17. 反論しようのない証拠− 交叉通信


「死後の生の現実性を今まででもっとも確信させてくれる証拠が、ついに紙の上に書き表された。」
コリン・ウィルソン


ヴィ:「マイヤーズの交叉通信」は今や死後生存の古典的証拠となり、たくさんの人がその影響の下に死後の生を認めざるを得なくなりました。交叉通信を深く研究した人に、それまではこの世の生活のことしか考えていなかったコリン・ブルックス-スミスがいます。研究後、彼はSPRの研究紀要の中で、死後生存は十二分に確立された事実であり、分別のある人ならそれを否定できないことがわかるだろうと述べています。彼は更に、この結論は研究記録の片隅に追いやられるべきではなく、人類が真っ先に受け取らなければならない記念碑的な科学的結論として大衆に公開されるべきだと論じているのです。

O:またおおげさに構えてきたな。これはいつ頃の話なの?

ヴィ:20世紀の初めに30年間ほど続いた研究です。

O:そして50年以上たった今でもこの出来事は大衆に知らされていない。つまりは大衆に公開するほどの情報じゃなかったんだな。

ヴィ:いえ。今までに日本語でも何回か、これを扱った書籍は出ています。しかしながら、悲しいことに、交叉通信を取り上げるようなまじめな心霊書はすぐに絶版になってしまい、なかなかたくさんの人には行き渡らないのです。

O:ふーん。じゃあ、この本も、やはり真っ先に絶版になるのかね。

ヴィ:我々は興味本位ではないまじめな心霊研究書が、すぐに絶版になってしまわないような社会を作らなければなりません。

O:はいはい。ご自由に作りたいだけ作って、と言うしかないな。まじめで内容のない本よりは、作り物でもたくさん怖がらせてくれる本の方が、私は好きだよ。

ヴィ:せっかくテレパシーを認めても、超常現象をばかにした態度は変わらないのですね。

O:勘違いしちゃ困る。私はテレパシーの存在を認めたわけではない。ただ、テレパシーの仮定が妥当性を持つのを認めただけだ。ほかにもっとよい仮定があるのなら、いつでもそれに乗換えるよ。

ヴィ:死後生存こそが、すべての現象を説明する「もっとよい仮定」なのですがね。まあいいでしょう。交叉通信の話を続けます。

 フレデリック・W・H・マイヤーズは19世紀の終わり頃の人で、ケンブリッジ大学の古典の教授です。SPR(イギリスサイキック調査協会)の設立者の一人として彼は、当時の心霊研究に巻き込まれていました。彼が生前に一番興味を持っていたのは、霊媒を通じて送られてくる情報が、彼らの潜在意識と関わりがないことをどうやって示したらよいかということでした。彼が考え出した方法が交叉通信です。この交叉通信とは、異なった地域に住むそれぞれ違う霊媒が受けとる、単独では意味を持たず、一緒にしたときに初めてその内容がわかるような切れ切れのメッセージのことを指します。彼とSPRの指導者たちは、この通信が実現されたら、死後生存を指し示す極めて水準の高い「立証可能な価値」を持つ証拠に成り得るだろうと感じていました。

 彼が1901年に亡くなると、各国の別々の霊媒たちが自動書記によって、フレデリック・マイヤーズとサインされた不完全な一連のメッセージを受け始め、後にはSPRの同僚であったヘンリー・シジウィック教授、エドムンド・ガーニーの二人も、それぞれの死後にこの動きに加わりました。

 書き出された内容はすべて、あまり世に知られていない古典文学に関する事柄で、単独では意味をなしません。しかし、霊媒たちが連絡をとるように言われた住所にその通信が集められると、それらはジグソーパズルのように組み合わさったのです。30年以上にわたって3000件以上の通信が送られてきました。その中には40ページ以上に及ぶ長いものもあります。

 他界のマイヤーズとその他の者たちによって使われた霊媒たちは、古典文学の専門家ではありません。彼らは高い教育を受けておらず、送られてきたメッセージは完全にその知識と経験を超えています。

 あるとき、霊媒クーム‐テナント夫人の「自動書記」を通じて、霊となったシジウィック教授と存命中の同僚G・W・バルフォアが「精神=肉体関係における付随現象説と相互影響論」について、意見を戦わせました。夫人は彼らがやりとりしている事柄について全く理解できないと不満をあらわにし、このような難しい事柄が自分を通過して送られてくるという状況に堪えきれず、ついに癇癪をおこして叫んだのです。

「どうしてこんなくだらないことばかり話し合っているのかしら!」


O:思い出した。昔、この手の内容を書いた本を読んだことがあるな。そこでは、それぞれの通信は何らかの関連性があるように見えるが確実な証拠とするのには弱い、とか書いてあったように思うんだが。これは私の記憶違いかね。

ヴィ:この通信に関する資料は、全24巻、それぞれ500ページほどの本としてまとめあげられ、世界で13部あります。そしてその中には、確かに整合性が悪いと思える内容もあります。これについて故マイヤーズは、霊媒を通じて霊界からメッセージを送るのは非常に難しかったと述べ、こんな言葉を送ってきています:

「・・・いやいや仕事をしている血の巡りの悪い秘書に、音の通りが良くないすりガラスの向こうから指示を与えているようなものだ。」


O:そういうのは、人をごまかすための言葉にしか思えないぞ。

ヴィ:いえ、私が言いたいのは、そのようなあいまいな通信もある一方で、大部分はちゃんとした整合性を持った通信だったということです。この資料には、第一級の頭脳と十分な時間を持った古典文学の学者だけが取り組むことができます。そして、交叉通信の資料はもうすでに徹底的に調査されたのです。

 このマイヤーズの実験によって送られてきた情報はとても正確で、SPRのメンバーたちを驚愕させました。

 マイヤーズによる交叉通信の調査の一段階において、この実験に巻き込まれていた霊媒の一人であるパイパー夫人を監視するために私立探偵が雇われました。手紙は開封され、私立探偵が尾行し、彼女がどのような友人を持ち、何を話しているのかが調べ上げられたのです。その結果、彼女が詐欺とは無関係であり、トリックをもくろんでなどいないことが証明されました。

 また、1956年にクーム‐テナント夫人が81歳で他界すると、彼女の人生を驚くほど正確に描写した回顧録が、彼女の生前のペンネームであるウィレット夫人の名の下に送られてきました。それを受け取った霊媒は、彼女はもちろんのこと、その子供にすら会ったことのない霊媒、ジェラルディーン・カミンズです。この手記は「黒海の白鳥」の題で出版され、コリン・ウィルソンを含む多くの人から、今まで紙に書き表された他界の実在性を指し示す文書の中でも、もっとも説得力あふれるものとして知られています。

 以前は懐疑主義者で、世界的な評判を持つ著述家でもあるコリン・ウィルソンは、交叉通信を調べた後に、こう書いています;

「総体的に見て、交叉通信とウィレット文書は死後の生に関して現存する、もっとも有力な証拠であるといえます。誰でも数週間をかけてこれらを研究すれば、マイヤーズとガーニー、シジウィックが肉体的な死を超えて交信してきたことを、明白な事実として確信するようになるでしょう。」


 マイヤーズの交叉通信は実験科学の手法を用いて、霊媒に送られてくる情報が自身の潜在意識とは関係のないことを示すのに成功したのです。

O:ヴィクター、交叉通信に関していくつかわからないことがあるんだが。

ヴィ:どうぞ。

O:まず、交叉通信の内容は、第一級の頭脳と十分な時間を持った古典文学の学者だけが取り組むことができると、そう言っていたな。

ヴィ:はい。

O:SPRには古典文学の権威が何人もいたのかね。

ヴィ:それなりにいましたよ。

O:交叉通信に関わった霊媒で、生前のマイヤーズを知っていたものはいるのか。

ヴィ:います。教授、何を言いたいのです?

O:なるほど、それでわかった。この件もテレパシーで説明できるな。

ヴィ:素晴らしいですね。是非、説明してみてください。

O:マイヤーズが亡くなったとき、霊媒たちの、彼からの通信を受けたいという思いは自然発生的なテレパシーとなって、同じくマイヤーズのことを考え続けていた古典文学の学者たちの心を読んだ。霊媒たちはその内容をマイヤーズからだと信じ、無意識のうちに彼の名を、通信の最後に付け足すこととなった。そうして出来上がった切れ切れの文章が、マイヤーズと彼のやろうとしていた交叉通信に極めて好意的な学者たちによって、あたかも整合性のある文章のように記録されていった。大筋としては大体こんなところじゃないか。

ヴィ:マイヤーズのことを全く知らない、しかもイギリス以外に住む霊媒たちも通信を受け取っているのですが。彼らが最初に受けた通信には、最後にこんな文章がありました。

「これをケンブリッジ、セルウィン・ガーデンズ5のヴェロール夫人に送って欲しい。」

 
 実際これは、夫人の正確な住所で、これを受けた霊媒はヴェロール夫人の名前くらいは知っていましたが、その住所など全く知りませんでした。

O:もうこれでわかったじゃないか。そのヴェロール夫人がこの茶番劇の主犯だよ。霊媒は一般的に、普通人の何十倍ものテレパシー受信能力を持っているだろう。その彼らの中に、送信にも優れた人たちがいてもおかしくない。つまりは、ヴェロール夫人が他の霊媒にテレパシーを発信し、マイヤーズが生きているように見せかけたんだ。

ヴィ:この夫人は一流の古典学者だったので、SPRにも疑われていました。しかし、1916年に彼女が亡くなってからも交叉通信は活発に続いたので、この説は消えています。

O:そうか。まあ、詳しい事情を検討してみないとはっきりとは言えないが、交叉通信が基本的にテレパシーで説明できるのは確かだろう。

ヴィ:じゃあ、もっと身近な話題を扱った交叉通信で、その背後に確実にある故人の知性がうかがえる例を紹介しましょう。

 世界的な物理学者オリバー・ロッジ卿は、霊媒を通じて戦死した息子レイモンドと何度も会話を続け、その記録を一冊の本「Raymond(レイモンド)- 1916」にしています。以下は、その本に書かれた自然発生的な交叉通信の例です。

 ―9月の末(レイモンドは9月中旬に戦死した)の交霊会で、霊媒ピーターズ氏は次のように言った。

「二枚の写真がある。一枚は彼(レイモンド)一人の写真だが、もう一枚は大勢で撮った写真だ、後の写真のことをあなた(ロッジ)に話すように、彼はうるさく私にせっついている。死ぬ少し前に撮った写真だといっている」


 この写真のことは、ロッジも家族もまったく心当たりがなかった。それに、今の指摘だけではどんな写真かよくわからない。しかし、11月29日にロッジ夫人の元へ思いがけない手紙が舞い込んだ。差出人はシェバ夫人という人で、この人の息子は、前線でレイモンドと一緒だったそうだ。手紙にはさらにこう書いてあった。

「息子から、8月に士官たちが前線で撮った写真が送られてきました。この写真について貴女はご存じかどうか知りませんが、もし必要なら焼き増しして郵便でお送りいたしましょう。」


 ピーターズ氏がいったのは、この写真のことだったに違いない。しかし、こんな写真があること自体、ロッジの家族は全く知らなかったのだ。

 シェバ夫人からの焼き増し写真はすぐには届かず、ロッジはもう一人の霊媒レナード夫人に交霊会を依頼した。写真がどんなものなのかを、それが届く前に詳しく、亡きレイモンドから聞いておこうと考えたのだ。ロッジは、レナード夫人を通じてレイモンドに尋ねた。

「私たちは、まだ写真を見ていないが、レイモンドはこの写真について何か話したいのか?」


 霊媒の口を通じて、レイモンドが話した写真の内容は、次のようなものだった。

「写真には一人や二人でなく、もっと大勢の人間がうつっているが、全部が友人ではない。知り合いも、名前だけ知っている者も、名前も全然知らない人間もまじった‘まぜこぜの’士官たちだ。C、Kなどの頭文字の者もいるが、Bが一番目立つ。自分がステッキを持っていたかどうか憶えていない。憶えているのは、誰かが自分の肩に寄り掛かろうとしていたこと。でも、寄り掛かったまま写真にうつっているかどうかまではよく憶えていない」


 さらに霊媒は、ロッジがいくつか質問すると、それに答えていった。

「戸外で撮影したのか?」とロッジが聞く。
「たぶんそうだった」
「前線の待避基地みたいなところか?」
これには霊媒が答えた。
「何か黒っぽい背景の所のようだわ。そして背後には、垂直の線があったようね」
こういった時、霊媒はトランス状態の中で、両手で垂直の線を空中に示す格好をした。

 12月6日になって、レイモンドの軍装が前線から送り返されてきた。そして、その中にあったレイモンドの日記に、「8月24日写真撮影」と書いてあるのを、ロッジ夫人は発見した。12月7日になって、シェバ夫人から、写真を別便で送ったとの手紙がくる。ロッジはこのとき急いで、霊媒の口を通じてレイモンドが話した写真の内容を文書記録に書きあげた。そしてそれを、内容証明郵便の書留で、SPRの事務局長あてに送ったのが7日の昼頃だった。内容証明郵便にしたのは、この郵便の内容や、それを送った日付、時間を郵便局の公印によって証拠立てるための用意であった。シェバ夫人からの写真は、まだロッジ家に届いていなかった。写真は12月7日の夕方、ロッジ家に郵送されてきた。――

 レイモンドの本にはそのときの写真が載っていて、彼の言葉として伝わってきた通信がいかに正確だったか、誰にでもわかります。そして、これはレイモンド以外には、ロッジ家の家族の誰も知らないことだったのです。「一番目立つ人物はB」とレイモンドは言いましたが、右端に立って一番光を強く受けている人物がボエスト大尉だということが後の調査でわかっています。頭文宇は確かにBです。

 この写真の存在は、初めピーターズ氏から指摘され、写真の具体的な内容については、ピーターズ氏とは関係のない別の霊媒レナード夫人の口を通じて話されています。

 さて、この件もすべてテレパシーで説明しますか。

O:テレパシー以前に、ロッジ夫婦とその二人の霊媒がでっち上げた話だと思えるが。

ヴィ:写真の内容は、その到着以前に文書にして、すでに外部に郵送されていたのですよ。

O:内容を発送した時間は証明できるとしても、写真が配達された時間が確実にその後だと証明できるのか? まあでも、百歩譲ってこの話が本当だとしよう。その場合は例えば、前線で一緒に写真を撮った誰かが、何とかして遺族にレイモンドの死を伝えたいと思い、その思いをピーターズ氏がキャッチした。そしてその内容を調べたレナード夫人は、やはり前線の誰かからその情報を読み取ったのだろう。

ヴィ:はあ、ついこの前までは超常現象を何も認めなかった人が、今度はすっかりテレパシー信者になってしまいましたね。

O:私も認めたくなかったが、誰にでも微弱なテレパシー能力があることは、超心理学においてはすでに常識に成りつつあるのを前から知っていた。何も、昨日や今日、テレパシーの可能性を考え出したわけではない。

ヴィ:それでは、これからは少し別な方面から攻めてみましょう。次は、誰でも体験する可能性のある体外離脱を扱います。

弁護士の論じる死後の世界


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