私事ですが、私は80年代半ばまでは専ら上場企業を対象に戦略策定や中期計画づくり、新事業計画づくりを行っていました。しかし、その後そういった分野以外に、都市開発や地域開発のプランづくりにも携わりました。
この2つ分野の分析手法は類似しています。つまり、環境分析と自社分析(あるいは地域資源分析)から入って、問題点と課題を抽出し、戦略(あるいは開発)の方向を定めて具体策を提案する、というアプローチです。
当時、80年代の中頃は、まだ都市開発や地域開発の分析アプローチが未熟で、分析なしでいきなり結論という報告書が結構多く驚きました。そこで、戦略策定のアプローチを参考に、私なりに開発の分析アプローチをつくりプロジェクトに活用したのです。
こうして、バブル以前から崩壊後まで多くの開発プロジェクトに関わってきました。具体的には、臨海副都心、幕張、汐留、中野坂上、オペラシティなどのビッグプロジェクト(の全体あるいは一部)、3haから10ha(約3万坪)の工場跡地の活用、リゾート開発(ゴルフ場開発を含む)、商業施設開発、その他土地を活用した新事業開発などです。
開発プロジェクトに関わって思ったことは、やはり事業主体の発想が不動産屋さんなんですね。なにも不動産業自体が悪いといっているのではなく、土地という資源のみを使って一定の利回りがあればよいわけですから、事業リスクを極力回避する行動をとるのは当然といえます。そのため、事業ノウハウが余り必要ない、単に貸すだけのオフィスビルとか商業ビルを建てることになります。そして、商業施設の場合、日本あるいは世界のどこかから人気のあるテナントを持ってきて金太郎飴的な施設が続々登場したのです。
もっとも不動産価格・賃料が周辺相場で設定されていれば、どんなテナントが入っても収益には関係ないのです。ところが土地・不動産の生む価値で価格が決まる収益還元法が当たり前になれば、テナントの中身が重要になってきます。今この業界も大きく変わっていますから、ハコだけ作るという発想は今後は少なくなると思いますね。
ところで、開発プロジェクトでも不動産業的開発ではなく、多角化目的で自ら事業を行う場合は趣が異なります。例えば、テーマパークやレジャー施設、物販、飲食、スポーツクラブ等を自前で展開するには、人、モノ、金といった経営資源をすべて投入する必要があるので、ビジネスシステムをしっかり構築することが不可欠です。
やはり、私はメーカーを対象にしたコンサルティングが多かったせいか、ビジネスシステムを作って事業化するタイプの開発プロジェクトの方が好きですね。つまり、当初のハコ、ハードは所与として、事業の成功の鍵を握るのは、人間が行うマネジメント並びにオペレーション、いわゆるソフトだからです。
旧態依然とした百貨店業界も、ようやく従来の場貸し商売から脱皮しようとしています。不動産開発に関しても、これまでのやり方が変わりソフトの重要性が一層認識される日も近い、ヴィーナス・フォート開発の経緯をみて、こう実感しました(前回の「独り言」をご覧ください)。
(1999年10月31日(日))
|