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710

憲法の本質

2003/05/03

近代憲法はリバイヤサン(怪物)たる統治権力を馴致(じゅんち)するための義務規定。または「国民が公権力を縛るルール」あるいは「非統治者が統治者にしてはいけない禁止リスト」ということ。その例としては「百人の罪人を放免するとも一人の無辜(むこ)の民を刑するなかれ」という推定無罪。

ビヒモトとリバイアサン

神秘画家W・ブレークの銅板画

イングランドのジョン王の横暴な課税を制約すべくシモン・ド・モンフォール(第6代レスター伯)が招集した議会が王にのませた契約書マグナカルタに由来するためである。テームズ河畔のラニーミード(Runnymede)の原はジョン王が1215年にマグナ・カルタに署名した場所として知られる。63ヶ条は書き換えられたが「ジョン王は忠誠な臣下の忠言によって、以下の条文を承諾する」というマグナカルタの序文はいまでも英国の憲法の一部となっている。

トマス・ホッブズは1651年刊の自著リバイアサン(原題:Leviathan)で国家を旧約聖書ヨブ記の怪物レビアタンに比し、こうした暴力をふるう国家(イギリス)を、契約説に基づいて人間の利益になるように治めるのにはどうしたらよいかを論じた。

1789年のフランス革命の人権宣言第1条には「人は、自由、かつ、権利において平等なものとして生まれ、生存する。社会的差別は、共同の利益に基づくものでなければ、設けられない」とある。

残念ながら日本国の明治憲法も権力側の義務規定にもかかわらず、欽定であったため、また昭和憲法も米国から与えられたため、憲法理解の民度が低く、自らのものになっていない。そして法案の9割は役人に丸投げで作成した内閣提案である。議員 が自ら立案する議員立法のためには政策秘書団が必要で、日本では長年の官僚だのみの後遺症でその数は先進国の数分の一である。

生物には外敵の侵入にそなえて免疫機能があるように警察機能が備わっていない国際関係では自衛軍が必用である事は確か。この点、憲法9条はより現 実的にしなければならないといえる。ただ過去に免疫機構たる権力の暴走の経験を持つ国民はフリーハンドを権力側に与えることはできない。特に人 権などをどさくさに紛れて骨抜きにしようという衝動を持つ権力機構が存在するかぎり、国民はしっかり紐を引き締めておかなくてはならない。宣戦布告なしに侵入されて支払う犠牲の方が、自国の権力の暴走より被害は少ないものだと国民は感じている。

沈 黙と忍従が支えた日本の意思統一と富の分配は海に囲まれ人々の移動ができなかった結果としての一所懸命共通善のためにという前提があったからだ。国際化で そいう制約が取り払われテクノロジーが人、資源、情報、富、労働力を目覚ましく移動させる。結果として格差が生じ、地方は過疎化し、富裕層の富が外国にな がれる。こうして沈黙と忍従は最早期待できない時が来ている。このような時代の憲法の在るべき姿とは。

Rev. December 31, 2014


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