第13回

自由人のエネルギー勉強会

2015年5月6日

神田学士会館 302号室

森永晴彦先生の「第三次世界大戦は今始まりかけている」

森永先生は地政学でいう海洋国家と大陸国家という分類が好きだった。そして大陸国家は必然的にカルテシアンになるともいっていた。ところが最近武田暁氏からプレゼントされた「ソフィーの世界という本を読んでからふたびカルテシアンを好ましいとしばしば口にするようになった。そして英国やその伝統を継ぐ米国はヒュームの経験主義の伝統をつぐので、判断を誤りやすい。やはりカルテシアンの考え方が大切と繰り返す。

森永先生は毎年4ヶ月はドイツの自宅に滞在してドイツ事情を観察しているのでメルケルがヨーロパでは信頼されていることを承知している。このメルケルが先日、突然日本にやってきて、不可解な行動をとったが、日本のマスコミは何の事かわからず、何も報道しなかった。

先生は
メルケルの本当の来日の目的は安倍さんに日本もAIIBに参加すべきだと説得にきたのだが、安倍首相が理解できなかったため、がっがりして帰ったのだろうと推測している。

先生は日本がAIIBを無視し、米国との同盟を強化して対抗すると第三次大戦への道が通じていると心配しているという。日米カナダ以外はすべてAIIB加盟と言う事態に発展し、日米は世界で孤立してしまったと述べた。

先生の論文に対する私の感想

先生のカルテシアン贔屓はむしろ今の国連中心主義をリードする米国嫌いからきているようだ、英米流だとまた世界大戦になるというのである。メルケル流にロジックで考えなくてはというわけのようだ。

確かに英米の国際関係の考え方のベースとなっているトマス・ホッブスの裸の暴力が全てを決するとという考えは軍拡競争になるし、イマヌエル・カントのように理想 を想起させる規範が大切といってもうまくゆかない。そこでフーゴー・グロチウスのように、手続きについての合意を積み重ねることで国際法を充実強化するこ とが地球政治体を少しでも進化できると考える人がふえていると猪口孝東大名誉教授は指摘している。

日本総研主席研究員の藻谷浩介氏は正解を丸暗記し、そこからの演繹を訓練する日本型の御受験教育の勝者は実例から帰納する能力を欠きがちなのでリスクが顕在化するまでは「他山の石」としてしか認知できないと指摘しているように、人材育成課程に欠陥をのこしたまま
カルテシアン贔屓してもリスクマネジメントできないと私は思う。演繹の導出関係は前提を認めるなら絶対的、必然的に正しい。しかし前提が間違っていたり、適切でない前提が用いられれば、誤った結論が導き出されるのだ。いまの日本の原発再稼働政策などはまさにこの典型。

内田由紀子京大准教授の指摘のとおり、日本では周囲の状況を読んで他者との調和を重視する
農業集落の伝統の影響が強いの でリスクに鈍感。皆で渡れば怖くないというマインドに流れる。一方、板子一枚下は地獄を経験から知っている漁業者はリスクに敏感だ。日本人の大多 数は海洋民族ではないというわけ。したがってリスクに関しては英国とも米国とも違い、大陸的発想に近いのではとも思う。

先生御自身のフォローアップ

92才になる先生は2014/6の夏の避暑のためにドイツに出かける前に論文「第三次世界大戦は今始まりかけている」を英訳し"The Third World War Looks now Beginning to Start"という5pの論文にしてスエーデンのLeispanier、ドイツのOtto Schult、Wegmannらに郵送し、ドイツ滞在中に彼らの意見を聞かれた。

これに対し大学の同僚だったDr. Otto Schultから「第三次世界大戦は起こらないだろう。なぜならメルケルが戦争嫌いだから。無論、ウクライナと世界のどこか遠いところなら別だが」という返事をもらったそうである。

今年のドイツはとても暑く、外出できなかったのでTVや新聞情報しか見てないがその範囲内で総括するとドイツ人の見解を解釈すると下のようになる。

メルケルが戦争嫌いのため、ドイツ国民は戦争のことを考える必要がない。しかるに日本ではナショナリストで好戦的な安倍首相が経済的理由で国民に支持されているから森永先生としては戦争の心配がでてくるのだ。
安倍首相が戦後の日本の繁栄をもたらした憲法9条を削除しようとしているから心配なのだ。

森永先生はドイツに住んで30年になり、過去20年間ドイツに毎年2月滞在しているのでメルケルをよく知っている。以下はメルケルの人となりを日本人向けに解説したものだ。

メルケルはドイツのハンブルグの教会の牧師の子として生を受けた。ドイツが負けて東西に分割されたとき、 東ドイツに編入された。メルケルの父は東では教会は困難になると予測し、東ドイツの小さな町の教会に移動し、アンゲラはそこで育つ。ライプチッヒ大で物理学を学 び、人文学は共産主義を学んだ。そしていつも学生の政治団体に加入していた。(この経歴は森永先生と同じ。森永先生は18才のとき、模型飛行機を作った り、虫を追いかけるより、人文学のほうに興味があった)ベルリンの壁が崩壊してもアンゲラは放射線に関する研究生活をおくりつつ、CDUで政治活動を 継続した。この活動はドイツ首相のヘルムート・コールの目にとまり、党首に抜擢される。ドイツの内閣で最重要ポジションは外務大臣である。FDPとの連立政 権ではメルケルはFDPの党首ロスラーを外務大臣に起用。ロスラーはベトナム難民の孤児で40才前の若く、とても賢い男であった。メルケルの閣僚でもう一人賢い男、ウエスターファールがいるがこの男はホモである。最近ではEUの経済問題担当に車いすのショーブルを閣僚に起用している。

もし、誰かにメルケルは何者と聞かれれば私は「理想家」と答えるだろう。世界には理想家は何千人もいるだろうが、彼女の場合は自分で考えたものであるところが 違う。そうできるのはなぜかというと育った家庭、学校時代、大学時代の経験を総動員して考えるからだろう。こう考えた理由は彼女のギリシア問題の捌き方を見た からだ。マルクスとエンゲルス(レーニンやスターリンではない)の考えは「人々は能力に応じて働き、必要に応じてとれる」というものだ。これが共産主義の 基本で、メルケルもそれにしたがっている。彼女の難民問題の対処法も同じ。これはまた彼女が倫理的にキリスト教の雰囲気の中で育ったことと普通の主婦の感 覚からもくるものだろう。

メルケルと比べると戦争大好き人間である安倍首相は恥ずかしく、地獄へ行けと言いたい。

今や事態は今年の初めより悪化している。中近東、北アフリカ、南アジアで紛争当事者が互いに相手を脅かしている。シリアの内戦ではアメリカの近代兵器による攻撃が激化している。ロシアは部隊をシリアに送り始めた。これは世界大戦への一歩のように見える。

憲法違反の安保法制のゆくへ


いま、2015/9/18だが、国会では国会前の徹夜の抗議デモを伴って今日中にもこの問題多い安保関連法は参院を通過しそうである。これも民主党に失望した人々が雪崩をうって自民党を支持した結果である。

これは終わりではなく、長い政治闘争の始まりであろう。憲法違反としての訴訟がこれから沢山出され、法廷闘争があり、政権交代もあるだろう。
ときあたかも経済にも暗雲が立ち込め、安倍政権の命運も尽きかかっている。

そして今回国会を通過した安保法はあいまいで危険なため、政権の判断を縛る詳細な法を追加することになるのだろう。


青木一三「
憲法と原子

話題が多岐に渡り、早口にしゃべったので一部理解できなかった部分もあるがとても刺激になったというのが大方の感想。

井上NBCR理事長は私のトーンから「右翼的に感じたがあなたはどちらか」と聞かれ、「内心では日本の左翼はアホの一語でかたづけたい。本当はリベラルと思うのだが、一応、自分は左翼と思ってます」とこたえた。更に「北朝鮮は指導者が狂っ ているので何時核攻撃するかわからない。どうすべきか」と聞かれた。私は「拉致問題の解決をしようとムキになって相手にからかわれているだけなので無視がいいのでは」と回答。「こういう国は核抑止力 理論が適用不可能だから、諜報活動をしっかりやって、もし暴走して日本を核攻撃しそうなときは無人攻撃機による先生攻撃も考慮にいれて計画だけは練ってお かねば話にもならない。憲法以前の問題なのでは」と回答。例えば最近北朝鮮は潜水艦発射ミサイルの実験に成功している。対策を持っていないと却って相手をその気にさせるため、由々しき事態という認識が欠落している。

小沼パグウォッシュ代表からは「今の自民党の改憲案は市民の人権を弱める案で、良くないと思うがどうか?」との質問には「その通り、9条を人質に改憲するならしないほうがいい」と回答。 

富山朔太郎氏から「第五世代のステルス航空機はコストがかかるためと、中国はまだジェットエンジンはロシア頼みなのでそうやすやすと日米を凌駕できないだ ろう」。これに対する私の回答は、「ホンダなどは自社開発のジェットエンジンを米国企業の協力で開発した。中国は早晩追いつく」であった。仮に中国が技術開発できないとしても
ロシアと米国の対立の再開の結果、ロシアは最先端兵器を中国に与えるだろう。


井上忠雄「戦争に巻き込まれないためにするべきこと」

井上氏が理事長をしているNBCR対策推進機構が作成した「国民保護とNBCR災害対策VI」を配布して解説。


武田暁「西洋哲学と数学」

人間の脳細胞には0,1,2,3などに対応して興奮するニューロンが存在することはサルの脳に針をさして証明されている。また人間の場合は 針はつかえないので解像度は低いが1テスラ以上の強い磁場を使うMRI(核磁気共鳴画像法)で測定して同じ傾向が見えると分かっている。

哲学とは「知を愛する」と言う意味からピタゴラスが名付けた。デカルトだって経験からの帰納は大切といっているわけで、英国流とドイツ流がスパッと切れるものではないという。


大鷹正「戦時中日本は中国で何をしたか」

外務省の大使を務めた氏は戦後間もなくスエーデン大使館員だったころ、同じ陸軍士官学校出のよしみもあって、三笠の宮から直接「日本軍が南京で行った糧食 の現地調達の方針は大きな間違いだっ た」という旧軍批判を直接聞いた。糧食は現地調達とは飢えた日本兵がカツカツで生活している南京市民から食物を略奪することと同義。ついでに女も犯す。そ れでも捕虜に与える食料もないので、これも銃剣の訓練を兼ねて、また毒ガスをつかって殺すというひどいものだった。昭和18年、支那派遣軍総司令部を去るとき「若杉参 謀」として講演をして現地にメモを残したがメモはすべて回収破棄された。三笠の宮も終戦後破棄したがなぜか最近国会図書館の本に挟まってこの内部資料「支 那事変に対する日本人としての内省」が発見されたという。がではなぜあなたはこのような戦争をやめさせなかったのかと聞くとじっと下を向いて長考しはじめ たので、話題を変えたという思い出を語った。

この話しは70年談話に対する国際法学者、歴史家ら74人の共同声明の発起人の一人の三谷太一郎東大名誉教授がこの「若杉参謀」メモは陸軍内部だけでなく、日本の上層部にも回覧され非常な衝撃を与えたといわれていると指摘。

三谷太一郎東大名誉教授はこのほかに元陸軍省軍事課長・岩畔豪雄(いわくろひでお)から50年前に聞いた話として日本陸軍が最も反省を迫られた事件は1937/12の南京虐殺とシンガポール虐殺だったという。

大鷹氏はこの逸話はあまり話したくなかったのでしょうが、棺桶にはいる前に語っておきたいという風情であった。

大鷹氏は大分前に北方領土交渉ではソ連は2島返還以上は決して妥協しないだろうという敗戦直後の交渉史も聞いたことがある。戦後残った最高レベルの外交官 の交渉結果を当時の鳩山外相が蹴飛ばしてソ連との領土問題は膠着状態で70年が経過したというわけ。いっしょにこの内訳話を聞いた自衛隊の方々からは一体 おれたちはなにをさせられしていたのだと悲鳴が上がっていた。



自由討論

外務省の中米大使だった方が外交官になったのは聖徳太子にあこがれたからである。彼は「和をもって・・・なる条項はこれからの憲法改正に入れ込むべきだ」 という意見を述べた。私は「この思想は政治指導層が楽をすること目的としていて日本をダメにした思想だ」と批判した。例として某社は2代目社長が和と書い 手ぬぐいを全社員に配り、その後、某社は経営難に陥った事例をあげた。

久田日本テトラ会長は、再生可能エネルギーでは日本はやってゆけないという教条的な宣伝を心底から信じていて、議論にもならなかった。どうも元理系官僚は このような硬直した考えにたち一切の再生可能エネルギー採用を構造的におさえようという政府の態度を支持しているようだ。正解を丸暗記し、そこからの演繹を訓練する日本型の御受験教育の勝者の典型的なタイプだ。こうした考えが新しい産業の育成 を阻害して、気がついたら再生可能エネルギーの利用でも中国に先を越されるのではないかという危惧には後藤政志氏が賛同した。久田氏は原発事故より首都圏 の地震被害のほうが重大な影響があると発言。そこで再稼働しても、政権が変わり、管理の怠慢で原発事故をおこしたら管理者は刑事罰の対象になるように法改 正されてもやはり再生可能エネルギー利用防止政策をとりますかと聞くと黙ってしまった。

瀬倉氏は原油価格が半分になって、出光が黒字になった。BPは数年前のメキシコ湾のブローアウト事故で2兆円の損害賠償を負った。この原油価格暴落で借金 が返せなくなり、シェルに身売りするかもしれない。シェルはその資金調達のために昭和シェルを出光が買うかもしれないと予想しているという。

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May 10, 2015

Rev. October 17, 2015


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