Road to FRANCE PART1 【ワールドカップ・アジア最終予選篇】
プレイバック絶叫コレクション

「ニッポン! ニッポン!」

(9月7日 日本対ウズベキスタン 6-3)

それから何度も「ニッポン!」コールをしたが、この日の「ニッポン!」コールには気合いが入っていた。国立の大観衆の一種異様な盛り上がりはすさまじかった。選手入場の時から立ち上がってコールし続けた。いや、あれは観衆ではない。選手と共に戦う12番だった。

「カズ! カズ! カズ! カズ!」

(9月7日 日本対ウズベキスタン 6-3)

怒涛の4ゴールを奪う快調な出だし。翌日のスポーツ紙には「日本にはカズがいる。」の名コピーが踊っていた。

「打つんだ! ジョー!」

(9月7日 日本対ウズベキスタン 6-3)

決定機を2回はずした城に対してサポーターは、溜息の代わりに「ジョー・ショージ!」コールで励ました。そして3度目。キーパーとの1対1からボールを浮かせてゴールをゲット。城は嬉しそうに手を挙げて声援に応えた。

「ヨシカツ! ヨシカツ!」

(9月19日 UAE対日本 0-0)

前半、日本の左サイドを破られてピンチ! 2度つづけてシュートを打たれたが川口が素早い立ち直りで2本ともかろうじてはじき、ディフェンスがこぼれをクリア。あ〜、危なかった。

「中田! 決まった! いや、惜しい!」

(9月19日 UAE対日本 0-0)

城が右サイドからゴールへドリブルすると見せて、上がった名良橋に右足アウトサイドではたく。名良橋はダイレクトでセンタリング。飛び込んだ中田がダイビングヘッド! 決まったかに見えたがキーパーが右手一本で逃れる。美しい。

「あ〜、小村、触るんじゃない!」

(9月19日 UAE対日本 0-0)

0-0の後半、中田のフリーキックを井原がヘッドでたたきつけてゴール隅に入った! と思った瞬間、小村が足を出してしまい、オフサイドを取られてノーゴール。アウェイだし、引き分けでしかたないかとその時はあっさりあきらめたけど、いま考えるとつくづく惜しい。初戦の小村のチョンボ(ウズベキスタン戦でボールを見てマークをフリーにした)を思えば、代えるべきだったかもしれない。それ以前に、3-5-2では、慣れないウィングバックをやらされる両翼が機能せずに5-3-2になっていた。秋田と井原の2ストッパーで4-4-2で行っていれば。たらればが許されるなら、あの時に帰りたい。

「ええっ! もう、こんなに並んでいる!」

(9月22日 チケット発売日前日)

国立のUAE戦とカザフスタン戦のチケット発売に並ぼうと前日夜に行ったところ、すでに20人以上が列をつくっていた。なかばあきらめつつ、徹夜を開始。その晩はものすごく冷え込んだ。なのに私は半袖だった。

「おお! あった!」

(9月23日 チケット発売日)

29番目までチケットが回った。私は27番目。ぎりぎり滑り込みセーフだった。しかし、カザフスタン戦はとれず。インターネット上で交換希望を出していくことになる。このころは、11月8日の最終カザフスタン戦で日本が1位通過を決めると予想されていた。もうずいぶん昔のように思える。

「入った! 入った! 山口!」

(9月28日 日本対韓国 1-2)

カズ、呂比須の2トップはもちろん、名波、中田にもぴったりマークをつけてきた韓国。久しぶりの4-4-2の日本はなかなか攻め手がない。いま思えば、韓国は日本のスタミナと集中が切れる後半に勝負をかけていたのだろう。しかし、先手を取ったのは日本だった。コ・ジョンウンのミスから山口が鮮やかなループシュート。ゆっくりと放物線を描いてボールがゴールに入ると同時にスタンドが一挙に爆発した。この時間帯、日本は攻め続ける。

「なぜ、呂比須を下げる?」

(9月28日 日本対韓国 1-2)

呂比須に代えて秋田を入れた日本は3-6-1に。この交代を境に攻守は一変する。呂比須のマーカーだったイ・ミンソンが役目をはずれて猛然とゴールへ突進する。日本はディフェンスラインが下がりっ放しで中盤ががら空き。ライン際にこぼれたボールを追っていかない。拾われてクロスを上げられ、チェ・ヨンスがヘッドで折り返してソ・ジョンウンがゴール。せってもいないぞ! どうしたんだニッポン! さらにイ・ミンソンにミドルを決められて逆転。どうして、シュートコースを消しながらマークにいかないのか? 残り6分で逆転されるのはスタミナか、スピリットか、両方か? 

「ニッポン! ニッポン!」

(9月28日 日本対韓国 1-2)

タイムアップ。ショッキングな敗戦にもかかわらず、国立には「ニッポン!」コールがこだましていた。「あきらめの悪い」サポーターたちの願いを込めた「ニッポン!」コールの始まりだった。案の定、定見のないマスコミは「ワールドカップに暗雲」と流し始めたが、ワールドカップの予選はそれほど甘くない。結局アジアではA組でもB組でも全勝どころか無敗で乗り切ったチームはなかった。あと5試合。まだまだ勝負はわからない。自分自身にも勇気を取り戻すために、叫んだ。「ニッポン! ニッポン!」

「あ〜、名波! 頼むから決めてくれ〜!」

(10月4日 カザフスタン対日本 1-1)

前半、コーナーキックからニアの秋田が決めて1-0でリード。後半開始早々、名波がキーパーと1対1になりながらキーパーにクリアされてしまう。グラウンドの状態が悪いためにドリブルでボールをキープするのが精一杯の様子。さらにコーナーキックのこぼれから名波が左足インフロントでカーブをかけてシュート! ほとんど決まったように見えたが、キーパーがフィスティングで逃れる。カズも、呂比須も、中田も、決められない。

「いかんいかん、ボールキープだ! そこでせるんだ、危ない! あれ〜いわんこっちゃない」

(10月4日 カザフスタン対日本 1-1)

1-0のままロスタイムへ。あとは時間消費するだけなのに、日本の右サイドを崩される。ドリブルを許し、ゴール前でエースのズバレフに縦パスを通され、ズバレフは反転して速い振り抜きでシュート。同点。目前の勝ち点3をフイにする。悪夢。ドーハの教訓は生かされないのか。川口が泣きながら怒っている。あぜんとして声も出ない。しかし、いま思えば苦難の道はまだその時始まったばかりだった。

「強い!」

(11月4日 韓国対UAE 3-0)

NHK-BSでつづけて観戦。韓国の強さばかりが際立った。攻守の切り替えが速く、とくにサイドを駆け上がるスピードとスタミナが驚異的。これで韓国は抜け出て1位の座にまっしぐら。ここはUAEをこてんぱんにして日本はUAEを蹴落として2位狙いに行くしかないという見込みが有力に。

「ええっ! そこまで!」

(10月5日 「加茂監督更迭」の報道に接して)

意外なことに、日本サッカー協会には珍しく素早い展開。中央アジア遠征の途中で監督解任、岡田コーチの昇格を決定。アルマトイで重苦しい記者会見を行った。世界では珍しくない予選途中の監督交代だが、よもや日本代表でやるとは。吉と出るか、凶と出るか。サポーターは信じて応援するしかない。批評はいつでもできる。今は、文字どおりサポートする時だ。「監督になって一番変わったことはなんですか?」の問いに「部屋がスイートルームになったこと」には笑ったが。その時、この岡田という人物は結構大物ではないかと思ったものだ。

「バーレーンよ、あれがオフサイドか!」

(10月11日 ウズベキスタン対日本 1-1)

秋田のロングシュートが素晴らしく、キーパーがはじいてコーナーキック。右からカズが入れ、こぼれたところを山口がミドルシュート! キーパー前にこぼしたところを城がゴール! ところがこれにオフサイドの判定。どう見てもオフサイドではない。さらに疑惑は募る。線審が旗を上げたのは、主審のジェスチャーの後だった。これは、主審が先入観をもって判定し、慌てて線審が旗を上げたとしか見えない。審判はバーレーンのセット。日本サッカー協会はFIFAに抗議したが、「ゲームは審判の判定が最終的なもの」として却下された。いまだにはらわたが煮えくり返る。

「行け! 中田! 呂比須! 城! カズ!」

(10月11日 ウズベキスタン対日本 1-1)

コーナーキックからのミドルを1度は防いだものの、2発目を決められてしまう。初めて先制を許す。非常事態。先発をはずれていた中田と呂比須をセットで投入。斉藤と森島を下げてフォワードを3人にした4-3-3に変更。シュートまではいくものの、いまだゴールならず。

「なにやってるんだ! ワールドカップは、ここでついえるのか!」

(10月11日 ウズベキスタン対日本 1-1)

ついに師匠が怒りだした。もし負ければワールドカップは遠のくどころではなく、手が届かない夢のまま幻になってしまう。果たして日本はここで死ぬのか?

「そこまでやるか! 日本、追いつめられたか!」

(10月11日 ウズベキスタン対日本 1-1)

疲れの見えた名波を下げて、ディフェンダーの中西を入れる。なんと、ストッパーの秋田を前線に上げて4-2-4の変則的布陣を敷く。もはや中盤を省略してロングボールを放り込み、頭でせる作戦。スクランブルしかないとはいえ、そこまで追い詰められるとは。時間はどんどんたっていく。

「ふ〜、入った!」

(10月11日 ウズベキスタン対日本 1-1)

井原が自陣から上げたロビングを呂比須がヘッドで前に流す。カズが走り込む。キーパー、ブガロ、何を思ったかボールを取りきれず、そのままゴールへ。それは執念の塊のような1点だった。このゴールを境に、日本代表の戦う気持ちが前に出てきた。この日、韓国はアウェーでカザフスタンと引き分けた。ワールドカップ予選では何が起こるかわからない。自力2位の可能性は消えたが、ワールドカップへの可能性がゼロでない限り、声を出し続けよう。絶望的になりながらも、私は自分に誓っていた。決してあきらめない。あきらめるもんか。

「やった! やった、やった!」

(10月18日 カザフスタン対UAE 3-0)

なんと、格下と見られていたカザフスタンにUAEが大敗。しかも、7番バヒード・サイードが退場をくらって次節の日本戦は出場停止。これで日本に自力2位が復活。あまりの幸運が信じられない。ようやく風が日本に向いてきた。

「素晴らしい! ビューティフル! 呂比須!」

(10月26日 日本対UAE 1-1)

開始早々、カズがワンタッチで呂比須につなぎ、呂比須は見事なトラップで1人抜き、もう1人寄ってくる前に右足を振り抜いた。キーパーの右手が届かない。ボールはポストに当たって内側に入っていった。ゴール! なんと美しい! それもSA席の私の目の前で。飛び上がった私は前の女性の頭を思いっきり肘打ちしてしまった。ごめんなさい。

「なんでまたファウルなんだよ!」

(10月26日 日本対UAE 1-1)

あまりに日本のファウルが多い。とくに本田。それにしてもコスタリカの審判には注意が必要かも。不安は的中し、ゴール前でつづけてフリーキックを与え、モハメド・アリのキックからヘッドで合わされて同点。UAEはキーパーが倒れて露骨な時間稼ぎ。日本はまたもスクランブルに追いやられる。

「上がれ! 上がれ!」

(10月26日 日本対UAE 1-1)

相馬を下げて城を入れる。名波をサイドバックに下げた4-3-3に。それでも点が入らない。セットプレーで秋田が上がるのは当然として、川口まで上がろうとする。それだけは、まだ早い。

「ミラクル! ニッポン!」

(10月26日 日本対UAE 1-1)

残り時間がどんどん少なくなっていく。ゴール裏からは「ミラクル! ニッポン!」を連呼。あのウズベキスタン戦のように終了間際に執念のゴールが再び見られるのか? 奇跡を待ち望むスタンド。

「ロスタイム短いぞ! どこの時計使ってんだ!」

(10月26日 日本対UAE 1-1)

キーパーが長く何度も倒れていたので、少なくとも3分、最近の傾向(厳格にロスタイムを取る)からすれば、5分あってもおかしくない。ところが、1分少々で長い笛。ええ! 嘘だ! そんなのおかしいぞ! 騒然とする場内。マリオ・コーチは血相変えて詰め寄っている。コスタリカの審判団はキャプテンと握手もせずにそそくさと消えていく。大喜びのUAE選手たち。このフラストレーションを、どこへ持っていったらいいんだ? またもや自力2位が消滅してしまった。

「入った! 名波!」

(11月1日 韓国対日本 0-2)

崖っぷちの日本。開き直ったのか動きがいい。中田からいいスルーパスが名波に通る。名波はオーバーラップした相馬にボールを送って自分は前へ走る。相馬はダイレクトでセンタリング。ディフェンダーとキーパーを呂比須とカズがつる。スルー気味のパスは名波の目の前へ。インサイドでゴールへ流し込む。先制ゴール!

「ゴール! 呂比須!」

(11月1日 韓国対日本 0-2)

2点差をつけるまで安心できない。その待望の2点目は呂比須。中田の早いスローインから相馬がトラップで1人抜き、グラウンダーをゴール前に入れて呂比須がフィニッシュ。日本からの大応援団に手を挙げてこたえる呂比須。

「勝った! 勝った!」

(11月1日 韓国対日本 0-2)

韓国の後半の猛攻をよくしのぎ、2枚目のイエローカードで退場になったチェ・ヨンイルを慰める余裕も。ついにタイムアップ。アウェーで日本は自分たちのサッカーを取り戻した。

「やった! 引き分けだ! ウズベキスタン、よくやった!」

(11月2日 UAE対ウズベキスタン 0-0)

自力2位がない日本はUAEのとりこぼしに期待するしかない。だが、2位以内の可能性が消えたウズベキスタンがUAEのホームでなんとかしてくれる希望は薄かった。しかし、ウズベキスタンは代表の誇りをかけて戦った。このおかげで日本は、最終戦で勝てばB組2位確定。道は見えた。

「ゴール! 秋田、またもやニアポスト!」

(11月8日 日本対カザフスタン 5-1)

先制は中田のフリーキックから。ニアに秋田が飛び込んでゴールゲット。カザフスタンのキーパーには秋田のニア攻撃が効果的。

「またまたゴール! 中田!」

(11月8日 日本対カザフスタン 5-1)

名波から相馬へいいパスが通る。相馬がゴールへと切り込んでマイナスのセンタリング。中田がダイレクトで打ったボールはキーパーの手をはじいてゴールネットを揺らした。

「あー、中山! 無人のゴールじゃないか!」

(11月8日 日本対カザフスタン 5-1)

再三のチャンスに思い切りよく飛び出していく中山。中田がキーパーをひきつけてから出したゴール前の浮き球をジャンピングボレーするも、クロスバーの上。枠に入れればゴールだったのに。中山、早く決めてくれ!

「ついに出た! ゴン・ゴール!」

(11月8日 日本対カザフスタン 5-1)

名波のフリーキックにファーで合わせた中山がディフェンダーを1人吹っ飛ばしてボールをゴールへ叩き込んだ。待ちに待ったゴン・ゴール! 「オー ナカヤマ! ナカヤマ ナカヤマ ゴン・ゴール♪」

「あー! 名波、枠にとばせ!」

(11月8日 日本対カザフスタン 5-1)

後半もチャンスがつづく。しかし、最後が決まらない。城がポストに当て、名波はクロスバーに当てる。

「さすが井原!」

(11月8日 日本対カザフスタン 5-1)

コーナーキックをファーにいた井原が左足ボレーでゴール。フォワードがはずしまくっていたのに対し、キャプテンが活を入れた。

「高木、復活!」

(11月8日 日本対カザフスタン 5-1)

途中から高木を投入。相馬のグラウンダーのセンタリングを右足アウトサイドでゴール隅に流し込む技巧を見せた。ダイナマイトヘッドも健在で、ペナルティエリアの外からヘディングシュートを見舞ったり、復活をアピール。

「勝った! 2位だ! あとひとつ!」

(11月8日 日本対カザフスタン 5-1)

5-1で勝利。2位を決める。国立に詰めかけたサポーターは余韻を味わうかのようになかなか帰らない。「16日頼むぞー」チームはマレーシア・ジョホールバルでの第3代表決定戦へと臨む。

「やった! オウンゴール!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

開始早々、相馬のセンタリングをヘッドでクリアしようとしたボールがゴールに入ってしまう。ラッキーなオウンゴールと思いきや、オフサイドの判定。う〜ん、惜しい。

「ありがとう、ゴールポスト!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

イランは3トップの布陣。右からはマハダビキアが襲いかかる。うなりをあげて猛シュートを打ってきたが、ゴールポストがはじいてくれた。ふう〜。

「オー ナカヤマ!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

中田、絶妙のスルーパス。中山、キーパーと1対1。左足で強く打ったボールはキーパーの脇の下を通ってゴールへ。日本、先制!

「ああああ! 井原、どうした!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

後半開始直後、井原がクリアを空振り。マハダビキアに持ち込まれる。戻したボールをダエイがシュート! 川口、キャッチしきれずにこぼれたボールをアジジが押し込む。1-1、同点。

「高い! あまりに高い!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

またもマハダビキアが右サイドの深いところからチップキックの高いセンタリング。これをダエイが高い打点からヘッド、決まってしまう。敵ながら見事なヘディングだった。1-2、逆転を許す。

「よし、決まった! ついに城! 芸術的!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

イランのスルーパスを山口がカット。中田が左サイドからゴール前に見事なクロス。城がせってヘッドでボールをたたきつける。ゴール! 同点に追いついた。この1点で日本は生き返った。初戦以来、オフサイドで幻になったゴールをのぞいて得点のなかった城が、ついに結果を出した。

「走れ、岡野、走れ!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

延長戦に突入。日本は岡野をピッチに送り出した。疲れがみえるイランに対し、岡野がその俊足でかき回す。ディフェンスを置き去りにしてキーパーと1対1、止められてしまう。それでも走るんだ、岡野!

「岡野! どうして打たない! なぜ!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

イランのコーナーキックからカウンターで岡野が走る、走る。またもやキーパーと1対1。打て! そこでなんと突然弱気になった岡野が左にパスを出してクリアされてしまう。日本中が「ばかばかばか!」と叫んだにちがいない。私は床を叩きましたよ。

「あ、危ない!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

イラン、最後の反撃。マハダビキアが右サイドをドリブルで駆け上がる。そしてディフェンスとキーパーの間にセンタリング。ダエイがフリー。ああ、しかし、シュートはゴール左にはずれた。心臓が凍るような瞬間。

「中田打て! そこだ岡野! 入った!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

フォワードが決めてくれないので、自分でなんとかしようと思った中田がドリブル開始。斜めに切れ込んでディフェンスのゲートの間から左足で右隅を狙ってシュート! 左の肋骨か肩を痛めているキーパーはそれでも横っ飛び左手ではじく。そこに岡野が飛び込んだ。ついにゴール!

「ワールドカップだ! フランスだ!」

(11月16日 日本対イラン 3-2)

一瞬、時間が止まった。記憶を探っても何を叫んだのか、わからない。あれほど待ち望んだ至福の時。長かった戦いの日々は過去になった。新しいステップが目の前につづいている。

text by Takashi Kaneyama 1997


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