Skyum エフタースクール
3、第10学年
フリースコーレにおけるこの段階での授業が「第10学年(の授業)」と呼ばれるだけの内容を備えており、従って、生徒たちが国民学校の第10学年の試験を受けて、それに合格できるだけの実力を有すべきであることは、「フリースコーレ法」の第1条3項に、「この段階での教育は、国民学校の第10学年での義務教育と同じレベル出なければならない」と定められている。国民学校法の第8条1項〜4項参照。
国民学校の義務教育の科目には、デンマーク語、数学、英語の必須科目の授業が週に合計14時間分(生徒たちの全授業時間の約半分を占める)含まれている。その他にも、生徒はテーマを自分で選んで論文を作成し、自分のための学習計画を作成することが義務付けられている。下記参照。
受験のための授業については、上記の3科目の授業カリキュラムを、それらの個々の科目の試験に課された要件が満たされるように設定しなければならない。
科目構成は柔軟に設定できる。デンマーク語、数学、英語の授業は週に合計14時間分実施されることになっているが、これらは他の科目またはプロジェクト・プロセスに含めて、或いはこれら3科目の卒業試験の準備学習に含めて教えてもよい。
第10学年の選択科目の内容は、それぞれのフリースコーレが自由に決めることができる。ただし、学校は、生徒が自分の学習計画を作成する際にガイダンスをしなければならない。このガイダンスは、生徒の学習計画が国民学校での学習計画のレベルに匹敵するものになるように、充分な品質を備えていなければならない。国民学校での学習計画に関する公示参照のこと。
第10学年の授業を受けた生徒だけが、国民学校の第10学年の卒業試験を受けることができる。
第10学年の段階に関するその他のこと
フリースコーレは、第10学年を必ず設定しなければならないわけではない。また、第10学年を設定しても、卒業生に国民学校の第10学年の卒業試験を受けさせることを前提にしないかぎり、授業内容は独自に決めることができる。その場合は、「フリースコーレ法」の適用を受ける学校は自ら選んで、設定した内容の授業を教えることができる。フリースコーレにおいて、国民学校の第10学年の義務教育に匹敵するレベルの授業を受けていない生徒は基礎学校で実施される第10学年の卒業試験には参加できないが、「国民学校法」の規定に定められた自由受験生として国民学校の卒業試験を受ける権利は有している。
4.授業の監察
4.1.親の会(Parent Circle)による監察
フリースコーレの一般的活動に対する親たちの監察
「フリースコーレおよび私立の基礎学校に関する法律」の第9条1項には次のように定められている。
「基礎学校の生徒の親は、基礎学校において国民学校で一般的に要求されるものと同じレベルの教育が行われているか否かも含めて、基礎学校の一般的活動を監察する責任を負う(親の会)。監察の方法は親の会が定める」
子供をフリースコーレに通学させる親は、基礎学校の一般的活動を監察する親の会の義務の一環として、子供の通学について責任を負わねばならない。
基礎学校の一般的活動の監察は、当該校の生徒の親全部から構成される親の会が行う。従って、これは個々の親が個別的に行う任務ではない。親の会のメンバーは、親の会の共通の任務の遂行方法について定期的に討議し、決定すべきである。親の会での討議の結果は文書の形で記録され、それまで適用されてきたガイドラインは討議の結果に基づき修正されねばならない。親の会は、学校での子供同士の関係および子供と教師との関係を定めた規則が遵守されているか否かも監察の対象とする。
学校の理事会は、学校運営の基準規則に基づき、学校活動の監察に関するガイドラインが親の会により制定されることに責任を負う。学校は、学童の親および当該校に子供を入学させることを欲している親に対してガイドラインを配付すべきである。新学期の開始に当たっては、校長が親の会と共に監察規則を検討することが望ましい。
親の会は、学校活動に親が参加することにより監察することができる。例えば、学級懇談会での生徒の親と担任教師による授業の目的についての話し合いや、親同士のコンサルテーションへの参加、授業参観、学校の年次会計報告への目通し、学校総会や年次集会への出席、子供の通学時の付き添いなどにより、監察できる。
学校が生徒に対して国民学校で一般的に要求されるレベルに匹敵する教育をしているか否かの観察対象には、授業そのものの他に、授業の結果も含まれる。ただし、この点については、デンマーク語、算数/数学、英語の授業に関する下記の記述を参照のこと。所定の結果が得られているか否かを監察するには、当該の授業による成果として何を期待すべきかを記述した報告が存在していなければならない。そのような報告は、親の会の協力のもとに、学校が作成しなければならないが、それは当該校における教育成果に関する総合的な報告または個々の科目の記述報告とする。その報告の形と内容は、学校が選択して決定する。
それには、各学年で教えられる科目の内容および各学年の終了時に生徒たちが取得していると推定される知識や能力の説明を含めてもよい。国民学校では学習カリキュラム/授業ガイドラインが作成され、それを目標に授業が展開されるが、フリースコーレではすべての生徒が各学年の終了時において一定レベルの知識や能力を必ず取得していなくてもよい。
フリースコーレでの教育の成果は、例えば生徒たちが個々の能力に基づき国民学校の卒業試験を受けて、国民学校の生徒と同じような成果を挙げるか否かにより判断してもよいが、個々の生徒が卒業試験で収めた成績をチェックするだけでは充分ではない。
親の会は、個々の学級または学年の学習状態を監察することを、それぞれの学級または学年で勉強している生徒の親たちに任せてもよい。ただし、その場合は、それらの親たちは子供の学級または学年の状況のみについて報告する。そして、それらの部分的な情報を集めて、学校の全体的な活動状況を割り出して、それが国民学校で一般的に要求されるのと同じレベルにあるか否かを親の会全体で総合的に判断することが大切である。
フリースコーレでは、学校経営の大きな枠組みについては理事会が統率し、日常の授業面は校長が統率することが基本であることを指摘しておく。また、親の会は、学校活動について意見を発表するのに適した実際的な方法を定めておくことが大切である。それには、親の会が学級ごとに代表を選定し、その学級の状況を報告する広報係とし、それらの広報係が学校の統率陣と定期的に会って、意見を交換するようにするのも、ひとつの方法である。
親の会は個々の教師を指揮する権限は持たない。学級担任の教師に関連して問題が生じた場合は、親の会は校長に対して当該の教師の授業方法に関する問題点を指摘し、批評またはコメントをする。校長の対応に親の会が満足できない場合は、学校の理事会に問題を提起することができる。
4.2.親の会が選任した外部者による監察
親の会が選任した外部者によるデンマーク語、算数/数学、英語の習得状況の監察
「フリースコーレおよび私立の基礎学校に関する法律」の第9条2項には次のように定められている。
「親の会は、生徒のデンマーク語、算数/数学、英語の習得状況を監察する者を1名、最高4年を任期として選任するか、或いはコミューン当局に上記の点について監察することを委任する。監察者は親の会に所属する者、当該校の理事会のメンバー、当該校で働く者、或いはそれらの者と婚姻関係または近い親族関係にある者であってはならない。学校はコミューン当局および教育省に対して、だれが監察者に選ばれたかを通知しなければならない」
親の会が監察者を選任しない場合は、監察はコミューン当局が行う。「フリースコーレ法」の第9条3項を参照のこと。
親の会が別の監察者を選任する場合は、学校はコミューン当局および教育省に対してその旨を通知しなければならない。この点については、「フリースコーレ法」の第9条2項3号を参照のこと。
学校の理事会は、学校運営の基準規則に基づき、親の会が監察者を選任する点について責任を負う。従って、親の会が監察者を選任しない場合は、理事会はコミューン当局に対してその旨を通知して、監察を依頼しなければならない。
選任された監察者
「フリースコーレ法」は親の会が選任する監察者の経歴については何も要件を定めていないが、当然のことながら、監察者が上記の3つの科目における生徒の学習状態が国民学校のレベルと同じであるか否かを判断できるほど、教育の状況について熟知していることが前提とされる。すなわち、監察者は、当該校の生徒たちが国民学校の同じ学年の生徒たちと同じレベルの学力を有しているか否かを判断できねばならない。
その他にも、監察者は授業に使用される言語であるデンマーク語と英語を上記の3つの科目の学習成果を適切に判断できるだけのレベルで理解できる能力を有していることも前提とされる。
監察計画
監察の遂行方法について計画を作成せねばならぬことは言うまでもない。監察の立案と実施については、監察者が責任を負うが、監察計画は、監察の形、範囲および程度(intensity)について学校側と綿密に討議した上で作成すべきである。監察計画には、すべての監察活動について明確に説明する他、「フリースコーレ法」の第9条4項に定められている親の会と学校の理事会への報告をどのような方法で行うかも説明しなければならない。
フリースコーレは、特定の科目をどの学年に設定するかについて、国民学校とは異なった方法で決めることができる。また、監察者は、授業が国民学校と同じレベルの成果を挙げているか否かを判断するに当たって、教育省が全国の国民学校に配付した授業時間配分のガイドラインを参考にし、担当する基礎学校がその分野について蓄積した情報を利用することができる。
生徒の学習状況に関する報告
「フリースコーレおよび私立の基礎学校に関する法律」の第9条4項には次のように定められている。
「コミューン当局も含めて、監察者は、2項に定められた科目の学習状況について、親の会と学校の理事会に、毎年、報告しなければならない。監察者が、当該校の学生の学習状況が国民学校で一般的に要求されるものと同じレベルにはないと判断した場合は、その状況を改善するために3ヶ月以上の改善期間を設定することができる。監察者が、その改善期間を過ぎても学習レベルが依然として不充分であると判断する場合は、親の会と学校の理事会と相談した上で、その旨をそれぞれの生徒の居住コミューンに通知しなければならない」
その場合、監察者は、前記の通知の送付に関連して、例えば親の会の総会、学校の年次総会または両者の合同総会などを開催して、そこで報告するようにすればよいと思われる。
生徒の学習状況に関する報告は、会合に参加する親の都合を考えると、文書の形で提出すべきであろう。
状況が芳しくない場合
法律に定められているように、監察者は学校での状況改善にかける期間を決めることができる(ただし、3ヶ月を最低とする)。つまり、欠陥を除去するのに必要と思われる長さの期間は、監察者が自由に定めることができることが前提になっている。その反面、状況改善期間中、多くの生徒たちが充分なレベルの授業を受けることができないことを考慮して、状況改善にかける期間は短い方が望ましいことを忘れてはならない。
監察者は、状況改善にかける期間が終わっても、授業の質がまだ不充分と判断する場合は、その旨をそれぞれの生徒の居住コミューンに通知せねばならない。
生徒の居住コミューンは、それにより義務教育を受ける義務が当該校では履行されていないことを知ることになる。居住コミューンは、当該の生徒が他の方法(「国民学校に関する法律」第40条参照) で義務を果たすことができるように手配する責任を負う。何故ならば、当該コミューンに居住して、義務教育を受ける義務を負うすべての児童を国民学校に入学させるか、或いは国民学校で一般的に要求されるのと同じレベルを有する施設で教育を受けさせるように手配しなければならないからである。
監察遂行の実際
監察者は色々な方法で監察することができる。最も自然な方法は、監察者が学級を訪れて、実際の授業に立ち会うことであろう。校長や前記の3つの必須科目の教師と協議したり、授業カリキュラムや教育資材について調査し、評価することも大切である。授業の質について疑念を抱く親からの訴えがあれば、監察者としては問題の教科の授業に立ち会う必要がある。
監察者は、判断の出発点を全部の生徒の学習状況に置くと共に、前記の3つの必須科目に重点を置いてその結果に基づき総合的に判断すべきである。しかし、監察者が学習状況を監察して、例えば特別授業のような特別な措置を講じる必要があると判断した場合は、個々の生徒または生徒グループについて意見を述べることができる。ただし、監察者は上記の3つの科目における生徒の学習状態が国民学校のレベルと同じであるか否かを判断できるほど、教育の状況について熟知していることが前提とされる。すなわち、監察者は、当該校の生徒たちが国民学校の同じ学年の生徒たちと同じレベルの学力を有しているか否かを判断できねばならない。
監察者は、状況を改善するために、一定の教育形態を採用することを学校側に要求することはできないし、また、教師の学歴に特別の要件を設定することもできない。
監察は毎年実施しなければならない。監察は監察者が適切と考える方法により実施されることになっているので、例えば学校訪問の回数などについて基準(standard)を設定することはできない。通常、学校への監察訪問は年に2〜3回行われている。何か問題が生じた場合は、もう少し頻繁に行われる。また、すべての学級に監察訪問を行えば、学校の授業状況について監察者が受ける印象は充実したものになる。
通常の授業に立ち会うことも監察のひとつの手段である。生徒たちの学習状況、例えば英語の読解能力、会話能力、語彙などについて、担任の教師に説明してもらうことも監察に役立つ。
また、監察者は生徒たちの学習状況を把握するために、コミューンの教育心理学的なアドバイス(PPR)を受けるように校長に提案することもできる。
情報の提供
「フリースコーレおよび私立の基礎学校に関する法律」の第9条6項には次のように定められている。
「学校は、2項、3項および5項に基づく監察の際、監察者の要求に基づき監察の遂行に必要な情報を提供しなければならない。」
すなわち、監察者は、監察の遂行に必要と判断するすべての情報の提供を学校側に対して求めることができる。具体的な判断に基づき、例えば下記の点に関する説明を要求できる。
授業のプランニングや遂行に関する記録
生徒の学習成績
生徒の性格に関する記録など
教育心理学的なガイダンスでの意見や判断結果
生徒および授業状況に関する公的機関とのコレスポンデンス
監察者は、監察に関連して知り得た個々の生徒の個人的な事情に関する情報を他に漏らしてはならない。親の会に報告を提出する場合も、この秘匿義務が適用される。