英国が製造業を失ってからしたこと

日本からみた英国の認識には時間的なずれがあると思う。その理由だが、日本人をあまりロンドンで見かけない。ビジネスでこちらにくる日本人が減ってし まったのだろう。観光客は何も見ないで帰る。日本料理店も少なくなった。さて経済だが、ヨーロパ、アメリカ、日本と比べて英国の経済は少しはましと BBCなどで評論家が論評して いる。日本では英国の主要産業は金融業だからこれから大変だろうと想像しているが、英国ではヨーロッパや米国のようにカタストロフィーは来ないといってい る。ギリシアなどに貸しこんでいないという意味のようだ。日本の金融業もギリシアなどにかかわっていないので、銀行はまだしっかりしていると思われてい る。(実は各社ともイタリア・スペインの国債を合計1兆円以上保有している)それ ゆえに皮肉にも円高となり、製造業が危機に瀕している。為替変動で製造業空洞化はさけられない。この一蓮托生という構造は変わっていない。こうして日本で は製造業の空洞化というかっての英国や米国がたどった道を確実に歩んでいる。そのため雇用の機会が失われ、GNPは下がり、税収は減り、国家財政が破たん するのではという危惧が広がっている。いまのまま何も変えなければ確実にその時が来るのは確かだ。

こちらにきて感じることは英国は製造業を失ってもそこそこ繁栄して姿している姿である。町はきれいだし、観光地は人であふれ、田舎はきれいに管理され。多 民族国家になっていて、あらゆる人種がなかよく生活している。(2011年の英 国滞在)国の態度はオープンで非常に寛容。英国の食べ物はまずいというが、グローバリゼーションのお か げか、あらゆる料理法とメニューがあり、おいしくなった。ケーキ類はまだ甘すぎるが塩味は確実に減って健康志向がつよい。野菜を沢山食べるようになってい るし、長寿になっているのではと思 う。日本が今後米国や英国のようにそこそこ堅実に生きてゆけるのかは、日本人がどう自らを変えることができるかにかかっていると感ずる。

私が英国に頼まれて出かけてきたのは、目下ここで進行中の天然ガス液化船Floating Production Storage and Off Loading of LNG (FPSO LNG)の設計に問題がないかオーナーの立場から技術監査するためであった。オーナーとし ては寄せ集めの英国人エンジニア達が何か大変なポカをしているのではないかと危惧してこの分野 の先輩に見てもらおうと考えたわけである。液化プラント の設計に関しては日本が先進国だ。だから教えを乞うということであった。このプロジェクトはノルウェーのスタートアップ会社がオーナーとなり、英国が用意 したスタートアップ 会社には課税しないシステムを利用して、英国の制度で会社を設立し、ロンドンの中心街の貸事務所を借り、英国人スタッフを雇っている。そして英国に 設計事務所を置くオーストラリアのエンジニアリング会社を中心にしてノルウェーと米国の中小エンジニアリング会社の合弁体に設計と見積もりを発注したの だ。

ノルウェーは北海ガスをフィヨルドの奥の寒村にとどけるために高くつくパイプラインを敷設せず沿岸5ヶ所にターボエクスパンダ―方式の小型液化工場を 設置し、小型バージでLNGを寒村に配給して回っているのである。今回はこの技術を大きくするのが目的だから経験あるノルウェーのエンジ二アリング会社が 仲間に加わっているのである。中心となるオーストラリアのエンジニアリング会社のロンドン事務所で働いているエンジニアはほとんどが英国人である。この オーストラリアのエンジニア リング会社にビルを貸しているのは日本のセガである。日 本には金はあっても、人がいないから大家業しかできない。その金もそろそろあやしくなった。日本はよほど考えねばいけない時期にきている。日本企業は金持 ちだが、貸家と書く二代目で英国に投資しているが、日本人の職場を確保できない で いる。

英国は北海油田を持つ産油国であり、オーストラリアも周辺の海に膨大な天然ガス資源を持つがゆえに産油施設を設 計・建設するエンジニアリング産業が栄えている。 いわば巨大な北海と目下発展途上のオーストラリア海底ガス田の施設設計のかなりの部分は英国でおこなわれているといってよいのではないか。そしてそのエン ジ二アを提供しているのは英国なのだ。というわけで英国は環境を整備して提供することで 他人の褌で自国エンジニアの職場を確保していることになる。同じフロアーでも北海のドリリング・リグを設計していたチームがある日部屋を代わったらしく、 突然もぬけの空となった。こういう変わり身の早さはエンジニアリング業では日常茶飯 事。

英国のエンジニア達は米国製の設計ソフトで基本設計し(日本も含め世界中同じ)、主要回転機械は米国とドイツの製品をえらび、熱交換器類は英国とフラン ス、制御 機器は米国から調達、台船製造と一括請負というリスクテ イクは韓国という分業である。製造業を失い、工場はないがデザインで堅実に生きているのである。中東を含めて操 業と設計現場を移動する中世のフリーメーソンの石工に匹敵する英国のエンジニア個々人が企業を渡り歩く環境ができあがっている。このために米国、オースト ラリア、北欧などのエンジニアリング会社とオーナーがロンドンにあつまり、ここで設計を発注している。そして英国在住のエンジニア達(女性エンジニアは 30%、若い英国人エンジニア30%、残り40%は若い韓国人、インド人、アラブ人そして高齢の英国人やポーランド人)はせっせと設計して稼いだ給料で所 得税を支払い、英国政府を支えているという構図ができあがる。

製造工場はタービン・コンプレッサーなど心臓部は米国、他の機器はヨーロッパ、ハルや土台をつくるのは韓国だからデザインで飯を食っていると見てよい。日 本のメーカーはLNGエキスパンダーを除きどこにも見当たらない。日本のエンジニアリング会社もやっていることはおなじだが、エンジニア個々人は会社に囲 い込まれて動けない。政府の持家奨励策に洗脳されて持家を人生の目標をしているから、持家に縛られて職を求めて移動もできない。一生に少なくとも家を1建 建てるのが一人前の男とみなされるため、安普請の家を建てることになり、高値で売ることもままならない。会社は 仕事がないときでも余剰人員を養わねばならず、人件費に硬直性があるため、次々と無理な受注を重ねることになり、疲弊してゆく。こうしてエンジニアリング のビ ジネス環境は英国のように人材をフレキシブルに活用できる環境のほうが有利となる。インフラコストも高い日本で日本のエンジニアリング企業はよく頑張って いると思う。一方、日本の製造業は内作・垂直統合できたため、アップルのように世界から安くて良いものを買い集めて顧客がほしいものを組み立て、有利な立 場で世界に売ると いうことが不得意。どんなに組織を磨いて流れ作業化し、効率化しも製品に力がないのだから価格で勝負するしかなく、太刀打ちできない。工場を海外に移転 させ、部品納入企業を傘下におく垂直統合ができなく なれば、設計すらできなくなる。デザインに特化するといっても下請けに依存していたところが歯抜けだからどうしようもない。練習してないものはできない。

英国政府の低炭素化社会へのス テップとして自転車通勤奨励策の補助金を使ってちゃんとトイレにはシャワー室があり、自転車置き場が整備されている。電車の中に普通の自転車を持ち込める ように設計されているが、日本の電車は分解して袋にいれなければ乗せてくれない。文系優位の意味のない規制社会だ。ここでは寛容の精神でそんな規制は一切 ないし、乗客もあたたかい目で受け入れる。それに会社にある食堂は安くて美味いメシを朝昼晩と三食食べさせてくれる。フレックスタイムに対応し、毎日9時 間働き、金曜日は半ド ンで帰る人が多い。

ドイツの物理学者のゲールリッヒが空気分子と二酸化炭素間の直接衝突による熱伝導を数値解法で扱えない以上二酸化炭素犯人説に疑問があるとする理論が仮に 正しくともヨーロッパの社会的雰囲気は二酸化炭素犯人説に疑問を呈することは宗教革命に匹敵する神への冒とくに近い行為と社会からみなされる雰囲気があ る。政府の指導でこぞって自転車通勤などはまさに禅の修行のようなもので、これは壮大な社会実験だと思う。

アールズコートのデザイン展を取材した娘から聞いたがインテリア・デザイン分野では英国のデザインは各国から買いにくるらしい。というか各国のすぐれたデ ザ イナーがロンドンを仕事の場としているという。英国政府がジョン・メージャー首相の頃から旧来型のモノ作りは断念しより付加価値の高いデザインを含むクリ エイティブ産業育成策を長年とったおかげで英国のGDPの8%に達したとい う。実に7兆3000億円であり、成長率が最も高いという。ちなみに英国で強いとされる金融業のGDPは17%である。クリエイティブ産業の内容は広告、 建築、美術・骨董、デザイン、デザイナー・ファッション、映画・ビデオ・写真、音楽・舞台芸術、出版、ソフトウェア・電子出版、デジタル・娯楽メディア、 テレビ・ラジオである。ここにエンジニアリング産業は入っていない。だからこれも含めれば英国の主要産業といってもよいだろう。数年前にコッツウォル ドを 旅行したが、古風な田舎屋の内部を最新デザインのインテリアに改装し、高級車をガレージにおいてに住んでいる人々はこのクリエイティブ産業に携わるエリー トたちであった。電子的に世界とつながっているので自宅勤務なのだ。日本が目指す方向もここにあるのではないか?

ロンドンは一見古い建物のように見えるが、外の煉瓦のファサードだけ残して中は完全にモダン化しているし、新築もあえてくすんだ色のレンガを使って時代物 の建物のようにして既存ビルと調和を保とうとする。米国や日本のようにガラスですべて覆うやり方はとらない。ファリンドンのオフィスも外壁は古く見える が、内装は天井のない最近はやりのインテリアでいかしているとおもった。トップマネジメント(皆ノルウェー人)以下ジーパンである。それがブレントフォー ド のコントラクターの事務所に様子観に来るときはビジネススーツで来る。ファリンドンのオフィスの対面の大きなレンガ建てビルも中は駐車場となっている。英 国のように製造業がなくとも各種デザイン業で食っていると経済は回る。日本のように中国でできるもの輸出したって為替が変動するだけで、利益は消えてしま う。

そもそも米国にしても戦略製品は今も作り続けている。GEの大型ガスタービンとコンプレッサーだ。一時期日立がGEと提携してフレーム7や9を製作したこ ともあったが撤退した。38年前に世界最大の遠心式コンプレッサーといえばエリオット社の6万馬力のもので、これのスタートアップを手掛けたときは感動で あった。これが停止時するときのサージングの音が航空機が落ちたのかと間違えるすさまじさであった。エバラはエリオットの大型コンプレッサーをライセンス 製造したが設計能力はなく、ただのたたき大工仕事で流れ作業で作るものでもないため、コスト高となったのであろう、撤退した。エリオットは結果としてわび し い小型の衝動式蒸気タービンメーカーに成り下がった。ただエバラが買収したLNGポンプは健在のようだ。このような特殊回転機械からの撤退は日本の製造業 にとって航空機とともに戦略上の間違いであったと私は思う。GEは自分の工業用ガスタービンを守るためにコンプレッサーメーカーのドレッサーを買収までし て シングルソースベンダーとなり、いまでは暴利をむさぼっている。GEの判断は「原子力は終わった、LNGだ」とドレッサークラークを買収したのだろう。世 界はますます寡占化している。こうしてLNGプラントの心臓部はGEの思うままになってしまった。ノルウェー人から日本の重工業は造船をすてていま何して いるのか と聞かれたとき、MHIは米国のボーイングの下請けで翼と胴体作っている。IHIはロールスロイスのエンジンを作っていると言ったがデザインしている わけではないから彼らはフンといっただけだ。英国政府がザイン産業を政策として育成したとしても、英国スタイルを世界の人がこのましいとおもったからこそ 世界が受け入れたのではないか。デザインは創 造そのものだから、まずデザインできる個人が育たねば始まらない。英国のように国家が寛容でオープンな社会でこそデザイン業が自律的に伸 び るのではないか。

その例としてインテルに勝ったアーム社がある。この会社の強みは成長著しいスマートフォンやタブレットのモバイル市場にある。同社はいわゆるファブレス企 業で自ら製造はしないが、省エネ設計のマイクロプロセッサー(超小型演算処理装置)を独自開発し、そのIP(知的財産権)を米クアルコムなどにライセンス 供与している。クアルコムはこれに符号分割多重アクセスの通信技術を負荷して携帯用のCPUの設計をし、ファブレスで製造したチップを世界中の携帯メー カーに供給しているのだ。アーム社の発表によると、こうしてライセンス生産されたアーム仕様のプロセッサーは世界のスマートフォンの90%に搭載され、タ ブレット端 末でもシェアは高い。同社はこれまで「半導体の集積度は18カ月で倍になる」というムーアの法則をフルに生かして、より情報処理能力の高いプロセッサーを 世界最先端の工場で量産し、世に送り出してきた。それがパソコンの急速な進化を支える技術的基盤でもあった。だが、電池で駆動するモバイル機器用プロセッ サーは処理能力もさることながら、省電力性能がモノをいう。技術の方向性がパソコンとは大きく異なり、その点にアーム社の技術は一日の長があり、あえてい え ばインテルの死角があった。

日本の社会は閉鎖的縦割り指向の強い集団でトップの命令にしたがって大規模製造業に投資し、成功したが、これをまねた韓国・中国に負けた。まずは投資額が 小 さく人件費の大きい造船とか家電の組み立て産業が空洞化した、現時点では部品産業が空洞化しつつある。比較的人件費の比重の小さな素材産業が空洞化すれ ば、万事窮す。英国もこの流れには抗すことはできなかったが、戦いのルールを変えて社 会の流動性を高め、個人の 知的水準を上げ、水平展開し、彼らが生み出す知的価値で社会を維持するという仕組を意識的に作って成功したとみてよい。日本の通産のように既存の製造 業を保護することでは行き詰 まることは必定。ただ英国は米国と同じ言語を使い、アーム社を操業した英国人もかってテキサスインスツリューメンツで働いていたのだ。アーム社の強みは OSと機械語を橋渡しするソフトが完備しているところにある。

日本の重工業が造船から撤退したときに職をうしなったのは溶接工などのブルーカラーだけではない。設計技師も同時に職を失ったのである。このとき日本の造 船業は設計部隊を温存して、エンジニアリングサービスに特化する道もあったはずであるが、製造業にしか興味のなかった文系経営者は一切を放棄してしまっ た。職を失った設計者たちは東南アジアに設計事務所を構えてしばらく食いつないだが、経営権を現地スタッフに譲渡し、その資金を懐に引退してしまった。文 系支 配の日本政府はデザインを産業化することを思いもせず、船の設計は完全に空洞化したのである。英国政府と大きな差がある。そもそも詳細設計のレベルは CADの出現で無用化の過程にあったのだから経営の不全だけを指摘しても一方的でどうせ詳細設計は機械化で消えてゆく運命にあったともいえる。

日本の農業はグローバリゼーションの犠牲者のようにいう向きもあるが、既存の低生産性の父ちゃん母ちゃん農業を保護した政策が原因なのだ。賢い息子 はそれが行き詰まるとみて脱農業したのだ。傾斜地の多い日本では水田など大規模化が不可能だかた米作を放棄して畑作に切り替えるなどの大転換が必要だ。そ うしてもアンモニアを直接大地に鋤きこむ米国式大規模農業に太刀打ちできるはずがな い。漁業も滅 びるだろう。なぜなら漁業権をマーケットで取引する仕組みが未完成で縄文の狩猟時代を一歩も出ていない 産業だからだ。そのため漁業権を集約して合理化することが全く不可能なのである。

滞在ホテルに若い中国人が急増したので何してるのと聞くと、携帯電話の中継基地を英国で建設しまくっているのだそうだ。こういう大量生産ものにはすでに日 本の出番がないとつくづく感ずる。日本も英国のように大勢のエンジニアに職を与えるエンジニアリング業に場所を提供する大家さん業に興味があるのかどうか?

サンタフェ研の教授であるブライアン・アーサーがテクノロジーとイノベーション)で技術が経済に貢献するという従来の見方を、逆転させ、技術は生物のように、自律的に進化発展するとするという新説を展開している。そして経済はその結果 でしかないと指摘した。文系経営者は残念ながら金の出入りは管理できても、技術が自律的に進化する人間環境をつくりだすことにかけては不向きなのだ。日本社会は文系経営者、官僚、政治 家によって間違いなく滅びる。技術の自律的な進化は人間の脳の無意識下でしか進化しないのだ。そして経済は 技術の自律的な進化によってのみもたらされるものなのだ。

私はデザインが大好きで寝ても覚めてもそのことを考えている。エンジニアリング会社ではプロジェクトマネジメントが会社の生命のように考えるきらいがある が、私はそれも大切だが、実際に巨大プロジェクトのマネジメントも経験してこの仕事は自分向きではない。まるでアメフトのマネジャーと同じではないかと考 えて自らの進路をエンジニアリングの深化に定めた。そうして世の中もデザインという目で観察している。(その観察結果を披露すると傷つき、突然怒り出す人も いるが)すると誰かがそれをみつけて、英国まで呼び出してくれる。それは彼らが必要としているから。デザインとは判断なのだ、道は100万通りもある。そ のなかでどの道が儲かるか、しかしリスクが多いようだからこれは捨てようとか、そういう判断を囲碁のように積み上げてゆく。そうしていると新しい発想が自 然と脳裏に浮かぶ。それを計算で確認する。そういう修練をしているかどうかが、デザイン業でいきてゆく、秘訣だろうと思っている。自分の成長過程をみても 初めからその傾向があって一生かけて育ててきたという実感がある。

さてデザインに適する性格があると思う。それは政治用語でリベラルな性格だろう。マネジメント向きの性格はコンサーバティブであろう。世界観が真っ向から 対立することの多いリ ベラル派と保守派だが、実際、脳の構造が異なっていたとする研究成果が、Current Biology 21, 677–680, April 26, 2011に英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London、UCL)の研究チームが"Political Orientations Are Correlated with Brain Structure in Young Adults"という 論文を発表した。かれらは健康で若い成人90人を対象に実験を行った。自分の政治的志向を1の「非常にリベラル」から5の「非常に保守的」 まで5段階で評価してもらったあと、脳をスキャンした。その結果、リベラル派であるほど前帯状皮質の灰白質 の容積が大きく、保守派であるほど右へんとう体 の容積が大きい傾向があることがわかった。前帯状皮質は複雑性の理解に関連しており、不確実性や対立をチェックする機能を持つ。そのため、前帯状 皮質が大 きい人ほど不確実性や対立への認容性が高く、リベラルな物の見方を許容しやすくなると考えられるという。一方、へんとう体は恐怖心の処理に関連しており、 これが大きい人ほど、反感や脅すような表情に敏感で、危機的状況に際してはリベラル派以上に攻撃的に反応する傾向があるという。詳しくは原典をお読みくだ さい。日本人の教授が書いている。この脳の構造は自分が男であるか女であるかと認識する部位とおなじような構造と見える。むろん後天的にそこが発展したと いうのが半分、先天的が半分なのでは?

2011/10/5惜しまれてなくなったスティーブ・ジョッブズは里親が豊かではなかったため大学は中退だが、使いやすいコンピュータを開発して世界一の メーカーアップルを育てた。彼はまさにリベラルな理系創業者リーダーで内なる声に導かれて、新製品コンセプトを創造し、世界の人々がそれを評価して買い求 め、 米国経済を支えた。そのコスト内訳はHow the iPhone Widens the United States Trade Deficit with the People's Republic of China  By Yuqing Xing and Neal DetertからiPhoneを例にとると。製造を請け負う台湾メーカーは部品を全て中国に輸入し、中国では組立 加工のみを行っている。中国での製造工程に支払われるコストは1台約179ドルの製品原価の3.6%に相当する6.5ドルにすぎない。179ドルの製品原 価の34%に相当する61ドル分は日本製の電子部品であり、米国製部品も11ドル分が含まれている。また、2009年当時のiPhoneの販売価格は1台 500ドル相当、64%相当の売り上げマージンがアップル社の収益となり、米国最大となった同社の30兆円近い時価総額を生み出している。日本もまだ部品 を買ってもらっているので、大きな恩恵を受けているといえるが、東芝のフラッシュメモリー、ディスプレーモジュールトタッチスクリーンだけだ。今後も有用 な要素部品開発を維持できるかが最終製品デザイン能力を失った製造業の浮沈に結びつくの だろうが、その東芝はフラッシュメモリーの発明者を組織から追い出し、その後新しい技術は開発していない。東芝に代表される保守的な文系経営者のミス ジャッジが日本の衰退を招いたといっていいだろう。傭兵部隊としてNTTのiモードを開発した夏野剛(早稲田経済卒)はまだ見えていなかった市場を先読み し、現実への道筋を示して利益センターとし、役員になったが、NTTの縦割り、既得権益の防衛、権謀術数の人事で次第に社内会議にも呼ばれず「タケナカ大 臣」と陰口を叩かれるまでになったため辞職。こうしてNTTはいま土管屋に成り下がりつつある。タケナカ大臣はその後、ニコニコ動画を構築したドワンゴを 設立。

プロジェクトマネジメントに関して私はアメリカのプロジェクト・マネジメント・インスティチュート(PMI)の大会にも出席したことがある。PMIもIT 系の人間が大部分であった、プロセス産業のプロジェクトより裾野が広いのでやむをえないが、そういうところで学ぶものは少ない。まるでままごと遊びをみて いるようなもの。プロセス産業のエンジニアリングはそれほど複雑で多岐にわたるけれどプロジェクト数が少ないのとPMIですら役にたたないので会員はあま りいない。日本のエンジ産業だが日本で調達できる機器はほとんどなくなってしまったため、結局調達は英語の世界。これを自由にあやつり、問題あれば出かけ て 面通しできればどうということはない。お互い人間だからアイコンタクトは有効。

私は旧弊なアナログの業務をコンピュータシステムの上に移植しようとする無駄な作業を行う情報産業の役割はもう終わったと感じている。デジタルのメリット を最大限引き出すすぐれたシステムが世界的規模で採用され寡占化してしまったわけ。何回も繰り返されるルーチーンはモジュール化されてマトリューシカのよ うに入れ子構造にして使えるシステムを開発したものが、マーケットを抑える。オープンシステムで働く人間にとって情報システムは寡占化されたほうが 好都合でますます寡占化が進む。ここは30人の小さな会社だが、ITエンジニアが一人いて全員の面倒を み てくれる。彼に聞くと、たとえば会計システムは当初はノルウエーの会社が開発したシステムをつかっていたが、有名なドイツのSAPというエンタープライズ シ ステムをコンサルタントに頼んで使えるようにしてもらって切り替えたと言っている。文書管理はクラウドサービス会社から提供してもらい、すべてブラウザー から出入りするようになっている。デルのラップトップ一台支給ですべて完了。英語版のソフトは今まで使ったことはなかったが、日本語版と基本的には同じだ から、すぐ使えた。コントラクターの事務所に間借りしている関係で自宅にもって 帰る義務があり、したがって家でも仕事はできる。電話もすべて会社支給のブラックベリーだからどこにいてもオフィス環境は維持されている。24時間労働で きるわけ。会社ではラップトップを大型ディスプレイにつないで使う。会議にはそのラップトップもって出席し、そこのプロジェ クターにつないで説明する。必要な資料はすべて自分のドキュメントにいれておいて適時読める。だからペーパーレス。データベースの管理は若い女性1名雇っ ているだけ。彼女はとても熱心に取り組んでいる。それでコントラクターから上がってくる何千という文書がちゃんと収まるところにおさまり、検索で簡単に取 り出せている。社内連絡はすべてeメールにワードだのpdfを乗っけて送るだけ。文書をみてコメントはそのpdf文書に黄色いメモを貼り付けるだけ。だれ がどのようなコ メントしたかものこる。これをコントラクターに10日以内に送りかえせば粛々とプロジェクトは進行し、見積もりは半年後にでてくるという仕掛け。これで情 報システムは終わり。なんで日本で大騒ぎして無駄な金を使ってアナログ時代の業務フローを再現しようとあがいているのかわからない。むろんコント ラクターはもっと重いシステムを持たねばならない。でもそれは大金かけて自家開発すべきものではない。システムは爪楊枝のようなもので新しいものを買いか えればよい。必要な取引はみながどこでも使っているシステムだから他社から移動してきた人間もすぐ使える。データシートなどは背後にルーティーンの設計計 算方程 式が埋め込まれているから、 数値をいれれば計算してデータシートは即できあがる。マー!ガーベジ・イン・ガーベジ・アウト(GIGO)で間違った数値をいれれば間違った数値がでてし まうので品質 管理が大切になるのだが。

世界のだれでも働けるオープンな企業がプロジェクトを推進する中心組織となる予感がする。だから通産省手法の日本独自のプロジェクトマネジメントなどとい う組織では縦割り垂直統合しか知らない製造業出身の人間が熱心に取り組んでいるが、この囲い込み方針が根本的に間違い。日本の製造業はフォードの生産ライ ンから1 歩もでていないオペレーショ ン指向なのだ。日本独自の手法というところで道を誤っている可能性大と私は思っているわけ。日本の成功に学ぼうという東南アジアの製造業には役には役立つ だろうが、もう一皮むけなばならぬ日本人のマネジメントには百害あって一利なし。害を及ぼすだけだ。

ビジネスで使われるパソコンにしても日本語の入力だけが特殊なだけで、表示は 世界共通のルールである。あらゆる言語が世界のあらゆるコンピュータで表示されるように設計されている。私の個人的ウェブサイトも世界中で日本語で表示さ れる。まだ独身のノルウェー人に検索名を教えると、すぐグー グル翻訳を使って 読みだした。彼はノルウェーの大学で造船を学んだのちすぐこのスタートアップ会社に参加してプロジェクト管理をしているが、東洋の国からやってきた老人が 彼 らが数年かけて磨き上げた設計を根底からひっくり返して検討を始めたのを目撃するや、自分のキャリアプランに不安をもった。若いうちはやはりエンジニアリ ングすべきではないかと。私の答えは個人の性格により適性があるのでなんともいえないが疑問が湧いてきたのなら、内なる声にしたがい早いうちに転身すべき だろうというもの。

ニューヨークタイムズのヘザー・ハブリルスキーが「吸血鬼(ヴァンパイヤー)」ジョッブズと「ゾンビ」ゲイツという記事を書いた。吸血鬼は、洗練されカリ スマ的で、最高の赤 ワインのように血を吸う。ゾンビはぶざまで、目玉が落っこちそうになっているのに気が付かない。吸血鬼は意気揚々とゾンビはトボトボと歩く。吸血鬼は愛を ささやいて押し倒し、全身の血を吸ってしまう。ゾンビは集団でのそのそと追い掛け回し、まるで犬のように肉にかじりつく。吸血鬼は孤独で反社会的、地下で 静かに眠り につ く、ゾンビは騒々しい大集団になってうろつき、金切り声を出して騒々しい。吸血鬼型はナルシスト、芸術家、個人主義者。ゾンビ型は他人と協力することがう まい人、指導者、狂信者、偏執狂という。以下ニューヨーク市は吸血鬼、ワシントン市はゾンビ、ツイッターは吸血鬼、フェイズブックはゾンビだという。階 級闘争派、宗教右派、茶会、ATT、バクテリアはゾンビ。いずれにも属さない人は観客、消費者、投票者、一般市民で、吸血鬼や ゾンビから見れば「死肉」に見えるという。この記事の定義を適用すれば私が文系といった情報システムやプロジェクトマネジメントに興味を持つ人間はゾンビ で、理系でエン ジニアリングに興味を 持つ人間は吸血鬼ということになる。

日本の製造業はかっての米国に勝った理由が製造設計技術と製造現場での強みでることに安住し、CADで工作機械を動かす技術の進歩で中国など発展途上国に 製造拠点を奪われて以降、主戦場が高度の知的インプットに基づくプロダクト・イノベーションの競争に移行したことを認知せず、戦わずしてこの主戦場で米国 に再び負けつつある。大切なのはプロダクトイノベーションができる人材 とは吸血鬼的人材なのだから彼らを育て、製造部門・設計部門・研究部門・営業部門と組織を越えて自由に交流・移動する自由を与えて互いに刺激しあって革新 を生ませる企業にしなければならないのだ。 人事と予算管理でかれら吸血鬼を地下牢に閉じ込めてはならない。

2014年に強制適用が決まっていた国際財務報告基準(International Financial Reporting Standard IFRS)は日本経済団体連合会の米倉弘昌会長の圧力で金融庁の自見庄三郎担当大臣が延期を指示した。まさにこのことが日本の経営者のダメさかげんを表し ていると思う。アメリカの条文主義の会計基準を基礎とした日本と違い国際財務報告基準はイギリスの原理原則主義を基礎としている。開発費は、日本では発生 時費用処理であるが、IFRSでは資産計上である。これが今回のフローティングプラント・ベンチャーが売り上げなくとも融資を受けられる会計制度に助けら れているといってよい。新規産業が生まれやすいのだ。既存産業保護した眼中にない日本が没落する原因だろう。「アップデート」を前提としたマイクロソフト のOSの場合は、代金の100%を売上時計上せず、将来の無償サービス分を引いて売上計上し、将来に無償提供が発生した時点で徐々に売上を計上してゆくこ とができる。ポイント制も同じ処理となる。たな卸資産の最終仕入原価法は、IFRSでは禁止である。またたな卸資産の低価法評価損は、日本では洗替法と切 り放し法の選択だが、IFRSでは洗替法となる。簡単にいえば垂直統合した自社部品に関し、他社が安い製品を開発した途端に原価計算では自社部品といえど もその安い価格(時価)で行わねばならなくなる。

さてエンジニアリング(デザイン)論 v.s.マネジメント論にかなり入れ込んだが、資源会社論を少し。石油公団廃止後、INPEXは和製メージャーにな ろうと資金を投じて オー ストラリアの北西海域で20tcfもあるIchthyという巨大ガス田を発見した。金を払えば試掘してくれる会社があり、プラントは金を支払えば設計をし てくれ、装置も買 えるが、だれが運転・保守するのだろうか。む ろんオフショアと多民族を統治した経験のない日本人は使えない。そこで大金を支払って英国人エンジニアを雇うわけだが、横浜の事務所には短期ならいざ知ら ず家族ずれでは誰も来ない。 INPEXをやめた英国人エンジニアは家族ずれで横浜に移転することに躊躇した。それにあの設計は必ず技術的問題で頓挫し、INPEXは破産すると考えた から乗り換えたのだと言っている。たとえば西オーストラリア政府の20%のガスを渡せという政治的要求を避けるために世界最長の 900kmの海底パイプランを計画したが、このため総投資額は当初予算の10b$から30b$と3倍となった。総投資額30b$の時のCAPEXは9$ /MMbtuとなる。(CAPEX 率年12%, LHV=50MJ/kg or 47.39MMbtu/ton)となる。OPEXを1$/MMbtuとすればLNGのFOB価格は10$/MMbtuとなる。原発事故によりスポット価格 は16$/MMbtuとはいえ、10$/MMbtuで長期契約することは国策とはいえ妥当性があるのかどうか。米国の天然ガスの4$/MMbtuよりはる かに高額。タダ同然の20%を分け与え た方が得策にも関わらずだ。それにガス田 は大規模がだが、ワックス分の多いコンデンセートで、井戸から集ガスのセミサブマーシブルまでのフロー ラインには電熱ヒーターとか保温またはワックス熔解の溶剤ラインな ど用意していないようだ。それにセミサブマシブ ルからコンデンセート分離の浮上プラントまでの海底配管の固化対策は豚一匹(ピグ)しか用意していない。万一の時万事休す。こういう話を私にして私がどう いう反応をするかを英国人やオーストラリア人のエンジニアは真剣な表情で見つめている。こう書いたのが10月だが、11月になり、INPEXは西オースト ラリア政府へ提出済みの申請はホールドにするとオーストラリアで報じられた。その理由としてEUの金融クランチで資金不足に陥ったとか。キンバリー州に LNGプラント建設するというオリジナル案に戻るとの観測もあるとかである。ところが日本では2011/12/8に生産規模8.4MTAのうち東京電力と 東ガスがそ れぞれ1.01MTA、関電と大ガスがそれぞれ0.8MTA、九電が0.3MTA、合計4MTAが2017年から15年間の供給契約にサインしたと報じら れた。すでに中部電力と東邦ガスへの契約分を含めれば全量の契約は終わったことになるという。大ガスはこれに加えて、INPEXに1.2%の投資をし た が、他のオフテーカーも投資するように日本政府から圧力をかけられているという。販売契約締結で申請は継続となったようだ。銀行としてもノーとはいえな い。2011/1/12のFIDはゴーとなったと報じられた。総投資額2.6兆円のうち、1.9兆円(24.7b$)は日本側の出資だ。オースト ラリアではこの他にもシェブロンのGorgon、WheatstoneとウッドサイドのPluto、炭層ガスなどプロジェクトが目白押しだ。

ちなみに天然ガス価格はUSA - Gas: 4~5 US$/mmBTU at Buyer's Plant Gate (Majority on a long term base)、Europe -LNG: 7~8 at CIF (Majority on a long term base; Spot price=10~11) Asia - LNG: 10~12 at CIF (Long Term Contract)、China/India: 14~15 at CIF (Spot Purchase)、Japan -LNG : 10~12 at CIF (Long Term Contract) Japan -LNG: 15~18 at CIF (Spot Purchase)

いづれにせよ、ダーウィン立地は経済性に疑問がある。立地を変えるには時間がないし、今までの設計作業が無駄になる。INPEXのように経営判断する人間 が官庁からの天下りや商社の文系で技術のハートをつかんでいないためではないか。こういうとトップは文系でも、その下には理系が居て、しっかりサポートし ているという。ここが曲者なのだ。トップが文系である以上、ナンバーツーの理 系はおかしくなる。なぜなら人事権を握られた理系など単なる人間のクズと化すからだ。理系はナイーブでトップにならないかぎり必ず文系の顔を見ながらイエ スマンに陥る。だから理系ながら文系と同列となる。というわけで多民族統合のコツを知り、運転経験も豊富でなにより多民族の共通言語英語を自由に駆使でき る英国人 プロセスエンジニに見透かされ、INPEXに未来はないと見切りをつけられている。私は彼の見方に完全に合意する。第二のJALか石油公団が誕生するか も。その次 に日本はギリシア化するのであろうか?

新資源である非在来ガスに目を転ずると日本のINPEXがメジャーオイルのまねして海外の海底油田開発に血祭を上げているころ、メジャーは海底油田開発は 卒業してフラッキング技 術を 開発して自国内 のシェールガス田に目をつけて資源を倍増させている。米国では浅い頁岩にフラッキングを適用してカタールのLNG輸入が必要なくなった。このフラッキング は環境汚染問題を引き起こしたが、技術的に対処可能だ。英国石油も元CEOのブ ラウン卿が余生の仕事としてこの技術に目をつけ、Cuadrilla Resourcesを設立して試掘した結果LancashirのBlackpool近くで20tcfのガス田を発見したと発表し た。

日本にも頁岩の山は秩父などにたくさんあるといったら、地質の専門家のH氏が秩父の山にある頁岩は頁岩(Shale)ではあってもシェールガスを含む ようなShaleではない。頁岩(Shale)のカテゴリーには括られるが、粘板岩(Slate)と呼ばれる硯石のような岩石である。硯石には細孔がない ため水圧をかけて破砕することはできない。シェールガスを算出するようなShaleは、Sandy ShaleまたはSilty Shaleのカテゴリーに分類される岩石で、もともとガスを含む孔隙を持っているのだが、その孔隙が連続していない。そのため水圧をかけて破砕して、孔隙 を 連続させてガスを産出させるのだという。シェールガスを含むようなShaleも、時間・地熱・地圧を受けると硯石のような岩石に変化するという。

なぜ破砕時、塩酸、グリコールエーテル、エチレングリコール、イソプロパノール、生物腐食防止剤トリク口ルべンゼン、ブルタラアルデヒ ド、腐食防止材ジメチルホルムアルデヒド、摩耗減少材/潤滑材ポリアクリルアミド、鉱物油、塩化カリウムなどを水に混入させるのかなぞだったが、水とガス がハイドレー トにならないように水に有機溶媒を混ぜているのだ。そして破砕後の隙間がつぶれないようにプロパント、すなわち砂とかセラミックビーズを混ぜて破砕する。 日本ではハイドレートが資源だといって国家予算を使って研究しているが、海底の固体をどうやって地表に持ちだすのか。石炭より難しくコストがかかる。ここ らへんの判断ができず国費を無駄使いしているのだ。

「それにしても世界がシェールガスに興味を もって探鉱しているといううのになぜか日本ではハイドレートばかりに予算がつき、シェールガス探鉱の予算が付かないのだろうか。日本の地層は新しいのでま だガスが溜まっていないのだという。しかし本当にそうなのか?メタンガスが生物起源ならそうかもしれないが、深層ガスとしたら頁岩が貯留地層となるはず。 それを何もしないのは知的怠慢ではないのか?不思議の国、日本ではある。 これも創業者型の発想をする人間が死に絶えたためかなー?」と書いたら再び地質専門のH氏からコメントをいただいた。いわく「英国は安定したプレートの上 に位置しているのに対して、日本はプレートの境界に挟まれている。英 国では地震がほとんど無いのに対して日本では地震がしょっちゅう発生する。プレートの境界に挟まれた日本の地層はグジャグジャ。通常のタイプの油・ガス田 でも日本の油・ガス田は極めて小さなもの。米国や英国のシェールガスを含むような頁岩も当然日本にも存在するが、極めて薄(厚さ1mもないい)く、横方向 の連続性(数100m程度)も悪く、褶曲し、断層でぶち切られている。そのようなマイナーな頁岩に坑井を掘って破砕してもペイしない。技術的にも、地下 1,000-5,000mの深さの厚さ50cm程度の頁岩に掘り込むことすら不可能。だからそのような頁岩は実質的に日本には「無い」ということになる」 とのこと。

H氏は続けてメタンハイドレートは「資源」では無いことは関係者は理解している。しかし、メタンハイドレートを探査することに国費が使われることで潤って いる機関が数多くある。資源エネルギー庁、(独)産業総合研究所、(独)海洋研究開発機構、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構、T大、W大、 JAPEX,TOC,JOE,JDC、等々。これらの諸機関の関係者は「メタンハイドレートは資源ではないので国費の無駄遣いだ」と「正論」を吐いたら干 されてしまうのは明白。それで「サラリーマン研究者」の殻に閉じこもっているわけ。原子力村と同じ構図。なるほどこれで腑におちた。

フローティングプラントはFloating Production Storage and Off Loading (FPSO)と略称されるが、係留法に一点係留法、スプレッドムアリング、桟橋係留法がある。桟橋係留法は防波堤が必要でコストがかかるが、実績のある方 法である。ただし日本に見られるように海岸線を破壊し、自然を改変するため環境破壊ではある。通常FPSO法は一点係留法を意味する。海上の産ガス法は浅 い海の櫓をたてて井戸を掘るが深海ではセミサブマーシブル船で堀り、井戸の仕上げも海底で行う。ガスはフローラインで井戸からセミサブマーシブル船に集 め、そこから陸に海底配管で送って陸でLNGにする。しかし配管が長くなるようであればFPSOで液化する。

今回はもしかしたら世界初のFPSOになるか もしれないプロジェクトであったが、ホスト国の方針で高価な桟橋係留法に変更された。石油の世界ではFPSOは沢山実績があるが、LNGはこれからであ る。一点係留法を使う再ガス化プラントも試設計はおわっているがまだ採用はされていない。再ガス化プラントからのガスが発電に使われるだけなら、船上で ターボチャージャー付ガスエンジンで発電して直流送電する方式が原理的に可能。発電効率は50%で電力に宿命の低負荷でもコンバインドサイクルのように効 率低下はない。問題は一点係留法の接合点での現時点の最大能力は2MW程度。スプレッド・ムアリングにすれば制約はなくなる。FPSOは機器重量に制約が あるので高価なプリンテッドサーキット熱交換器を採用しても採算は取れる。

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October 12, 20011

Rev. January 16, 2018


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