オランおらん会

1981-84年にインドネシアのアチェ州アルンに建設した天然ガス液化プラント建設プロジェクトの建設現場の人間を中心にした内輪の会をオランおらん会という。グリーンウッド氏は本社のプロジェクトチームを率いて現場サポートに苦労した3年間を評価してもらって準会員となっている。グリーンウッド氏は会社のOB会には出席しないが、ここだけは出席している。

2008年11月29日、ローズホテル横浜(Hotel Serial No.446)で開催された2回目のオランおらん会に出席した。1971-73年のアラビア湾のダス島に建設した天然ガス液化プラント建設プロジェクトで育ったグリーンウッド氏を含む世代がアルンプロジェクトで350人大勢の人材をそだて、彼らから社長以下現在の千代田を支えているマネジメントが輩出しているという特異的な集団である。

そういう意味で湯気がたっている面々が出席した。総額1兆円に達する手持ち受注工事のうち4系列のカタールLNGプロジェクトと2系列のサハリンLNGプロジェクトの現場工事担当者が現状報告をした。カタールの4,5系列は厳しかったがなんとか完成に近づき、現場から続々と人が引き上げられるようになったという。しかし残る2系列はまだ苦戦しているらしい。サハリンはロシアの横車のためガス供給が遅れたため工期にゆとりがでて試運転担当者を残して全て引き上げたという。

原油高騰をうけて天然ガスプロジェクトが増えたのと、ドバイでの都市建設ブームで機器・資材の納入遅延、労務者払底による工期遅れ、人件費高騰で不採算に陥ったのではと心配していた。しかし プラント需要の急激な増加でエンジニアリング企業側の売り手市場だったため、ランプサム契約といってもレインバーサブルな要素を加味することができた。おかげで原油価格高騰という大きな変動があったとき、数百億円の追加がもらえるようになっていて破局は避けられたようである。またマルチカレンシー契約なので サブプライム問題に端を発する為替変動も乗り切れているということだ。

経営情報システムの構想だけで、更新をせず、千代田を去ったので気になっていたが、市販の開発ツールを使ってWebベースのシステムを独自開発して海外設計子会社、ベンダー、サブコンを含めグループとしてグローバルに統合使用可能なシステムにしたということだ。

これからいよいよ受注に向けて体制を組みかえるとのことで、ベテランが海外営業に復帰するとか。

最近出版された英国在住の作家黒木亮(商社でプロジェクトファイナンスをしていた過去を持つ)の小説「エネルギー」の登場人物と舞台は我々が天然ガスを求めて組んだ商社と国々であるので一読を薦められた。早速今日本屋で買い求めて読みはじめた。ここで三菱商事は五井(いつい)商事、三井物産は東洋物産、住友商事は住之江商事でトヨタはの奥田はトミタの奥井さんです。政治家になると実名で登場しほとんど歴史書である。主人公金沢明彦も実在の人物がモデルとか。LNGプロジェクトの詳細が書き込まれている。通産省を代表する登場人物も東大時代も含めなかなかリアルに書かれています。ただその渦中にあった我々にとっては少々かったるい感じはぬぐえない。それにしてもラーセンターブロとの合弁の設計子会社設立のためにムンバイに滞在のとき、宿泊したトライデントホテルが今回のテロの舞台になったことには時代の変化を感じる。

千代田はLNG時代以降のエネルギープロジェクトにどう取り組むか心配していたが、昨日の日経で報道されたトクヤマ(旧徳山ソーダ)の450億円のポリシリコン製造のマレーシア工場建設を受注したそうで、将来への布石は打てていると少し安心した。 金属シリコンを塩化ガスにして蒸留精製し再度水素ガスを使ってポリシリコンにする装置で、石油・天然ガス枯渇後のエネルギーの主体となる太陽光発電の主役となる ソーラーセルの需要にも応じられる装置である。

2008年12月05日

Rev. February 1, 2009


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