読書録

シリアル番号 790

書名

人間の土地

著者

サン=テグジュペリ

出版社

新潮社

ジャンル

随筆

発行日

1955/4/10発行
2004/6/5第72刷

購入日

2006/8/30

評価

-

原題:Terre Des Hommes by Antoin de Saint-Exupery

新潮文庫

箱根サン=テグジュペリ 星の王子さまミュージアムで購入。旅先などに携帯して暇の出来たときに読みつないでいる。

圧巻は「砂漠のまん中で」の章でリビヤの砂漠に不時着し、機体を大破。3日間飲まずに砂漠をさまよって、砂漠の民に助けられるところだが、その時ですら、冷静にフェネックという砂漠の小ギツネが小潅木に寄生する蝸牛を全て食べつくさずに少しずつ蝸牛を食べながら潅木をめぐりあるいている智慧に感嘆している。観察力のするどい人だ。

スペインでの戦争に従軍したときの経験を書いた最後の章「人間」でガゼルの子を捕らえて育てた経験を語る。「彼女たちはぼくの手の中で、物を食べるようになる。頭も撫でさせれば、顔を、ぼくらの手のくぼみに埋めたりもする。・・・ところが、やがてその日がくる、その日、きみは、彼女たちがその小さな角で、砂漠の方角に向かって、柵をしきりに押しているのを見出すはずだ。・・・彼女たちが何を求めているものか諸君にはおわかりだ。それは彼女たちを完成させてくれたはずのひろがりだ。・・時速130キロのスピードの、まっしぐらな遁走が味わいたいのだ。

同じ章「人間」でかってフランス語の教科書で読んだサン=テグジュペリの名言「愛するということは、 おたがいに顔を見あうことではなくて・・・」を見つける。これは男女間のはなしかとばかり思っていたが前後の文脈から男同士の友愛についての言葉と理解できる。

サン=テグジュペリは44才になった1944年、フランス解放戦争に従軍中、偵察を目的に単身ライトニング機に搭乗、飛び立ったまま、地中海で行くへ不明となった。ナチスの戦闘機隊に撃墜されたと信じられていた。

2008年3月15日の仏紙プロバンスに元ドイツ空軍のパイロットホルスト・リッペルト氏(88才)が1944年7月31日、任地の南仏で敵機がレーダーに映ったため出撃、マルセイユ方面に向かう戦闘機をみつけて撃墜したと告白。リッペルト氏はサン=テグジュペリの愛読者だったため、撃墜の数日後、コルシカ島の連合軍基地から独占領下の仏本土に偵察にでたサン=テグジュペリだったと知って慙愧の念にさいなまれたという。2003年にマルセイユ沖で愛機の残骸が引き上げられている。

Rev. March 17, 2008


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