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98.08.12

方言の本

 北陸・富山県を旅行してきました。
 僕は地方へ旅行に出ると、その土地の方言の本を探して買ってきます。学術的なやつではなく、その土地の出版社が発行している一般向けの本です。たいていこの手のものは、繁華街の本屋を覗くと1冊や2冊は見つかるものです。
 方言の本といってもいろいろで、辞典形式の方言集から、方言による民話集、方言に関するエッセイ、はては語学講座ふうのものまであります。水準も高いものから低いものまで、まさに多種多様。
 新聞社や地方のNHKが編集しているものもあります。写真なども入って読みやすいものが多いですが、どうも県民だけを対象としているのか、共通語訳がなくて、意味が分からないときもあります。あれは何とかしてほしい。
 さて、今回入手したのは、真田ふみ著『方言百話 越中五箇山』(桂書房)ほか何冊かでした。著者の真田ふみさんは、真田信治大阪大教授(方言学)の母堂で、『越中五箇山方言語彙』の編纂もしている人ですから、安心して読むことができます。
 内容は、各見出しごとに例文を付して、それに1ページほどの解説の文章を添えるという形式。たとえば「アッタラモンナ」(惜しい)は

「まだ買うてから、でーこもたたん傘がうしなけて、アッタラモンナことしたわ」

と例文があって、さらに読み物ふうの説明が続いている。
 この本には逆引き索引が付いていて、「惜しい」から方言形を引くこともできます。それによると、ほかには「オトマシイ」とも言い、

「ああオトマシイことしたわ。ヘンケルの鋏やったさかいに」

なんて使うらしい。
 せっかく旅行するのだから、本で満足するのではなく、じかに方言に触れればいいようなものです。しかし、これは難しい。方言で話しかけてもらえる局面は意外に少なく、今回はわずかに「何しとるがや?」という言い方を教えてもらったのと、あとは「言(ゆ)って」が共通語の「結って」に、「買って」が「勝って」に聞こえるな、「乗って」もアクセントが違うな、ということにぼんやり気づいた程度でした。

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