Road to FRANCE PART1 【ワールドカップ・アジア最終予選篇】

FIFAワールドカップ・フランス1998

組み合わせ抽選

1997年12月4日(現地時間) マルセイユ・ヴェロドローム・スタジアム

Road to FRANCE おまけ

ついにフランスにたどりついてしまった。ここで「Road to FRANCE」はいったん終わります。6月の開幕まで、しばしのお休みのあと、「Fights at FRANCE(仮題)」を連載する予定です。ただし、現地入りした場合は帰国してからのレポートになっちゃいますから、どうしよう? というところです。もしもパワーブックが入手できれば? 現地からアクセスできれば? 「もし」これがクリアできたら、現地からの生報告という偉業が! でも夢ですね、はい。

ところで、組分けが決まりました。アルゼンチン、クロアチア、ジャマイカ。一言でいえば、「ラッキー」ですね。私はアジア以外では唯一日本とどっこいどっこいなのがジャマイカと考えていましたから。韓国は可哀想にも、オランダ、ベルギー、メキシコ。またも悲願の1勝は遠のいた。

しかし、しかし。日本が果たして1勝を挙げられるか、いや、引き分けに持ち込めるかは非常に難しいと予想しています。初出場で勝てるほど、ワールドカップは甘くない。身体能力で劣る分を組織力でカバーするのが日本のサッカーといわれていますが、ワールドカップではひとりひとりの能力はもちろん、組織プレーでも優れたチームばっかりなのですから。アルゼンチンはもちろん優勝2回の強豪。マラドーナこそいないが、バティステュータ、オルテガらタレント豊富。クロアチアは初出場とはいいながら、旧ユーゴスラヴィアの流れをくむ好チーム。ここにもボクシッチ、スーケルという強力フォワードがいる。ジャマイカは陸上競技、とくに短距離に強いことでもわかるように、アフリカ系の強靱なバネを生かしたプレーをする。ただ、まだサッカーの強化に取り組んだ歴史が浅く、つけいる隙はあろうかと思われる。

結論からいって、初出場同士の日本対ジャマイカで勝つチャンスは五分五分。アルゼンチン、クロアチアにもし引き分けたら拍手もの。たとえ3連敗でも、世界のステージに立った経験から何かをつかんでくれればそれでいいと思います。巷で言われている「1勝1分けでベスト16へ」ははっきりいって無理です。

理由その1:アルゼンチンかクロアチアのどちらかに引き分けるという設定には相当無理がある。しかも、たとえ負けても大敗しない(得失点差の関係)という条件がつく。これは苦しい。

理由その2:各2試合消化時点での予想順位をアルゼンチン2勝(勝ち点6)、クロアチア1勝1分け(勝ち点4)、日本1分け1敗(勝ち点1)、ジャマイカ2敗(勝ち点0)としても、最終のアルゼンチン対クロアチア戦が引き分けなら、たとえ日本がジャマイカに勝って1勝1分け(勝ち点4)にしても、届かない。アルゼンチンが勝つとクロアチアとの得失点差の争い。これも見込みは薄いが、この線が唯一の望み。もしクロアチアがアルゼンチンに勝てば、日本はやはり3位。

あと、可能性として考えられるのは、ジャマイカが予想外に健闘して、アルゼンチンかクロアチアに土をつけないまでも、引き分けに持ち込んだ場合です。もしそんな事態になれば、日本におおいにチャンスが出てきます。ただし、大方の予想はグループHは無風区で、アルゼンチンとクロアチアが当確というものです。まあ、いたしかたないでしょう。

それでも少し元気が出る話をしましょう。ひとつは、あのペレが「今回big surpriseを起こすのは」と挙げた3か国の中に日本も入っているのです。もともとペレは親日家ですが、とくに近年の個人技術の向上、組織戦術の高度化を高く評価しています。韓国のように、個人の力に頼ってガチガチにくるサッカーはアジアレベルでは通用しても、世界では通用しない。これはほとんど定説になっています。チャ・ブンクン監督のもと、どんなサッカーを今回のワールドカップで見せてくれるのかは興味深いところですが。

対して、日本のサッカーは個人レベルではひ弱さがあり、勝ちきれないところがあるけれども、早いパス回しと判断の早さはワールドクラスとFIFAのテクニカルレポートでは賞賛されているらしい。前回のアメリカ大会予選でも、フランスと日本が出場できなかったのが、FIFAでは「意外」とされていたようです。

イタリア大会ではカメルーンをはじめとするアフリカ勢の活躍を、アメリカ大会では開催国アメリカの決勝トーナメント進出を予言したペレですから、ここは信じてみてもいいかもしれません。勝てないまでも、「日本のサッカー」を存分に見せつけて旋風を巻き起こしてほしい。

夢の舞台が、もうすぐそこまで近づいてきている。

text by Takashi Kaneyama 1997


→Road to FRANCE PART2 「ひとりのサポーター、フランスへ旅立つ」へ

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