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Talking about WINE by T.Yone, the fake-chef

偽シェフヨネのワイン漫談


第1回「ワインを買おう」| 第2回「ワインを飲もう」| 第3回「味を記憶しよう」
第4回「2本目をあけよう」| 第5回「おいしい/まずい」


偽シェフヨネのワイン漫談 第1回「ワインを買おう」

「何かいいワインを教えてください」などということを時々きかれます。このように漠然とした形で問われると答えられません。別にイジワルをしているわけではなく、ぼくは体系的・網羅的知識なんか持っていないので答えられないのです。

でもワインのよさというものを少しでも世間に伝えたいので、この連載自体を冒頭の問いのひとつの答えとして発信していきたいと思います。参考文献は、Hugh Johnson氏のかの有名な" Hugh Johnson's Pocket Wine Book"(注1)だけです(どうなることやら)。これを読んで「やーめた」とせっかくの意欲を削いでしまったらごめんなさいね。

1995-96年度日本語版の表紙。毎年は買えないのです(538pで3,600円もした。この頃はまだ消費税が3%だった by Takashi Kaneyama) 毎年イギリスのオリジナルを揃えているT.Yoneの提供

だいたいワインほどややこしく「知識」を必要とする酒はありません。書店には関係書籍がズラリと並び写真入りの豪華ムックもたくさん出ています。しかし初めっからこんなものを見たって無駄です。ワインを味わう第一歩は「自分で買うこと」です。今日の帰りに酒屋さんでもデパートでも寄って「1本1,000円〜1,500円のもの」を何でもいいから買ってください。赤でも白でもロゼでもどこの国のものでもかまいません。それから「栓抜き」も必要です。これくらいの価格だとスクリューキャップのものはありませんから。ついでに「ワイングラス」も用意してください。ワインは決して湯呑みなどでは飲まないでくださいね。理由はおいおい説明します。

                         (C)T.YONE1997

(注1) 邦訳は早川書房から「ポケット・ワイン・ブック」として各年度版が出ています。これは、毎年刊行される年鑑でもあり、またポケットに入れてレストランや酒屋で調べる(隠れて読む)アンチョコでもあります。各国、各シャトーが網羅され、どの年がいいのか、お買い得か、★で表示しています。ちなみに、原著は英語です。どうやらワインを本で調べようという発想は、イギリス、アメリカといったワイン後進国のものなんでしょうか?(となると、日本でのワイン関連本の多さは・・・)

annotation by Takashi Kaneyama 1998


偽シェフヨネのワイン漫談 第2回「ワインを飲もう」

さて買ってきたワインを飲みましょう。しかしこのあたりからややこしくなり始めます。ワインには「適温」というものがあります。これは「テンプラは熱々じゃないと」とか「冷えたビールはいいなあ」というのと同じ感覚ですから特に難しいことではありません。でも覚えてくださいね。買ってきたワインが白またはロゼだったらすかさず冷蔵庫で冷やしてください。赤だったらそのままでけっこうです。これが大原則です。生ぬるい白やキリリと冷えた赤はおいしくありません(飲んでみりゃわかることですけれど)。

用意が整ったら栓を抜きます。アルミまたはプラのフォイルをむしり取り、湿ったふきんで口をきれいに拭きます。栓抜きのとんがりを中心にあてて右まわりに突き立てていきます。通常右手用に作られていますので左効きの人には不便ですが。ほとんど根元近くまでねじこんだら、びんの胴を膝でも足でも何でも固定して栓抜きをまっすぐ引き抜きます。ひねったりこねくりまわしたりするとコルクが途中でちぎれてしまい、後でひどい目をみます。

「ポン」と抜けたらラッキーです。抜けない場合は、女性ならばとにかくオトコをつかまえてください。オトコの力でも抜けない場合のために「てこの原理で栓を抜くタイプの少し高めの栓抜き」も用意しておくとよいかもしれません。これならたいていのものは抜けます。あとはグラスについで飲めばよいのです。

                        (C)T.YONE1997


偽シェフヨネのワイン漫談 第3回「味を記憶しよう」

さて味についてですが、実はこのような駄文ではまったく表現できません。よくワインの味を尋ねてぼくを窮地に陥れる人がいますが、これからはやめてください。表現できないのです。「カツオのたたきの味を言え」と同じことなのです。難しいですね。ただし「相対的な比較」はできます。あなたにもそれをやってもらいます。

今飲んだワインの味を記憶してください。記憶の仕方は人それぞれなのでぼくがごちゃごちゃ言っても仕方ありません。ワインの場合は、まあ「酸味・苦み・甘み」のバランスでしょうか。全体的な印象は「重い/軽い」とか「こくがある/ない」というものになります。加えて重要な要素は「香り」です。料理でも香りがとんでいるのとしっかりついているのでは味わい自体が違っているように感じます。それと同じでワインも香り如何で味わいの印象が違ってきます。香りを含めた全体的な印象を覚えるようにしてください。

さて、今日買ったワインの味は記憶できましたか? 「なんだ苦いじゃないか」とか「意外に水っぽいな」とか「フルーティだ」とかでいいのです。

言い忘れました。ワインはアルコール度数が日本酒と同じくらいです。ひとりで1本あけようとするとけっこう難儀します。一口目の印象を覚えておいてください。酔っぱらうと味がわからなくなります。

そして、悪魔の「2本目」に突入しましょう。

                      (C)T.YONE 1997


偽シェフヨネのワイン漫談 第4回「2本目をあけよう」

1本目は言うならば「基準作り」です。それだけでは何にもなりません。酒を飲む醍醐味は「味くらべ」です。絶対的に「これしかない」というものを発見できた人は超ラッキーです。酒の原則は「飲んでみなきゃわからない」ですから、ぼくは多分死ぬまで銘柄サーフィンをすると思います。好奇心と行動力が(まあ、資金も)カギです。

さて2本目です。ここからワインスノッブの「苦悩」が始まります。2本目を買います。価格帯は同じで、1本目が赤だったら「白かロゼを」というように前回と違ったものを買います。飲み方はいっしょです。適温にして飲みます。

どんな味ですか? 前回のものとは絶対に違っているはずです。1本目がフランスの赤で2本目がドイツの白だったらその味の違いに愕然とするはずです。味の違いがわかれば、これであなたもワイン通です。「カツオのたたき」の味は言えなくても、「まぐろの刺し身とカツオのたたきの味の差」が言えたのですから。

そしてもうひとつ重要なことは「どっちが好きか」という感情も目覚めてくることです。渋くて飲みにくいフランスの赤より、ほんのりと甘くさっぱりしたドイツの白のほうが好きなのかもしれません。でもワインのおいしさを探求しようと決意しているのなら、好き/キライはぐっとがまんして横のほうにどけておいてください。ワインの味には大きな落とし穴があるのです。

                        (C)T.YONE1997


偽シェフヨネのワイン漫談 第5回「おいしい/まずい」

ここで突然ワインの値段に話題を移します。720ml入りのボトルが安いものは350円くらいから買えます。高いものはそれこそ20万円もします。希少価値ということで高いということももちろんありますが、デパートはオークションをしているわけではないので法外な値がついているわけではありません。

ではなぜ高いかですが、それは「おいしいから」なのです。ワインのおいしさはカネで買うのです。「安くてうまい」(注2)は原則的に存在しません。

こういうべらぼうさは実はワインだけではありません。1個180円のファーストフードのハンバーガーと一流レストランの15,000円のディナーコースの違いを考えれば事情は同じです。「どっちだって食べちゃえば同じだ」という発想の人とはハッキリ言っておつきあいしたくありません。

350円のワインは「まずい」のです。「おいしい」と個人的に思うのは人それぞれですが、少なくともワインの世界では「まずい」と言われる味だということを知っておいてください。では何が「おいしい」味なのか。それは値段の高いワインを飲むことでしかわかりません。最初の条件で「1本1,000円から1,500円」というのはまずまず飲むに値するランクという意図なのです。

「好き/キライ」をひとまず棚上げする理由です。

                      (C)T.YONE 1997

(注2)しかし、「高くてまずい」は実在する。もちろん、個人的好き嫌いの範疇ではなくて。

annotation by Takashi Kaneyama 1998


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