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98.08.13

ワープロの打ち間違い?

 新聞社の校閲にとって、ワープロの変換ミスは、目に止まりにくくてやっかいなものらしいです。
 12日付けの朝日新聞を読んでいたら、ワープロの打ち間違いがそのまま出たのかと思われる記事がありました。国会代表質問の「焦点採録」の記事。ちょっと書き留めておきましょう。

 宮沢蔵相
 【不良債権問題への責任】
 私はバブル経済発生の前後、何年間か政府にいて、適切に対象できなかったことを今でも反省している。八五年のプラザ合意後、一般の予測に反して円は急騰を続け、円高不況は経験したことがない幅と大きさで日本経済を襲った。(朝日新聞 1998.08.12 p.6)

 「対象」は、「対処」を誤ったものでしょう。ペンで書くときには間違いにくいと思いますが、ワープロだったために、「たいしょ」につい「う」を添えてしまったのではないかと想像します。
 さて、その日の夕刊を読んでいたら、またもや次のようにあった。音楽評論家にどんな典型があるかを論じる文章です。

 もうひとつの王道は、若いころからクラシック音楽に慣れ親しみ、コンサートに出入りし音楽家と付きあううちに文章を書き始める〈いいとこ坊ちゃん(嬢ちゃん)組〉。育ちのよさから来る上品な視点と根っからの音楽好きが信条だが、ツッコミは甘い。(クラシック空耳メモ・吉松隆 朝日新聞(夕刊) 1998.08.12 p.7)

 「信条」は固く信じる事柄。ここでは「とりえ」とか「美点」ということを言いたいのだろうから、「身上」とすべきではないか。
 吉松隆氏がワープロで誤変換したのかもしれませんが、優秀な朝日の校閲も、そのまま通してしまったようです。
 一日の朝夕刊で誤植を目にしたので、いささか気になりました。
 ついでに、ちょっと前の誤植の例ですが、書いておきます。

 カラオケ教室などでよく歌われる演歌のCDなどが売り上げ不振なのも、違法タビングの影響とみられる。背景には著作権料の徴収や分配の仕組みが複雑なこともあるようだ。(朝日新聞 1998.07.27 p.4)

 もちろん「ダビング」でしょう。こうなると、嫁いじめの姑の視点に近いな。データベースに収録されるときには直っているのでしょうか。

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