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NHK スペシャル
データマップ 63億人の地図 (1)
寿命 2004年いのちの旅


NHK 総合 2004/01/25(日) 21:00-22:00 放映
NHKスペシャル「データマップ 63億人の地図 (1) 寿命 2004年いのちの旅」
肥満・ストレス・飢餓 忍び寄る危機▽再長寿日本の明日

毎月1回の特集番組で、全9回の第1回。 世界的な統計データを視覚化したデータマップを通して、世界の現状を認識し 未来を見通そうという試み。今回のテーマは「平均寿命」。 アフリカのシエラネオネ、米国のウエストバージニア州、沖縄、ロシアなどの 取材をまとめた。
NHKスペシャル「データマップ 63億人の地図」(Link)

ここから MINEW のコメント:

統計に基づくデータマップ、という見せ方のアイデアはおそらく 「世界が 100 人の村だったら」から来ているのではないか。 世界を数値によってコンパクト化してとらえることの インパクトの強さを示した文章だったから。

しかし、統計データというものは見る側に注意が必要です。 いくら客観的なデータに見えても、数値を分かりやすく示そうとする過程で、 どうしても意図が入ってくる。 例えば、数値の大小を何色で表すか、にはデザイナーの意図が入り込み、 それが何色かによって見る人の印象は変わってしまう。

そもそも、統計データの数値そのものの信頼性も危ういものがある。 オリジナルの数値を*いじくり回す*ことで都合のよいものに 変身させてしまうことは難しくない。 NHK や国連データを信頼していない訳ではないが、調査者さえ無意識に、 自分の見たいデータだけを見せられているかもしれない。注意しよう。

寿命、出生率について示す時、 人口(増加率)のデータを一緒に示さないのは、 一面しか見せておらず、ずるいと思う。

寿命は世界の場所ごとに異なる。それは当り前だ。 世界は広く、それぞれの環境が異なっているから。 世界地図に色分けして示されると、それは明快にわかる。 そして、その次に来るナレーションの語り口は 「だから、同じくらいに寿命を伸ばさなきゃいけない、 均一にするべきだ、寿命は長いほうがいい」 と訴えているように聞こえた。
でも、それでいいのか?
僕達日本人は、世界でもっとも長寿な人々だから、 短命な国を見れば、長寿にしてあげなきゃいけないような気分になってしまう。 でも、そんなことができると思っていいのか?
それは、世界を小さく示して見せられてしまったことによる 傲慢な錯覚ではないか?

第1回のテーマとして「寿命」を選んだのは、 それが誰にでも共通に強い関心を呼ぶテーマだからだろう。 しかし、寿命は、生きている中で多くの要因から影響を受けた結果なので、 「寿命が短い/長い」を掘り下げていくと、 それぞれの場所で異なる複数の要因が浮かび上がってくる。 シエラネオネは内戦からくる飢餓、アメリカは肥満、 ロシアはストレス、に焦点を当ててまとめられていたが、 そんなに単純ではないだろう。 それぞれの取材の焦点が異なるせいで、番組を通してのテーマの統一感が なくなって散漫な印象となった。

取材のそれぞれで強い印象を受ける場面はあった。 アメリカで、極度の肥満のために胃のバイパス手術を受ける女性がいた。 友人で、病気のため胃の大部分を切除し、食べられなくなって 痩せて苦しんでる友人がいるので、やりきれない気分。

NHK スペシャルのシリーズ にしては、妙に後味の薄い第1回の放映でした。 いつもいい番組を作ってくれるので期待してたんですが。

2004/02/19 T.Minewaki

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