自由人のエネルギー勉強会

砂漠地帯に設置するソーラーセルで製造するソーラーセル構想

ソーラーセルはエネルギー的に自己増殖性はあるとされている。 自己増殖性とは、そのエネルギーを作り出すデバイスを製造するために使ったエネルギー以上のエネルギーを、そのデバイスが生み出してくれることをいう。すなわち人類は化石燃料もウランを失っても、ソーラーセルだけでサステナブルであるいうことが言え る。その根拠はソーラーセルのうち、素材シリコン部分の製造エネルギーは1ワット出力当たり1.5キロワット、セル部分の製造エネルギーは1ワット出力当たり0.2キロワット、活性炭固体電極電気二重層電池の素材の製造エネルギーは1ワット出力当たり1.6キロワット なのでなので、システム全体の製造エネルギーは計3.3キロワットです。1ワットのソーラーセルの年間発生電力は1.2キロワットなので、これから蓄電器とソーラーセルの製造エネルギー回収年数は2.8年とな る。これに制御用機器の製造エネルギー回収年数1年を加えてソーラー電源システム全体の製造エネルギー回収年数は3.8年とな る。そして資源的に珪素は浜の真砂程にふんだんにある。

この回収年数は最近の薄膜型の登場でますます短くなっている。

森永晴彦先生は長く ドイツで原子核物理学教授を勤めていたことから日本政府が日本の原子核物理学者達の洗脳により、核融合開発にフランスなどと張り合って巨大な国家予算を注がれていることに批判的であった。核融合も核分裂と同じく放射性廃棄物を作り出し決してクリーンなエネルギーではないのだ。 そしてトカマク方式が必要とする素材ベリリウム資源は稀少で、イータを3基建設すれば資源は枯渇してしまうという。どうして人類の将来のエネルギーをここに賭けることができようか。むしろ人類の将来のエネルギーは太陽エネルギーに依存しなければならないと考えた。現時点ではまだコスト高であるが、石油資源も半分使い切ったことから考えるに21世紀後半には太陽電池が電力供給のかなりの部分を担う時代がくると考えておられる。

森永先生もグリーンウッド氏もただ座していてもその時代が来ると確信しているが、先生は待ち時間を加速するために砂漠に設置するソーラーセルの発電電力でソーラーセルの素材製造シリコンやガラスを作り、これで新しい太陽電池を作るという自己増殖型太陽電池製造プロジェクトを考えつかれた。そして「原子炉を眠らせ、太陽を呼び覚ませ」という本を草思社から出された。

しかしソーラーセルはエネルギー的には自己増殖は可能だが、各種ソーラーエネルギー発電比較にもみられるとおり、現在の安い化石燃料の環境下では経済的に増殖不可能である。必要な資金はなんとか国家予算を使わせてもらおう。核融合開発の巨大な国家予算のほんの一部でも使わせてもらえば可能と先生は考えた。

2000年頃、森永先生は人脈をたどり、岡崎元大使経由でグリーンウッド氏が居たコンサルタント会社、千代田デイムス・アンド・ムーア社を紹介された。こうしてNEDOに申請したが、NEDOは海外の技術開発の担当官庁ではないため却下された。森永氏はあきらめずに別の人脈をたどり、土木業界の重鎮竹内良夫氏に相談した。「物理学会のお歴々では実行力がないから土木学会が支援しよう」ということになった。そして 前田建設が申請者になって再度NEDOにアタックしたが、やはり無理とのことであった。

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森永プロジェクトの会合

この構想がうまく行かなかったのは役所の縦割り構造も一因だが、日本のソーラーセル製造業者が興味を示さなかったためでもある。ソーラーセル製造業は金属シリコン製造技術は持っておらず、安いシリコンが欲しくとも手も足も出せなかったのである。金属シリコン製造は信越化学が自前の安い水力発電電力で製造しているくらいで、安価な水力発電をもつスエーデン企業の独断場となるのである。銅の精錬も電気炉を使うが、金属シリコンも酸化ケイ素を電気炉で加熱して溶融し、水素ガス還元雰囲気のなかで還元して製造するため、電力コストが支配的になるのである。更にこの金属を塩素化してシランガスとして蒸留で精製し、水素で再還元するという工程を経て更にエネルギーを消費するのだ。

シリコン製造に手がでないならソーラーセル用のガラス製造はどうか、もとガラスメーカーと検討したが、これも日本企業の進出は無理とわかった。安価なアモルファス・ソーラーセル製造をしていた金属シリコン製造技術に手が出せないソーラーセル製造業者はスパッタリングやCVD技術を使って100オングストローム程度の薄膜とするか、シリコン以外の半導体を使ってコストダウンを図ろうとしている。

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April 9, 2008

Rev. June 18, 2009


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