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Talking about WINE by T.Yone, the fake-chef

偽シェフヨネのワイン漫談


第26回「イタリアです」| 第27回「たとえばSantenay」| 第28回「ドイツの白好きの女性」
第29回「ドイツワインの仕組み」| 第30回「ドイツのランク付け」


偽シェフヨネのワイン漫談 第26回「イタリアです」

さて、イタリアはどう見て(飲んで)いきましょうか。

イタリアもフランスと同様にワインの表示は「原産地主義」で法制化されています。業界の自主規制で「こういうように表示しましょうね」ではありません。通常DOCワインと称します。Denominazione di Origine Controllataの略です。たとえばよく見るSoave(ソアヴェ)やBardolino(バルドリーノ)はヴェネト地方(イタリアの北東部)のDOCです。有名なChianti(キャンティ)やBarolo(バローロ)はDOCより厳密な地域区分のあるDOCG(+ e Garantita)ワインです。どっちが「高級」ということではありません。また最近ではIGT(Indicazione Geografica Tipica)という地域ワインがどんどんはいってきています。

区分としてはこれくらいをインプットしておけば十分でしょう。後は産地の記憶ですね。おおまかに言えば気候の関係で南に行くほど太陽の香りがしてきます。シチリアとミラノの赤を比べればそれはもうハッキリ。だいたいいい葡萄がどっさりと穫れる国ですから、どこのものでもうまい。

ご注意:産地名の明示されていない安いイタリア物は避けてください。それこそひっくり返るような味がします。例:メルシャンの輸入しているRosso del Casato。スクリューキャップで600円くらいの代物。でもこれ産地表示があるなあ。

(C)T.YONE 1998


偽シェフヨネのワイン漫談 第27回「たとえばSantenay」

先日高島屋に行ったら87年もののSantenay(サントネー)の赤が並んでいました。どうやら担当者が買い付けたようです。高島屋はブルゴーニュのLeroy(ルロワ)社と関係が深く、ブルゴーニュの品揃えはまあまあです。ただし、値段は高めですが。

87年ヴィンテージは、ボルドーの赤がほとんど全滅なのに対してブルゴーニュの赤は平均的なできばえです。10年以上経っているので熟成しています。多分最近まで現地のワインセラーに入っていたはずなので保存も申し分なく、意外と澱もたまっていませんでした。

ワイン売り場を丹念に見ていると、時々めっけものがあります。こういう形で出てくるものは二度と入手できないことが多いので、見つけたら「買い」です。もちろんおサイフと相談してですけどね。新年にはボルドーの名シャトーであるPetrus(ペトリュス)(注27)が店頭に並びましたが6ケタの値段だったので買えませんでした。

ちなみにSantenayは4,000円でした。これを高いと見るかどうかは個人の美意識だと思います。はい。

(C)T.YONE 1998

(注27)シャトー・ペトリュスは、一般には最も高価なワインとして知られています。19世紀のヴィンテージとか、特殊な銘柄など競売で売られるものを除けば、毎年一定量が生産されて市場に出回り、レストランでもワインリストに普通に載っている、つまりちゃんと流通しているワインとしてはとにかくメチャ高い。で、よくイイカッコシイのスノッブが気取って頼むものとして小説に出てきたりします。成金の日本人がワインの味もわからんのに札ビラきって飲むみたいな描写ですね。もちろん素晴らしいワインですが。辻静雄が俗物の官僚をやり込めるシーンが海老沢泰久『美味礼讃』にありますが、ワインと料理への愛情が感じられる好著です。たしか、どっかの文庫になったはずです。

annotation by Takashi Kaneyama 1999


偽シェフヨネのワイン漫談 第28回「ドイツの白好きの女性」

日本で根強い人気を持っているのがドイツの白ワインです。私の印象では特に女性。多分「甘い」から好かれてるのでしょうね。別にドイツワインを敵視しているわけじゃありませんが、甘さの秘訣(?)を。

葡萄の生育にとってドイツはあまり適さない。緯度が高いので日照が足りないのです。したがって葡萄の糖度が低くてアルコール発酵が進みにくい。で、どうするかというと糖分を添加して発酵させるのです。ドイツにもワインに関する法律はあって、どれくらいまでならワインの中に糖分が残っていてもいい、と規定されているくらいです。

つまりドイツワインが甘いのは砂糖が入っているから、という理解をすればよいのです。もちろんそうでなくて甘いものもあります(次回で)が。1本が1,000円クラスはだいたいそうです。さて、この甘いワインは料理には合いません。悲しいくらい合わないのです。ビーフシチューといっしょに出てきたら相当イヤです。寿司もしゃぶしゃぶもボンゴレもテリーヌもグラタンもかなりのけぞります。一度お試しを、とは言いません。やらないでくださいと願うばかりです。

じゃ、ドイツの人はどうしてるんだ、ということになりますが、実はフランスやオーストリアから買っているのです。フランスワインの輸入が最も多いのは何とドイツで、日本の10倍以上輸入しています。

(C)T.YONE 1998


偽シェフヨネのワイン漫談 第29回「ドイツワインの仕組み」

ドイツの特徴はいままで見てきたフランスやイタリアとちがって葡萄の生産地にそれほどこだわりません。だからAOC(忘れてないですね)に該当する考え方はありません。もちろん、モーゼルだとかラインだとかナーエだとかフランケンという生産地の名称はラベルに書かれていますし、原則的には他地区のものとブレンドはしません。

ドイツワインは「どういう葡萄を使ったか」で分類されています。簡単に言うとこうなります。

Tafelwein
Qualitaetswein bestimmter Anbaugebiete(QbA) ↑補糖可

Qualitaetswein mit Pradikat(QmP)        ↓補糖不可
Kabinett(カビネット)
Spaetlese(シュペートレーゼ)
Auslese(アウスレーゼ)
Beerenauslese(ベーレンアウスレーゼ)
Trockenbeerenauslese(トロッケンベーレンアウスレーゼ)

Tafelweinはテーブルワインですね。他の国のものを混ぜてもOKというかなり広範囲の品質を許容しています。QbAは糖分添加が認められているだけで生産地や葡萄の縛りはQmPと同じです。QmP以下がフランスのAOC基準を満たしていると個人的には思います。Kabinett以下の説明はけっこう面倒なので次回にします。

さて、言い忘れていましたが、ドイツワインはほとんどすべて「白」です。赤は生産量が少なく国外にまで出てこないようです(注28)。ただしSekt(ゼクト)というスパークリングワインの赤は入手できますし、いつか紹介したホットワインは赤です。

(C)T.YONE 1998

(注28)たとえば、独特のボトルの形をしているフランケンワインには、しっかりとタンニンを含む赤ワインがあります。しかし、日本ではほとんど見かけませんね。ドイツ料理店でもおいているところはあるのでしょうか? ドイツに行ったら買ってみてください。フランクフルトの空港で探せば売っています。

annotation by Takashi Kaneyama 1999


偽シェフヨネのワイン漫談 第30回「ドイツのランク付け」

前回の続きです。補糖不可のQmPをちょっと詳しく。

Qualitaetswein mit Pradikat(QmP)     
Kabinett(カビネット)
Spaetlese(シュペートレーゼ)
Auslese(アウスレーゼ)
Beerenauslese(ベーレンアウスレーゼ)
Trockenbeerenauslese(トロッケンベーレンアウスレーゼ)

この間も言ったようにドイツの葡萄は全体的に低クォリティである。したがって「どこで収穫されたか」より「どうやって収穫されたか」により重点が置かれている(法律好きな国民性だから厳格な規定が存在しているはずだが、日本でワインを飲む分にはさほど重要ではない)。つまり葡萄のいいところしか使わないのがQmPとなると思っておけばよい。Kabinett(カビネット)は「良質ワイン」と呼ばれる。普通の葡萄を補糖せずに使っているのでアルコール分は低めであっさり系の辛口(と言っても程度問題で、なお甘い)。Spaetlese(シュペートレーゼ)は「遅摘み」で糖度が上がるよう完熟するまで気長に待って作ったワイン。これくらいでやっと力強さが出てくる。Auslese(アウスレーゼ)はここからさらに「房選り」したものでこのあたりから極度に甘くなる。安物はきっとこのランクの味を再現するために糖分添加をするんです、きっと。

Beerenauslese(ベーレンアウスレーゼ)はさらに「粒選り」した葡萄で作る(注29)。このランクは理論上知ってるだけで飲んだことがない。あま〜いはず。そして最後のTrockenbeerenauslese(トロッケンベーレンアウスレーゼ)は「乾燥した」葡萄から作る(注30)。気が遠くなる。もうひとつ製法上の別カテゴリーとしてあるのがEiswein(アイスヴァイン)。わざわざ房を凍らせ(葡萄が自然に凍る気候というのも想像を絶したものがあるが)糖分をためてワインにする(注31)。そこまでしないとドイツではいいワインができないということか。

(C)T.YONE 1998

(注29)いわゆる貴腐ワインです。菌によってしわが寄ったような葡萄ですが、糖分が凝縮されています。同じ房でもちゃんと貴腐葡萄になっているものといないものがあるので、ひと粒ひと粒収穫します。

(注30)貴腐葡萄がさらに乾燥したもの。なったまま干し葡萄になっているような感じでしょうか。当然、粒選りです。

(注31)これ、たしかに自然に凍るのですよ。12月〜1月の寒い早朝、凍っている葡萄をひと粒ひと粒収穫するのです。その作業のしんどさと手間は想像を絶します。そして、凍ったまま機械にかけて果汁を取り出します。朝7時を過ぎて溶けたものは普通のアウスレーゼになります。たまに凍らずにアイスヴァインが収穫できない年もあるようです。

annotation by Takashi Kaneyama 1999


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annotation by Takashi Kaneyama 1999