さ迷い歩き 「電磁波の海」 (4)-4
= ファインマン物理学W 電磁波と物性 =

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    目  次

    内  容 (W巻:電磁波と物性)          内   容  
01 AC回路  4th page 14.01.01   11 密な物質の屈折率  14.01.27
02 空洞共振器   14.01.01   12 表面反射  14.01.28
03 導波管   14.01.07   13 物質の磁性     14.01.31
04 電磁気学の相対論的記述   14.01.13   14 常磁性と磁気共鳴  14.02.02
05 場のローレンツ変換   14.01.15   15 強磁性   14.02.19
06 場のエネルギーと運動量 14.01.16   16 磁性体   14.02.20
07 電磁気的質量 14.01.21   17 弾性 -----
08 電磁場内の電荷の運動  14.01.21   18 弾性体  -----
09 結晶の幾何学的構造 5th page  14.01.22   19 粘性のない流れ -----
10 テンソル 14.01.22   20 粘性のある流れ -----
      21 曲がった空間  


 前巻で静電磁気と動く電磁場およびそれらの基礎方程式であるマクスウェルの方程式を学びました。学んだといっても、十分に理解したと言えるほどのものではないですが、何とか読みきったということです。それで、ようやく本来の目的である電磁波に入ることになります。とても心細く、不安ですが、新年を迎えて、あらたに「電磁波の海」に潜り込む喜び?もないわけではありません。また、本巻では、いわゆる物性物理学が含まれています。実は、私の大学での狭い意味での専門?は”磁性半導体”でして、キッテル(Kittel)の物性物理学の本を一生懸命勉強しました。しかし、量子力学はもちろん、物理学の基礎(運動力学、光と波動など)がまったくわかっていないため、どうしても最後は理解できなくなってしまいました。それが、私が量子力学を独学するきっかけとなった次第です。今回も、物性論については理解が困難かと思っていますが、再度挑戦してみたいと思います。また余命があれば、キッテルの”物性物理学”(まだ書籍を保管しています)を読んでみようと考えています。

 それでは、まずは、Feynmanの本巻の内容に関する説明を掲げます。 「ここまでずっとやって来たことは、主に完全なマクスウェル方程式に到達するのが目的であった。第V巻の最後の二つの章では、この方程式から導かれる結果について論じた。以前に調べた静電的あるいは静磁気的な現象も、既に第T巻で少しはくわしく電磁波や光の現象も、共にこの方程式に含まれていることがわかった。マクスウェル方程式は、電流や電荷のすぐ近くの場を計算するか、それともずっと遠くの場を計算するかによって、これら二つの現象を与えるものである。これらの中間の領域についてはあまり面白いことはない。特別な現象としてとりたてていう程のものは起こらないのである。」

 「しかし、電磁気でとり上げたいものがいくつかまだ残っている。相対論とマクスウェル方程式−動いている座標系でマクスウェル方程式を見たら何が起こるかという問題−を議論しようと思う。また電磁気的体系におけるエネルギー保存の問題もある。そして物質の電磁気的性質という広い対象がある。誘電体の性質の研究を除いては、今まで自由空間の中の電磁場だけを考えていた。更に光については第U巻においてややくわしくやったけれでも、場の方程式という観点からもう一度考えてみたい事柄がいくつか残っている。」

 「特に屈折率の問題を、殊に密度の高い物質の場合をとり上げたいと思う。最後に、制限された空間領域に閉じこめられた波動に関連した現象がある。このような問題については音波を学んだときに簡単に触れたことはある。マクスウェル方程式は閉じ込められた電気・磁気的波動を表わす解も与える。重要な技術的応用を持つこの問題は、これに続くいくつかの章でとり上げることにする。この問題に近づくために、電気的回路の低周波における性質の考察から始める。こうすれば、マクスウェル方程式に対するほとんど静的な近似解が適用される場合と高周波の効果が主要になる場合とを比較することができるわけである。」

 なお、電気回路の一部と弾性体、粘性のない/ある流れについては、省略する予定です。


01.AC回路 2014年01月01日

 AC回路の章の始めに、Feynmanは次のように述べています。 「そこで、前の数章のような偉大で深遠な高みから降りて、電気回路という比較的に低い問題に移ることにしよう。しかしこのような世俗的な問題でも充分にくわしく調べるならば大変複雑なものを含んでいることがわかるだろう。 すでに第T巻の第23章と第25章とにおいて電気回路の性質のいくつかについて論じた。ここでも同じ題材を再びとり上げることはあるが、こんどは更にくわしく調べることにする。」

 確かに電気回路は、物理学に比べてレベルが低く、世俗的な問題であると言えるとはおもいますが、こうもはっきりと物理学の教科書で言われると、電気・電子工学を専攻した者には、ちょっとムッとした感じを抱いてしまいますね。まあ、そんなつまらないことは無視して先に進めたいと思いますが、私自身も私の目的が電磁波の理解なので、回路の詳細は飛ばし、ポイントとなる式だけを掲げることにしたいと思います。

 電流、電圧などは、次のように正弦的に変化することを前提とします。

 電圧:  V(t) = V^e(iωt)              (1.1)
 電流:  I(t) = I^e(iωt)               (1.2)

 起電力: Ε(t) = Ε^e(iωt)  
 電場:  (t) = ^e(iωt) 
 
  V^、I^、Ε^および^は時間によらない複素数を表わす
  実際の時間的に変化するV(t)、I(t)、Ε(t)、電場(t)は、それぞれの
  方程式の右辺の複素数の実数部分で与えられる
            

 インピーダンス、インダクタンス、キャパシター、レジスターの定義です。

 インピーダンス:  V/ I = V^/ I^ = Z         (1.5)
 インダクタンス:  V = -Ε = L(d I/dt) = iωL I  (1.4)
 キャパシター:   V = I /iωC             (1.8)
 レジスター:     V = I R               

 発電機の端子間の電位差は次のようになります。

 発電機の端子間の電位差: V = -Ε = d/dt(磁束)  (1.11)

 理想的な素子の回路網においては、次のキルヒホッフの法則が成り立ちます。

 キルヒホッフの法則: 狽un = 0            (1.14)
                任意のループをまわる和
                I n = 0            (1.17)
                一つの結節点に入る電流

 次は、起電力Εの発電機によって与えられるエネルギーの平均です。

 <P>av = (1/T)∫0TΕI dt = (1/T)∫0T(I0)2乗R(cosωt)2乗 dt 
                 = (1/2)(I0)2乗R     
  ここで、 I = I0 cosωt
        起電力Ε = I0 Rcosωt - I0 Xsinωt   (1.26)

 ここで重要なことは、エネルギー損失は抵抗によるものだけで、リアクタンスによるエネルギー損失はないということです。

 次に、はしご回路網とフィルターの説明があります。これは電気工学における伝送回路に相当し、とても重要な概念と思っています。大学でも”伝送回路”という講義があり、もちろん受講していたのですが、今ではほとんど覚えていません。これらは、図を交えないとほとんど説明できない内容です。結論だけをまとめておきます。

 無限のはしご回路網の特性インピーダンス:
   Z0 = Z1/2 + √{(Z1)2乗/4 + Z1Z2}         (1.27)
 無限のL-Cはしご回路網の特性インピーダンス:
   Z0 = √{(L/C) - (ω2乗L2乗/4)}          (1.28)

 この結果から、重要な伝送に関する結論が導かれます。突然結論を記述するのでわかりづらいかと思いますが、Feynmanの記述を掲げてみます。 「さて、周波数ωによって二つの面白い場合がある。もしもω2乗が4/LCよりも小さいならば、平方根の中の第2項は第1項よりも小さいから、インピーダンスZ0は実数である。他方、もしもω2乗が4/LCよりも大きいならば、インピーダンスZ0は純虚数で、
  Z0 = i √{(ω2乗L2乗/4) - (L/C)}  と書ける。」

 「インダクタンスやキャパシタンスのような虚数のインピーダンスのものからのみ成る回路は純虚数のインピーダンスをもつであろうと前に述べた。それならば、ここで調べている回路−LとCとしかもたない−が、√(4/LC)より周波数が低いときに、純粋に抵抗のインピーダンスをもつのはなぜだろうか。もっと高い周波数に対してはインピーダンスは純虚数になり、これは前に述べたところと一致する。低い周波数に対してはインピーダンスは純粋な抵抗であり、そのためエネルギーは吸収する。しかし、インダクタンスとキャパシタンスとだけから成る回路が、なぜ抵抗のように常にエネルギーを吸収できるのであろうか。答え:インダクタンスとキャパシタンスの和は無限であるから、この回路に電源をつなぐと、エネルギーはまず第1のインダクタンスとキャパシタンスに、ついで第2、さらに第3とつぎつぎに与えられる。このような回路では、エネルギーは一定の速さで電源から吸い出され、回路網へ絶え間なく流れて、導線を下ってインダクタンスとキャパシタンスへ順々に貯えられていくのである。」 イメージが湧きますか?もう少し続けます。

 「この考えは回路内で起こっていることについて興味ある観点を与える。前端に電源をつなぐと、この電線の影響は回路網を通って無限端の方へと伝播するであろう。波動が導線を伝播することはアンテナがその動力源からエネルギーを得てこれを放射することに似ている。このような伝播はインピーダンスが実数のときにだけ起こり、これはωが√(4/LC)より小さいときである。しかしインピーダンスが純虚数のとき、すなわちωが√(4/LC)よりも大きいときはこのような伝播が起こらないことが期待される。」

 そうだったのか。伝送線路を通しての電磁波の伝播やアンテナからの電磁波の放出などが、このようなことと関係しているのが少し分かりました。それでも、ポイントを少し理解しただけで、私にとっては電磁波の伝播の仕組みはイメージすら理解できない状態に変わりはありません。とほほほ・・・。

 本章の最後には、フィルターやその他の回路素子の話がありますが、省略します。

                                        2014年01月01日

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02.空洞共振器 2014年01月01日

 本章は、次のような節からなります。
2-1 実際の回路素子
2-2 高周波におけるキャパシター
2-3 共鳴空洞
2-4 空洞のモード
2-5 空洞と共鳴回路

 内容的には、高周波における電磁場の共鳴の話で、電気回路では非常に重要な話となりますが、Feynmanがいみじくも言ったように、物理学においては比較的レベルの低い話なので、省略します。


03.導波管 2014年01月07日

 本章の導波管は、高周波の伝送技術において重要なものであり、かつ電磁波の理解のためにも必要なので、少し立ちいってみたいと思います。 少し長くなりますが、まずはFeynmanの言葉を記します。 「前の章では、非常に高い周波数で作動したとき、回路の集中素子に何が起こるかを調べ、共鳴回路は内部に共鳴する場をもつ空洞でおきかえられることを知った。他の興味ある技術的な問題は一つのものと別のものとを連絡して、電磁気的エネルギーをそれらの間で送ることである。低周波回路では、連絡は針金でできるが、しかし」高周波ではこの方法はあまりうまく働かない。それは回路がそのまわりの空間にエネルギーを輻射し、そのためエネルギーがどこへ行くかを制御することはむつかしいからである。針金のまわりに場は広がる。そして電流や電圧は針金によってはあまりよく”導かれ”ない。この章においては、高周波において連絡する方法を考えようと思う。少なくとも、ここに一つの問題の起こし方がある。」

 「別の方法は、さきに自由空間における波の性質を論じたが、いまや振動場が1次元あるいはもっと高い次元の中に閉じ込められ、第3の方向には自由に動けるときに、場が波となって伝播するという面白い新たな現象を見出すであろう。この波は”導かれた波”であり、これがこの章の主題である。」

 「始めに伝送線の一般論を述べる。都会から都会へと地方を越えて走っている普通の電力の伝送戦はいくらか電力を輻射するが、電力の周波数(50-60サイクル/秒)は大変低いので、この損失はあまり重大ではない。電線を金属の管で囲むと輻射をとめることができるが、この方法は電力線に対しては実用的でない。それは用いられる電圧と電流とでは、非常に大きな、高価な、重い管が必要になるからである。そのため簡単な”裸線”が用いられる。やや高い周波数−たとえば数キロサイクル−では、すでに輻射が重大になり得る。しかし短い電話線の場合のように、”絡ませた対”の伝送線によって輻射をへらすことができる。しかし、さらに高周波になるとすぐに輻射は耐えられない程になる。それは電力損失のためか、あるいはエネルギーがほしくない他の回路にエネルギーが現れたりするためである。数キロサイクルから数百メガサイクルの間の周波数では、電磁信号や電力は、1本の導線とこれを包む円筒状の”外部導体”あるいは”シールド”とからなる同軸線によって送られるのがふつうである。以下の取扱いは任意の形の二つの平行導体からなる伝送線に適用できるものであるが、同軸の線を基準にして取り扱うことにしよう。」

 ということで、まずは同軸伝送線から話が始まります。論理を追いかけるのは紙幅の関係から難しいので、重要な式だけを掲げることにします。

 まずは、伝送線の基礎方程式です。

 伝送線の基礎方程式:
   ∂V/∂x = - L0∂I /∂t         (3.1)
   ∂I /∂x = - C0∂V/∂t         (3.2)

 これから、次の電圧Vと電流I の波動方程式が導かれます。

 伝送線における波動方程式:
   ∂2V/∂x2 = C0L0∂2V/∂t2     (3.3)
   ∂2 I/∂x2 = C0L0∂2I /∂t2      (3.4)

 波の速度:
   v = 1/√(L0C0)              (3.5)

 これは、一様な電線では、電圧と電流が線に沿って波として伝播することを表わしています。この場合、線に沿う電圧は、V(x, t) = f(x - vt)、あるいはV(x, t) = g(x + vt)の形、」あるいはこれらの和の形をもたなければならないとのことです。伝送線の中の各々の波に対する電圧は、その波の電流に比例し、比例定数はちょうど特性インピーダンスに等しくなります。

 特性インピーダンス:
   Z0 = √(L0/C0)              (3.7)

 ある計算によって、L0C0はちょうど 1/c2乗に等しくなることがわかります。すなわち、波の速度v = 1/√(L0/C0)はちょうど光の速度cに等しくなるということです。すごいですね!!高周波の波は同軸線を光速度で伝播するということです。ただし、Feynmanは、この結果は次の2つの仮定を満足していなければならないと述べています。
 (a)導体の間の空間には誘電体も磁性体も存在しない
 (b)電流はすべて導体の表面にある(完全導体)

 次に、導波管に移りますが、Feynmanは冒頭で次のように述べています。 「次に述べようとすることは、始めて知ったときは、驚くべき現象のように思われる。もしも同軸線から中心の導体をとり除いても、これはなお電磁気的エネルギーを送ることができる。いいかえると、充分高い周波数では中空な管は導体の入ったものと同様に働くのである。これは導体とインダクタンスとからなる共鳴回路は高周波では単なる罐でおきかえることができるという不思議な事情によるものである。」 「インダクタンスとキャパシタンスとが分布した伝送線を考えてくると、これは大変著しいことと思われるかも知れないが、一方で、我々は電磁波が中空な金属の管の中を伝わることを知っている。管が真直ぐならば、それを通して見ることができるではないか。したがって電磁波は確かに管を通り抜ける。しかし、まだ我々は、一つの金属管の内を通して低周波の波(電力、あるいは電話)を送ることはできないことを知っている。したがって、電磁波は波長が充分短いときに通り抜けるということになっているにちがいない。そこで、定まった大きさの管を通ることができる最長の波長(あるいは最低周波数)の極限を知りたいと思う。そうすれば、管は波を伝えるのに用いることができる。これを導波管という。」

 導波管に関する議論をここで記述するのは難しいので、結論だけを述べていきます。まず、管の中の波の数式と管内の自由空間における場のマクスウェル方程式です。

 管の中の波:
   Ey = E0 sink
xx exp { i (ωt - kzz) }      (3.12)
 場のマクスウェル方程式:
   ∂2Ey/∂x2 + ∂2Ey/∂y2 + ∂2Ey/∂z2
                 - (1/c2乗)∂2Ey/∂t2 = 0    (3.15)
 

 周波数ωが与えられると、波の節が導波管に沿って、次の位相速度と管内波長で伝わります。

 波の位相速度:
   v = ω/kz                      (3.18)
  ここで、
   kz = √{(ω2乗/c2乗) - (π2乗/a2乗)}
    (3.17)
 波の管内波長:
   λg = λ0/√{ 1 -(λ0/2a)2乗 }         (3.19)
         λ0は自由空間の波長

 周波数ωが臨界周波数(遮断周波数)ωc =πc/a より小さくなると、kzは虚数となり、波は管に沿って伝播しなくなるとのことです。Feynmanはこれについて次のように述べています。 「導波管の波に関する解析の、一つの興味ある結果を強調したいと思う。それは、虚数の波数kzの出現である。普通、物理の方程式を解いて、虚数を得たときは、それは物理的に無意味である。しかし、波については、虚数の波数は意味をもつ。波動方程式は満足される。ただ、解は伝播する波のかわりに指数関数的に減衰する場を与えることになる。したがって、任意の波の問題において、ある周波数でkが虚数になれば、それは波の形が変化したこと、すなわち正弦波が指数関数になったことを意味するわけである。」 そういうことだったのか。少し頭が良くなったようです。

 次に、位相速度と群速度の話があります。波の位相速度は、(3.18)と(3.17)から次のように表わされます。他方群速度はdω/dkなので、やはり以下のようになります。管を伝わるエネルギーの式も掲げておきます。

 波の位相速度:
   vphase = c/√{1 - (ωc/ω)2乗)}
       (3.25)
 波の群速度:
   vgroup
= c√{1 - (ωc/ω)2乗)}        (3.27)
 管を伝わるエネルギー:
   dU/dt = ε0(E0)2乗ab vgroup         (3.32)

 この後は、導波管内の波の観測方法や導波管の結合方法などの技術的な話が続きますが、省略します。

最後に、なぜ導波管が遮断周波数ωcよりも低い周波数の場を急に減衰させるのかを、別の方法で説明してくれます。Feynmanは次のように言ってます。 「それによって、低い周波数と高い周波数との間で性質がすっかり変ってしまうわけを、もっと”物理的に”考えることができるであろう。矩形導波管に対し、管の壁における反射−あるいは像−によって場を解析することができるのである。しかし、この方法は矩形導波管に対してだけ役立つ。我々がより数学的な解析で出発したのはこのためであって、数学的解析は原理的には任意の形の導波管に対して成り立つわけである。」

 ということですが、説明を記述することは困難なので、またまた省略とさせてもらいます。次の章からは、また理論的な話に移っていきます。少々億劫ですが、頑張ってみます。


                                     2014年01月07日


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04.電磁気学の相対論的記述 2014年01月11日

 本章と次の章「場のローレンツ変換」は、場に関する数学的扱いが中心です。特に、4元ベクトルとその演算、それにテンソルなどは、数学的基礎を持たない私にとっては、理解がほとんどできませんし、物理的イメージも湧いてきません。ということで、私の能力の範囲で気になった点などをピックアップして述べるに留めます。なお、この章に出てくる数式では、光の速さc = 1として表示しています。

 まずは、4元ベクトルですが、Feynmanは冒頭で次のように述べています。 「これから特殊相対性理論の電磁気学に対する応用を議論しようと思う。すでに第T巻の第15章から第17章にかけて特殊相対性理論を勉強してきたから、その基礎的考え方を簡単に復習することにしよう。」 まず、座標系Sに対してx方向に一様な速度vで動いている座標系S'があるとします。この座標系Sに対してローレンツ変換を行うと、ローレンツ変換を行った新しい物理法則は、変換前の物理法則と全く同一に見えるということです。これは、物理学の法則が座標系の配向によらないという原理に相当します。

 ローレンツ変換:
   t' = (t - vx)/√(1 - v2乗)               (4.1)
   x' = (x - vt)/√(1 - v2乗) 、y = y' 、z = Z''

 そして、回転に対する物理法則の不変性はベクトルによって数学的に表現されるのだそうです。ベクトルの回転は∇xAで定義します。そして、物理学の方程式はその両辺が回転に対して同様に変換されなければならないそうです。すなわち、一辺がベクトルならば他辺もベクトルであって、両辺は座標系を回転するとき、完全に同様に変換されなければならない。また一辺がスカラーならば他辺もスカラーで、両辺共回転に対して不変でなければならないということです。私には、物理学では回転の話がよく出てくるのですが、そもそもなぜ回転が重要なのかがよくわかっていません。

 次に特殊相対論の場合に話が進みます。特殊相対論の場合は、時間と空間とは混ざり合って、切り離すことができないので、4次元の時空ベクトル(4元ベクトル)においても、3次元ベクトルと同様なことが成り立つ必要があります。また、4次元の方程式は回転に対してだけではなく、任意の慣性系に対しても不変でなければならないそうです。このことは、式(4.1)のローレンツ変換に対して4次元の方程式が不変でなければならないことを要請しているそうです。そして、この章の目的は、この方法を示すことだそうです。

 この後、4元ベクトルとその長さ、4元ベクトルのスカラー積、4次元の勾配(gradient)と発散(divergence)の定義があります。

 4元ベクトル:
   aμ = (at,ax,ay,az) = (at,)
 4元ベクトルの長さの2乗:
   aμaμ = at2乗 - ax2乗 - ay2乗 -az2乗
        = at2乗 -                (4.8)
 4元ベクトルのスカラー積:
   aμbμ = atbt - axbx - ayby - azbz      (4.7)
        = atbt -
 4元ベクトル演算子:
   ∇μ = (∂/∂t, -∇)
       = (∂/∂t, -∂/∂x -∂/∂y -∂/∂z )   (4.16)
 4元ベクトルの勾配(gradient):
   ∇μψ = (∂ψ/∂t, -∇ψ)
       = (∂ψ/∂t, -∂ψ/∂x -∂ψ/∂y -∂ψ/∂z ) 
 4元ベクトルの発散(divergence):
   ∇μaμ = (∂/∂t)at + ∇・
       = ∂at/∂t +∂/∂x)bx +∂ay/∂y +∂az/∂z    (4.17)
 電荷の保存則:
   ∇μjμ = 0       (4.19)

 最後に、3次元のラプラス演算子に相当するものとして、ダランベール演算子が定義されます。

 ダランベール演算子:
   □2 = ∇μ∇μ = ∂2/∂t2 - ∇2
       = ∂2/∂t2 - ∂2/∂x2 - ∂2/∂y2 - ∂2/∂z2   (4.20)

 以上のような4元ベクトルを用いると、第V巻で得られたポテンシャル方程式が、4元ベクトルで書くことができます。

  ∇2φ - (1/c2乗)∂2φ/∂t2 = -ρ/ε0c2乗    (18.25)
  ∇2 - (1/c2乗)∂2/∂t2 = - /ε0c2乗    (18.24)
 => 4元ベクトルで表したポテンシャル方程式:
      □2φ= ρ/ε0       (4.21)
      □2 = /ε0
         c = 1としている

 これによって、4個の量jμ/ε0 = (ρ/ε0、jx/ε0、jy/ε0、jz/ε0)は4元ベクトルとして変換されます。したがって座標系を変えてもダランベール演算子は変化しないので、量Aμ = (φ,) = (φ,Ax,Ay,Az)も4元ベクトルとして変換されることになるということです。このAμは4元ポテンシャルと呼ぶそうです。そうすると。(4.21)式は、次のように簡単に書くことができるということです。

   □2Aμ = jμ/ε0        (4.22)

 この式の物理的内容はマクスウェル方程式と同じくなります。それで、この方程式は電気力学がローレンツ変換に対して不変であることを直接に示していることになるのだそうです。これでもう、頭はパニックに近いのですが、更にローレンツの条件という話が出てきます。

 ローレンツの条件:
   マクスウェルの方程式に、ゲージの条件
     ∂φ/∂t + ∇・A = 0  (4.23)

   を付けると、これは∇μAμ = 0 を意味する

 これは、4元ベクトルの発散がゼロとなることを意味するとのことで、マクスウェル方程式は、すべての座標系に対して式(4.22)の形を保つのだそうです。あー、わかんない!式は何とか追いつくのですが、何をしようとしているのか、どんな意味があるのか等々はさっぱりわかりません!!

 この後は、動く電荷による4元ポテンシャルの議論がありますが、省略します。最後に、電気力学の方程式の普遍性についての説明があります。ポテンシャルφとAとを一緒にすると4元ベクトルAμが形成され、Aμをjμにより決定する全体の方程式−波動方程式−が式(4.22)のように書くことができ、この式と電荷の保存の式(4.19)とによって、次の電磁場の基礎方程式が得られるということです。

 電磁場の基礎方程式:
   □2Aμ = jμ/ε0 、 ∇μjμ = 0        (4.29)

 最後に、長くなりますが、Feynmanのまとめを記します。 「この美しく簡単な、1頁の微小部分がマクスウェル方程式のすべてである。この方程式をこのように書くことは美しく簡単である以外に我々に何を教えてくれるのだろうか。第一に、種々の場の成分をすべて用いて書いた前の式とちがうことがあるか。電荷と電流とを用いてポテンシャルを表わす波動方程式から導かれるものとちがう結論がこの式から導き出せるであろうか。これに対する答えは明らかにnoである。我々がしてきたことは名称を変え、新しい記号を用いただけである。微分を表わす四角い記号を用いたが、これは単にtに関する2階の微係数から、xに関する2階の微係数を引き、yに関する2階の微係数を引き、zに関する2階の微係数を引いたものを表わすものにすぎない。そしてμはμ = t,x,y,z であって、計4個の方程式があることを示している。それならば、方程式がこのように簡単な形に書けたことの意義はどこにあるのだろうか。直接に何かを導こうという観点からすれば、これは別に意義をもたない。しかし、おそらく、方程式が簡単な形をとるということは、自然もまたある簡潔さをもつことを意味するのである。」

 途中を省略して、更に続けます。「しかし、式(4.29)の形に書かれた電磁気学の法則の簡潔さには、これ以上のものがある。それは、ベクトル解析が意義をもったように、ある意義をもつ。電磁気学の法則が、ローレンツ変換の4次元幾何学に対してくふうされた非常に特別の表示法で書けたという事実−いいかえれば、4次元空間のベクトル方程式として書けたという事実は、それがローレンツ変換に対して不変であることを意味する。それが美しい形に書けたのは、マクスウェル方程式が、この変換に対して不変であるからである。」

 「電気力学の方程式が式(4.29)のようなのような美しく、優雅な形に書けたのは、偶然ではない。相対性理論が発達したのは、マクスウェル方程式によって予言される現象がすべての慣性系について同等であることが実験的に発見されたからである。実際、ローレンツはマクスウェル方程式の変換に対する性質を研究することによって、彼の名をもつ変換を発見したのである。しかし、我々の方程式をこのように書くのには別の理由もある。アインシュタインも予想したことであるが、物理学のすべての法則はローレンツ変換に対して不変であることが発見された。これは相対性原理である。したがって、もしもその法則が不変であるかないかを直ちに判別できるような表示法を発明することができれば、新しい理論を試みる場合において、相対性原理と合致する方程式だけを考えている確証を得るわけである。」

 「この表示法でマクスウェル方程式が簡単になるのは不思議ではない。それはこの方程式を考えてこの表示法が発明されたからである。しかし、興味深い物理的な事がらは、物理学のすべての法則−中間子の波の伝播、ベーター崩壊におけるニュートリノの運動など−が、同じ変換に対して同じ不変性をもたなければならないということである。もしも宇宙船に乗って一様な速度で動くとしても、自然法則のすべてが同じ変換を受けて、結局、何も新しい現象は生じないことになるであろう。相対性原理が自然の事実であるために、4元ベクトルの表示法で書いた自然界の法則は簡単にみえるのである。」 ふーん!すごいことを学んでいるのだなあ!!この理解レベルにまでなりたいですが、無理無理!!さあ、前へ進むのみです。滅茶苦茶ですね。

                                     2014年01月13日


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05.場のローレンツ変換 2014年01月13日

 この章に出てくる数式も、前章と同じく光の速さc = 1として表示しています。前章に続いて、本章もとてつもなく難しい数学的な話です。まずは、動く電荷のポテンシャルの話です。ここで点(x,y,z)におけるポテンシャルφとAx、Ay、Azの式が提示されますが、表現するには難しすぎます。また、議論も説明できないので一切省略します。

 次に一定速度の点電荷の場の話になります。点(x,y,z)における電場Ex、Ey、Ezの式が提示されますが、やはりここでは表現することは難しいです。また、内容も記述できないので省略します。

 その次は、場の相対論的変換の話です。ここでのFeynmanの問題提起を掲げてみます。 「前節では、ポテンシャルを変換して、それから電場と磁場とを求めた。さきに述べたようにポテンシャルは物理的な意味も実在性もあるが、それでも場は、もちろん重要である。場もまた実在するものである。ある”静止”系に対する場がすでに与えられているときに、運動系における場を計算する方法があれば、これは多くの目的に対して都合がいいにちがいない。Aμは4元ベクトルなので、φととの変換法則はわかっている。ある座標系に対してとが与えられているとき、これに対して運動する座標系において、これらはどうなるであろうか。求められれば都合のいいのはこの変換である。いつでもポテンシャルに戻ることはできるが、場を直接に変換することができれば有益な場合がある。これがどのようになるかを調べよう。」

 ということですが、その後の議論は大変難しい4元ベクトルの数式の展開と、さらにはテンソルTij にまで話が及んできます。ということで、ここでは議論を追いかけることはできませんが、結論のようなものが3つまとめられているので、それを掲げておきます。

 電場と磁場のローレンツ変換(c = 1):
   Ex' = Ex         Bx' = Bx
   Ey' = (Ey - vBz)/√(1 - v2乗)、 By' = (By + vEz)/√(1 - v2乗)
   Ez' = (Ez + vBy)/√(1 - v2乗)、 Bz' = (Bz - vEy)/√(1 - v2乗)
 場の変換の別の形(c = 1):
   Ex' = Ex         Bx' = Bx
   Ey' = ( + x)y/√(1 - v2乗)、 By' = ( - x)y/√(1 - v2乗)
   Ez' = ( + x)z/√(1 - v2乗)、 Bz' = ( - x)z/√(1 - v2乗)
 EとBとのローレンツ変換のさらに別の形:
   E
x' = E       B' = B
   E
' = ( + x)/√(1 - v2乗/c2乗)、
                 B
' = ( - x/c2乗)/√(1 - v2乗/c2乗)

 最後に、相対論的記号による運動方程式が求められますが、内容はまったく理解できません。ということで、ここでも挫折でした。

                                     2014年01月15日


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06.場のエネルギーと運動量 2014年01月15日

 この章以降では、光の速さc = 1としていません。本章も議論がとても難しく、それを追いかけるのは絶望的です。まず、冒頭のFeynmanの局所的保存に関する内容を、少し長くなりますがそのまま記してみます。 「物体のエネルギーが保存されないのは明らかである。しかし、失われたエネルギーは、他の形、たとえば光として記述することができる。したがって、エネルギー保存の理論は光、あるいは一般に電磁場に関するエネルギーを考えなければ不完全である。そこで、場に関するエネルギーと運動量との保存の法則を考察しよう。相対論によれば、エネルギーと運動量とは、一つの4元ベクトルの異なる面を表わすものであるから、これらを別々に扱うことができないのは明らかである。」

 「すでに、第T巻の始めにおいてエネルギー保存則について触れたが、世界中の全エネルギーは一定であると述べたにすぎない。ここで、エネルギー保存則に関する考えに重大な拡張を加えたいと思う−それは、エネルギーがどのように保存されるかをある意味でくわしく述べようというのである。新しい法則では、ある領域からエネルギーが出ていくときは、それはその領域の境界面を通して流れ出るからであるという。この法則は、このような制限を加えない場合のエネルギー保存則よりもいくらか強い法則である。」

 続いて、電荷の保存に関する議論がありますが、ここでは省略して、先に進みます。 「相対論においては、このような”全世界的”な保存法則は成立しない。たがいに離れた点の”同時の瞬間”という概念は座標系によって異なる。ある系で同時の事象は、通り過ぎて行く他の運動系に対しては同時ではない。上述の”全世界的”保存においては、Q1で失われた電荷は同時にQ2に現われなければならない。そうでなければ、電荷が保存されない瞬間もあり得ることになるからである。そこで、電荷の保存法則を相対論的に不変にするためには、保存法則を”局所的”にする以外に方法がないように思われる。実際、ローレンツの相対論的普遍性の要請は自然界の可能な法則を驚くほど制限するものである。たとえば、最近の量子場の理論において、”非局所的”相互作用とよばれるものを導入して理論を変えようという試みがあるが、これは、ここのあるものが、他の場所のあるものと直接相互作用をするという考えである。しかし、これは相対論の原理のために困難に直面してしまうのである。」

 さらに続きます。 「”局所的”保存はまた別の概念を含んでいる。それは電荷が一つの場所から他の場所へ移るためには、その間の空間に何かが起こらなければならないということである。この法則を表わすのには、電荷の密度ρだけでなく、他の種類の量、すなわちjをも必要としたが、これは一つの面を通して電荷の流れる割合を表わすベクトルである。流れは密度の変化と式(6.1)によって結ばれる。これは保存則の際立った表現であり、電荷は特別な仕方で、すなわち”局所的”に保存される。」

 「エネルギー保存もまた局所的な過程であることがわかる。空間の各場所におけるエネルギー密度だけでなく一つの面をエネルギーが流れて通る割合を表わすベクトルも考える。たとえば、光源が輻射を出すとき、光のエネルギーは光源から出ていく。光源を囲む数学的な面を考えると、この面の内部から失われるエネルギーは、この面を通って流出したエネルギーに等しい。」 重要な内容と思って一生懸命記述してみましたが局所的保存が何なのか私にはさっぱりわかりません。とほほほ・・・・、

 この後は、場のエネルギーの保存、エネルギー密度、エネルギー流、さらに場の運動量というふうに、難しい話が続きます。もちろん、私には理解できないことが多く、また書き表すことも難しい状態ですので、重要と思われる式を少し掲げるだけとします。まずは、場のエネルギー保存則と電磁場のエネルギー方程式です。

 場のエネルギー保存則:
   -∂/∂t∫
udV = ∫da + ∫Vda     (6.4)
      ここで、uは場のエネルギー密度
          S
は場のエネルギー流

 電磁場のエネルギー方程式:
   -∂u/∂t = ∇・ +          (6.5)   

 次は場によって記述されるエネルギー方程式です。

 エネルギー方程式:
   = ∇・(ε0c2乗
      - ∂/∂t {(ε0c2乗/2) + (ε0c2乗/2) }   (6.13)
   ここで、 u = (ε0/2) + (ε0/2)      (6.14)
         = ε0c2乗  
         *はポインティング・ベクトル呼ばれる

 最後は電磁場の運動量密度です。これは、次のような物理学の重要な定理に基づいて得られるのだそうです。すなわち、「エネルギーの流れがあるときにはどんな場合でも(場のエネルギーでも、その他のエネルギーでも)、単位面積を単位時間に通るエネルギーに1/c2乗を掛けたものは、空間の単位体積当たりの運動量に等しい」という定理があるそうです。私は知りませんでしたが・・・

 場の運動量密度:
    = (1/c2乗)           (6.21)


                                     2014年01月16日

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07.電磁気的質量 2014年01月17日

 本章は、驚くべき事実(私にとって)、すなわち、前章で学んだ?電磁場のエネルギーとか運動量の概念が、荷電粒子の概念とある意味で矛盾しているということが議論されます。といっても、私には議論の展開はさっぱりわからないのですが・・・ とにかく、冒頭のFeynmanの問題提起を記してみます。 「相対論とマクスウェル方程式とを融合させることにより、電磁気学の理論の主要な点は遂行された。もちろん、今後の取り組む大きな課題−電磁場と物質との相互作用−が残されている。しかし、その前に、このように多くの現象を説明することに見事に成功したすばらしい学問体系もついにはつまずくことを明らかにしておこうと思う。物理学のどの分野でも深く探求すれば、いつでも何らかの困難にぶつかるものである。ここで、一つの重大な困難−古典的な電磁気学の欠陥−を議論しよう。すべての古典物理学は、量子効果を欠いているから欠陥があるとか、古典物理学は首尾一貫した理論だが実験と一致しないなどということもできる。しかし、古典的な電磁気学の理論は、それ自体が不満足な理論であるというのも面白い。この困難はマクスウェルの理論の考え方にあって、量子力学によって解かれるものでもなく、これと直接の関係があるものでもない。それならば”おそらく、そのような困難を気にすることはない。量子力学は電磁気学の法則を変えるであろうから、その変革の後にどんな困難が残っているかを調べればよい”というかもしれない。しかし、電磁気学が量子力学と結びついても、困難は残る。したがって、このような困難がどのようなものであるかを、いま調べておくことは決して無駄ではない。歴史的な重要さもある。さらに、理論のすみずみまで−その困難まで含めて−全部を完遂したという感じを得ることができるであろう。」 これからすごいことを学ぼうとしているみたいですね。更に続きがあります。

 「ここでいう困難は電磁気的な運動量とエネルギーとの概念を電子などの荷電粒子に適用しようとするときに生じる。単純な荷電粒子の概念と電磁場の概念とはある意味で矛盾したものである。困難を説明するために、エネルギーと運動量の概念を用いていくらか演習を行ってみよう。」

 最初に、1個の静止している荷電粒子のエネルギーを求めています(電子の模型として、半径aの球面上に一様に電荷qが分布していると考えています)。
   U = (1/2)(e2乗/a)        (7.2)
     ここで、e = qe2乗/4πε0 、 qeは電子の電荷
ここで、エネルギー無限大の問題が提起されます。 Feynmanの記述を掲げます。 「これはaをゼロにしない限り差支えない。しかし点電荷でaをゼロにするとき大きな困難が生じる。場のエネルギーは中心からの距離の4乗に反比例して変化するから、その体積積分は無限大になる。点電荷を囲む場には無限大のエネルギーが存在する。」

 「無限大のエネルギーがあるといけないだろうか。エネルギーが出ていくことができなくて、そこにいつまでもとどまっていなければならないとしても、無限大のエネルギーには本当の困難があるだろうか。もちろん、無限大であることがわかるような量は困ったものであるが、本当に重要なのは観測できる物理的効果があるかどうかということである。この問題に答えるには、エネルギー以外に何か別のものを考える必要がある。電荷を動かしたときのエネルギーの変化を問題にすることを考えてみよう。この変化がもしも無限大ならば、大変なことである。」

 ということで、最初に動く電荷の場の運動量(電磁気的運動量)と電磁気的質量が求められます。

 動く電荷の電磁気的運動量(v<<c):
    =(2/3)(e2乗/ac2乗)         (7.3)
 動く電荷の電磁気的質量(v<<c):
   m
elec =(2/3)(e2乗/ac2乗)        (7.4)

 ここはどうもとても重要そうなので、できるだけFeynmanの議論に追随してみようと思います。Feynmanは次のように述べています。 「この質量はどこからきたのだろうか。力学の法則においては、すべての物体は質量とよばれているものを”持っている”と考えた−これは速度に比例する運動量を”持っている”ことも意味している。今や我々は、荷電粒子は速度に比例した運動量を持っていると考えられることを発見した。質量というのは、実は電気力学的な効果にすぎないのかとも思われる。質量の原因はこれまでにまだ説明されなかった。ここで電気力学の理論まで進んできて、いままでに理解できなかった何かを理解する機会が大いにできてきたようである。思いがけなく−というより、マクスウェルやポインティングによって−どんな荷電粒子も電磁気的な影響によって速度に比例する運動量を持つことが明らかになった。」

 さらに議論が進められます。「しばらく保守的な観点に立って、2種類の質量があり、物体の全運動量は力学的運動量と電磁気的運動量との和であるとしておこう。力学的運動量は”力学的”質量m
mech を掛けたものである。どのくらいの運動量を持っているか、どのように軌道上を運動するかを調べて粒子の質量を測定する実験においては、全質量が測定される。一般に運動量は全質量(mech + melec)に速度を掛けたものである。したがって観測される質量は二つ(あるいは、他の場があればさらに多数の)部分からなることがあり得る。すなわち、力学的な部分と電磁気的な部分との和である。電磁気的部分が確かにあることがわかり、その表式も求められた。そして、力学的質量は全然存在しないもので、質量はすべて電磁気的なものであるという、思いがけない可能性があり得る。」 うわー、これは衝撃的な証言ですね。今まで電子は質量があるということでしたが、その質量が電磁場による”質量”の可能性があるということです。

 今までは、速度v<<cの場合でしたが、ローレンツは荷電粒子が高速になった場合の運動量を次のように求めました。これは相対性理論が出る前に求められたものだそうです。

 動く電荷の電磁気的運動量(任意の速度):
    =(2/3)(e2乗/ac2乗){/√(1 - v2乗/c2乗)}     (7.7)

 ここで場のエネルギーの話に戻るのですが、大きな困難が発生するのだそうです。すなわち、(7.2)と(7.4)とを結びつけると、
   U
elec = (3/4)melec2乗 となります。
これは相対性理論の前に発見された式であり、アインシュタインが発見した相対性理論から得られる式U = mc2乗とは一致しません。U = mc2乗はどんなときでも成立しなければならないので、大きな困難に直面することになったのだそうです。へー、すごいな!と感嘆するばかりです。

 この後、”電子のそれ自身に対して及ぼす力”に関する議論が続きます。Feynmanは、「加速度がある場合、電子の各部分の間の力を調べると、作用と反作用とが完全に等しくなくて、電子はそれ自身に対して加速度と逆向きの力を及ぼすことがある。」と言ってます。その力は次のよう表わされるそうですが、議論は大変難しく、私にはよく理解できませんし、議論を追いかけることも困難です。

   F = α(e2乗/ac2乗)(d2x/dt2)
      - (2/3)(e2乗/c3乗)(d3x/dt3)
      - γ(e2乗a/c4乗)(d4x/dt4) ・・・       (7.9)

 続いて、”マクスウェルの理論を修正する試み”というタイトルで、更にわけのわからない議論が展開されていきます。Feynmanは冒頭に次のように述べています。「電子を単なる点電荷とする考えが保たれるようにマクスウェルの電気力学を修正する可能性について議論しよう。種々の試みがあり、いくつかの理論では、電子質量全部を電磁気的にするようなことも可能である。しかしこれらの理論はすべて消え去った。しかし、今までに提出された試みのいくつかを論じ、人智の努力のあとをみるのは興味のあることである。」

 ということですが、途中の議論はもちろん省略せざるをえません。Feynmanの結論めいた文章だけを掲げておきます。 「ここでは次の点を強調するだけにしておこう。(1)電磁気学は電磁的質量の存在を予言している。しかし、これを明らかにしようとすると、無撞着な理論を作り得ないために失敗する−量子論的な修正についても同様である。(2)電磁気的質量の存在を示す実験的証拠がある。(3)これらの質量は電子の質量とほぼ同程度である。そこで我々は再びローレンツの元の考え、すなわち、電子の全質量はおそらく純粋に電磁気的で、0.511MeVの全体がおそらく電気力学によるものであろうという考えに戻ってくる。これが真実か否かは、理論の存在しない現在は、答えられないことである。」 

 どうも、私の鈍い直感ですが、以上の話は、TomonagaやFeynmanが提唱した”電磁場の繰込み理論”と関連している話のように思ったのですが、違うでしょうか?最後に、原子核の粒子の質量の中の電磁気的でない部分、核力の場についての話があります。ここで、Yugawaのπ中間子や湯川ポテンシャル、湯川”光子”の話などが出てきます。しかし、これは私の能力を大幅に超えており、これ以上記述するのは困難ですので、やめさせていただきます。

                                     2014年01月21日

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08.電磁場内の電荷の運動 2014年01月21日

 本章では、種々の状況における電荷の運動が定性的に調べられています。これらの内容はかなり技術的なものが多く、私にはいつもながらよく分かりませんし、説明もできません。よって、節のタイトルを掲げるだけで、本章は終わりとします。
 8−1 一様な電場あるいは磁場の中の運動
 8−2 運動量分析
 8−3 静電レンズ
 8−4 磁気レンズ
 8−5 電子顕微鏡
 8−6 加速器の誘導磁場
 8−7 交替勾配集束
 8−8 直行する電場と磁場の中の運動

                                     2014年01月21日

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