読書録

シリアル番号 600

書名

日本の土地

著者

財団法人土地総合研究所

出版社

株式会社 ぎょうせい

ジャンル

土地制度

発行日

1996/11/20

購入日

2003/09/15

評価

デビッド・S・ランデス著「強国論」でヨーロッパの発展は所有権概念の確立がベースとなったとの論を読み、では日本の土地所有権の歴史はどうであったかと調べるために鎌倉図書館より借りる。

弥生時代に農耕生活がはじまった時点では土地は村落共同体の総有であった。7世紀中期の大化の改新で班田収受制が導入される。豪族・貴族の開墾した土地は一朝にして公収された。9世紀以降は荘園制に移行しはじめ、鎌倉幕府以後の中世、12-13世紀に荘園制が確立した。頼朝の御家人になると年貢徴収権をもつ地頭職に補任された。土地所有権は地頭にはなかったが、荘園領主・国司などに任命されたものも居た。室町時代には守護の地からが強くなり 、地頭は島津支配下の薩摩を除き、消滅した。階層序列が身分の上下の徴表とされ、権力闘争は土地を媒介として展開された。

秀吉検地により兵農分離が図られ近世国家では将軍により領有権(徴税、行政、裁判の公法的諸権)を保証された大名などの領主のもとに百姓が土地を耕作し年貢を納めるという一地一作制(本百姓制)が確立した。しかし寛文期(1661-1672)ころよりの目覚しい貨幣経済の発達により、武家の窮乏、農民層の分解と農村の荒廃が生じた。

明治元年、太政官布告で耕作地主の土地は百姓所有たるべしと宣し、明治8年には幕藩領主的土地所有は完全に解体し自由かつ私的近代的土地所有制度が法的には確立した。しかし明治15年の松方デフレで地主・小作間の封建的身分隷属関係に拍車がかかった。第二次大戦後マッカーサーによる土地開放でようやく近代的土地私有制度が確立したといえる。


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