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コブシ ●コンフリー コルチカム

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 コブシ(モクレン科の木=マグノリア)

庭木として

いつか諒安の影がうすくかれ草の上に落ちていました。一きれのいいかおりがきらっと光って霧とその琥珀との浮遊の中を過ぎて行きました。と思うと俄かにばっとあたりが黄金に変りました。霧が融けたのでした。太陽は磨きたての藍銅鉱のそらに液体のようにゆらめいてかかり 融けのこりの霧はまぶしく蝋のように谷のあちこちに澱みます。
(ああこんなけわしいひどいところを私は渡って来たのだな。けれども何というこの立派さだろう。そしてはてな、あれは)

諒安は眼を疑いました。そのいちめんの山谷の刻みにいちめんまっ白にマグノリアの木の花が咲いているのでした。その日のあたるところは銀と見え陰になるところは雪のきれと思われたのです。
(けわしくも刻むこころの峯々にいま咲きそむるマグノリアかも)
こういう声がどこからかはっきり聞えて来ました。諒安は心も明るくあたりを見まわしました。

宮沢賢治「マグノリアの木」

毒・害

薬・効

<樹皮
アルカロイドのマグノクラリン。これはそれほど強くはないが、マチンのところで記したクラーレと似た働きをする。

症状:運動神経の麻痺、呼吸停止による死亡

・伝染病が流行した時、病魔を防ぐ目的で樹皮や枝を刻んで煎じ、お茶にして飲む。
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・花粉症に:乾燥した花のつぼみ3gを600ccの水で煎じ、3回に分けて飲む。

花には毒性はない。むしろ香りのよさによって薬効が多い。上記のものは頭痛にも効果がある。また、同じ科のホウの木のように木材としてもすぐれている。


 コンフリー(ヒレハリソウ)

空き地で雑草化している

ジキタリスの中毒事故として、もっとも多いものがコンフリーと間違えて食してしまうということだろう。

コンフリーの青汁が有用であるとのことから、間違えてジキタリスの葉を青汁にしてしまい、かなり苦いにもかかわらず「こういうものだ」と我慢して飲んでしまうことがある。

コンフリーの葉とジキタリスの葉はとても似ているが、コンフリーには葉にぎざぎざがない。採集の際によく見分けることが肝心である。

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コンフリーで健康被害の恐れ 厚労省が販売自粛要請

健康食品の原料に使われている野草・コンフリーが原因と見られる肝障害が海外で報告されたことから、厚生労働省は14日、コンフリーを含んだ食品の製造や販売を自粛するよう業者などに通知した。消費者に対しても摂取しないよう呼びかけている。
コンフリーは欧州や西アジアが原産の野草。芽や葉をゆでて食べられるほか、粒や粉末に加工され、健康食品としてインターネット上で販売されている。
今回の通知は、食品安全委員会の専門調査会が同日、「健康被害が生じる恐れがある」との意見を出したことを受けた。

(2004/06/14 20:10 asahi.com)

厚生労働省関連HP:
http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/tp0614-2.html#top

毒・害

薬・効

<根、葉
根にアルカロイドが含まれる。葉にはカリウム、カルシウムなどの有用成分が多くふくまれているが、シュウ酸、タンニンも多い。

症状:即、命に関わる毒ではないようだが、根の濃縮液を与えられた実験用のねずみが肝臓ガンになったことから、発ガン性の植物として国によってはコンフリーの使用を制限している。また葉の過剰摂取により胆石になった例もある。

毒草のジキタリスとまちがえるな、といわれるコンフリーも実は毒草の部類にはいるのかもしれない。

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コンフリーの青汁療法が、小児ぜんそく、胃ガン、肺ガン、脳出血、歯槽膿漏などに効き、すぐれた殺菌効果をみせる薬草であるといわれ、コンフリーの一大ブームが起きたことがある。

葉っぱに火を通し、少々食する程度であれば問題はないと思われる。


 コルチカム(イヌサフラン)


コルチカム(イヌサフラン)


サフラン

メグは難しい顔をして、茎についているしなびた葉にじっと見入ったあとで、手を触れ匂いを嗅いだ。「まあ、これはわたしがここにつるしてる本物のサフランじゃありません」 彼女ははっきりと言った。広い額にしわが寄った。「ほら葉の形がずっと単純で、端がとがってないでしょう? しかも長くて色も濃いです。でも交ぜてあって、乾いてたら、料理人は違いがわからないかもしれません。イヌサフランですよ、これは」
 エリザベスは顔をしかめただけだったが、メグは不意に愕然とした顔になった。鋭く息を吸った後で、捕まっている女のところへつかつかと近づいた。「あなたがあの方に毒を盛ってたということ?」彼女は金切り声で叫んだ。「わたしの薬草に交ぜて? イヌサフランは毒なのよ、なんてことをしてくれたの!」

カレン・ハーパー「毒の庭」

毒・害

薬・効

<全草、特に球根
アルカロイドのコルヒチン

症状:口にした場合、死に至る激しい下痢、嘔吐、内蔵の壊死。血便。
サフランに似ているということで「イヌサフラン」の名がついているが、きちんとした認識があれば大きさや花が咲く時期が違うので注意すれば間違えることはほとんどないだろう。サフランは「アヤメ科」、コルチカムは「ユリ科」、土に植えなくてもそのへんにころがしておいても花が咲くということでは両者ともよく知られている。

キャプション
・6世紀ごろから球根が通風に効くことがわかっており、現在でもコルヒチンは痛風の発作を予防するために使用される。
ただし、副作用(激しい下痢、無精子症、脱毛、ダウン症の出生率アップ等)があるので素人考えで安易に球根などを用いてはいけない。

・1937年、コルヒチンが植物細胞の染色体を倍加する毒であることがわかり、現在、種なしスイカや4倍体のフルーツづくりに使われている。

・理科の実験などで、 タマネギなどの細胞の染色体の数や形を観察しやすくするために、このコルヒチンの紡錘糸をつくらせないようにするという特性を利用する。