欧米で使われている森林機械

バイオマスエネルギー交流フォーラム後、熊崎実氏が言われる森林機械はどういうものか日本の大学の森林機械学または森林工学講座や森林機械学会での発表論文などを覗いてみたが、筋肉を使う手持ちチェーンソーによる伐採、ワイヤがけが必要な索道ならびに林道による搬出などを研究し、教えているだけのようである。米本昌平の大学批判の言葉をつい思い出してしまった。まず日本の林業再生はこの旧態然とした大学の解体と再編成からはじめなければならないのかと慄然たる思いだ。

日本ではラチがあかないので欧米のForestry Machinery関連のHPを調べた。

伐採機

次々と数本の伐採済み樹木をまるごと抱えたまま、新しい木を抱いて根元からバッサリ切断できる。フェラー・バンチャー(Feller Buncher)というものがある。フェラーとは倒す即ち伐採、バンチャーは束ねるだから収束伐採機とでも訳せるか。数本の幹を抱える腕と常時回転しているためホット・ソーと呼ばれる歯のついた回転円盤を下部にもつアタッチメントをアームの先端に装着している。これがアームの先に付けるヘッドは油圧作動で作動する。ヘッドは各種タイプを交換できる。アームを搭載する車台は大口径低圧タイヤとクローラー各種ある。このタイヤ圧も運転席から状況に応じて調節できるCTIS (Central Type Inflation System)というのも開発されているようだ。

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HydroAx 411 フェラー・バンチャー

ハーベスタ(Harvester)というのはフェラー・バンチャーの回転円盤のかわりにチェーンソーを装備し、枝払い、プリセット位置での玉切りをするためのローラーグリップを装備したハーベスターヘッドをアーム先に装着した伐採機械である。小枝払いや皮むきも同時に可能である。玉切りを指定の長さでする(CTL Cut to Length)などきめの細かい切断ができる。上の写真の専用機の他に市販の一般土木工事用油圧ショベル掘削機をベースマシーンとしてそのアーム先に装着できる。これは専用機より50%も安いと人気がある。下はフィンランドのAFM Forest Ltdのシングル・グリップ・ハーベスター(Single Grip Harvester)である。斜度30度まで対応できそうである。床下は70cmのクリアランスがとれる。森林機械は急斜面で転倒しないようにユニバーサルジョイントと油圧シリンダーでエンジン・クレーン・操作室部分は水平姿勢を維持するようになっている。

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30度の斜面で作業するAMF シングル・グリップ・ハーベスター

百聞は一見にしかず。ハーベスタがどのように作動するのかで見てもらうのが一番である。十数秒間で伐採・枝払い、指定長さへの切断を完了する。AFM 45を装着したベースマシーンはたまたまタイヤを履いてます。一般にキャタピラが石などがある不整地に適しているが、条件次第ではタイヤもつかわれるようです。wmvファイルのダウンロード中はスムーズな影像はみられませんが、ダウンロード完了した時点で、再度メディア・プレーヤーの再生ボタンを押せばスムーズなビデオがみれます。

適用 自重(ton) エンジン出力(PS) AFM社ハーベスタヘッド ハーベスタヘッド重量(ton)

最大切断直径(cm)

ビデオ開始ボタン
間伐 13 87 AFM 45 0.78 50 AFM 45 Corona  Nokka
皆伐 22 135 AFM 60 1.3 60 AFM 60  Logman
皆伐 36 235 AFM 80 2.5 70 AFM 80 Magnum Timbco

詳しくはAMF社のHPを直接閲覧してください。

集材・搬出機

スキッダー(Skidder)は伐採した木材を伐採地からトラックなどが入れるところまで引っ張り出すものだ。初期の頃はワイヤーをつけて牽引していたが、省力化のためにワイヤーをやめて直接つかんで引くことにしたのがグラップル・スキッダー(Grapple Skidder)である。傾斜地で倒れないようにクレーンを固定したのがフィックスト・グラップル・スキッダー(Fixed Grapple Skidder)といわれるものだ。急斜面で材木の押す力に対抗できるように強力なブレーキを備えている。全面にはブルドーザーと同じブレードを装着してあるので障害物も除去しつつ牽引できる。このスキッダーはフェラー・バンチャーやハーベスタと組でつかわれる。アスファルト舗装の林道がなくても搬出可能だ。

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Timberjack 450B グラップル・スキッダー

搬出機メーカーとしては米国のJohn DeereやドイツのWelte-Forestry machineryがある。百聞は一見にしかず。

チッパー

チッパー(Chipper)外見は送風機のように見えるもので回転歯が回転しているハウジング内に枝を横に挿入すると自動的にくらい込みチップ化してダクトから噴出する仕掛けである。下の写真は切り枝をクレーンでチッパーに取り込み、チップを後方に墳出させているところ。トラック横付けでチップをコンテナーに投入することができる。

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Morbark Model 30 チッパー

性能

T.P. McDonald et.al., USDA Forest Serviceの論文より

種類

メーカー型番

1993年の価格($)

エンジ定格馬力(kW)

燃費(liter/kWh)

潤滑油(% Fuel Cost)

保全費(% Depreciation)

保険料(% Initial Cost)

拘束時間内稼働率(%SMH)

2本束伐採の生産性

4本束伐採の生産性
伐採機(フェラー・バンチャー) HydroAx 411

125,500

94

0.13

37 100 4.5 65 18.5 green ton/PMH 16 green ton/PMH
搬出機(グラッペル・スキッダー) Timberjack 450B

121,000

132

0.14

37 90 5 60 24.6 green ton/PMH 35.8 green ton/PMH
粉砕機(チッパー) Morbark Model 30

289,000

600

0.12

37 100 2 75 57 green ton/PMH 57 green ton/PMH

green ton: 生木(50wt.%水分)のトン数。としたとき。

SMH:Scheduled Machine Hourマシンの拘束時間

PMH:Productive Machine Hour、実作業時間=拘束時間*拘束時間内稼動率

トラック輸送コストは$0.07/ton-km

スキッダーの往復距離は420m

チップ収率:97.1%

考察

手引きノコを刀、チェーンソーを機関銃とすればフェラー・バンチャーはタンクに相当すると見てよいだろう。スキッダーのように同時に何本もの木材をワシづかみにして斜面をひきずり降ろす機械が木材にワイヤー掛けして索道でのんびり運びだすのと比べればどちらに軍配があがるか明らかだろう。日本の林業は機関銃で海外のタンクと戦争していたわけだ。

負けるはずである。ではなぜ日本の林業はフェラー・バンチャーなどの森林機械を導入しなかったのだろうか?急峻な山岳地帯がほとんどであるというのが回答のようである。尾根でワイヤーでアシストする子機による伐採など研究はされているが、決定的な技術は開発されていない。コマツなどスエーデンの森林機械メーカーを買収してアジアマーケットに布石を打っているところもある。日本の土木機械メーカーが急峻な山岳地帯で使える森林機械を開発できる能力は充分にある。例えば考察”広葉樹発電”で提案しているようなものは既存技術の組み合わせだけですぐつくれる。

ではなぜか?日本の林業は国政策にもたれかかっているだけで、外国の林業者と戦争しているという認識がなかったためではなかろうか。日本は国土の60%を森がしめている森林資源国であるという自覚にたち、グローバルに目を転じれ、ば森林機械の導入を溜めらうことはないはずである。資源量がすくない石炭産業とはちがうのである。

 

January 28, 2004

Rev. September 19, 2010


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