シリアル番号 | 276 |
書名 |
ローマ帝国衰亡史 I |
著者 |
ギボン 中野好夫訳 |
出版社 |
筑摩書房 |
ジャンル |
歴史 |
発行日 |
1976/11/20第1刷 1984/8/10第10刷 |
購入日 |
1984/09/01 |
評価 |
良 |
原題:The History of the Decline and Fall of the Roman Empire 1776-1788 by Edward Gibbon
働き盛りの頃、これを読まんと買ったが第一巻で挫折し、本棚で塵に埋もれていた。塩野七生の「ローマ人の物語XI 終わりの始まり」を読んだときも手にとったが、そのまま本棚にもどした。
2007/9/26にNHKのBS2で3時間の大作、1964年のアンソニー・マン監督の米映画「ローマ帝国の滅亡」を初めて観た。1957年の「戦場にかける橋」で英軍将校を演じたアレックス・ギネスがマルクス・アウレリウスを演じ、ソフィア・ローレンがコモドウスの姉ルッチラを演じていた。映画はフィクションだが、コモドウスが自分の出生の秘密を知るところがかなり衝撃的であった。そこでふたたび塩野七生 の「ローマ人の物語XI 終わりの始まり」を再読し、最終的にこの本を手に取った。
シオリとしてジャカルタ・ヒルトンのmending kitの袋がでてきたのでLNGプロジェクトの仕事で出張したときに持参したのだろう。
塩野はギボンがコモドウスから書き始めたのはローマ帝国衰亡がこの皇帝から始まっているからとしている。しかしギボンはその前にローマがローマが最も栄えた父のマルクス・アウレリウスにいたる歴史を3章を費やしておさらいしている。
ギボンはマルクス・アウレリウスの妻ファウスティナの美貌と醜聞に言及している。正直一途、生真面目一本の哲学者皇帝マルクス・アウレリウスだけが皇后の情事を知らなかったとする。映画がコモドウスは不義の子であったとするストーリーを採用したのはここにあったと分かった。
さてギボンも塩野もローマ帝国衰亡の原因として鉛中毒には触れていないが、元老院など指導階級が好んだ赤ワインならびにワインを使った料理が鉛被毒されたという説がある。ワインを 甘くするために葡萄果汁(マスト)を鉛の鍋で煮詰めてサパ(sapa)という添加物を作ってこれをワインに加えた。サバは酢酸を含んだため、鉛が酢酸鉛となってサパに 含有されるようになった。また食器も鉛製であり、上流階級は日に20mgの鉛を摂取し、鉛中毒になり、不妊、 発狂、死の原因となったという。ネロやコモドウスは鉛中毒の可能性はある。そうしてゲルマン人に乗っ取られることになったのだという。
作曲家ベートーヴェンが、その晩年にはほぼ耳が聴こえなくなってしまった原因として、近年の研究では鉛中毒が有力説とされている。それは、ワインを非常に愛飲していたベートーヴェンの毛髪から、通常の100倍近い大量の鉛が検出されたからであった。当時のヨーロッパにおいて、ワインの醸造過程の中では、甘味料として酢酸鉛を含むサパなどの鉛化合物類が加えられており、鉛中毒は、難聴をも引き起こすとされている。
Rev. October 12, 2007