16. 懐疑主義者たちを困惑させる現代の霊媒


「エジソンと私は、心霊の分野を研究することによって、人間の一生を考える上でとても重要な事実が明らかになっていくだろうと確信していました。その発見は、我々が電子工学の分野で作ってきたどの発明よりも重要になるはずです」
エジソンの助手、ミラー・ハッチンソン博士


ヴィ:さて、教授。今まで色々な霊媒を紹介してきましたが、これらの霊媒に対する教授の意見を聞かせてください。

O:まず気になるのは、君の提示してきた資料が基本的に古すぎることだ。まあ、ちょっと新しいレスリー・フリントというのが出てきたが、彼自身の書いた本を参照して、ものを話されたのでは信憑性がない。もっとほかにも現代の霊媒はいないのか。

ヴィ:もちろんいます。例えばアメリカのジョージ・アンダーソンとか。

 ジョエル・マーティンは放送業界の人間で、自身がホストを務める著名な番組の中で多くの超能力者やニューエイジ関係の人々にインタヴューをしてきました。1980年にアンダーソンを呼んだ彼は、一分でジョージ・アンダーソンを詐欺師だと暴いてやると豪語しています。しかし、アンダーソンはマーティンに関する物事を、正確に話し始めました。

 マーティンはすぐに、昔からの同僚に連絡をとりました。ステファン・カプランは世界的な評判を持つ超心理学者で、マーティンは彼のことを「今まで会ったどんな人よりも懐疑的だ」と評しています。カプランは公衆の面前で詐欺を暴くことに喜んで同意しました。彼は、20世紀にはエドガー・ケイシー、アーサー・フォード、ブラジルのアリゴーなどの恵まれた霊媒がいたことを信じるが、今まで出会ってきた霊媒のほとんどは詐欺師かマジシャンで、公開のテストでは結果を出せなかったと言ってきました。

 マーティンはその友人が、アンダーソンに名を名乗らずに長距離電話をかけるように手配しました。カプランの「ハロー」という声を聞くか聞かないかのうちに、アンダーソンは電話の相手がどのような人か、マーティンに対して正確に説明し始めました。カプランはこの件でジョージを本物と認め、マーティンにもっと色々なテストをするように励ましてきたのです。

O:これくらいで信用してしまう人が、何で懐疑的と言えるの? こんな世界的に有名な超心理学者の詳細を、電話がかかってきたと同時に言うのは、私でもできそうだぞ。

ヴィ:なるほど。マーティンにはカプランという友人がいて、それがどのような人かという情報を前もって調べておくことは確かに可能でしょう。でも、電話をかけてきたのがカプランだとどうしてわかったのでしょう。

O:一度聞いた声は忘れないという、音声認識と記憶力に異常に優れた人がアンダーソンだったのかもしれないな。

ヴィ:その言葉は、これを聞いた後では言えないでしょう。そこから7年にわたって、マーティンはテレビとラジオの生放送内で、何千もの全く知らない人々に電話をかけてもらいました。かけてきた人には何も言わせずにアンダーソンにリーディングをしてもらいます。その後は、それが本当かどうか確かめるスタッフが電話口の相手を確認して調査に入ります。この手順によって、ジョージ・アンダーソンの語る情報―電話をかけてきた人の名前、ニックネーム、その人の親しい故人がどのように亡くなったか、これからの健康的な問題についての正確な予測、などなど―には、86%から95%の精度があることがわかったのです。
 
 彼が間違ったのは、ほとんどが未来予測です。また、結婚相手以外との情事や妊娠中絶の詳細に関しては、それが当たっていても、言われた人が真実だと認めなかった可能性もあります。

 マーティンは自動車事故で亡くなった少年の七人の家族に、それぞれの名前を告げずに4回にわけて来てもらい、アンダーソンの話す情報に矛盾が生じないかどうか調べました。それでもアンダーソンは、それぞれの家族を正しく見分け、正確な情報を伝え続けたのです。

 教授、これでも彼が「音声認識と記憶力に異常に優れているだけの人」と言いますか。

O:マスメディアにはやらせが多いから、やはり私自身で確かめないと何とも言えないな。

ヴィ:そう来ると思いました。今までの歴史的な霊媒については、話自体の信憑性が疑われて、そこで話が終わりでした。でも、今回は違いますよ。ジョージ・アンダーソンは1952年生まれでまだまだ健在です。下記のアドレスに連絡先がありますから、実際に調査してみてはいかがでしょう。
http://www.georgeanderson.com/

O:そうきたか・・・。よし、やってやろうじゃないか。

***一週間後***

O:ヴィクター、あんなに高くては貧乏教授には手がでないよ。彼と電話で一時間弱話すだけで$1000。しかも予約できるのは半年以上あと。これではやってられない。

ヴィ:あの金額は私も問題だと思います。しかしこれだけの金額を取りながらもそれだけ予約が埋まっているということは、金額を安くしたら何年か先まですぐに一杯になってしまうでしょうね。

O:それを金額が高いことの言い訳にしようというのかね。

ヴィ:そういう意味ではありません。逆に私は彼のことが心配です。高額の料金を取るようになって能力が衰えた霊媒たちは今までに何人もいますから。

O:結局彼を検証するのは無理だな。

ヴィ:うーん。確かに彼は有名になりすぎてしまいましたね。それでも二人で$500ずつ払えば、実際に彼に会うこともできるわけですから、アンダーソンを調べずにすべての霊媒が偽者だという反論は成り立ちません。

O:でも旅費もかかるんだがな。じゃあ、私が彼に会いに行って偽者だという結論が出た場合、その費用をヴィクターが払ってくれるというのはどうだ。

ヴィ:偏見のない正しい結論がそうなったとしたら、別に払ってもいいですよ。

O:すごい自信だな。

ヴィ:私はいつでも、これだけの覚悟と確信を持って、さまざまな情報を紹介してきています。もしそれが間違っているようなことがあったら、$1000や$2000の金額を失うのは仕方ないでしょう。

O:よく言った、ヴィクター。君のその決意に敬意を表して、私もひとつの告白をしよう。

ヴィ:なんです、改まって?

O:まあ・・・、そろそろ、・・・、・・・。

ヴィ:どうしました?

O:なんだな、  、その、、、、、、、、。

ヴィ:どうぞ、言ってください。

O:あの念力計を試したときから、ちょっとしたテレパシーのようなものはあってもおかしくないんじゃないかと思い始めていたんだ・・・

ヴィ:O教授、私は嬉しいです。ついにテレパシーの存在を認めますか。

O:あの念力計が動く以上は、我々の意思と関連した何がしかの物理量があることを仮定せざるを得ない。それが念力計の製作者であるS氏の唱える「磁流」なのかどうかはわからない。だが「何か」の流れが存在することは確かだ。ということはその「何か」が、人から人へと伝わるのも、さほど突飛な発想ではないだろう。

ヴィ:ではテレパシーの存在を認めるのですね。

O:認めるというか・・・、その存在を仮定することはとりあえず妥当だといえる、と表現しよう。このテレパシー仮説でアンダーソンの件は説明できるな。

ヴィ:実は心霊研究の初期の頃から、教授のような批判的な人間たちは、他界の証拠として霊媒が語る情報は本人の潜在意識から、または出席者たちの心を読むことによって生まれると反論していました。確かにそういった例もあるとは思います。しかしながら、すべてがそれで解決するという反論は、もはや成り立ちません。

 霊媒の潜在意識の役割に的を絞った心霊研究は「交叉通信」という実験方法を生み出し、本物の霊媒であれば、その潜在意識と他界からの情報とは一切関わりがないことを示すのに、完全に成功しました。出席者から霊媒への「テレパシー」にしてもそうです。

弁護士の論じる死後の世界


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