Bon Voyage! HOMEMOVIE REPORT > 1996年8月

「シクロ」

トラン・アン・ユン監督、レ・ヴァン・ロック、トニー・レオン、トラン・ヌー・イェン・ケー
★★★★
「青いパパイヤの香り」の俊英監督の新作。ヴェネツィア映画祭グランプリ受賞。姉と弟の転落と救済の物語。とにかく映像がいつも濡れているような、熱帯の甘い空気を感じさせます。エロチックもバイオレンスもありますが、それにとどまらない訴える力があります。ラスト・シーンだけで、ストーリーを納得させ、いわくいいがたい余韻を残すところが心憎い。

「フィオナの海」

ジョン・セイルズ監督、ジェニ・コートリー、アイリーン・コルガン
★★★☆
妖精の国アイルランドのファンタジー。私の2列後ろではおじさんが鼾をかいて寝てましたが、確かに一歩間違うとつまらない風景描写の連続に堕しかねないところを、カメラの美しさと、伝説を少しずつ挿入することで、一巻の絵巻に仕立てています。なんと言ってもストーリーが一点に向かって集中していく盛り上げ方がうまい。わかっていても泣いてしまいました。

「レ・ミゼラブル」

クロード・ルルーシュ監督、ジャン・ポール・ベルモンド
★★★★★
ヴィクトル・ユゴーの小説を下敷きにしながら、20世紀前半の50年を背景にした全く新たな物語。主人公は文盲で、「レ・ミゼラブル」を読んでもらうのが好きで、「俺はジャン・バルジャンに似ている」とことあるごとに言う。ちなみにその少年時代をベルモンドの実の息子が演じています。脱獄あり、2度の大戦があり、ユダヤ人の迫害があり、レジスタンスがあり、やっと戦後がやってきて対独協力者狩りになる。運命に弄ばれる主人公たち。これを見たらあなたは必ず泣きます(私なんか思い出しただけで、じーんとしてきます)。

「パトリス・ルコントの大喝采」

パトリス・ルコント監督、フィリップ・ソワレ、ジャン・ロシュフォール、ジャン=ピエール・マリエル
★★★☆
「髪結いの亭主」などの監督が撮ったコメディ。とにかく笑える。浮き世の憂さもきっと晴れます。

「天使の涙」

ウォン・カーウァイ監督、レオン・ライ、カネシロ・タケシ
★★★☆
香港のニュー・ウェイヴと言ったらいいのでしょうか。殺し屋、そのエージェント、口をきけない若者、失恋した女、殺し屋を行きずりにひっかける女の5人が描く人生の曲線が交錯して、夜の香港を疾走する感じ。不思議な読後感じゃなくて「観」後感を残します。


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Text by (C) Takashi Kaneyama 1996