暑気払い会

 

梶原に住む山好きの椿氏がたまに山料理の腕を振るう暑気払いの会がある。2009年8月22日 に2回目の会があって参加した。会場に着く前に寺分にある大慶寺にたちよって、鎌倉1,000年の歴史に思いをはせた。

「目を開いてよーく世の中を見ろ」と咆哮する片東

椿氏はもともと東大の応用化学を卒業後、千代田化工にしばらく在籍したが、データベースにのめりこみ、独立してTH(椿・穂鷹)モデルを開発した。これは ビジネスモデルのうちのデータモデルを表現するもの。そしてこの方法論の伝道を一生の仕事としてきた。いわば実装独立の世界で仕事をしてきた人である。山 が好きで手料理は得意。たまたま奥様がなぜかアイスランドを旅行しているとのことで、我々昔の仲間を呼んでくれたわけである。各自酒1本。片東は得意のな れ寿司持参で集まった。

いろいろの話題がでたが大別すれば2つに分かれる。一に「日本の現状認識」、二に「千代田化工が10年前になぜ崩壊しかかったのか」である。

日本の現状認識

千代田化工をやめる直前はサハリンとカタールのLNGプロジェクトの立ち上げ時のプロマネだった片東がほとんど一方的にまくし立てたが、その見方は普段見逃しているにもかかわらず、かつ重大で本質的な意味を持っていたので皆、素直に聞く。彼いわく;

@米国のハーバード出のMBA取得者で金融業に携わった連中は殆ど詐欺師のようなものだ。全世界に甚大な被害を及ぼし、会社はつぶれ、首になっただけでも らった高給は返済せず、不道徳きわまりがない。何らかの制裁が必要だろう。だいたい米国の金融業はユダヤ系に牛耳られている。(2006年、日本の証取 法、会社法はドイツ式の事前規制から欧米式の自己責任に変った。この前提となる法理が「経営判断原則」である。「経営判断原則」は「経営の意思決定は結果に責任を負うものではない」が「経営の責任は意志決定のプロセスにある」とする。その心はリスク にチャレンジさせることを束縛しないが、意志決定プロセスは厳しく看視しようとするものである。従って経営者は十分なリスク分析と合理的な論議の証拠を残さなければ職を追われるだけでなく、資産さえ失う事態が待ち構えている)

A明治政府が作った日本の官僚養成所たる東大法学部をでたキャリアも厚顔無比度では似たようなものだ。彼等は政治家から法の立案を任されていたことをいいことに、自分達だけが得する法体系を築き上げた。通産のキャリアで千代田に天下った鯨井氏は責任を追及していては人材が枯渇するからだという。都合のよい理屈だ。仮にそれが正しいなら民間 企業はとっくのむかしに人材が枯渇していることになる。 実際にはべき乗則の一バリエーションである「2対8の法則」をみれば人材の枯渇といことはありえないことが分かる。

自分達だけが得する法体系とは、たとえば消防法、高圧ガス取締法、電気事業法がいい例だろう。米国では消防法、高圧ガス取締法、電気事業法に類するような お節介な法はない。民間の保険会社があつまってつくる協会が制定した約束事を守らないと保険を引き受けてもらえないということで自主規制しているだけであ る。国家としてはウソの報告をすれば厳罰をもって望むというだけの法体系である。どうでも良いではないかと思うかもしれないが、民間ですむことを何もしな いし、できない役人を大勢抱えるための法律を作って、キャリア、ノンキャリアの天下り先として財政を食い物にしている。

戦前の内務省の伝統を引き継ぐ、公安警察も殆ど国賊並だ。世界のどの政府でもギャンブルを公的に認める場合はギャンブルでの売り上げの利益の一定額は国庫 に収めさせるというのが基本である。しかるに公安警察は天下り先を確保するために通常の会社の法人税以外の税の徴収なしにパチンコを合法とする法を作り、 ノンキャリの天下り先を確保している。パチンコ店経営者の殆どは北朝鮮系の在留邦人で、膨大な利益は様様なチャンネルで北朝鮮に流れ、キムジョンイルを支 えている。これを国賊行為と呼ばずなんという。官庁は縦割りでこれを問題視する隣の役所はないどころか防衛省はテークアドバンテージしてキムジョンイルを 封じ込めるために5兆円の予算が必要だとし、どこかの陣笠連は原爆を持つべきとまで言う。そんなことしたらウランの供給は止まり、原発も止まるなどという ことまで頭が廻らない。国民が気がつかないかぎりこのままであろう。

B法がなくとも彼らは恣意的な指導を行う。たとえば原子力船ムツなどはメーカーの三菱重工の遮蔽設計が安易であっただけで、少し改造すればすぐ直る簡単な 問題だった。にもかかわらず、資金(税金)を提供した担当の役所がそれを許さず、長期にわたってたなざらしにしたあげく、最後にいたってようやく改造を認 め、短期間試運転しただけで初期の目的を達したとして廃船にした。その真意は天下った人間が引退するまでの給料を保証すること以外の何物でもない。愚かな マスコミは官僚の真意にも気がつかず、たなざらしにすることをよしとし、安全上この船を最終的に廃棄するのは好ましいと官僚を支持したのである。みごとな 詐欺の手口だ。日本人でこの巧妙なトリックに気がついたのはほんの少数である。

同じようなトリックは六ヶ所村の燃料再処理、高速増殖炉、核融合開発、水素燃料開発、燃料電池開発で今、同時進行している。いわば地球温暖化問題と放射能 に対する国民の不信感を人質にとっておいて、技術的な些細な問題を試行錯誤で解決することをゆるさず、先伸ばしするという戦術だ。国民も政治家もこの役人 の高等戦術にだまされて気がつかない。いままで民間努力で開発したリチウム ・イオン電池、風車発電、太陽電池などの開発支援と称して追い銭を投入して同じように人質をとろうという陰謀が担当の役所で密かに進行中である。政治家は 表向きの題目と役人の真意を見定める必要がある。

CNGOに任せておけばよいのに外務省はJICA、経産省はJETROなどの外郭団体を作って天下り先を確保し、何も役立たないロートルに給料を支払い、相手国のためにならないことばかりすることに無駄な血税を使っている。

D役所は官公労系の組合に甘く、いろいろ不祥事があるが、準役所としてのJALなどは最も甘いところだ。同じ環境で競争しているANAとの差はここにあるのだろう。GMも同じ体質だった。最早破産法適用しか手はないのだろう。

E温暖化に関しては6,000年前に縄文海進の例があるように自然の振れ幅が大きいことを考える必要があるだろう。そもそも化石燃料という用語が間違いだ。石油に微量含まれているポルフィリンが葉緑素と同じ分子構造をもっているため、生物由来と無い間信じられてきたがオイルメジャーの技術者でこの神話を信じている人は少ない。 だが無機(非生物)起源説が正しいとしても長い期間をかけて地球深部から登ってきたメタンなどが脊斜構造にトラップされているのを急速に汲みだすことはそう長く続くものでもないことも確かである。 資源は細っても完全になくなるなんてことはないのだ。

千代田化工が10年前になぜ崩壊しかかったのか

片東は千代田がおかしくなったのは労部部門を率いていた28年組の三羽烏の一人露平さんがアクト運動を始めたころからだ という。労務主導の意識改革運動で当時どの会社もやっていたものをまねした無益な上からの改革運動であった。中国の紅衛兵運動に似ていたのでひそかに4人 組み探しがされ、山と川などとささやかれたものである。

私は文系のジュニアが社長になって、元気がでた文系の労務部が他社をまねたものと思っていたがやはり文系で調達部門にいた底畑はすべてジュニアがさせたものだという。社員を掌握する自信のない経営者がよく陥る陥穽だ。要するに震源地は全てジュニアだという。

底畑は当時の輝けるプロジェクト・マネジャーだった祖根氏が調達部門を改革しようとして冷遇され、寂しく千代田化工を去るのを見て、これで千代田も終わり だと感じたという。この人事には同じ調達畑の責任者の反塚氏が目障りな祖根氏をジュニアのジャン友の立場を使って追放した陰謀であったという。じつは反塚 氏は業者からの賄賂をジュニアにつなぐチャンネルであったという説も一時期、祖根氏の部下だった人から聞いた。

シニアの娘であり、ジュニアの妻は「あなたが千代田を潰したのね」と言ったという。ジュニアが後継に氏名した28年組の三羽烏の一人桃平氏やジュニアの息子を後継社長にと提案した南山氏を指名したのは実力のない官僚が行う人事とソックリだ。というようなことが理由で底畑は千代田化工OB会に加入する意思はないという。

片東はプロジェクトマネジャーとしてはいつも失敗ばかりしていた岳下さんが、アクト運動の時、猛省したと告白し、「私は生き返った、これからうまくやる 」となにやら空疎な理屈を捏ね回しはじめたのをみて軽蔑していた。ところが驚くことに海外事業部長に任命されてメチャクチャやり始めたのをみて無力感を感じたという。

片東はいま思い起こせば、28年組の三羽烏といわれたなかで最も賢明な前葛氏が早世しなければ千代田化工にも別の歴史があっただろうという。私も全く同感である。

なおここに登場する人名はさしつかえがあるので椿氏を除き全て回顧録と同じ偽名を使っている。


片東は言及しなかったがJAXAの宇宙ロケット開発や防衛庁の時期輸送機開発なども政府がらみの開発案件で上手くいっていない。JAXAの宇宙ロ ケット開発も三菱重工に主導権をとらせてようやく使えるものができたという感じだ。すべて官僚支配の体質に問題がある。私が会社の技術開発予算を統括していたときには、日本政府がどんなにおいしい資金で誘っても政府がからむ技術開発には間違っても入らないようにしたものだ。その中には都市汚水処理技術、 リン酸型燃料電池向けリフォーマー、放射能廃棄物ガラス固化炉などがある。いずれも撤退したのが正解だった。

小泉自民党を国民が支持したのは、このような不必要な規制を緩和して無駄な行政コストやインフラコストを節約し、競争力ある日本を作らねば日本の将来は無 いとの危機感だったはずだ。しかし小泉以降の自民党政府がしたことといえば、郵政民営化だけであった。そして財政のプライマリーバランスのために厚生福利 費を削ったため非人道的社会になってしまったというのが実情だろう。

September 21, 2009


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