■ 孔雀を観察する神の目


孔雀の恋の衝動 の要点 :
> 孔雀は何も考えていません。孔雀の「意志」によって
> 長い羽根や踊りがもたらされた訳ではありません。
> 彼らは内から湧き起こる衝動のまま動いているだけです。

MINEW の考える答え(歴史を観察する神の目)

宇宙空間に飛び出して、はるか上空から地上を観察して見ましょう。 時間を1億年ほどさかのぼり、早回しで歴史を眺めます。

恐竜が滅んでからしばらくして、体を羽毛で包み、空を飛び回る動物、 「鳥」が現れます。空を飛べる事によって、敵に捕まえられる 心配があまりないこともあって、次第に種類も数も増えて行きます。

初めはそれほど変化のなかった集団から、いろいろに違った子供が 生まれてきます。 その違いを作るのは遺伝子の突然変異です。 そこには決まった方向はなく、あらゆる変化がランダムに生まれます。
体が赤いの青いの黄色いの、まだらなの縞々なの水玉なの、 背の高いの小さいの、尾の長いの短いの、ずんぐりなのほっそりなの ……
見ための違いだけではありません。行動もいろいろ違います。 虫が好きなの、果実が好きなの、魚が好きなの、日陰が好きなの、 ひなたが好きなの、鳴くもの鳴かないもの、カァと鳴くもの、 ピーヒョロと鳴くもの、泳ぐもの、水に潜るもの、活動的なの、 怠け者なの、意地悪いの、親切なの、……
とにかく思い付く以上に何でもありです。


ここで、孔雀の祖先となるある鳥に注目します。それは、灰色で、 特に特徴の無い鳥です。その鳥の集団の子孫を何百年も観察 していると、ある時、突然変異の偶然によって「より好み」をする 雌鳥がポッと現れます。
雄雌でペアを組む時に、その雌は集団内で相対的に「体の大きい雄」 を選ぶのです。
(「より好み」と言っても、彼女は考えている訳ではなくて、 遺伝子によって起こる衝動によって、そう動いてしまう。)
そしてそのペアから生まれた 子供は、親の資質を受け継ぎますから、 雌の子供は大きな雄が好き、というより好みをするし、雄の子供は 大きな体を持つことになります。

初めのころは、集団内にはより好みする雌としない雌、 体の大きい雄と普通の雄、小さい雄が混ざっています。 雄の個体同士は、餌の取り合いをしますが、その時、 ケンカをして「体の大きい方の雄が勝つ」としましょう。 負けた方は餌を食べられなくて死んでしまいます。 つまり体が小さいと生命力が弱くて死んでしまう。 そうすると集団内には体の大きな雄が増えて行きます。

繁殖期になって、相手探しをする時、より好みをする雌は 体の大きな雄を選ぶので、より好みしない雌には体の小さい 少数の雄しか残っていません。 より好みをする方が、より好みをしないものよりもペアを作るのに 有利です。より好みしない雌はペアを作れない事もあるでしょうし、 子供を産んでも子供の体が小さいせいですぐ死んでしまったり するでしょう。
集団の次の世代では、より好みをする雌と体の大きい雄の比率が ますます増えて行きます。

つまり、ある雌が「大きい雄を選ぶ」という好みを持ったのをきっかけ として、集団全体が 大きい雄を選ぶ雌 と 大きい雄 の方向に進化して 行きます。


「大きい雄を好き」ということと、「大きい雄が生命力が強い」 ということは偶然の組み合わせですが、そういう「強い」ものを 「好む」性質がたまたま結びついた時、それが多数派に向かって 進化が進む力は強力です。

逆のケースとして「大きい雄が弱く」、雌は「大きい雄を好き」なことも あるわけですが、そういう時には、(たとえば体が大きいと動きが遅い、 と言う理由で)大きい雄も、大きい雄を好む雌も、集団から 消えて行きます。
体が大きい小さいに限らず、長い期間には、いろいろな変異の組合せが 集団中に発生し、いろいろな競争が行われます。 しかし、どんな性質にしろ、結果として残るのは、餌の取り合いに勝ち、 捕食者に狙われないなど「強い性質を持つ雄」と「その性質を好む雌」 だけです。

いま私達が見ている世界は、いろいろなことがあった後に 勝ち残った者だけがいる世界です。
そこに、孔雀のように雄雌間でのより好み(性選択)をする生物がいた場合、 それは上記のような仕組みで発展して来たもののはずです。
孔雀の羽根が長くて奇麗である事と、生命力が強い事が どう関係しているのかは実は良く判りません(状況が複雑すぎるので いろいろな観点がある)が、今言った論理で行くと、

美しい孔雀ほど生命力が強い”はず”です。
また、美しい雄孔雀を選ぶ雌孔雀ほど生命力の強い子供を 沢山産める”はず”です。

ということです。
これがもう1つのストーリーです。


1995/02/16 T.Minewaki
2002/06/09 last modified T.Minewaki

お子さんは何人?
生命のよもやま話
MINEW のホームページ

T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp