◆ クジラの跳躍(映画) / たむらしげる ◆

GlassyOcean Movie Ticket
映画名: クジラの跳躍 Glassy Ocean
監督・原作・脚本・イラストレーション: たむらしげる
プロデュース・ディレクション: 潮永光生
音楽: 手使海ユトロ
製作: 愛があれば大丈夫
提供: バンダイビジュアル
上映予定: 1998/11/14 銀座テアトル西友にて初上映

(c)1998 たむらしげる / MMF・バンダイビジュアル


たむらしげる氏 初の劇場映画が完成・公開!
これはファンにとって待ちかねた、すばらしい出来事です。 あの映像世界が動き、大画面で観られるなんて!
珍しく本人の舞台挨拶があるということもあり、 公開初日に観に行きました。 11/14、銀座テアトル西友へ。20 分ほど前に 5F の劇場へと 昇ってみると、フロアはすでに長い行列。たむらファンはこんなに 居たのかと驚きうれしくもあり。挨拶が始まる頃には劇場は大入りで、 立ち見ならぬ「通路に座り観」の観客も多くなっていた。
21:00 になると、たむらしげる氏、潮永光生氏、手使海ユトロ氏など、 お名前はおなじみの方々が登場し、本作品製作の苦労や魅力について 語った。たむらしげる氏は、時々著者紹介の写真で見るように、 シャイでナイーブなアーティストという感じのする方だ。

それが終わると、上映開始。今回は以前に製作された作品群も 共に上映される。これらは別々でありながら、ひとつのものなのだ。

 ・a piece of PHANTASMAGORIA 「密造酒」
 ・a piece of PHANTASMAGORIA「南の大陸」
 ・「銀河の魚 URSA minor BLUE」
 ・a piece of PHANTASMAGORIA「オーロラショウ」
 ・a piece of PHANTASMAGORIA「虹の谷絵の具工場」
 ・「クジラの跳躍 Glassy Ocean」

たむら氏の映像作品は、新たな世界を創り出し、そこへ連れて行ってくれる という感じがある。 この「クジラの跳躍」も、一貫したストーリーを追うというよりは、 クジラの跳躍という出来事を機会に、そこに集まって来た人々の記憶の 断片を描くことで、彼らの暮らす世界や歴史や人物像を鮮やかに僕達の 頭の中に投影する。その世界はこの現実世界とは異なっていながら、 一貫した色あいや温度や匂いをもっていて、住人たちと一緒に そこにたたずむことはとても心地いい。 緑のグラデーション、ひんやりした空気、コチンとした触感。 ずっと宙に浮かんだクジラを眺めていたいと思わせる。 しかしやがて、祭りは終わる。

映像の美しさはいうまでもない。たむら氏の 絵本PHANTASMAGORIA CD-ROM の タッチと色彩を忠実に保ちながら、全ては「手作業の」コンピュータ グラフィクスで製作されている。 それは大変な作業 だっただろうと思う。 いわゆるセルアニメではなく、精緻にモデリングされた 3D-CG でもない。 手書きの CG イラストの味を保ちながら、その絵を積み重ねることで 動画にする。かえって手間は増えているのだ。(その手法を探ること から始めて、3年かかってしまったのだと製作者は言う。)
映画のメインであるクジラの跳躍場面では、部分的にレイ・トレーシング の CG 技法で画面が描かれていた。非常にリアルな海の透明感を 創り出していたが、そのリアリティと手書きイラストとの融合は 特に悩ましく苦労した部分だったろうと思う。イラストは、ちょっと現実を はしょってるところがいい。わざとつじつまをはずしてるところに味がある。 そこにどこまでリアリティを加味してゆくか。
今回はいいバランスに収まったように感じたが、それはこれからの たむらしげる作品につきまとう、じれったい課題であるだろう。


●「クジラの跳躍」アンコールロードショウ

アンコール上映を観に行った。観るのは4ヶ月ぶり2回目だ。
中野武蔵野ホール 3/17 (水)。 平日の昼。観ている人は他に3人だった (^_^; 。 静かにゆったりと世界に浸ることができた。何回観てもいい。
前回と同じ順番で「Phantasmagoria」「銀河の魚」「クジラの跳躍」が 上映された後、さらに特別編として たむらしげる氏製作の初期アニメ作品 「Crystalization」(1990) を観ることが できたのが嬉しい。Phantasmagoria CD-ROM の映画館で 「きっといつか… 公開予定」と出てくる思わせぶりだった作品だ。 白黒で Mac 手書きの味。乾いてひんやりした空気。 土星を眺めながらの温泉は気持ち良さそう。
1999/03/17


* 文化庁メディア芸術祭 / アニメーション部門大賞 1998 *

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1998/11/15 T.Minewaki
2000/12/20 last modified T.Minewaki

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