21世紀型地域政策の提言
 グルントヴィ協会は多くの経験、学識、ビジョンなどをもつ多士済々のメンバーが集まり、それ自体一つのシンクタンクにもなりうる内容をもっています。

 協会のそのリソースを生かして積極的に関与できるまちづくりのアイディアの一例を以下に挙げてみました。構想力だけならもっと大きなもの、ユニークなものは出せますが、非現実的なものでは実現性が薄いので、日本各地でのまちづくりの実践例を考慮し、それらに準じるようにして、現在の制度やニーズに応じる形で現実的に可能なものにしていますもちろん協会ならではのユニークさをそこに加味してはいます。

 協会のサイトを訪れる自治体関係者、企業関係者も少なくありませんが、ごらんになったらどうぞご自分の持ち場での地域づくりのヒントとしてください。
 もしいっしょにやりましようという奇特な団体、自治体、企業がおられれば、大いに歓迎いたしますのでご一報下さい。

協会幹事 清水 満

 協会は教育・文化、生涯教育、環境(エネルギー)、福祉、町づくり、国際交流などにおいてもっているリソースを生かすことが可能である。

1 教育文化分野

1-1、小学校を町として建設

 学校建築を多目的なコミュニティセンターとして建設する試みはすでに各地で行われ、生涯学習施設などとのセットでは福島県三春町の中郷学校が有名であるが、デンマークのセーディンエ・フリースクールは学校を一つの町として建設し、「風車の町」と名付けている。

 具体的には図書館、売店、集会場、新聞社、食堂などをつくり、そこに各クラスを学期ごとに入れて、休み時間や課外活動で自治運営させる。生きる力、自治・自律の教育として有効である。フランスのフレネ教育、スペインのペンポスタ子ども共和国と類似するような試みといえる。

 現在はセーディンエ・フリースクールは逆にコミュニティ・センター型に変貌をしているが、以前の「風車の町」のようなアイディアを取り込んだ形で、日本においても、既成のコミュニティ・センター型を越える新たな試みとして実行する価値はある。

売店

セーディンエ・フリースクールの売店
ここがクラスになり休み時間は売店の業務をする。

講堂

教会を模した講堂
向こうに見えるのは図書館

1-2、子ども生活学校

 福岡県庄内町の「町立生活体験学校」は「通学合宿」という形式で、小中学生に生活体験、生きる力、共同生活の場を与えて、全国的にも有名である。

 デンマークでは、エフタースクールという全寮制の中学が300校以上あり、親元を離れて郡部の自然の豊かな地域で、自律した生活体験を学んでいる。

 わが国では宮崎県立五ヶ瀬高校のような中高一貫性の全寮制高校も出てきてはいるが、現実的に実行しやすいのは庄内町方式であろう。

 一定期間生活をこの「生活学校」で行い、自炊、生産(農業、工芸など)、表現(芸術、スポーツ)などを地元の大人たち親たちの協力を得て学び、そこから学校へ通うシステムを確立することは「生きる力」や子どもたちのコミュニケーション能力をつける意味で大きな意義があると考えられる。

 またデンマーク各地にある「自然学校」の特色をもってもかまわない。これは放課後や休日子どもたちが自然観察やキャンプなどの野外活動を学ぶ施設で、地域の大人、生物学専攻の大学生(教育実習を兼ねる)などがリーダーとなっている。

1-3、子ども芸術文化邑

 廃校利用などで「子どもの文化芸術学校」を恒常的な施設として確保し、児童劇団や芸術家たちの合宿・練習施設を備え、児童劇・子どもの表現芸術のワークショップなどを行ったり、表現芸術フェスティヴァルを毎年開催したりする。

 すでに日本各地に同様の取り組みはあり、九州でも大分県、熊本県阿蘇地方に廃校に芸術家を招聘する試みや芸術祭はいくつかある。ただ子ども、児童をメインにしたものはあまりないので、その付加価値があるものと思われる。

 協会の友好協力団体である「九州沖縄子ども文化芸術協会」のネットワークを経由すれば世界から児童劇団や関係者を招いて国際フェスティヴァルも可能である。協会もデンマークの劇団であればコンタクトはとれる。

この際、障害児(障害者)たちの表現活動も積極的に取り入れ、彼らの表現活動が独自のアイデンティティーを得るように促進していく。

1-4 青少年街角倶楽部

 わが国の青少年は学校生活(勉強、部活など)の要求度が高いのでストレスがたまり、私生活においてはどうしても遊び、享楽、消費においての交友関係しかもつことができず、またそれだけ金銭が必要になるので、その分、金銭第一主義、非行や不純異性交遊に傾きやすい面がある。

 親や地域の大人、学校教員からの精神的な自律、反抗は自然な反応であるので、地域や親、学校丸がかえで彼らを囲い込むことなく、ある程度の自主性を尊重して、かつての伝統的な「若者宿」に相当する若者のたまり場を各地区に配置する。地区公民館に併設する形でプレハブでもかまわない。

 いわば若者の活動の部室のようなもので、お茶が飲めていろいろ話し合える場所とする。使用条件としては「地域通貨」制度をうまく組み込み、中高生が地域の活動にボランティアとして関与し、そのことによって対価として彼らの活動のための物品を商店街から得るシステムをとる。

1-5、アート・アンド・エコロジー・カフェ

 大都市部に物産販売出張所をつくっている小規模自治体は多い。しかしみな同じようなコンセプトで、産物も似たような農産物・海産物が多く、そこの町の出身者以外は買わないようになってしまっている。

 基本的にタウン誌に載るようなハイカラなものでないと大都会では注目を浴びないし、リピーターにはならない。大都市の繁華街の消費者は若者、若い女性がメインだからである。

 彼らにアピールし、リピーターとなってもらうには、その自治体の出身の若者に運営をさせ、カフェとライブハウス、ギャラリーの多目的室を設ける。そこをその都市の芸術家、写真家、NPO、市民団体の展示、発表の場とする。大都市部では会場費がかなり高いので、利用料を格安とすれば利用者は多い。利用条件にその自治体への協力を入れてまちづくり支援をしてもらう。

 若者中心の運営として若者に魅力あるような場所にし、ここを通じて町の情報を発信して、1-3の「芸術文化邑」に必要な人材交流にも役立たせる。また若い女性をターゲットにすることで、過疎地で深刻な嫁不足解消ための企画を行ったり、脱サラ相手の就農情報センターも兼ねる。 

 カフェの運営、材料は協会メンバーの(株)ウィンドファーム(有機無農薬コーヒー製造、自然食品販売)が業務提携を行う能力をもっている。

2 環境・エネルギー分野へ続く