インドの環境問題と環境政策

飯島正名誉教授

2007年7月12日

グリーンウッド氏は自己のスケジュール管理に失敗し、本研究会を不本意にも欠席してしまった。そこで電話で先生に講演の要旨をうかがった。西沢さんが持ち帰った講演用 のプレプリントを参照して要旨を下記のようにまとめてみた。


飯島名誉教授は今年、40年ぶりにインド調査団に加わってインドを視察したが、外見は変わっても本質は何も変わっていないと感じた。

2005年の国連人間開発報告によればインドでは一日2ドル以下の貧困層が人口の79.9%であり、8億5,500万人いる。この人々は近代化の外に置かれていてインドが変わらない原因となっている。

一方中国はいまだ一党独裁下にあるという問題があるとはいえ、大きく近代化に向かって動いている。この中国とインドとの差は、中国が毛沢東革命によって、上層部を吹き飛ばしてしまい、民衆のエネルギーが湧き上がってくる構造になったためである。

しかしインドのマハトマ・ガンジーの革命は富裕層を温存し、新日鉄を買収しようという大富豪が出現する一方、8億人の民が埒外に捨て去られている。

とはいえ残る2億人はそれでも米国と同じ人口規模で、これらの人々は世界経済に組み込まれつつある。

さて2007年6月7日にドイツのハイリゲンダム・サミットでインドのシン首相は「途上国の貧困を永続化させては環境問題は解決できない」と発言している。同じ思いはグリーンウッド氏の論文「炭酸ガス排出量削減策のパラドックス」として1992年に化学工学誌に発表したことがある。

2007年発行のエネルギー経済統計では炭酸ガスの世界の年間排出量252億トン中、インドは日本より少し少ない11.4億トンで4.3%である。2004年のインドのエネルギー消費の内訳は石炭34.1%、石油22.2%、牛糞などの再生可能エネルギーは37.4%である。

この国の全ての人々を先進国と同程度の生活水準に引き上げるとすれば炭酸ガス排出量に対する影響は甚大であることが理解できる。

庶民の足となっているオートリクシャー(三輪オートタクシー)はニューデリーでは2002年までにCNG化された。

インフラが未整備なインドでは進出企業は自家発電を持つことは必須である。日系自動車会社のマルチ・ウドヨグ社も例外でない。

July 13, 2007

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