さ迷い歩き 「電磁波の海」 (4)-3
= ファインマン物理学V 電磁気学 =

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(W巻:電磁波と物性))
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    目  次

    内  容 (V巻:電磁気学)          内   容  
00 ファインマンと「ファインマン物理学」         
01 電磁気学  1st page 13.08.05   11 誘電体の内部   
02 ベクトル場の微分       12 静電アナログ   
03 ベクトルの積分       13 静磁場    3rd page  13.10.16
04 静電気  2nd page   13.08.22   14 色々な条件下の磁場  13.10.16
05 ガウスの法則の応用        15 ベクトルポテンシャル   13.10.17
06 色々の場合の電場     16 誘導電流   13.10.22
07 色々の場合の電場(続き)     17 誘導法則 13.10.23
08 静電エネルギー      18 マクスウェル方程式  13.10.25
09 空中電気 (省略)      19 真空中のマクスウェル方程式の解 13.10.26
10 誘電体     20  電流と電荷のある場合の
  マクスウェル方程式の解
 
13.12.17
       


 前章で静電気についての簡単な説明は終わりで、ここからは本来の目的である電磁波の話に入ることになります。しかし、電磁波の話に入るには、どうしても磁場あるいは磁気力について理解が必要です。ということで、導入部として静磁場および電磁誘導の話をして、最後にマクスウェルの方程式へと進んで行きます。


13.静磁場 2013年10月16日

 まずは、Feynmanの磁場の説明を掲げます。 「電荷に働く力は、電荷のある場所だけでなく、動く早さにも関係する。空間の各点に特有な二つのベクトル量があって任意の電荷に与える力を決定する。まず電気力がある。これは電荷の運動に無関係な力の成分を与える。これを電場で記述する。次に磁気力といわれるもうひとつの力の成分がある。この力は電荷の速度に依存する。この磁気力は妙な方向性をもつ。空間のどの特定の点でも、力の方向と大きさがどちらも粒子の運動方向に依存する。どの時刻にも力はいつも速度ベクトルに直角である。最後に、力の大きさはこのきまった方向に直角な速度成分に比例する。これらすべての振る舞いを磁場ベクトルを定義することによって記述できる。は空間の決まった方向と、速度にかかる比例定数の両方を表わし、磁気力をq x と書くことができる。」

 なんともまだるっこい説明ですが、要するに電荷に働く全電磁力(ローレンツ力)は次式のようになるということです。

 ローレンツ力:
    = q ( + x )               (13.1)

 続いて電流密度と電流の定義があります。

 電流密度:
    = ρ                        (13.3)
    = Nq                        (13.4)
 電流:
   I = ∫
s dS                    (13.5)

 電荷は無くならないという物理の基礎法則があるので、電荷は保存されます。これは次のように書き表されます。

 電荷の保存則:
  積分系: ∫ dS = -d/dt(Q
内部)       (13.6)
  微分系: ∇・ = -∂ρ/∂t            (13.8)

 次に、定常電流が磁場を作るというアンペールの法則に移ります。これはマクスウェルの4つの方程式のうち、時間微分を含む項を落とした次の2つの静磁気の方程式から導かれます。
  ∇・ = 0                      (13.12)
  c2乗∇x = /ε0                (13.13)

 これに関連して、Feynmanは磁場について次のように述べています。 「さて、式(13.12)と(13.13)をみて、その意味を考えよう。はじめの式はのdivが0ということである。静電気の場合の対応する式∇・ = ρ/ε0とくらべると、電荷に類似の磁荷は存在しないと結論できる。の線の出発点になる磁荷はない。ベクトル場Bの”線”を使って考えると、それがはじまりも終わりもない。ではどこから来るのだろう。磁場は電流があると”出現”する。磁場の”curl”は電流密度に比例する。電流があると、電場をとりまく磁場の線がある。の線の始まりも終わりもないのだから、それはよく自分にもどってきて、ループをなす。しかし線が単純なループにならないような複雑な状況もありうる。しかしどんなことが起きようとも、点から発散することは決してない。磁荷が発見されたことはないので、∇・ = 0である。ここまでのことは静磁気だけでなく、いつも正しい−動電磁場にも。」

 この文章では分かりにくいのですが、昔の電磁気学の教科書では、静磁気を静電気に対応させるために”磁荷”を仮定して議論しているものがあったように思いますが(私の勘違いかもしれませんが)。このあたりを方程式(divやcurl)とからめて理解しておく必要があります。私もようやくdivやcurlの式と物理の関連が少し分かりかけてきたような気がしています(本当かな??)。

 ストークスの法則を使って、次のようなアンペールの法則が導かれます。この法則は、ガウスの法則が静電気でしたのと同じ役割を静磁気で演ずることになるのだそうです。

 アンペールの法則:
   ∫
Γ・d = IΓを貫く/ε0c2乗           (13.16)

 この後は、電磁場の相対性という重要な議論があります。特殊相対理論は電気工学系では教わっていないので、独習してもなかなか理解できません。ブルーバックスなどの書物で相対性理論の話を図解を入れて解説していますが、数式を用いてきちんと理解しないと、わかったようでも、結局基本的なことが何もわかっていないということになってしまいます。しかし、磁気を理解するにはこの相対論(と座標系)を飛ばすわけにはいかないということです。

 まずは、Feynmanの話を聞きましょう。 「電荷に働く磁気力が速度に比例すると言ったとき、諸君の中には次の疑問をもった人があろう。”どんな速度だろう。どんな座標系を基準としてだろう”。この章のはじめに与えたの定義から明らかなように、このベクトルが何であるかは電荷の速度をきめるための基準系に何をえらぶかに関係する。しかし磁場をきめる正当な座標についてはまだ何も言っていない。」 「任意の慣性系が正当な座標系であることが分かっている。また磁気と電気とは独立ではなく、一つの完全な電磁場としていつも一緒に考えねばならない。静電磁場ではマクスウェル方程式は別々の対に分かれ、一つの対は電気、もう一つは磁気で、その間に結びつきはないようにみえるけれども。本質的には相対性原理から起こる大変密接な結びつきがある。歴史的にいうと相対性原理はマクスウェル方程式の後に発見された。事実電気と磁気の研究がついにアインシュタインの相対論の発見へと導いた。しかし相対性原理が電磁気に適用されるとしたなら−事実そうだが−相対性の知識から磁気力について何が分かるかみよう。」

 こうしてFeynmanは、一つの負電荷(-q)が速度v0で電流 が流れている針金に平行に動いているという例で、基準座標を(a)針金に固定したケースと(b)負電荷(粒子)に固定したケースに分けて、電磁場の相対性を詳細に説明してくれます。しかし、ここでは図を用いて説明することはできないので、残念?ですが結論の一部を以下に掲載するだけで、説明は省略させてもらいます。

 電荷(粒子)の速度がvである座標系において、
  電荷密度:   ρ = ρ0/√(1 - v2乗/c2乗)
  電流密度:    = ρ = ρ0 /√(1 - v2乗/c2乗)   (13.34)
  粒子のエネルギー: U = m0c2乗/√(1 - v2乗/c2乗)
  粒子の運動量:    = m0 /√(1 - v2乗/c2乗)

 次の方程式で、ある座標系のρ、 と他の座標系のそれとを結びつけることが出来るのだそうですが、私にはほとんどわかりません。

  x' = (x - ut)/√(1 - u2乗/c2乗)  j'x = (jx - uρ)√(1 - u2乗/c2乗)
  y' = y                    j'y = jy
  z' = z                    j'z = jz
  t' = (t - ux/c2乗)/√(1 - u2乗/c2乗)
                    ρ' = (ρ - ujx/c2乗)√(1 - u2乗/c2乗)

 最後に、重ね合わせの原理と右手の法則について述べられています。まずは、磁場の基礎方程式(13.12)と(13.13)がに関して線形であるため、磁場にも重ね合わせの原理が当てはまるということです。電流のつくる磁場に対するような右手規則については、次のように難しいことが述べられています。 「鉄の磁石の磁荷が物質内の電子スピンによって理解されることも学んだ。スピンする電子の磁場の向きはスピン軸と右手規則で結びついている。Bは”手”の規則によりきめられる−ベクトル積やcurlを含む−ので、軸性ベクトルといわれる。」 「しかし物理的に観測可能な電磁量は右(または左)手規則に関係がない。電磁相互作用は鏡映に対して対称である。二つの電流間の磁気力を計算してみると、結果は右手から左手にかえても不変である。われわれの方程式から、右手規則とは関係なく、平行電流は引き合い、反対電流はしりぞけ合う結果が出る。 <途中省略> 物理学者は最近すべての自然法則は必ずしも鏡映に対して不変とは限らないことを発見して驚いたが、電磁気の法則は実際にこの基本的対称性をもっている。」 はあー、難しくてちんぷんかんぷんです。

                                        2013年10月16日

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14.色々の条件下の磁場 2013年10月16日

 本章では、前章に続いて静磁場(定常電流に伴う磁場)の問題が取り上げられます。最初に、前章でも挙げた電流と磁場を結ぶ次の基本方程式を、数学として一般的に解く方法が述べられます。このとき、ベクトルポテンシャルというわけの分からない概念が導入されるのですが、なかなか物理的イメージが湧いてきません。
  ∇・ = 0                      (14.1)
  c2乗∇x = /ε0                (14.2)

 Feynmanは冒頭に次のように述べます。 「静電場では、電荷の位置が分かっているとき直接に場を求める方法が知られていた。このときには、電荷の積分−式(4.25)−を求めてスカラーポテンシャルφが計算できる。」
  φ(1) = (1/4πε0)∫(ρ(2)/r12)dV2       (4.25)
 そして、同様の方法で、すべての動く電荷のつくる電流密度jが分かっているときの磁場を求めることができることを示すということです。論理の詳細は省きますが、の”div”はいつも0であるので、は別のベクトル場の”curl”として表すことができます(curlのdivは必ず0だからです)。したがって、は必ずと呼ぶ場(ベクトルポテンシャルと呼ぶ)と次のような関係で結ばれているとみなすことができるというのです。

    = ∇ x                  (14.3)
 成分で表現すると次のようになる
   Bx = (∇ x )x = ∂Az/∂y - ∂Ay/∂z        (14.4)
   By = (∇ x )y = ∂Ax/∂z - ∂Az/∂x
   Bz = (∇ x )z = ∂Ay/∂x - ∂Ax/∂y

 Aの完全な定義をするためには、次のような規定が必要であるとのことです。

   ∇・ = 0                  (14.4)

 続いて、ベクトルポテンシャルを理解するために、色々な例が述べられます。一つは、任意のループをまわるの循環は、ループの流束に等しいということが得られます。式で書くと次のようになります。

   ∫Γ・d = ∫Γの内部da             (14.11)

 つぎに、次のようなを電流密度の関数とした式が求められます。

   (1) = (1/4πε0 c2乗)∫( (2)/r12)dV2     (14.19)

 これは、次のスカラーポテンシャルの式に対応するものです。
   φ(1) = (1/4πε0)∫(ρ(2)/r12)dV2       (4.25)

 この式から、の各成分は、電荷密度ρ1 = j x/c2乗、ρ2 = j y/c2乗、ρ3 = j z/c2乗 に対する三つの仮想的な静電気の問題をといて求めることができるということを意味しているそうです。 Feynmaは次のように述べています。 「それは静電気より少しこみ入っているが、考え方は同じである。いくつかの特殊なばあいをとってベクトルポテンシャルを求めて上の理論の説明をしよう。」 ということで、この後、直線電流、長いソレノイド、小さいループの電流の場(磁気双極子)や回路のベクトルポテンシャル、ビオ-サバールの法則などが取り上げられますが、ここでは省略します。

 電気工学系の授業では、ベクトルポテンシャルを学習した記憶がありません(もしかすると、教わったのに、頭が悪くて忘れたのかもしれませんが)。したがって、本章の説明では、スカラーポテンシャルと対応させてベクトルポテンシャルを導入すると、どうなるの?といった感じです。しかし、次章で説明がありますが、量子力学との関係もあるようで、相当に重要な概念のようです。

                                       2013年10月16日

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15.ベクトルポテンシャル 2013年10月17日

 小さな長方形ループ電流は、次のような磁気双極モーメントをもちます。
   μ = I A                  (15.1)
または、
   μ = I A
 この電流ループの力学的エネルギー(ループ電流の全エネルギーではない)、次のようになるそうです。
   U
力学 = -μ             (15.4)
 電流ループの全エネルギーは次のようになります。
   U
= -U力学 = +μ

 さらに、定常電流が磁場内にあるときのエネルギーが次のように求められます。
   U = (1/2)∫dV           (15.20)
これは、次の静電エネルギーの式に対応するものです。
   U = (1/2)∫ρφdV           (15.21)

 これから、静磁場と静電場との対応があるように思われますが、Feynmanは次のように述べています。 「従って、Aを静磁場の電流に対する位置エネルギーの一種と考えてもよい。しかし、不幸にもこの考えはあまり役に立たない。それは静磁場にしかあてはまらないからである。実際(15.20)も(15.21)も場が時と共に変化するときには正しいエネルギーではない。」 私には理解不能です。

 続いて、Feynmanはベクトルポテンシャルの意義について述べています。長くなりますが、重要な点なので掲載してみます。 「この節で次の疑問について論じたい。ベクトルポテンシャルは計算をするのに便利である道具にすぎないのか−スカラーポテンシャルが静電気で役立ったように−それとも”現実の場”であるのか。動く粒子の力をきめるという意味で磁場は”現実の場”であろうか。”現実の場”という言葉はあまり深い意味をもたないと言いたい。まず第一に恐らく諸君は磁場が非常に”現実的”だとは感じないにちがいない。元来場という概念自身どちらかというと抽象的なものだから。諸君が手をのばしても磁場を感じることはできない。その上、磁場の値さえあまりはっきりしていない。たとえば適当に動く座標系をえらぶと与えられた点の磁場をなくすことさえできる。」

 「われわれがここで、”現実の”場というのはこうである:現実の場とは遠隔作用の考えを避けるために使う数学的な関数である。一点Pに電荷があるとすると、これはPから離れた地点にある他の電荷の作用をうける。この相互作用の記述の仕方の一つは、他の電荷がPの近傍に−何であれ−ある”条件”をつくると言うことである。電場、磁場を与えることによって記述されるこの条件を知れば、粒子の行動は完全に決定される−その際この条件が何に由来するかは関係しない。」

 「言いかえると、もし他の電荷が変っても、点Pの電場、磁場で記述されるPにおける条件が同じであれば、粒子の運動も同じである。そうすると、一点で起こる現象がその点で与える数値だけできめられるように定めた1組の数値が”現実の”場である。ほかの場所で起こっていることをそれ以上知る必要はない。ベクトルポテンシャルが”現実の”場かどうかを論ずるのはこの意味である。」

 「ベクトルポテンシャルが一義的でない−任意のスカラー量のgradを加えても粒子に働く力に変化がない−のを奇妙に思う人もあろう。しかしこれは、われわれの言う意味の現実性とは何のかかわりもない。たとえば、相対論的変換によって磁場はある意味で変えられる(も同様である)。しかし場がこのように変えられ得るものであっても、何が起きるかについて気に病んだりはしない。そこに実際には何のちがいもない。それはベクトルポテンシャルが磁気現象を記述するに適当な”現実の”場であるか、単に役に立つ数学的手段であるかという疑問とは何の関係もない。」

 「われわれがを導入したのは、重要な物理的意義をもっているからである。前節でみたように電流のエネルギーに関係があるだけでなく、上に述べた意味で”現実の”物理場でもあるからである。古典力学では粒子にはたらく力が
    = q( + x )   (15.26)
とかかれることは明らかであって、力が分かると運動はすべて決定される。ソレノイドの外部のようにが0でなくてもが0のところではAの影響は認められない。しかし量子力学の関係する現象で、上に定義した意味でAが実際”現実の”場であることを示すものがあることがわかった。」

 長々と書いたので、よくわからなくなってしまいそうですが、要するにベクトルポテンシャルが何故導入されるのかを説明しているということです。でも私にとっては、哲学と数学が混じって論じられているようで、ただただすごいことが話されているんだなと思うだけです。

 続いて、ベクトルポテンシャルと量子力学の関係が議論されます。 Feynmanは先ずはじめに次のように述べています。 「古典力学から量子力学に移ると概念の重要性に大きな変革が起こる。第U巻でそれについていくらか述べた。特に力の概念が次第にうすれ、これに反してエネルギー、運動量の概念が最高に重要となる。諸君は粒子運動の代りに時空内で変化する確率振幅が問題となることを記憶しているだろう。この振幅には、運動量と関係のある波長、エネルギーと関係のある振動数が含まれている。波動函数の位相を決定する運動量とエネルギーはこのように量子力学で重要な量である。力の代わりに相互作用が波の波長に変化を与える有様を扱う。力の概念は存在するにしても全く2次的になる。」 こうして、これ以降、スカラーポテンシャル、ベクトルポテンシャルが量子力学においてどのような形で入っているのかを、具体例で説明があります。しかし、話はかなり長く、かつ難しいので、結論だけを述べて後は省略させてもらいます。

 「量子力学で重要なのは近い軌道間の干渉である。この効果はいつもAが点から点へ変化する仕方に関係し、従ってA自身でなくその微分に関係するという結果になる。それでも、ベクトルポテンシャルA(スカラーポテンシャルφも同様だが)が物理を記述する一番直接的なものとなる。このことは量子力学を深く追求するほど明らかになる。量子電気力学の一般理論ではベクトルとスカラーポテンシャルをマクスウェル方程式に代わる方程式の中の基本的な量として採用する。は現代の物理法則の表式からは次第に消滅しつつある。それに代わりつつあるのがとφである。」

 量子力学ではベクトルポテンシャルが重みを増してくるのか。知らなかった。知らなかった。

 最後に、本章のまとめが述べられています。 「静電磁場の勉強も終わりに近付いた。この章でもすでに場が時と共に変化するとき起こることに注意しなければならないきわどい所まで来ている。磁気エネルギーの取り扱いでも相対論的議論に逃げこんでやっと避けることができた。それにしても、われわれのエネルギー問題の扱い方はやや人工的で神秘的でさえある。というのはコイルが動くと実は変化する場を生ずるはずだからである。いまや時間的に変化する場の問題−電磁力学の問題−をとり上げるべき時である。これは次章でやる。しかしまずニ三の点を強調しておきたい。」

 さらに、Feynmanの電磁気学の講義の進め方についての考えが披露されます。 「この講義のはじめに電磁気学の完全な正しい方程式を示したが、すぐに不完全な例題の勉強をはじめてしまった−その方がやさしかったから。やさしい静場の理論からはじめてそのあとになって初めて動場を含むさらに複雑な理論に進むのは大変有利である。そうすれば一どきに学ぶ新しい事がらが少なくて、さらに大きい仕事に向かって諸君の知的筋肉を発達させるに十分な時間がある。しかしこのような手段には危険も伴う。完全な物語を知るようになるまえに、途中で学んだ不完全な真理がしみこんで完全な心理と思われがちになる−つまりほんとうに真実のものと、時たま真実であるものが混同されるおそれがある。それで表15-1にわれわれが学んだ重要な公式をまとめあげ、そのとき一般的に真実のものと静場では正しいが動場ではそのまま成り立たないものとを区別しておいた。このまとめはまた、これからわれわれのしようとすることも一部含んでいる。」

 ということで、表15-1を掲げますが、”静場でのみ真実な”式は省略し、”つねに真実な”式のみ記述します。

   = q( + x )   ・・・ ローレンツ力
  ∇・ = ρ/ε0      ・・・ ガウスの法則
  ∇x = -∂/∂t    ・・・ ファラデーの法則
  E = ∇φ - ∂/∂t
  ∇・ = 0          ・・・ 磁荷の非存在
   = ∇x

  c2乗∇x = /ε0 + /∂t
  ∇2φ - (1/c2乗)(∂2φ/∂t 2) = -ρ/ε0
  ∇2 - (1/c2乗)(∂2/∂t 2) = - /ε0c2乗
 ただし、 c2乗∇・A + ∂φ/∂t =0
  φ(1, t ) = (1/4πε0)∫(ρ(2, t ')/r12)dV2
  A(1, t ) = (1/4πε0 c2乗)∫( (2, t ')/r12)dV2
 ただし、t' = t - r12/c
  U = ∫〔(ε0/2) + (ε0c2乗/2)

 この後、表の式に関する注意点が述べられていますが、省略します。ということで、静電磁場は終わり、いよいよ動電磁場に移るのですが、本当に心もとないですね。といって悩んでいてもしょうがないので、先に進むことにします。

                                     2013年10月17日


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16.誘導電流 2013年10月22日

 静電磁気が終わり?、いよいよ電磁誘導の話に移ります。本章の内容は、電気工学の話が中心で、かつ定性的な話となっています。数式を使えばわかりやすいというわけでもないですが、電気工学についての知識がないとイメージしにくいし、また概説も大変難しいといえます。Feynmanは冒頭で次のように述べています。 「1820年の電気と磁気の間の密接な関係の発見(エルステッドによる電流と磁石の相互作用の発見のことと思います)は非常にめざましいものであった。最初の発見は針金に流れる電流が磁場をつくることであり、同じ年のうちに電流を運ぶ針金が磁場から力を受けることが発見された。力の存在の発見に伴っておこる大きな期待の一つはそれを原動機に利用して仕事させる可能性である。上に述べた発見後間髪を入れず、電流の流れている針金に作用する力を利用した電動機(モーター)の設計が始まった。」

 この後、電磁モーターの原理の説明や検流計(ガルバノメーター)の話があり、更に電磁誘導の発見が次のように述べられています。 「やっと1840年にファラデーが見落とされていた本質的な要因を発見した。それは変化するものがあるときに限って電気的作用が存在することである。1対の針金のどちらかの電流が変化すると、別のほうに電流が誘起されるし、ある電気回路の近くで磁石が動くと、電流が起こる。このとき電流が誘導されるという。これがファラデーが見付けた誘導作用である。この発見によって静電磁場といういくらか退屈な問題が多種多様な驚くべき現象にみちた魅力的な動的な学問へと一変した。」

 Feynmanは、誘導電流の説明に入るに当たって、話の進め方について次のようにいってます。 「この章でそれをいくつか定性的に記述しよう。すぐに分かることだが、ややもすると事情が複雑になってすみずみまで定量的に分析できなくなることがある。しかし気にする必要はない。この章の主な目的は第一に諸君を複雑な現象になじませることにあるのだから。くわしい解析は後の章でやることになる。」 少しほっとしました。私もポイントを簡単に記述するだけに留めます。

 ファラデーが発見した電磁誘導による起電力(emf)の発生は、次のように三つのケースがあります
  @磁場のあるところで針金を動かす
  A針金の近くで磁石を動かす
  B針金の近くを流れる電流を変化させる

 電磁モーターは、針金に電流を流して回転させる代わりに、外力でもってコイル(針金)を回転させると、その針金は磁場内を動き、コイルの回路にemfができで、その結果発電機となります。すなわち、発電機のコイルは運動によって誘導起電力をもち、そのemfの大きさはファラデーの発見した簡単な誘導規則で与えられます。

 磁束規則: ループを貫く磁束(Bの法線成分をループの面積にわたっ
     て積分したもの)が時と共に変化するとき、emfは磁束の変化率
     に等しい

 続いて、Feynmanはファラデーの発見の興味ある特色として、変圧器と自己誘導の話をします。 「ファラデーの発見の最も興味ある特色の一つは動くコイルに生ずるemfではなく−これは磁気力qを使って理解できる−一つのコイルの変化する電流が第二のコイルにemfを生ずることである。そして全く驚くべきことに第二のコイルに誘導されるemfの大きさも同じ”磁束規則”で与えられる。つまりemfはコイルを貫く磁束の変化率に等しい。 中略 コイルを二つこのように組み合わせたものを変圧器とよぶ。」

 唯1個のコイルのなかにも変動電流があれば誘導作用があり、その電流にemfが生じます。それは自己誘導といいます。これに関してレンツの法則というものがあります。Feynmanは次のように述べています。 「emfが磁束変化率に等しいという”磁束規則”を述べた時に、emfの向きを定めなかった。レンツの法則という簡単な規則があってemfがどちら向きかがきめられる。すなわち、emfは磁束変化に反対しようとする。つまり、誘導emfは、電流がemfの方向に流れようとするとき、emfを生ずるBの変化にさからう磁束を生ずる方向にある。」

 最後に、Feynmanは物理学と電気工学の関係を述べています。すべて掲げると膨大になるので、抜粋して掲げます。 「変化する磁束がemfをつくるという注目すべき発見をファラデーが発見したとき、”それは何の役に立つのか”という質問をうけた(新しい自然の事実を発見した人はだれでもこのような質問をうけるものだ)。彼が発見したことといえば磁石の近くで針金を動かすとき微弱な電流ができたという奇妙な事にすぎなかった。どのような”利用が可能だろう。彼は答えた:”生まれたばかりの赤ん坊は何の役に立つだろう”。」 「このような間隙をとじて一番実用的に物事が働くようにするのが工学である。力を得るのに新しい基礎原理は何も必要としないけれでも、設計の問題の真剣な研究を必要とする。しかし基礎原理から実際の経済的な設計までは遠い道のりである。だがこのような綿密な工学的な設計によってはじめてボルダー・ダム(Boulder Dam)やそれに類するような大変なものが可能になったのである。」

 「誘導法則を研究するにつれて無限の応用や問題がとり上げられることを諸君は見るだろう。電気機械の設計の研究はそれ自体としても生涯の仕事になる。その方向にあまり立入れないが、誘導法則を発見した時に、突然われわれの理論が巨大な実用上の発展と結ばれたことをよく認識すべきである。しかしわれわれは、これらを工学者や応用科学者にまかせてはならない。彼等は個々の応用の詳細を解決することに興味をもっている。物理学は土台を提供する−応用できる基礎原理、何への応用であってもかまわない。(われわれは土台を仕上げたわけではない、まだ鉄や銅の性質をくわしく考察していないのだから。これらについて物理学はある程度ものがいえるのであるがそれは少しあとに述べる。) 現代の電気工学はファラデーの発見ではじまった。役に立たない赤ん坊が怪物に成長し、高慢な親父が思いもしなかった方法で地球の表面を変えた。

 本当にそうですね。こんな怪物に私が挑むことは、無理なようです。とは言っても、さようならというわけにもいかないので、足元あたりを調べさせてもらうほかありません。

                                       2013年10月23日



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17.誘導法則 2013年10月23日

 冒頭にFeynmanは本章の目的を次のように説明しています。 「前章で多くの現象をのべたが、それをみると誘導の効果は非常に複雑で面白い。これからこの効果を支配する基本原理を議論したい。われわれは導体回路に生ずるemfを、ループの長さにそってとった電荷にはたらく力を全部集めたものと定義した。もっとくわしくいうと、単位電荷あたりに働く力の接線成分を電線にそって回路を一まわり積分したものである。従ってこの量は、単位電荷が回路を一まわりするときもらう全仕事に等しい。 また”磁束規則”を与えたが、これによるとemfは導体回路を貫く磁束の変化する率に等しい。こうなる理由を理解できるかどうか考える。」

 変化する磁場に伴う電場の一般法則は、次のように表され、ファラデーの法則と呼ばれています。これはファラデーがはじめて見出し、マクスウェルが彼の方程式の一つとして最初に微分形で書いたものだそうです。

 ファラデーの法則:
   ∇x = -∂/∂t            (17.1)

 この方程式は、次のように動かない回路に対する”磁束規則”を与えます。

   ∫Γ・d = -∂/∂t(Sを通る磁束)    (17.3)
    左辺の積分はemfとなる

 ここで注意しなければならないことは、emfのE場からくる部分は物理的な針金の存在とは無関係であることです。場は自由空間にも存在できて、空間に固定された任意の仮想的な曲線のまわりのその線積分は、この曲線を貫く磁束の変化率に等しいといえます。ということは、変化する磁場がつくる起電力は導体がない所にも存在するということになります。つまり電線がなくても磁気誘導があります。それで空間内の任意の数学的曲線のまわりの起電力を考えてもよいということになるそうです。この起電力は、Eの接線成分の曲線にそう積分と定義されることになります。

 この後は、ベータトロン(誘導電場を伴う粒子加速器)や交流発電機の具体例が続き、インダクタンス(相互インダクタンス、自己インダクタンス)の説明があります。インダクタンスは電気工学では大変重要な概念ですが、ここでは、公式を掲げるだけに留めます。

 二つのコイルにおける相互誘導emf:
  Ε1 = M12(d I2/dt)          (17.27)
  Ε2 = M21(d I1/dt)          (17.26)
 相互インダクタンス:
  12 = 21 =
       = -(1/4πε0 c2乗)∫
(1)(2)(d2・d1)/r12   (17.30)
 二つのコイルにおける自己誘導emf:
  Ε1 = M12(d I2/dt) + M11(d I1/dt)    (17.32)
  Ε2 = M21(d I1/dt) + M22(d I1/dt)    (17.31)
 自己インダクタンス:
  11 = -L1 、 M22 = -L2         (17.33)
 単一のコイルのemf(逆emf):
   = -d I/dt                  (17.34)

 Feynmanは、ここで自己インダクタンスとニュートン力学とのアナロジーを述べています。 「どんなコイルでも電流変化に逆らう自己インダクタンスをもつので、コイルの電流は一種の完成をもつことになる。実際、もしコイルの電流を変化させようとすると、中略 電池とか発電機とかの外部電源につないでこの慣性に打ち勝つ必要がある。このような回路では、電流は電圧Vと次の関係にある。  = (d I/dt)  (17.35)  この式は1次元のニュートンの運動方程式と同じ形である。従って”方程式が同じなら解も同じ”という原則を使ってこの式を研究してよい。そこで、外部から与える電圧を外部から与える力Fに、コイルの電流Iを粒子の速度vに対応させると、コイルのインダクタンスは粒子の質量に対応する。」 なあるほど。こんなふうに異なる物理現象でも、方程式が同じということで、論理を考えることが大切なのですね。少し納得!

 最後に、仮想仕事の原理(私には理解できていない)等をもちいて、インダクタンスのエネルギーの議論を進めていますが、長くなるのと、私の理解不足のため、結論だけを以下に掲げます。

 静磁場のエネルギー:
   U = (ε0 c2乗/2)∫dV      (17.48)
 なお、静電場のエネルギーは次のようになります
   U = (ε0 /2)∫dV         (17.49)、(8.30)


                                       2013年10月23日


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18.マクスウェル方程式 2013年10月25日

 いよいよマクスウェルの方程式にやってきました。本章では進行する場すなわち電磁波の現象が説明されます。しかし、私には電磁波の物理的イメージがすっきりしません。他のブルーバックスの本での電磁波の解説を読んでもやはり電磁波の物理的イメージはよくわかりません。どうもマクスウェルの数式を理解し、それを物理現象に適用し、”ああわかったようだ”と思うしかないようです。まあぶつぶつ言ってもしょうがないので、頑張って前に進みたいと思います。

 まずは、冒頭のFeynmanの語りを掲げます。 「この章では、第4章のマクスウェル方程式にもどる。これまではマクスウェル方程式をきれぎれに勉強してきた。今は最後のひときれを加えて完全にまとめ上げる時である。こうして任意に時間的に変化する電磁場の完全な正確な物語となる。以前に言ったことと矛盾していてもこの章で述べることは真実であり、まえに言った方が誤である。なぜかというとまえにのべたのは、たとえば定常電流とか静止した電荷とかいう特別のばあいにしかあてはまらないからである。方程式を書くとき十分注意してその条件をのべたが、必要な条件を忘れて、まちがった式を記憶しすぎることはよくあることである。いまや全真実を、何の条件もなく(あるいはほとんどなく)述べることができる。」 うわー、時代がかった、大言壮語のように聞こえますね。

 そして、ここで完全なマクスウェル方程式と古典力学の法則の一覧表が掲げられています。Feynmanはこの表について次のように述べています。 「完全なマクスウェル方程式を、言葉と数式の両方で表18-1に示した。言葉と数式とが同等であることはもうなじみのはずである。諸君はこちらからあちらへとほん訳ができなくてはならない。」 ということです。まあ少しは勉強してきたので、ある程度は翻訳できると思っています。少し長くなりますが、表18-1(古典物理)という表を掲げます。

 マクスウェル方程式:
 T.∇・ = ρ/ε0    ・・・ (閉曲面を通る電束) = (内部の電荷)/ε0
 U.∇x = -∂/∂t  ・・・ (ループをめぐるの線積分)
                        = -d/dt(ループを通るの流束)

 V.∇・B = 0        ・・・ (閉曲面を通るの電束) = 0
 W.c2乗∇x = /ε0 +∂/∂t
                   ・・・ c2乗(ループをめぐるBの積分)
                        = (ループを通る電流)/ε0
                        + d/dt(ループを通る電束)

 電荷の保存(マクスウェルの方程式から導出される):
   ∇・ = -∂ρ/∂t   ・・・ (閉曲面を通る電流の流束)
                        = - d/dt(内部の電荷)

 *T:ガウスの法則、   U:ファラデーの法則
   V:磁荷の非保存則、 W:アンペールの法則(マクスウェルの項追加)
 力の法則(ローレンツ力):
    = q( + )  ・・・

 運動の法則(アインシュタインの修正によるニュートンの法則):
   d/dt() = 、 ただし、 = mv/√(1 - v2乗/c2乗)

 万有引力の法則:
    = -G(m1m2/r2乗)
 

 Feynmanは、マクスウェル方程式のW式の右辺第2項の追加について次のように解説しています。 「最後の式はいくらか新しい。これまでは、定常電流のとき成り立つ部分にだけ注目してきた。このばあいのcurlは /ε0c2乗に等しいが、正しい一般式は新しい部分をもっており、それはマクスウェルが発見した。マクスウェルの仕事が出る以前に電磁気の法則として知られていたのは第3章から第17章までに述べてきたものであった。なかでも定常電流のつくる磁場の法則はただ ∇x = /ε0c2乗 (18.1) として知られていた。」

 「マクスウェルはこれらの法則を考察し、上に示したような微分方程式として表現することからはじめた。(∇記号は発見されていなかったが、今日curlとかdivとかいう微分の組み合わせの重要さが分かったのは主にマクスウェルにとる。) 枯れはそのとき式(18.1)はどこか奇妙なことに気付いた。この式のdivをとると、curlのdivは必ず0なのだから、左辺は0になる。そこでこの式から のdivも常に0になる。ところが、もし のdivが0なら、任意の閉曲線を通って出る電流の全流束も0になる。」

 「任意の閉曲面から出る電流の流束は面の内部にある電荷の減少である。電荷はあちこち動けるから、確かにこれは一般に0ではあり得ない。実際、方程式 ∇・ = -∂ρ/∂t (18.2) は j の定義のようなものである。この式は電荷保存という基礎法則を表す−電荷の流出は供給のない所からは起こらない。マクスウェルはこの難点をみとめ、式(18.1)の右辺に∂E/∂tをつけ加えてこの難点を除くことを提唱した。彼はこうして表18-1の第4式 c2乗∇x = /ε0 +∂/∂t を得た。」 すごいですね!!すごいですね!!マクスウェルの第4式にはこんな経緯があったのですね。いやー、すごい!!

 ちょっと長くなりますが、Feynmanの説明を続けます。 「マクスウェルの時代には抽象的な場を使って考える習慣はなかった。マクスウェルは弾性体のような真空を考えるモデルを使ってその考えを議論した。また力学模型を使って新しい方程式の意味を説明した。彼の理論はなかなか受け入れられなかったが、それは第一にそのモデルのため、第二に最初のうち検証できなかったためである。今日ではわれわれは大切なのは方程式自身であり、それを得るために使ったモデルでないことをよく知っている。問題とするのは方程式が正しいかどうかである。その回答は実験をすれば出てくる。そして数えきれない位多くの実験がマクスウェル方程式をたしかめた。彼が建設するのに使った足場を外しても、マクスウェルの壮麗な殿堂はしっかりと立っている。彼は電気と磁気の全法則を集めて、一つの完成した美しい理論に仕上げたのである。」 すごい賛辞ですね。マクスウェルがやったことの偉大さをあらためて噛み締める次第です。

 次に、このマクスウェルの新しい項の効果について、二つの例を上げ、説明がありますが、ここでは省略します(一つは誘導電流の話で大変重要な概念ですが、説明が難しいので、断念します)。そして、Feynmanは再び仰々しい言い方で、次のように述べています。 このように、小さい表(表18−1)の中に古典物理学の基礎方程式が全部入っている。そこには言葉で書き直したり、余分のものまで入れる余地さえある。これは偉大な瞬間である。われわれは高い山に登った。K-2の頂上にあって、エベレストへの準備がほとんどできている。それは量子力学だ。すでに”Great Divide”(ロッキーの大分水嶺)の嶺にのぼり、向こう側を下るだけである。」

 「これまで方程式の理解の仕方を主に勉強してきた。すべてをひとまとめにまとめたのであるから、今度は方程式の意味するもの−われわれのまだ知らないどんな新しいものをもつか−を研究しよう。われわれはこれまでここに登ってくるため努力してきた。今までは苦しかったが、これからは下り坂をそりで快適に滑降し、われわれの達成のもたらす結果をすべてみることになる。」 いやー、個人的に言わしてもらうと、決してFeynmanのいうような状況ではありませんK-2に登った?Great Divideの嶺に達した?これからは下り坂で、そりで快適に滑降する?そんなばかな!これからも苦難の道が延々と続いているだけです。途中で挫折しなければラッキーというところです。とくに、エベレストにたとえられている量子力学については、私は登頂できませんでした(”さまよい歩き「量子の森」参照)。

 この後、”進行する場”という節で、電磁波の物理的イメージの説明があります。図を用いて、電場と磁場がどのように発生し、空間に伝播していくかを説明してくれているのですが、私の能力不足のため、十分な理解ができませんでした。 ところが、Feynmanは、「場は”とび立った”。空間を自由に伝播し、源とは何の結びつきもない、毛虫が蝶になったのだ!」と言ってます。毛虫が蝶になったらしいが、どうやって変身したのかの経緯が私にはよくわかりません。更に説明があります。 「どういう具合にこの電場と磁場の塊りが維持されるのだろう。ファラデーの法則∇x = -∂/∂t と、マクスウェルの新しい項c2乗∇x = ∂/∂t の二つの作用を結合したものというのが答えである。このため場は存在し続けるほかない。磁場が消滅するとしよう。変化する磁場が電場をつくる。もしこの電場が消えようとすると、この変化する電場がまた磁場をつくる。このように絶えずからみ合い−一つの場から他方の場へと前後にゆれて−によって永久に進み続ける。消えることはできない。一方が他方をつくり、これがまたはじめのをつくりかえして−空間を伝わって行くダンスのように維持される。」 ということだそうです。・・・・???!!!・・・・

 ここで、伝播する電磁波の速度vが光速のc(約300,000km/sec)に等しいことが議論されます。 「マクスウェルがはじめて彼の方程式を使ってこの計算をしたとき、電場と磁場のかたまりがこの速さで伝わるはずだと言った。彼はまたこの値が光の速さと同じという不思議な一致も注意している。彼はいう、”光が、電気や磁気現象の原因であるのと同じ媒質の横振動であろうという推論をほとんどさけるわけにはいかない”。 マクスウェルは物理学の大統合をなしとげた。彼以前には光があり、電気、磁気があった。後の二つはファラデー、エルステッド、アンペールの仕事で統合された。そこへ突然、光は”別のもの”ではなく、新しい形態の電磁気−一片の電場と磁場が自分で空間を伝播するもの−にすぎないものとなった。」

 そして、任意の電磁波にもあてはまる、特別な解のもつ二、三の特徴が述べられています。

 1.磁場は波面の運動方向に垂直である
 2.電場も波面の運動方向に垂直である
 3.二つのベクトルEとBも互いに直交する
 4.電場の大きさEは磁場の大きさBのc倍である(E = cB)

 最後に、マクスウェルの方程式を解く方法についての考察があります。Feynmanはその意義を次のように述べています。 「これから少し数学的なことをやってみたい。マクスウェル方程式をもっと簡単な形にしてみる。君たちはかえって厄介にしていると思うかも知れないが、少しがまんすると急に簡単になる筈だ。今までに君たちはマクスウェル方程式のめいめいにはすっかり慣れたわけだが、まとめる必要のある部品は多い。」 ということですが、私にとってはがまんができないほど大変難しく、また説明も困難ですので、結論の式だけ掲載しておきます。

   = ∇x               (18.16)
   = -∇φ - ∂/∂t        (18.19)
  ∇2 - (1/c2乗)∂2/∂t2 = - /ε0c2乗    (18.24)
  ∇2φ - (1/c2乗)∂2φ/∂t2 = - ρ/ε0      (18.25)
   ただし、∇ = -(1/c2乗)∂φ/∂t ととる

 Feynmanは、以上の式の意義を次のようにまとめています。 「きれいな方程式ではないか!きれいなのは第一に、方程式はうまく分離していて、電荷密度でφがきまり、電流でがきまるからである。つぎに、左辺はラプラシアンと(∂/∂t)2乗が一緒にあって少し変にみえるが、ほどいてみると 
  ∂2φ/∂x2 + ∂2φ/∂y2 + ∂2φ/∂z2 - (1/c2乗)∂2φ/∂t2
                        = -ρ/ε0   (18.26)
 これはx、y、z、tについて良い対称性をもつ。もちろん時間と空間はちがう(単位が異なる)から -1/c2乗は必要である。」

 「マクスウェル方程式はポテンシャルφとに対する新しい方程式になったが、四つの関数φ、Ax、Ay、Azについて数学的には同じ形をしている。これらの方程式の解き方がわかれば、は∇xと -∇φ-∂/∂t から求まる。こうしてマクスウェル方程式と完全に同値な別の形式の電磁気法則が得られたが、この方が多くのばあいずっと扱いやすい。 中略 式Wのマクスウェルの新しい項のために、場の方程式をAとφを使って簡単で電磁波の存在を明瞭に示す形に書くことができた。実用的にはを使ったもとの式が便利なことも多い。しかしそれは既に登った山の反対側にある。これからは山の別の側にこえていく用意ができている。物事は別の様相を呈し、新しい美しい展望を得るだろう。」 いやー、どこが美しい景色なんでしょう。式は比較的簡単で、きれいなものですが、これから進む道は茨の道の続く暗い森の中なのではないでしょうか。それでも、まあ一歩歩みを進めて、次章に向かいます。

                                       2013年10月25日


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19.真空中のマクスウェル方程式の解 2013年10月26日

 いよいよ混迷の世界に入ってきました。電磁波の海で溺れてしまいそうです。本章では前章で得られたマクスウェル方程式を解くというのです。私には相当な困難が待ち構えているようです。 Feynmanは次のように述べています。 「第18章でわれわれは完成された形のマクスウェル方程式に達した。電磁場の古典論について知るべきことはすべて次の4式の中に入っている。

 T.∇・ = ρ/ε0  
 U.∇x = -∂/∂t 
 V.∇・B = 0  
 W.c2乗∇x = /ε0 +∂/∂t

 この式をひとまとめにすると、注目すべき新現象があらわれる。運動する電荷のつくる場がその源から分離して空間を単独に伝播する現象である。」

 そして、前章で説明された平面波に基づいて、真空中の電磁波の波動方程式が導かれます。導き方の詳細はとても難しく、私には十分に理解できないので、ここでは記述することができません。いつものように重要な方程式だけを掲げることにします。

 自由空間では、スカラーポテンシャルφもベクトルポテンシャルのどの成分も、次のように同じ数式をみたします。

 スカラー、ベクトルポテンシャルの方程式:
   ∇2φ - (1/c2乗)∂2φ/∂t2 = 0       (19.6)
   ∇2 - (1/c2乗)∂2/∂t2 = 0        (19.7)

 φ、Ax、Ay、Azをψで代表させると、それは次のように3次元の波動方程式で表わされることになります。

   ∇2ψ - (1/c2乗)∂2ψ/∂t2 = 0             (19.8)
 ラプラス演算子を三つの項で展開すると
   ∂2ψ/∂x2 + ∂2ψ/∂y2 + ∂2ψ/∂z2
             - (1/c2乗)∂2ψ/∂t2 = 0       (19.9)

 自由空間では場EもBも波動方程式をみたすので、次の式が得られます。

   ∇2 - (1/c2乗)∂2/∂t2) = 0       (19.10)
   ∇2 - (1/c2乗)∂2/∂t2) = 0        (19.11)

 続いて、平面波について考察し、一般解を求めていますが、これも理解が困難です。それで、以下に二、三の結論と一般解といわれるものを掲げるに留めます。

 結論:
  1)平面電磁波では、場も場も進行方向に直角である
  2)とは互いに直角である
  3)電磁波は進行方向に直角な場の成分しかもたない
  4)ベクトル積は、波の進行方向に一致する
 波動方程式の一般解:
    = (0、Ey、Ez)、                 (19.25)
     Ey = f(x - ct) + g(x + ct)
     Ez = F(x - ct) + G(x + ct)
    = (0、By、Bz)、
     cBz = f(x - ct) - g(x + ct)
     cBy = -F(x - ct) + G(x + ct)

 波動方程式の一般解の求め方についてコメントがあります。すなわち、「どうしたら一般解が求まるだろうか。その答えは3次元方程式のすべての解は、すでに求めた1次元解の重ね合わせとして表わされることである。前に場がy、z方向に無関係としてx方向に進行する波の式を得た。明らかに、場がxとzに無関係でy方向に進む波を表わす別の解もある。またxとyに無関係でz方向に進む波を表わす解もある。もっと一般に、われわれの方程式はどんな方向に進行する平面波の解も持っている。また、方程式は線形だから、同時にちがう方向に進む波がいくら多くあってもよい。こうして3次元波動方程式の最も一般的な解はあらゆる方向に進むあらゆる平面波の重ね合わせである。」 ということです。

 この後、コーヒー・ブレイクのような話、電磁波のイメージについて述べています。すべて掲載するのがよいのでしょうが、とても長くなるので、一部だけ抜粋して掲げます。 「私は諸君にこれらの電場や磁場を想像するよう頼んでおいた。諸君はどうする。何をするのか。私自身電磁場をどうやって想像するか。私が実際見るのは何だろう。科学的創造の要請とは何だろう。部屋一杯に見えない天使がいると想像しようとするのとちがうだろうか。いや、見えない天使を理解するより高次の想像がいる。 中略 残念ながら諸君のためにそうするわけにいかない。私にはどうしたらよいかわからない。どんな意味であれ正確な電磁場の絵など想像できない。私は電磁場を知ってから長い−25年前私は諸君と同じようだった。そして私はこの波のうねりについて25年余計に考える経験をもっている。私が空間を伝わる磁場を記述しようとするとき、私はE場やB場の話をして腕を波うたせるので、諸君は私にそれが見えると想像するだろう。私に何が見えるか言おう。私にはぼんやりした影のような、くねった線がみえる−そこここにEとBがその上に何とか書いてあり、恐らく線のどれかは矢印をもっている−私があまり近よってみようとすると、ここの矢またはあそこの矢が消失する。空間をさっとすぎて行く場というとき、私が物を記述するために使う符号と物そのものとのひどい混乱をひきおこす。ほんとうの波に大体でも似ている絵を描くことも実はできない。従ってもし諸君がこのような絵を描くことを難しいと思っても、諸君の困難が特別だと気にする必要はない。 以下省略」 

 おわかりでしょうか。Feynman先生ですら電磁波をイメージすることはできないとおっしゃっています。ましてや、私のような素人が電磁波をイメージすることができないのは当たり前と言うことですね。ところで、ブルーバックスに「電磁波とはなにか 見えない波を見るために」という本があります。当然、一般学生に電磁波をイメージしてもらおうと、一生懸命図を描いて説明していますが、私にはやはり今一で、イメージすることはできませんでした。

                                       2013年10月25日

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20.電流と電荷のあるばあいのマクスウェル方程式 
                              2013年12月13日


 19章の終わりで、もう前進は難しいのかなと思い、しばらく最初の方から読み直しをしていました。しかし、悲しいかな、基本的なことが理解できていないようで、理解はさっぱり深まらず、2か月近くを過ごしてしまいました(旅行に行ったりして時間がなかったこともありますが)。ここでいつまでも立ち止まっていてもしょうがないので、とにかく匍匐前進することにしました。もう滅茶苦茶ですね。

 Feynmanは本章の目的を次のように述べています。 「前章で、マクスウェル方程式の解の中には電気や磁気の波があることが分かった。この波は波長によってラジオ、光、X線などの現象に対応する。すでに第U巻で光についてはくわしく勉強した(一応勉強はしたのですが、難しいのと、時間が経つとほとんど忘れてしまっているため、とても理解しているとはいえない状態です)。この章では二つの問題を結び付けようと思う。つまりマクスウェル方程式が実際に光についての現象の以前の取扱いの根底となりうることを示す。」

 ということで、光のところで天下り的に提示された、任意にうごく電荷のつくる電場の式が出てきます。これは、電荷が勝手にうごくとき、ある場所の今の電場は、現在でなく以前のある時刻の電荷の位置と運動にだけ関係することを表わしているのだそうです。つまり、その時刻は電荷から電場までの距離r'を速さcで行く光がかかる時間だけ以前の瞬間であるということができるのだそうです。

  = (q/4πε0)〔(r'/r'2乗) + {(r'/c)d/dt(r'/r'2乗)}
                 + (1/c2乗)d2/dt2(r')〕     (20.1)
 c = r' x

 Feynmanは、式の各項目について詳細に説明していますが、私にはわかったような、わからないような気分です(すなわち、よく理解できていないということですね)。ここで、Feynmanは、再度本章の話の進め方についてこう述べています。 「つぎにわれわれは二つの物を結びつけようと思う。マクスウェルの方程式があり、点電荷の場を表す式(20.1)がある。当然この二つが同じかどうか問題にすべきである。マクスウェル方程式から式(20.1)を導き出すことができたら、ほんとうに光と電磁気の結びつき分かったことになる。この結びつけをするのがこの章の主な目的である。」

 続いて、こうも述べています。 「しかしわれわれはそれをやりとげるまでにはいかない−数学的な細部がわれわれにとってあまりに複雑になって、殺人的な詳しさでやることはできなくなる。しかしわれわれは十分近くまで行くので、どう結びつくのか簡単に分かるようになるはずである。欠けているのは数学的細部だけである。諸君のうちにはこの章の数学が厄介すぎて、議論をあまり詳しく追って行く気がしない人もあるだろう。しかし私は以前に学んだことと、今学んでいることとを結びつけること、少なくともどうすれば結びつけられるかを指示することは大切だと思う。以前の章を見かえしてみれば、ある陳述を議論の出発点としてとったとき、いつもわれわれはそれが”基礎法則”になるの”仮設”であるのか、あるいはそれが別の法則からいつかは導かれるものなのかを注意深く説明したことに気付くにちがいない。この講義の精神からすれば、諸君に対し光とマクスウェル方程式とを結びつけてみせる責任がある。それが方々でむずかしくなったら、それが世の中で−仕方がない。」 ということで、少し気楽になって前へ進んでみたいと思います。

 まず、関連付けを行うマクスウェル方程式を掲げておきます。

   = -∇φ - ∂/∂t        (20.2)
   = ∇x               (20.3)

  ∇2φ - (1/c2乗)∂2φ/∂t2 = - ρ/ε0      (20.4)
  ∇2 - (1/c2乗)∂2/∂t2 = - /ε0c2乗     (20.5)

  ∇ = -(1/c2乗)∂φ/∂t     (20.6)

式(20.4)、(30.5)の解を求めるためには、まず次の方程式の解を求める必要があるそうです
  ∇2ψ - (1/c2乗)∂2ψ/∂t2 = - s           (20.7)
    ここで、s はわきぐち(源)とよばれるものです。

 ここからは私にはほとんど理解できない数学的展開が行われます。そして、”点”源に対応する球面波の(20.7)の解が魔法のように導き出されます。
  ψ(x,y,z,t) = (1/4π) {S(t - r/c)/r }           (20.13)
  S(t) = ∫s(t)dv                        (20.12)

 続いて、ひろがった源に対応する解を求めます。それは次のように表わされます。
  ψ(1,t) = ∫{s(2, t - r12/c)/4πr12 }dV2           (20.13)
これが任意の源のあるときの波動方程式の解ということです。ふーん・・・わからないなー。

そして数学的類似性から、次のようなマクスウェル方程式の一般解が導出されます。

 φ(1,t) = ∫{ρ(2, t - r12/c)/4πε0 r12 }dV2      (20.15)
 (1,t) = ∫{ (2, t - r12/c)/4πε0 c2乗r12 }dV2    (20.16)

 これから、場は式(20.2)や(20.3)を使えば、ポテンシャルを微分して得られるということだそうです。

 Feynmanは次のように締めくくっています。 「われわれはマクスウェル方程式を解いた。どんな電荷、電流があっても、上の積分によりポテンシャルが直接に分かり、微分して場が求められる。これでマクスウェルの方程式は終わりである(えーっ!???)。またこれでわれわれの光の理論へ戻る輪もとじることができる(えーっ!???)。光に関するわれわれの以前の仕事と結ぶためには、動く電荷のつくる電場を計算しさえすればよいからである。残る仕事は、運動する電荷を考え、積分によってポテンシャルを求め、 -∇φ - ∂/∂t の微分をしてEを出すことだけである。そうすると式(20.1)を得るはずである。やってみると厄介な仕事だが、原理はそうである。」

 「電磁気の世界の中心はここにある。電気、磁気、光の完全な理論−動く電荷の作る場の完全な記述など、それはすべてここにある。力と美の点で完成された、マクスウェルのうち立てた建造物がここにある。これは恐らく物理学の最大の成功の一つである。」

 ひゃー!すごいですね!驚異ですね!あまりよく分かっていないにもかかわらず、”マクスウェルの一大建造物”を間近に見ることができたのです。すばらしいな!

 と感激に浸っているわけにはいかないのです。いよいよ振動する双極子の場(電磁波)に突入です。 「われわれはまだ運動する点電荷の式(20.1)を導く約束を果たしていない。すでに得た結果を使っても、導くのはかなり複雑である。この講義の第U巻以外どこの文献にも式(20.1)はのっていない。それだから導くのはやさしいことでないのが諸君にも分かるだろう。(運動する電荷の場は、もちろん、同等な多くのちがった形に書かれている。)ここでは、式(20.15)と式(20.16)が式(20.1)と同じ結果を与えることを示すだけに制限しなくてはならない。まず、式(20.1)が正しい場を与えることを、荷電粒子の運動が非相対論的であるという条件だけつけて示そう。(この特別な場合だけでも、光について言ったことの90%あるいはそれ以上の場合にあてはまる。)」

 電荷が小さい領域内で運動している場合を考え、遠方の場を求めるのだそうです。別の言い方をすると、こきざみに上下に揺れ動いている点電荷から任意の距離のところの場を求めるということだそうです。光は通常原子のような中性のものから放射されますが、今話した電荷qは、静止しているときの大きさが等しく、反対符号をもつ電荷が近くにある(正負の電荷の中心間の距離はd)と考えます。すなわち双極モーメント = qを考えることになります。そして、これ以降、数学的展開と物理的考察を駆使して、次のようなことを証明します。すなわち、電荷の十分近傍で場をみると、電場は静電双極子について以前に計算したのと全く同じものになること、また十分遠くに行くと、電場は1/rのようにへり、電荷の加速度の視線に垂直な成分に関係するような項を場がもつようになるということです。

 この論理的展開は大変難しく、私の能力では整理することができません。また、得られた結果の式も複雑で、とてもここでは表現することは難しいです。ようやく双極モーメントの振動による遠方での電場と磁場、すなわち電磁波を数式で求める所まできたのですが、ここではうまく表現することができませんでした。Feynmanの説明を何とかたどることはできるのですが、やはりとても難しく、理解できない所がたくさんでてきます。私の手には負えない理論展開です。残念無念です。

 さらに難しい理論が展開されます。 ちょっとFeynmanの言葉を記します。 「前節ではおそい速度だけ考えてAを求めるための積分の計算を簡単にした。しかしそうしたために重要な点を見落としてしまったし、まちがった方へまがりやすい点を見落とした。そこで全く勝手に−相対論的速度でも−動いている点電荷のつくるポテンシャルの計算にとりかかる。この結果がでれば、電荷の電磁気学を完成することになる。そうすれば式(20.1)さえ微分をとって求められる。物語は完成する。だからわれわれと一緒にがまんしてほしい。」

 忍耐力はあるのですが、がんばっても能力不足ゆえ理解ができないのです。運動する点電荷によるポテンシャルの式(リエナール-ウィーヘルトの一般解)が導出されていますが、ここでは省略させてもらいます。

 最後の節は、「一定の速度で運動する点電荷のポテンシャル;ローレンツの公式」です。 Feynmanはこの節の目的を次のように述べています。 「次にリエナール-ウィーヘルト・ポテンシャルを特殊な場合にあてはめて直線にそって一様な速度でうごく電荷の場を求めたい。同じことをあとで、相対性理論を使ってもう一度やる。電荷の静止系にわれわれが立つとき、ポテンシャルがどうなるかはすでに知っている。電荷が動くときにも、ある座標系から別の座標系へ相対論的変換をすることによりすべてを導き出すことができる。しかし相対論は電気磁気の理論から生まれたものである。ローレンツ変換の公式はローレンツが電磁気の方程式を研究していて発見したものであった。諸君には物事がどこから来たのかのみ込めるように、マクスウェル方程式が事実ローレンツ変換に通じることを示したいと思う。」

 この議論はもちろん省略しますが、Feynmanの最後の言葉を記して終わりとします。 「あとでもっと詳しく電磁気の相対性をとり上げる。ここではマクスウェルの方程式からどれほど自然にローレンツ変換が出てくるか示したかっただけである。そうすれば電磁気の法則がそのままアインシュタインの相対論で正しいと分かっても諸君は驚かないだろう。ニュートンの力学法則のときにしたように”補修する"必要はない。

 一応これで”第V巻電磁気学”の終わりにたどりつきました?理解があやふやなのに”終わりにたどりついた”と言うことはできないはずですが、私にとっては、あちこちとのた打ち回りながら前進して、何とか”リーチ”といって終わりのマイルストーンに手を差し出したというイメージです。これから、本番の第W巻の”電磁波”に進みたいという気持ちはあるのですが、やはりここで第V巻をもう一度振り返り、復習してからにしたほうがよいかなと思っています。まあ復習しても、私の理解が今より進むとは思えませんが、何がよくわかっていないのかといったレベルの整理にはなるかと思っています。ということで、しばらく休憩をさせていただきます。あー、疲れた!

                                       2013年12月18日


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