南足柄市

アサヒビール神奈川工場見学

鎌倉プロバスクラブの有志総勢17名が2007年8月31日南足柄市にあるアサヒビール神奈川工場にて新鋭の工場見学と付属のビール園にて焼肉バイキングと出来立ての生ビールを楽しんだ。 飲む目的であるから大雄山駅からのタクシー往復である。

武智親睦委員長以下の親睦委員は事前調査と称して全員このコースを楽しみ、本番でも全員欠けることなく出席だったという。

見学コース完了時にサービスの生ビールを3杯いただける。そして足柄の丘の上に建つ安藤忠雄設計になる豪華なビール園にて焼肉バイキングに舌つづみをうちつつ出来立ての生ビールをいただくのだ。飲み放題である。そして最後には委員長考案の懸賞付きじゃんけんゲームで盛り上がり、鎌倉プロバスクラブのクラブソングを建て前ではピアニッシモで唄った。

アサヒビール神奈川工場

参加者の一人が今回の企画をした人には聞こえないように小さな声で「アサヒ・ドライはコクがなく、アルコールが入った炭酸飲料という感じだ。旨いとは思わないのになぜこんなに伸びたのだろうか 」とささやくように言う。グリーンウッド氏も全く同意する。うまいとおもったのは過去20年間で夏の暑い日に汗をかいてノドが乾いていた時だけで一生に一回しかない。そこで「ビールの味を知らなかった、若い女 ・子供にうまくアピールしたのが成功の原因だろう」と冗談を言った。

業績が低迷していたアサヒビールをてこ入れするために銀行から天下った経営者樋口広太郎氏が「ビールは工場を出た瞬間に味は劣化しはじめる。キリンビールが旨いのは流通経路での滞留時間が短いためだ」と喝破し、古いビールの入った 数ダースのビール瓶を営業部員のまえで割ってみせて営業の意識改革をした。そして流通経路での滞留時間を短くするように日々仕向けたためだと日経の自伝で自慢していたのを読んだ記憶がある。

では実際そのとおりなのか?今回この工場で試飲してみて流通経路での滞留時間が短くて旨いというのはアサヒ・スーパードライには当てはまらないと気がついた。実際この工場の試飲で3杯ただだといわれても1.5杯以上飲めなかった。鶴見のキリンの工場で試飲したときのあの旨さはついに発見できなかった。この工場のすぐ近くの開成町在住の友人Aは自他ともに認めるビール好きだ。この彼ですら同じ見解で、近くとはいえもう決してここで飲むまいと思っているそうだ。 製造部門の力がついていっていないのか工場の外見を飾ったために工程に無理があるのか。

更に友人Aは追い討ちをかける。「工場進出前の地元への説明では250人の雇用をもたらすと説明したのに他工場からの配転で間に合わせ、地元からは3人しか雇用してくれなかった」と町役場が怒っているという。

友人などの意見もあわせるとキリン、エビス、サッポロの人気が高く、アサヒとサントリーは低い。

さてこの工場は2002年安藤忠雄と日建設計によって設計された。設計者起用の意図から明らかなように積極的にビール消費者を受け入れ、広告搭の役目を持たせる目的で風光明媚な足柄の丘の上に建設されたものとお見受けした。無論、うまいビールの元となる良質で豊富な地下水が容易に得られることもその理由であったろう。

訪問者に良いイメージをもってもらおうとして装置類は外から見えない仕掛けになっている。門を入るとどこかの美術館にきたのではないかと錯覚する。縦型の発酵槽は美しく化粧された麦芽サイロ群の後に配置されてエントランスからは見えない。主としてカナダから輸入される乾燥麦芽は訪問者ゾーンとは別のアクセスをもつコンクリート製の建物から荷役するようになっている。製品もこの建物から直接トラック積みするとのこと。

原料を外国から輸入していると知られるのは不都合と思いこんでいるのか説明嬢は麦は契約者に委託栽培したものを使っているとしか説明しない。「麦芽作りの工程はどこにあるのですか?」と質問 すると「それはカナダにあります」としぶしぶ説明する。「遺伝子組み換え作物は使っていますか?」と質問すると「絶対にありません!!」と声高に主張する。深層水でビールを作っていると宣伝して誇大広告と訴えられたことを思いだす。深層水など塩分過剰で飲めたものではない。 ごく少量加えるか、イオン交換樹脂で脱塩するかするのだろうが、ごく少量ならミネラルはほとんど入らないし、イオン交換樹脂で脱塩したとしても同じことだ。

美術館かと見間違いそうな聡ガラス張りの建物は仕込み室で中には大きな釜がいくつもあり、麦芽、米、トウモロコシ、ホップを煮込み麦芽に含まれるアミラーゼで糖化させてビールの元となる麦汁をつくっている。しかし配管やポンプの類は一切見学者コースからは見えず、ただ釜にかけた覆いがオブジェとしてみえるだけで、なにもない空疎な空間が広がっている。仕込釜で麦汁を煮沸するときに発生する蒸気をコンプレッサーで圧縮再利用するヒートポンプシステムを導入して省エネを図っているのだが説明 板があるだけで全ては覆いの下に隠されている。この工程は完全自動制御でたった2名で動かしているとのことだ。

ビール製造工程では糖や脂肪分などの有機物を含んだ排水が多量に出る。この工場では「嫌気性排水処理」を導入しているというが、見学通路からはこの施設は見えない。説明嬢もそれがどこにあるかは知らないし、説明資料にも見当たらない。排水処理で発生するメタンガスを燃料にしたエンジンでコジェネレーションし、電力と蒸気を発生させている。そして背圧タービン駆動冷凍機を導入して発酵槽を冷却する冷凍機を動かしつつ仕込み 釜用の低圧蒸気をつくっている。オゾン層の破壊原因となる一般フロンは無論、代替フロンを一切使用していないという。 ということはアンモニアを冷媒に使っているのだろうか?

ろ過の信頼性が増したのか最近はラーガービールでも充填後の熱処理はしないそうだ。ビンはキリン以外のビールメーカーはビンの形を統一してリサイクルしているという。キリンは 非協力でビンの統一には加わっていないという。

ビールの缶詰、ビン詰め、包装機械は見事に設計されていて自動機械の粋を見せられた思いだ。おかげで総員80名で24時間連続操業しているとのこと。全ては自動化の賜物だが品質検査だけは人間がしている。検査員は一日1本のビールを空腹時に飲む義務があるそうだ。通勤は会社の車でするとのことだが、若いのにメタボ気味で少しかわいそうな気がした。

説明嬢が少し寂しそうに、「最近ビールの消費は減少気味です。健康志向なのでしょうか?」

September 7, 2007

Rev. November 28, 2008


その後、東北の山に行った時、アサヒの缶ビールしか売っていないところに宿泊した。やむを得ずアサヒを飲んだが、アサヒビール神奈川工場のものよりましな味がした。どうも神奈川工場に問題があるのかもしれない。

Rev. October 13, 2007


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