テラスモール湘南
2011年11月30日、グリーンウッド夫妻は伊豆高原のステンドグラス
美術館の後、辻堂のテラスモール湘南を視察した。かって辻堂駅の北側に隣接する25ヘクタールの広大な土地は関東特殊鋼の本社工場があったところ
だが、2007年会社を解散し、跡地に住友商事が大ショッピングモールを建設したのである。関東特殊鋼の前身は1932年鵠沼で創業した小松製作所であ
る。戦中は海軍の軍需工場となった。
横浜のみなとみらいもかっての三菱重工横浜造船所の跡地で、同じような運命をたどった。
日本の製造業の発展と衰退を体現する歴史的な場所だ。ショッピングセンターとなったところも現在の日本の象徴的な事象といえる。テラスモール湘南だけで6
ヘクター
ル。このなかに4階のモールに専門店が入り、隣接する駐車場から出入りできる。
テラスモール湘南 2017/9/29
専門店の数は300店で世界を代表するブランドから地元の店までたっぷりで
ある。駅からテラス伝いに入る一等
地に若い女の子が列を作るCath Kisdton/Cath's Cafeがある。ロンドンが世界のデザイ
ンセンターと自負するデザインで売る商品が満載。ビクトリア時代の詩人兼デザイナーのウイリアム・モリスの伝統上にある。この店は今年52才になる雑貨デザイナーCath Kisdtonが20年前に創業した店で世界で28店舗を展開。2006年代官山に第一号店をだす。
Cath Kisdton
Cathのすぐ横はオーストラリアのスワロフスキー、イタリア人デザイナー、ジョルジオアルマーニのファッションレーベルのAIXアルマーニエクスチェン
ジ、マンハッタン皮革工房のCOACH、デニムではドイツのBOSS
Orange、イタリア北東部の都市モルヴェーナに拠点を置くDIESELである。大きな売り場面積を占めるのはスペイン・ガリシアのアパレルメーカー、
インディテックスが展開するファッションブランドZARA、アメリカ最大の衣料品小
売店GAP、スウェーデンのアパレルメーカーのヘネス・アン
ド・マウリッツ(H&M)、そして日本のユニクロ、KEYUCA、United Arrowsなど。
ここで英国生まれのSweet Factoryで日本では売っていないコイル状にとぐろを巻いた黒色のリコリス菓子を発見し
た。ヨーロッパでしか手に入らなかったので即、数個、買い求める。リコリスは甘草と訳さ
れるが、日
本の甘草とは別種のスペインカンゾウを甘味料にし、アニスオイル(フェンネル)で香りづけ
されたもの。甘草のむかつく甘ったるい味とアニスオイルの香りが混じり合って口にいれると思わず吐き出してしまうような味だ。しかしなれると癖になる。英
国では子供が好んで食べるし、フランクフルトの飛行場のVIPルームでもサービスしてくれた。ドイツではSchnecke(カタツムリ)というのだそう
だ。食感はグミに
近
い。店員に本当に食べるのかと聞かれた。後で返品されるのが怖いのだろう。何事も貪欲に取り入れる日本人だが、リコリスだけはだめのよう。幼児時代に大人
や友達がうまそうに食べているのをみて、警戒心なく、ちょっと変だぞくらいの気持ちで何回か食するうちに病みつきになるのであろう。こういうのが文化とい
うものだろう。(母親に内緒で孫に例のリコリス菓子を与えたところ、さっそく口に入れ「甘い、おいしい!」と言った。母親に発見されて、取り上げられ、母
親が口に入れて顔をゆがめて、少しだけにしなさいといわれたとたん。「いらない」と言って以後断固口にいれなかった。こうして我々の味の文化が形成される
のだなと実感した)ドロップという日本語はオランダのリコリス菓子が
丸みを帯びた形をしていたことに由来するという。しかし日本のドロップは味からアニスと甘草は抜けてしまったよう。日本で人気のないルートビアもリコリス
で味を付け
た清
涼飲料である。
リコリス菓子
このほかスポーツ用品店のXEBIO、書店の有隣堂、電気店のNojimaなど必需品もそろえてある。また常時10の出し物を上映するデジタル・シネマ劇
場が併設されているのでなにかと便利だ。
デザインは欧米で中国で製造されたものが多い。さて製造業を失った後、日本のアパレル産業はここに出店している店と同様のブランドイメージを世界中で確立
できるのだろうか?頑張っているのはユニクロしか知らない。しかし日本がブランド確立するためには江戸、明治期の工芸品の伝統を再度復活させる必要がある
のではないかと思う。
テラスモール湘南から新たにできた道路を北上すれば国道1号線に出るし、さらに北上すれば芙蓉カントリー倶楽部の地下トンネルをくぐって広大な湘南ライフ
タウンに至る。その北は綾瀬の西
沢農園に至る道だ。
December 1, 2011
Rev. September 30, 2017