Life Icon  ◆ ファッションの戦略 ◆


ファッションの流行というものは移り変わる。決定版が無い。
固定した最適解は無い(ように思える)。それはなぜか?

ファッションとは、他人、主に異性の気をひくための外見上の戦略です。
異性に選んでもらうためには、まず目立たなくてはならない。 (他と同じならば、気にもとめられないから。) では「目立つ」ということはどういうことか? というと、 それは他とは違うことであり、 できれば少数派でいることである。

次に、センスが良くなければならない。 さて「センスがいい」とは何か? これは難問だ。
ファッションの目的が異性の獲得であるならば、それに沿って 異性に気に入れられるような特性をアピールするものが、 センスがいいものと感じられるだろう。 (乳房を豊満に見せる「寄せて上げるブラ」のことを考えるもよし。)


進化的に正直に考えるならば、「環境に適応して生き残り易い特徴」や、 「健康な子孫を沢山産み育てる能力を示す特徴」が、異性に好まれる ポイントであるだろう。確かに大昔はそうだったろう。 けれども、進化の歴史は長く、淘汰は繰り返されたので、だいたい みんな同じくらい優秀な者だけが残った。そのうえ、環境が短期間で変わる。 さらに性選択のプロセスの影響で、 一度魅力的に見えた特徴は最終的に意味もなく過剰に発達してしまう。

結局のところ、現在の僕らが感じる「美しい」とか「センスがいい」とか 「カッコイイ」とか「セクシー」という感じ方は、近い将来に対して どれほど適応的効果があるものかどうかはわからない。
でも、それらはかつては有効であったなんらかの特徴の名残り である、ということはあり得るだろう。それで、心がくすぐられてしまうのだ。


現代人間社会では情報が高速に伝搬するので、「センスのいいファッション」 を誰かが発見して実行しても、すぐに人が真似てしまう。そのせいで、 「少数派でいる」という戦略は安定にはならない。
そのようにして「流行」は生まれ、広がり、それが多数派になった時点で 支持されなくなる。 (ルーズソックスのことを考えるもよし。)

1つの流行が終るとすぐ次の流行が探され始める。そうやって 何回も何回も流行は繰り返されて来た。わかりやすいセンスの良さは 掘り尽くされてしまったので、時代が進むに従い奇妙で万人受けしない ファッションに移行してゆく。

一度流行ったファッションはそれなりに残るので、ファッションの 数々は歴史とともに蓄積される。昔流行ったが今は少ない、という ファッションを選択することでも少数派になれる場合には 「リバイバル」が起こる。 (ベルボトムジーンズのことを考えるもよし。)
忘れた頃にまた流行る、は何回も繰り返し可能。

結局、「オーソドックスにセンスがいいが多数」と「奇抜で怪しいが少数」 との間に数々のファッションの選択肢が存在することになる。 それは「センスがいい」を選ぶか「少数で目立つ」を選ぶかの個人の嗜好の 違いということになるのだろう。


* センスの良さの他に「実用性・機能」「価格」というものも 関係して来ますね。

* 高級ブランド品というものは「商標権」「価格」の操作によって 少数派の地位を保とうとする。

* 「女性の胸は大きくて尖ってて上を向いているのがいい」と いうのは誰が決めた? 下着会社の陰謀か? それとも既に進化的に 組み込まれている性選択圧を利用しているのか?

* 「顔の美白」という化粧品会社の宣伝についても同様。 顔の表面皮膚を削り取って、薬品で漂白して、その上に白い粉を塗って、 それが「美しい」なんて、誰が決めたことなんだろう? 体にいいわけないじゃん。

* ルーズソックスとレッグウォーマーはそっくりだと思う。 なにかファッション的に深層心理をくすぐる共通点があるのではないか?


1999/03/30 T.Minewaki
1999/09/11 last modified T.Minewaki

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