英語の本を読もう

英語の本を読もう!


STEP 1: さぁ、英語の本を読んでみよう!

 "さぁ、英語の本を読んでみよう!"と思い立って『ハリー・ポッターと賢者の石』の英語版をスラスラ読める位なら誰も苦労しませんし、『「ハリー・ポッター」Vol.1が英語で楽しく読める本』なんて本が売れることも無いでしょう。

 世間一般ではペーパーバックを読むにはかなり高度な英語力が必要と思われています。
英語ペラペラでなければ『ハリー・ポッターと賢者の石』は読めないのでしょうか?
中高で現在形、過去形、進行形、完了形、肯定文、否定文、疑問文、感嘆文、命令文、受動態、仮定法
の一通りの文法と数千語の単語を学んだのです、全く読めないと言う事は無いでしょう。
部分部分はそれなりに読める筈です。

下記は『赤毛のアン』の一節ですが(並木道の景色に打たれて絶句する場面と、アンが帰った後のジョセフィーンの独白)
この部分ではそんなに難しい単語も複雑な構文も無くて概ね意味が取れるのではないかと思います。

 "Mrs. Spencer says--oh, Mr. Cuthbert! Oh, Mr. Cuthbert!!
Oh, Mr. Cuthbert!!!"

That was not what Mrs. Spencer had said; neither had
the child tumbled out of the buggy nor had Matthew done
anything astonishing. They had simply rounded a curve in
the road and found themselves in the "Avenue."
tumbled:転げ落ちる
buggy:馬車
astonishing:ビックリさせる
 "I thought Marilla Cuthbert was an old fool when I heard she'd
adopted a girl out of an orphan asylum," she said to herself,
"but I guess she didn't make much of a mistake after all. If I'd
a child like Anne in the house all the time I'd be a better and
happier woman."
adopted:引き取る(養子にする)
orphan asylum:擁護施設(孤児院)
guess:推測する。思う。
※Lucy Maud Montgomery著 ANNE OF GREEN GABLESより

部分では読めるのに全体になると何故か読めない…読めない理由は何でしょうか。

語彙不足
ネットで検索するとアルファベットが全部かけない、語彙が50語くらいしか無い中学3年生の話が見つかります。
いくらなんでもこのレベルではお話にならない事は分かります。
※中越地震以降、更新が止まっています。ご無事だと良いのですが。

分からない単語だらけでは無理がありますが、数語が分からない程度なら話の前後から推測してもそれほど大きく外れませんし、分からないままにしても問題が無い場合が多いです。
また頻繁に出現する単語は一度調べれば以降は問題なくなります。

文法理解不足
誰が 何を どうしたのか が読み取れないようではシーンを想像する事が出来ません。
接続詞を用いない併記や口語独特の表現など教科書には余り出てこない事柄もありますが、基本的な文法は高校1年生までに習う内容で足りると思います。
※仮定法が頻繁に出てくる物語だと中学校までの英語では苦しいかも。

速度不足(読むのに物凄く時間が掛かる)
英文を日本語に直して理解しようとしていないでしょうか?
英文を読んで内容を理解することと、英文を日本語に翻訳することは別の問題です。
日本語に訳しながら読むと翻訳作業に無駄に時間が掛かります。
その場面の状況が理解できれば良くて日本語に直す必要は無いのです。

閑話休題: HARRY POTTER AND THE DETHLY HALLOWSの難易度を考えてみる

Harry Potter and the Deathly Hallows (Harry Potter 7)(US)が発売されて、日本語訳が待ちきれずに英語で読んでみました。
せっかくなので、ハリーポッター7巻の難易度を考えてみました。

まずボリュームですが、多読初級者にお勧めのMagic Tree Houseと比較してみます。
Magic Tree House: ページ数:60~70ページ  1ページの語数:平均114ワード
Harry Potter    : ページ数:759ページ    1ページの語数:平均269ワード
と言うことで、Magic Tree Houseに換算すると約26冊分のボリュームがあります。

ハリーポッターシリーズの6巻までを日本語訳で読んでいる人なら世界観とか登場人物とかは分かっていますから語彙がかなりカバーされますので比較的理解はしやすいと思います。
難易度をどうやって定量化すれば良いのか分かりませんので断言は出来ませんがMagic Tree Houseに比べると1センテンス自体が長いですし構文も複雑になっています。
完全には理解できなくても、ハリーポッターファンなら2割理解できれば粗筋は追えるのではないかと思います。
※それで楽しめるかどうかは人によると思います。
※私の理解度は40~60%位かなと思いますが、この程度でも☆ДЩが@#ёをж$ыするシーンでは泣けました。
※日本語訳を読んで確認してみると、細部で見落としが多々ありましたが大筋は正しく理解出来ていました。
※読み比べた後では英語版の方が面白かったと感じています。

STEP 2: 英語本を読むために

 対象年齢3歳未満の洋書絵本なら語彙も少なく構文も単純な文型で構成されてますので殆どストレス無く読めるでしょう。
しかし、3歳未満を対象とした殆ど内容の無い絵本を読んでも面白いだろうとは到底思えません。
※同じ未就学児でも0グレード(日本だと幼稚園年長組:5~6歳)を対象としたものだと其れなりに面白い本が結構あります。

それなりに面白いお話を読むには、最低限の語彙と基本的な文法の理解はどうしても必要です。
個人的な感想ですが、最低限、英検4級+α程度の語彙と高校1年生迄に習う程度の文法知識は必要だと思います。
英検Pass単熟語4級』を見て、知らない単語は無いレベルなら大丈夫だと思います。
※中学3年生までに習う単語で概ねカバー出来るレベルでは無いかと思います。

で、あなたが高校生以上(もしくは其れなりに英語が得意な中学生)なら小学校低学年向け程度の本なら読める素地がある筈です。
にも拘わらず多くの人は 英語の本=読めない と反射的に答えてしまうのではないでしょうか。
※駅で外国人に "Can you speak …" と話し掛けられて反射的に "No,I can't."と答えるような。
 そんだけ聞き取れて応対出来るなら助けてやれよ困ってるんだから。
 と思ってたまに対応するとイエズズ会だったりするんだよな orz


英語の本を読むためにどうしても理解しておかなければならない(←覚えるのではなくて理解する必要があります)基本的な英文法は中学で習う基本的な事で充分で、それほど難しい内容ではありません。

そうは言っても俺は文法が苦手なんだと言う人は多いと思います。
そういう人には『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』がお勧めです。
ビック・ファット・キャットは文法用語を使わずに分かりやすい絵で基本文型を説明しています。
英文法の最初の一歩でつまずいてしまった中学生や知識としては理解しているけどうまく運用出来ない人に直感的な理解を促す特効薬のような本です。

ビッグ・ファット・キャットで説明しているのは本当に基本的な事なので5文型を理解しているレベルの人には得る物はありません。
※ビッグ・ファット・キャットのシリーズ4冊目以降は英語の本を楽しく読む方法の説明になっています。
 5文型を理解している人でも洋書を読むのが始めての人にはお勧めです。

STEP 3: 英語の本の読書術

この手の【英語の本を読もう】とか【英語多読入門】みたいなサイトでは書いてる人も読んでいる人も元々読書習慣のある人である為に読書習慣を作る為の基本を見落としがちです。

読書習慣をつける為の基本
・読みやすい本を一気に読む。
・場面を想像しながら読む。
・続けて数冊読みきる。

自分が本を読むようになった頃を振り返って思い出してみてください。
この3項目が大体当てはまっていると思います。

英語の本を読む場合にも読み始めには日本語の本の場合と同じことが言えるのではないでしょうか。

読みやすい本を一気に読む
 読書を楽しむ為にはある程度の(読む)スピードが必要です。
 ある程度のスピードで読むためには知っている単語と直感的に理解可能な単純な構文で書かれている本が必要です。
 ・返り読み(英文を後ろから日本語に訳してゆく翻訳作業)をしない。(関係代名詞が出てくるとやってしまいがちなのでは?)
 ・辞書を引かなくても読める(分からない単語が1ページにせいぜい1~2個)レベルのやさしい本を一気に読む。
 ・分からない単語が有っても気にせず飛ばして読む。どうしても気になる単語は後で調べる。
 日本語の本を読んでいる時でも全ての言葉の意味を完全に理解して読んでいる訳ではありません。
  2~3個分からない単語があっても前後の文章から意味が推測出来たり、分からなくても物語りを読む上では全く影響の無い事だったりします。
  英文の場合、難しい単語は高い確立で形容詞か副詞で分からなくても致命的ではない場合が多いようです。

場面を想像しながら読む
 「読みやすい本」と同義かもしれませんが、あまりに複雑な構文や辞書を引きながらで無いと読めない難しい形容詞が山盛りだったり
 シェークスピアや聖書等の引用で出典を知らないと理解出来ないような詩的な描写が多くては想像のしようがありません。
 ・日本語に訳さずに英語のままでイメージする。
  日本語と英語では背景とする文化や思想がそもそも違いますから、日本語に直して想像すると
  ピザ=お好み焼きのような変なフィルターが掛かってしまいます。

続けて数冊読みきる
 読破感を得る事と、読めた!と言う実績を作って英語の本が読める自信をつける事が大切です。
 同時にシリーズ物を続けて読めば2巻目以降は導入部に知っていることしか書いてない&世界観や表現に馴染みがあるので比較的楽に読むことが出来ます。

では、読み易い、やさしい本ってどんなの?
と言うことになりますが、個人差が激しいのでいくつか候補を上げておきます。
TOEIC300点台なら個人的には語彙制限本よりはI CAD READのLevel2~3をお勧めします。
このサイトで紹介しているA to Z MisteriesMagic Tree HouseJunie BはI CAN READのLevel3と同程度か若干難しい位のレベルです。

HEINEMANN ELT
オリジナルを易しい英語で書き直したシリーズ。
5つのレベルに分かれ、語彙の他、文にも制限が加えられている。
巻末に読解チェックの問題つき。

PENGUIN READERS
7レベルに分かれる語数制限本。
映画の原作など現代物も多い。

Yohan Ladder Editions
有名な文学作品、童話などを、使用単語に制限を加えて書き直したシリーズ。
使用単語を1000~5000までの5段階に分け★の数で単語レベルを表示。
このシリーズは構文にはあまり手心を加えていないので、語彙制限本の中でももっとも難しく感じる。
その分、一般の英文多読に入っていくための準備には最適。

I CAN READ
アメリカの子供向けの児童書。
Level 1は本当に簡単。読んで楽しいかどうかは別問題ですが…(^^;)
Level 2で500~1500、Level3で1000~7000語程度の語数になっています。
Level 3位だと大人が読んでも楽しい話が(割と)多い。

Oxford Reading
イギリスの多くの小学校で教材として採用されている語彙制限本で。
一人読みができることを目指して、レベル別に分けられています。
絵だけの簡単な本からステージ毎に徐々に難しくなっています。
異なるお話6~10冊(1冊は8~32ページ)を集めたパックが基本単位となっています。
基本的に一話完結ですが、物語の背景や登場人物は、全ストーリー共通です。

多読・多聴最強ガイド

多読用図書が何冊分か掲載されています。
コストパフォーマンスも高く、自分に合うレベルを確認するのにお勧め。
多読は多くの英語教師、語学教育者が良い方法として薦めており、確実に効果がある英語学習法だと思います。
しかし、それは最低限の英文法知識とある程度のボキャブラリーを持った学習者が英語の運用能力を鍛える為に行うからこそ効果のある学習方法であり、多読だけで英文法と語彙を習得しようとするメソッドには無理があると思います。
※自分のレベルに合った本を探す手助けとしてSSS多読法の教材を利用する事はお勧めしますが、個人的にはSSS多読法自体はお勧めしません。

STEP 4: 面白い本を読む

日本語で書いてあっても、つまらなくて窓から投げ捨てたくなる本はあります。
ましてや読むだけでもストレスの掛かる英語で、その上つまらないのでは読みつづけるのは苦痛でしかありません。

どうにも面白くない時には「糞つまらない本に当たった、運が悪かった」と思ってその本は躊躇せずに投げ捨てて下さい。
単に自分の英語力が足りなくて、ちゃんと読めれば面白い本のような気がする時には、そっと押入れの奥にしまって読めるようになる日が来るのを待ちましょう。
無理して辞書を引き引き、一文ずつ翻訳して…なんて読み方をしてもサッパリ楽しくありませんし易にはなりません。

読書好きなら夢中で読んでるうちに寝るタイミングを逸してついつい徹夜になってしまった経験が一度や二度はあることと思います。
本当に面白い本なら多少難しくても読むのにストレスが掛かってもワクワクして次はどうなるのか展開が気になってどんどん読み進めてしまうものです。
なるべく、そういう面白くてワクワクする本を選んで(←それをどうやって選ぶのかが難しい問題ですが)読むようにするのが良いです。

STEP 5: 本当に読めてるの?

本当に読めてるの? が気になりだしたら、日本語訳を読んでみると理解具合が良く分かります。
学習目的の場合には先に日本語訳を読んでから原書を読むのも効果があると言われています。

”読める”にもいくつかの段階があります。
粗筋が追える、大まかに内容が把握できる、内容が殆ど把握できる、細かいニアンスが分かる
と言う感じで理解度は英語力に比例して深まってゆきます。

で、どの段階で”読める”とするのか?ですが、私は読んで”面白いと思える”段階でよいと思います。
粗筋が終えるだけで充分面白い本もあれば細かいニアンスが分からなければ楽しめない本もあります。
本にもよりますし人にもよりますので一概には言えません。

そうは言っても、こういうのでは困ります。

 2ちゃんねる 英語板より引用

名無しさん@英語勉強中

SSS式多読をやったものの失敗した者です。失敗体験も参考になるかと思うので恥を忍んで書きます。

英検3級に落ちて悩んでいた3年前に「快読100万語!ペーパーバックへの道」を偶然見つけて
読んだのがきっかけです。それ以降この本に沿って多読に取り組み始めました。
始めは絵本からはじめ、徐々にレベルを上げていきました。

1年たった頃、ちょうど100万語に到達しました。でもまだシドニーシェルダンやハリーポッターは
難しすぎました。更に多読を続けて3年目に入ったころようやくハリーポッターなどが読める
ようになりました・・。

そこでもう一度英検3級を受けてみました。が、結果は不合格。
おかしな。でも確かに良く分からない問題もたくさんあった。ヒヤリングはあまりしていなかったから、
それが原因か?いろいろと原因を探ってみましたが良く分かりません。

読めるつもりになっていたけど、本当に自分は英語が読めるのか?という根本的な疑問が沸いて来ました。
それを検証するため、日本語訳のハリーポッターを読んでみることにしました。

なんと英語で読んだ時とは話の内容がかなり違います。言語が違うので受ける印象が違うのは当然ですが、
内容は違うはずがありません。

他の本でも試してみましたが、結論として分かったことは、英語を読む力がついたのではなく、
知っている英単語を拾って自分でストーリーを創り上げる力がついていただけでした。

確かにそれでペーパーバックを楽しめるのですが、私が期待していたこととは違います。
今は他の方法を探している最中です。もう一度、一から英語の勉強を始めます。

この話自体はネタ(活発な書き込みを誘う為の作り話)だと思いますが、
知っている単語を繋げてお話を作ってしまうのは割と良くあることです。
書店の参考書売り場で「私、長文は得意なんだけど文法は苦手なんだよね。」と話している女子高生に遭遇した事がありますが「それ、絶対長文も正しく読めてませんから」と横からツッコミ入れたくなった事もあります。
そういう話を一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。

自分の読解が極端に間違っていない事を時々確認する必要があると思います。
日本語訳を読んでみるのも一つの方法ですし、『超基礎がためわかる!英語長文』のような問題集で自分の読解力を確認するのも良いです。

もっと理解を深めたい! と思うようになったら勉強のはじめ時です。
こういう精神状態の時には文法学習も苦にならないものです。
中学英語を完璧にマスターするだけでも理解度が大幅に向上します。
※完璧にマスターすると言うのは、時間をかければ出来るというのとは数レベル上の状態:反射的に出来る状態:だと思ってください。

STEP 6: 原文でなければ伝わらない面白さ

眠れない時は羊を数える
何で羊なんだ?と思ったこと無いですか?
でも sheep…sheep…sheep……sleep…sleep…sleep……
だったら眠れそうな気がしますよね。

くまのプーに北極を見に行く話があります。
”North Poleを見に行くぞー!”
と言うわけでプーたち一行はピクニック気分でどんどん北に進むんです。
「ぉぃぉぃ北極になんか行ける訳ないだろ」と思いつつ読み進めると、プーたち一行は森の外れの原っぱにたどり着きます。
原っぱには棒が一本立っていて”North Poleに付いたぞー!”と言うのです。
「いや、確かに森の北(North)の棒(Pole)だけど…orz」と言う脱力感は原文でなければ分かりません。
日本語訳で”北側の杭を見に行くぞー”と言われても何でそれが楽しいのか伝わらないし、”北極に行くぞ!”で出発して原っぱで突然”棒に付いたぞ!”と言われても訳がわからないでしょう。
※日本語訳を読んだことが無かったので「何だよ棒かよ!」ってのは本当に笑えました。


説明するまでも無いが、このAAの面白さは日本語でなければ伝わらない。

STEP 7: 原色で読む面白さ

「翻訳は、最高のできばえだとしても、とても正確だがつまらない訳か、とても楽しいが間違っている訳のどちらかで 満足しなければならない。」
※誰が言ったんだ↑コレ? (´・ω・`) 知らんがな

日本語は一人称、二人称に複数の選択肢があります。
登場人物が「わたし」「あたし」「私」「あたい」「ぼく」「俺」etc のどの表現をするかでその人の印象が大きく変わってしまいます。
その他にも、助詞の微妙な違いに性格の違いが現れてしまいます。

例えば、赤毛のアンの同じシーンを抜き出して比べてみましょう。
※完訳ではなくてかなり省略されていますので微妙に情景が異なります。


"Pretty? Oh, PRETTY doesn't seem the right word to use.
Nor beautiful, either. They don't go far enough. Oh, it
was wonderful--wonderful. It's the first thing I ever saw
that couldn't be improved upon by imagination. It just
satisfies me here"--she put one hand on her breast--"it made
a queer funny ache and yet it was a pleasant ache. Did you
ever have an ache like that, Mr. Cuthbert?"




「きれい?きれいだけじゃ、ものたりないわ。美しいっていうのもだめ。
ぴったりした言葉がみつからないわ。」少女は、手を胸にあてた。
「このへんが、きゅっとしめつけられるみたい。でも、気持ちいい痛み。
そんなふうに、胸がきゅんとなったことあって?」



「きれい?あら、きれいなんてのはあれにぴったいりする言葉じゃないわ。美しい、でもい
けないし、どっちも言いたりないわ。ああ、すばらしかったわ-すばらしかったわ。想像
をつけたすことのできないものなんて、これがはじめてよ。ここのところが、すうっとした
わ」と片手を胸に当てて「へんにずきりとするようで、いやな気持ちじゃない痛みな
のよ。そんな痛みを感じたことがあって?小父さん」




「きれい?きれいなんて言葉じゃだめ。美しいもだめ。両方とも、十分にいいあらわし
ていないわ。ああ、すばらしかった-すばらしかったわ。想像力で補う必要のないも
のを見たの、これが初めてよ。ここがいっぱいになっちゃった。」
女の子は片方の手を、胸にのせた。
「このへんが、きゅっと痛くなって。でも、気持ちのいいいたみなの。そういう痛みを感
じたことある、カスバートさん?」

翻訳版の登場人物は翻訳者の、このキャラクタならこんな喋り方をするに違いないと言うフィルターを通しています。
大なり小なり翻訳者が受けた印象の影響を読者も受けてしまうのです。
翻訳者のフィルターを通していない原色の作品から受ける印象は訳本を読んだ印象とは違うかもしれません。
※ちなみに赤毛のアンの原書を読んだ私の感想「すんげーお喋り」、セリフがめちゃくちゃ長い。

翻訳の違いで残念な思いをしたのは「アルジャーノンに花束を」の短編版を読んだ時でした。
※長編版の方が有名なので長編版を先に読んでいました。短編版は短編集「心の鏡」に収録されています。
長編版のチャーリーは一人称が「僕」で純朴な印象を受けるのですが、短編版のチェーリーは一人称が「俺」で粗野な印象を受けるのです。
短編版が長編版と同じ訳なら良かったのですが、一人称の印象の違いで激しく違和感を感じて楽しめませんでした。
※「アルジャーノンに花束を」の英語版は故意に散りばめられたスペルミスと文法間違いがてんこもりなので、間違った文章から正しい文章を推測する必要があり、難易度はかなり高いです。

最近では「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)が日本語版を楽しみにしていたのに…orz
でした。

決定的に変だと思ったのは、日本語版の下巻191ページからのやり取り
「男の子だ! ドーラの父親の名を取って、テッドと名付けたんだ!」
「君が名付け親なってくれるか?」ハリーを離して、ルーピンが聞いた。
テッドと名前を付けたのにハリーに名付け親になってくれってどういうこと?
原文ではこの部分は "You'll be godfather?" he said as he released Harry.
になっていて「君が後見人になってくれるか?」って方がニアンスが近い。
シリウスもハリーの後見人でハリーという名前はジェームスが付けたらしい。
3巻の「名付け親だから万一の場合は~」のくだりは変だなぁとは思っていたけど、イギリスではそうなのかと思って納得してたよ…orz

スネイプの最後のシーン(日本語版では下巻404ページ)
When the flask was full to the brim,and Snape looked as though there was no blood left in him,his grip on Harry's robes slackened.
"Look...at...me...." he whispered.
The green eyes found the black,but after a second,something in the depths of the dark pair seemed to vanish,leaving them fixed,blank,end empty.The hand holding Harry thudded to the floor,and Snape moved no more.

このLook at me.はどう訳されるのか楽しみにしていたのに
「僕を……見て……くれ……」ですか… (´・ω・`) ショボーン
emiさんの訳「目を.........その......目を」の方が遥かに想いが伝わります。

他のところは意訳するのにこんな大事なところで直訳なのが残念です。
唇を歪めてニヤリと笑い、音も無く滑るように歩くクールな悪代官キャラのはずが、唇を捲り上げてピョコピョコ歩くギャク親父に仕立て上げられ、解けないパズルを出すノータリンの汚名を着せられた挙句に最後の場面までこの仕打ち…スネイプかわいそ過ぎます。
※いっそ丸っこい体型にして語尾を(ry 「我輩、スネイプ教授なりよ」

ハリーポッター日本語版に関しては数多くの誤訳・珍訳・間違いが指摘されています。

逆説的に、それだけ多くの誤訳・珍訳・間違いがあっても楽しめるのですから、原書を読んで多少分からない所があっても充分楽しめる事の証明になるのではないでしょうか。
「マーリンの猿股」からハーマイオニーの乙女心を推測することは不可能ですが、原書で読めばロンへの想いが読み取れるかもしれません。
※半ば言葉遊びに近いですが、ロンのギャグが変な風に訳されてしまっている為、ハーマイオニーのセリフ「マーリンの猿股」につながらなくなっています。