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1431

タガメ女/カエル男
2014/07/26

大阪大学の深尾葉子准教授が命名した防衛事務次官守屋武昌氏と配偶者の幸子氏のような関係。2007年11月、守屋夫妻が収賄容疑で逮捕された。守屋氏は「防衛 省の天皇」と呼ばれるほどの実力者であった。その「天皇」が奥さんの命令で汚職をしながら、防衛政策を決めていたわけ。奥さんに沢山貢ぎ物を持ってくるや つに都合のいいように日本の防衛政策が決まっていたことになる。

カエルはタガメに捕食されるのだが、この食われ方が目を覆いたくなるほどエグい。まず、物陰に身を潜めたタガメがガバッとカエルの背中に飛びかかり、瞬時に前脚で挟み込んで自由を奪う。次に、長い嘴(くちばし)を プスッと刺してチューチューと血肉を吸う。逃れようと必死にもがくカエルだが、やがてぐったりし、骨と皮だけの亡骸になってしまう。「夫婦の絆」などの美 しい響きでうやむやさにされてきた「搾取と支配の構造」がタガメ女/カエル男の実態で、日本の善良とされる標準的な夫婦はこの構造にからめとられている。

日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路 (講談社プラスアルファ新書)で紹介された タガメ女は放送禁止用語になった。タガメ女はドコモの携帯電話ユーザーである。ソフトバンクだと、同じソフトバンクユーザー同士なら無料通話できる。どこ かの女にかけても無料っていうのは気に食わないから、厳格な家族割引のドコモかauを選ぶのだ。タガメママに育てられた子供たちは、大学に入った後になっ ても、いつもどこかでママの「いけません」という声が聞こえるんです。自分らしく生きたら悪い子であると刷り込まれてしまってる。そして、就職活動で苦し む。こういう子供達を採用した日本企業は指令待ちだからおしなべて業績不振に陥り、貿易収支は赤字になる。

安冨歩東大教授によればカエル男は、組織の意思決定をする際に、組織の将来のことなんか考えない。タガメ女のご機嫌を伺いつつ、意思決定する。つまり、自 分が将来に貰う給料と年金のことしか考えない。そういう連中が往々にしてやるのは、(1)部下のイノベーションを邪魔する、(2)もしイノベーションが成 功してしまったら、その部下を追い出して、成果を横取りする。(1)の場合、イノベーションは起きない。(2)の場合はイノベーションは単発で終わって続 かない。日本中の大企業でこういうことが起きているので、国内企業でイノベーションは起きない。そうなると、国際競争力はゼロになる。

経済政策のアベノミクスも国家主義的動きも基本的には政策としては間違っている。しかし、国民の高い支持率はこの間違った政策を国民が望んでいる、ということを 意味する。国民はだまされているわけではない。なぜそういうことになるのか。安冨歩の考えでは、多くの日本人は「立場主義者」であり、「立場」をなくせば 生きていけない、と思い込んでいる。日本経済が行き詰まったのに伴って多くの人の立場が失われつつある中で、安倍政権は人々の立場を無理矢理にでも作り出 すという機能を果たしている。だから多くの人が自分の立場が守られるような気がして、支持している。

安倍政権は既得権益者のパイを守るために資金を出しているのではない。エリート官僚が自分の立場、つまり天下り後の何千万円という自分の年収を維持、確保 するために、古賀茂明氏の言葉を借りれば彼らの「生活設計」のためにやっているのだ。ただ、それに対して人々が文句を言わないように、財政が破綻している というのに、既得権益者たちに小金をばらまき続けて黙らせている、というのが実態。

一方、すべての立場から排除された人には、「日本人である」という「立 場」を与えることで、パイを与えずして支持を獲得している。そんな人たちにとって唯一残された立場が「日本国籍」だ。安倍さんが連呼する「強い日本を取り 戻す」によって、彼らは自分たちの「日本人」という立場が強いものになると感じ、惹かれる。中国との対立を煽ることで、その立場の感覚はリアルな ものになっている。もし徴兵制が始まれば、それこそ本物の立場が得られる。ほとんどナチ政権と同じことをしている。なぜそうなるか?安倍さんも、自分 の「立場」に完全にはまっている。安倍氏の母親は岸信介の長女。つまり、彼女は日本で初めて父親と息子が首相になった女性なわけで、安倍氏は基本的にその 母親のメンタルなコントロール下にある。

福島であれだけの原発事故を起こしても、いまだに日本の政府関係者の間では核武装しているか、いつでも核武装できる国が一流国家で、そういうことができな い国は二流国だとわけの分からないランキングが支配している。だから、原子力技術を放棄すれば、それは二流国家に転落すると思い込む。ドイツは、国が立派 であるかどうかの基準は核武装とか核エネルギーとは何の関係もないということをちゃんと理解している。だからこそ脱原発に明確に舵を切ることができた。こ の日本の劣等感が米国が対中国に対して採用しようとしているオフショア・バランシングに利用される危険がある。

日本はなぜ発想の転換をできなかったのかというと人々が子供時代に受けた魂の傷が原因だと安冨歩は考える。守屋氏は自分の魂の傷の痛みを何とかするため に、権力を握り、それを振り回して他人を支配し、暴力を振るうという衝動を抑えられなかった。そういう人々は、権力欲や上昇志向が強いので、それが彼らの 出世エネルギーとなる。そういうエネルギーの強い人が成功する社会では、まともな人間が権力を握ることはまずない。彼らはその権力を利用して、他人の魂を 傷つけようとする。かくして社会が傷ついた魂によって満たされてしまうとうわけ。

アヘン戦争、日中戦争、国共合作とそして内戦、そのあげくの果てにハチャメチャな経済政策で膨大な餓死者を出した大躍進に、人類史上にまれに見る暴力が吹 き荒れた文化大革命…。あの文革は、いわば中国の国民全員がリンチに参加したようなものだ。リンチに参加しなかったら、リンチされるという事態。全国民 にそんなことを強いたらどうなるか。こうした長年にわたり負ってきた精神的傷というものに中国は今も全部蓋をしたままだ。

だから日本が変なことをすれば、日本に向けて爆発する。確かに中国政府がそう仕向けているところもある。ただ、日本が自ら積極的に右傾化していくことで、中国の人たちがこんなに負ってきた傷を日本への怒りとして爆発させてしまう。

中国人も、日本人も、自分たちの負ってきた傷を少しでも治癒できる方向に進むことができるのかを、共に考えることが必要。まず日本人が人を癒やせるように なるまで自分を癒やさないとだめで、それによって中国人が魂に負った傷を何とかしない限り、世界は崩壊する。間違いなく。

精神に傷を負った人たちの傷というものの力はすごい。そういう傷がいわゆるファシズムや差別や戦争といった集団的暴力を生み出す。傷というのは、隠されていればいるほど力が強くなる。傷を負った人たちが、リベラリストの仮面をかぶるのは怖い。

アメリカはこうして日本がイスラエル化することを恐れている。安倍はネタニヤフ首相と相似なのである。

それぞれの魂が負っている傷が吹き出す「表出の仕方」というのは、時代によって異なる。1970年代の連合赤軍みたいなのもあれば、労働争議、あるいは最 近増えている若者によるホームレスの人たちに対する暴力沙汰など、様々に形を変えて出る。大事なのはその表出した現象に対応するのではなくて、その根本に ある原因を考えること。

ここでなぜデンマークで真の民主主義が成立する理由は魂の傷を持った人が少ないということが理解できる。

Rev. July 27, 2014


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