最も偉大な崇拝者の1人に、第一回のピュリッツァー賞詩歌部門の選考委員だった、出版業者ウィリアム・リーディがいます。彼はパールの家に定期的に訪れ、彼女の詩についてこんな言葉を残しています;

「とても魅惑的で美しく、たぐいまれな精神の昂揚を促し、哀愁と悲哀を含んでいる。シェークスピアやスペンサーほどではない。チョーサーと比べても、やはり若干落ちるだろう。しかし、この詩がウィジャ盤を通した知的存在から来るものであろうと、他の何かの説明がつくのだとしても・・・これは我々が定期的に銘詩集としていくつかの雑誌に載せてきた詩よりもいいものだ。」


 さて、ここで教授にお聞きしたいのですが、旅行をしたことも本を読んだこともほとんどない、教育もわずかしか受けていない、そのようなカラン夫人の頭の中に、彼女自身もろくに理解できない古い英語を用いた第一級の文学作品を生み出すほどの潜在意識が眠っているというのでしょうか。

O:信じられないけれど、ヴィクターが嘘をついているのでなければ、やっぱりそういう結果になるだろう。

ヴィ:潜在意識というのは便利なものですね。それにしても、過去に実在した人を装うのはなぜなのでしょう? これもテレパシーで説明しますか。その際には、ペイシェンス・ワースはとうの昔に亡くなっていて、その記憶を持っている人もほとんどいなかったことを頭に入れなければなりませんね。

O:結論を急ぐんじゃない。確かにこの事例が本当に起きたとしたら、そう、<本当に起きたとしたら>、テレパシー説を若干拡張しなければならないだろう。ただし、この一例だけでは信じられないというのが本音だな。

ヴィ:もうひとつ、ウィジャ盤交信で現れた文学的な存在にセスがいます。ジェーン・ロバーツと彼女の夫が1963年にウィジャ盤を使い始めたとき、ある存在が出てきました。四回目に交信を試みたとき、その存在は自分の名を「フランク・ウィザーズ」と名乗り、一番最近は英語の教師として地上での生活を送り、1942年に亡くなっていると伝えてきました。後に彼は「セス」と呼ばれる方を好むと言い、自分は人々が現実をよりよく理解できるように手助けするための特別な使命を持っていると説明したのです。

 ジェーンを通してセスは、現実の本質、輪廻転生説、夢、体外旅行、神の本質などを取り扱った数冊のベストセラーを生み出しました。彼は瞑想とESP(超知覚)の開発について、順を追ったアドバイスを読者に提供しています。彼は病気を診断し、何キロも離れたところにある建物や部屋の中身を正確に記述して、照明の整った環境で幻像として出現しています。

O:ヴィクター、君はそんなあやしげな情報を信用するのか。ペイシェンス・ワースの場合には調査報告その他の資料がたくさんありそうだった。しかし、これは何だ。あやしげな夫婦が救世主を装ってろくでもない本を書いただけじゃないか。

ヴィ:ジェーン、いや、セスの本は若干邦訳されています。残念ながら彼女は1984年に亡くなりましたが、夫のロバート・バッツ氏は健在です。教授、お疑いなら彼に会いに行ってみたらどうです。

O:私はそんなに暇じゃない!

ヴィ:それでは、こんな人はどうでしょう。ウィジャ盤とともに文学的で創造的な関係を発展させた人間はこのほかにもたくさん存在し、「The Changing Light at Sandover(サンドーヴァーの変化する光)- 1982」でピュリッツァー賞を受賞したジェームズ・メリルもその一人です。

 ピュリッツァー賞だけでなく、ハリット・モンロー賞、全米図書賞、ボーリンゲン賞、全米批評家賞、国会図書館設定の第一回ボビット全米詩賞など、多数の賞を受賞してきた彼の詩作の中には、自身の恐ろしい経験(幻覚、肉体の変容、体を乗っ取られそうなほど強力な霊)と同様に、ポジティブで喜びにあふれた経験が鮮やかに描写されています。それでも、30年以上ウィジャ盤を使い続けた後、メリルは次の言葉と共に、まわりの友人たちに対してこれを絶対に使わないように勧めたのです;

「ある人がどれだけ(ウィジャ盤から)影響を受けやすいかを事前に見極めることは、誰にもできない。」


O:ヴィクター、私はこう思うよ。

ヴィ:どうぞ、続けてください。

O:芸術なんてのは結構神憑りなもんだ。そのアイデアを得るのにウィジャ盤を使おうが使うまいが関係ない。アイデアに困った作家が交霊術に走って、たまたまいい発想を得たとしても、それはそれでいいじゃないか。

ヴィ:教授は現実を見ようとしていません。私が論じた内容の、自分に都合のよい部分だけを取りだそうとしています。セスのシリーズを書いている彼女は、詩を書いている時に自分の手が勝手に動きだし「観念構築体としての物理的宇宙」という表題に始まる、自分の持つ知識からかけ離れた文章が生み出されました。その体験をきっかけにウィジャ盤を用いた実験を始め、最終的にセスシリーズが生まれたのです。カラン夫人は著述業とは全く関係ない、職業霊媒でした。

O:まあ、初めに試みたときにその人がすでに作家であったかどうかは問題じゃない。要は、ウィジャ盤は隠れた文学的才能を潜在意識から引きずり出す可能性がある、とこういうことだろう。

ヴィ:どうしてそのような結論でこの章を締めくくることができると思えるのでしょう。私は個人的に、ウィジャ盤を用いた交信が他の、第一級の霊媒や電子機器、その他を通じて得られる交信と同種のものであることに脅威を覚えます。そして、これらの交信相手として考えられるのは、霊しかあり得ないのです。ウィジャ盤は我々が死を越えて生き残ることを指し示す重要な証拠のひとつとなり得ます。

O:まっ、そこらへんは、近いうちに別の説明を考えてあげるよ。

ヴィ:そうですか。それでは期待させていただきましょう。

弁護士の論じる死後の世界


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