クレイジーでヒュッゲなホイスコーレ!

ホイスコーレ春日(99年4月10-11日)の報告

Jette
報告をするイエッテ
グルントヴィ協会恒例の春のセミナーと会員総会が行われました。集まったのは最大で25人、そして17人が宿泊しました。

1,筑後川をめぐる水環境問題(13:30〜15:30)
 「なぜ無駄なダムがつくられるのか、日田・大山の水量増加運動」成毛克美(日田市民セミナー)

 前日は朝まで学生等と飲んで、クローバープラザに来て、時間まで外で寝ていたという成毛さん。二日酔いでいまひとつ頭が働かないので、という言葉の割には的確な報告がなされました。彼らの作った「筑後川水環境マップ」というイラストマップを使い、上流から下流に至る各地の風土や水環境やダムをめぐる現在の状況などが説明されました。

 基本的には、開発依存経済であるかぎりは、ダム建設や土木工事による環境破壊は避けられず、いかにして自立した地域の経済や水の循環システムをつくるかということが大事であると語られ、開発依存経済から脱して、自分たちの地域のリソースを生かした湯布院での実践や、日田全市をあげての水量増加運動が報告されました。

 福岡市が適正な規模を超えて膨張し、その水需要をまかなうために大堰をつくり、筑後川から取水をしているのですが、この取水自体が筑後川の伝統的な水環境・水文化(アオ取水など)を破壊し、都市は水を奪い、筑後川流域はその開発による環境の破壊と補助金依存体質の再生産という水問題における南北問題などにも触れられ、内容の濃いお話でした。

2,協会会員総会(15:45〜17:00)

 ホイスコーレにつきもののティータイムを挟んで、会員総会。まず特別ゲストJetteによるスピーチ。彼女は現在オーフス大学から関西外語大に来て、日本語と陶芸を学んでいます。

 この外語大のコースは世界30カ国くらいから学生が来ているとのことですが、この学生相手の授業がまったくの日本スタイルで、暗記と試験の繰り返しです。今回も来福の前後に試験がたくさんあり、彼女はタメ息をついていましたが、そのせいか、学びにおける日本とデンマークのスタイルの違いや今属してる日本でのクラスの話などをしました。

 試験や暗記中心の日本の学び。あるいは彼女のクラスには日本人学生が3分の1いるが(Jetteなどの提携校の外国人学生はいわばお飾りというか日本人学生に「うちはこんなに国際的な大学なんだよ」と日本人学生に示すために呼ばれ、日本人学生を入れたクラスで英語などの授業を行うわけです。まぁ国際化を売りにする私大などにはよくあるもの)、彼らの自己表現能力のなさなどが、批判がましくないおだやかな日本語で語られました。参加したみなさん、彼女にたいへんいい印象をもったようでした。

 その後会員総会をしましたが、時間が押してわずか30分。駆け足で私が会計や活動の報告をするので手いっぱいで、あまり議論ができませんでした。大まかな方針としては、セミナーの再考や関連団体との交流をはかることなどが出されました。

姫野コンサート 3,百姓フォーク&ブルースシンガー姫野洋三さんのミニ・コンサート(19:30〜21:00)

 夕食(玄米ご飯)のあとは、姫野洋三さんのコンサート。前日は京都の真宗大谷派のお寺で僧侶相手のコンサートをして、高速道路を飛ばして戻ってきたというハードスケジュール。声が出るかどうかということでしたが、さすがに伸びやかな歌声で、魅了してくれました。

 オリジナルを中心に、ときおりはフォークの名曲やあるいはJetteを意識したか、彼女も知っているような英語の歌を交えてくれました。憲法9条の条文を使ってつくった「日出生台、この想い届け」や日本のあちこちに実際ある学校の校則を詞にした「校則」、あるいはオジサン、オバサンに勇気を与えてくれる「おじさんブギウギ」など楽しく、また心揺さぶられる歌を披露。最後はみなで踊って、終りました。
食事時の語らい
楽しい食事のひととき
4、交流会

 松本さんが彼のヨーロッパ・エコロジストの旅のスライドを上映したのですが、ちょっと場所(メンバーも?)が悪かった?なにせみな酒を飲みながら見るのですから、言いたい放題です。一つのスライドに思い思いの方向から意見(ケチ?)がつけられ、松本さんもときどきは立ち往生。感動的なはずのスライドが酒宴のサカナにされてしまって、松本さん申し訳ありません。

 九州名物のグルントヴィおじさんに水俣の破戒牧師などが大いに騒ぎまくり(彼らが最年長!)、他地区から来た人たちは驚いたことでしょう。なにせパワーある砂川、松本さんらも目立たないくらいですから。でもこれが協会のセミナーなんです....ハイ。

 でもJetteはとても面白がって「日本に来て初めてこんなクレイジーな人たちにあった。グルントヴィ・ソサエティはホントにデンマークなみのクレイジーなヒュッゲをもってる。まるで若者たちの騒ぐあのホイスコーレそっくり。これぜったいデンマークの父母や友人たちにメールで明日報告するわよ。こんなに楽しい日本人たちがいるって」といってくれました。彼女は北海道、広島、大阪と三ケ所でのべ一年以上も日本滞在経験があり、多くの日本人と出会っているのですが、彼女の日本人イメージをぶちこわす楽しい経験であったようです。デンマーク人の彼女が「協会はホントにデンマーク in ジャパン」といってくれますので、このヒュッゲな雰囲気はいよいよ本物のようです。

 姫野さんが再度ギターをとりだし、みなで歌い、Jetteもデンマークの歌を紹介して、手を組んで歌ったのもまさにヒュッゲでしたね。深夜3時まで延々と宴は続くのでした。

5,ビデオ上映会
「教えられなかった戦争・阿波根昌鴻、伊江島の闘い」
(12日9:00〜11:30)
日出生台訓練、日米ガイドラインを考えながら
コメンテーター 成毛克美

 夕べの寝不足でみな眠たい顔。おまけに朝からビデオではきっと寝るだろうと思っていましたが、それを吹き飛ばす映画の内容で、終ると自然に拍手が出ました。沖縄の語り部阿波根昌鴻さんの半生とその語り、沖縄のおかれた現状、日米安保条約の真実、あるいは元海兵隊のネルソンさんの心に訴えるその語り口などが、眠気を吹き飛ばす迫力に満ちていたのです。沖縄の基地でアジア諸国の開発独裁国での反体制指導者暗殺の特殊部隊訓練が行われていることなど、衝撃的な事実に参加者も驚いたようでし。映画についてはここに詳しい情報があります。

 その後成毛さんが、日米ガイドラインの意味やこうした有事体制にいかにしたら抵抗できるかについてなど、解説をしてくれました。現状のガイドラインでは国民が後方支援として位置づけられ、総動員体制がつくられようとしているのです。軍事基地に依存しない経済づくりをしている湯布院での反対闘争やジュネーブ条約追加第一議定書(世界132国が加入。日本政府は未批准)にもとづく抵抗のあり方など、有益な示唆に富む成毛さんならではのお話でした。

 ジュネーブ条約追加議定書にもとづく抵抗とは、政府が戦争を遂行しても、地域や自治体などで非戦を宣言すれば、そこは非武装地帯となり、いっさいの国家からの強制や義務を拒否できるというものです。あるいは世界人権宣言にもとづき、個人として戦争加担に拒否することもできます。人権というものの内容を考える意味でも有意義な話でした。

5,オプション(12日13:00〜16:00)博多フィールドワーク

 いったんここで解散し、午後は博多フィールドワークで、栄西が帰国後初めて開いた寺、聖福寺(日本で始めて茶の木が植えられ、ここからお茶がひろまった)やその末寺の一朝軒(尺八の元祖)、戦後すぐの博多の町並みや山笠のお宮櫛田神社など歩き、茶が始まった寺を訪ねたので、会員の小林さん宅により、表千家のお師匠さんである小林文子さんに茶席を設けていただき、参加しました。よそ者に開放的で人情あふれる博多っ子の代表でもあり、参加者のみなさん、博多人の心意気を少しは感じ取れたことでしょう。小林さんありがとうございました。

 以上が今回のホイスコーレ春日の報告です。わずか2日間(半日ずつ)という短い期間でしたが、そのわりには中身が一杯つまって充実したものだったと思います。

 今回アシスタントをしてくれるはずだった若い会員が風邪で来れず、私一人で事務局をしましたが、グルントヴィ協会のよさは、何も指示を出さずとも、各自が適宜それに応じた行動ができ、片づけや交流会の準備、企画の準備、コーヒーの準備など自然発生的にできることです。今回もおかげで、事務局一人でもまったく混乱や問題がなく、スムーズに運びました。この各自の自立ぶりは日本社会では貴重な存在で、グローバルにもやっていける協会会員の特徴だと思います(時間通りにはいかないし、ビデオは機械の調子でうまく上映できないなど、もちろん混乱はあるのですが、ごく自然に収まって流れていくので、あまり混乱したという印象を与えないのです)。セミナーに何度かでるとみなさんこのコツを覚えるのです。それが一番の協会のセミナーの売りでしょうか。会員のみなさんに心より感謝します。