Worms  ◆ 生命のはなし (4) ◆

自作の人工生命プログラム Worms(いもむし)の初期のプログラムを T君に見せた時、
「ほのぼのとしたことやってますね。」
と言われてしまいました。

人工生命、または遺伝アルゴリズム(Genetic Algorithm, GA)は、 近ごろ大はやりの注目されている研究分野で、 これを使って TSP 問題を解くとか、イメージを修復するとか、 そんな話題が多いのですが、僕が考えているのは、 あくまでも自然界の振舞いをシミュレートするための道具としての GA です。



箱庭の生態系

Life1: 「生きている」とは?
> とにかく、そのできてしまった「命のタネ」は、生き続け、コピーを
> 作ることができました。そのあとは、「2001 年宇宙の旅」で骨から
> 宇宙船までワンカットで進むように、もう一直線です。

環境と、「命のタネ」さえあれば、あとはほっといてもどんどん進化・増殖 して生物世界を作り上げていってくれます。

ということは。
試験管やフラスコの中に、適当な材料(環境)と、「命のタネ」的物質を 入れて密封し、しばらく待てば、その中に複雑な生態系が構築されている はずです。 フラスコの中で恐竜や人類が繁栄している、こともあるかも知れない。 それを観察しさえすれば、進化の謎を知ることはできるだろう。

それは、十分あり得る話です。実際、多くの化学/生物学者が試験管の中に 「命のタネ」を作り出そうと多くの実験をしています。それっぽいもの (ある種のアミノ酸)ができた、という話もあります。 密閉ビンに数種のアミノ酸などを入れておき、実験室の棚に置いて 10 年以上、変化が起こるのを待っている、という科学者もいます。

でも、そういうやり方だと、フラスコの中で進化と認められる変化が 起こるまでには、少なくとも 10 億年はかかるでしょう。
そんなには待っていられませんね。

別の方法として、金属や電気による単純な機械をつくって、命のタネ的 役割をさせてみよう、というものもあります(東大 中野馨 など)。 これも面白いですが、機械というのは人間が設計した時点で、どういう 振舞いをするかが制限(設計)されてしまっている、という点で意外性がない。 だいたい僕には電気回路、ハードウェアの知識はない。

  ★ そこで、コンピュータです。

ソフトウエアで上記のことをシミュレーションすることは、比較的簡単に できます。ソフトウェアなら、実世界で1億年かかる世代変化を 1秒くらいでやってくれそうです。やり直しも検証もできます。
すでに、「コンピュータウィルス」という原始生物ぽいものがその中で 動き回って増殖しているらしい、という実績もあります。

コンピュータの中にソフトウェアによる生物世界を作り、その進化システムを 観察し解明すること。僕が Worms プログラムを作ったのは、そこが狙いです。


1993/05/27 T.Minewaki
2001/02/17 last modified T.Minewaki

5: 遺伝子操作について
生命のよもやま話
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