伊豆

天城峠

wakwak山歩会は2003年暮れ 「道がつづら折に なっていよいよ天城峠に近づいたと思うころ、雨脚が杉の密林を白く染めながら凄まじい早さで麓から私を追って来た」ではじまる川端康成の短編小説「伊豆の 踊子」で有名な天城峠を訪れた。 松本清張もここを舞台にした「天城越え」という推理小説を書いている。2003年の忘年会と2004年の計画を練ったあと旧天城峠の二本杉峠に登り、天城 峠に縦走し、ここから旧天城トンネルに降った。


第1日(12月10日)

午後3:36伊豆高原駅に集合した一同はマーの車でイチがメンバーである伊豆高原の泉郷コンドミニアムホ テル(Hotel Serial No.272)に移動した。目前に大島を望めるなかなか良いロケーションにあるホテルだ。一風呂浴びて、ボルドーワインで歓談後、 中華料理とビール、紹興酒をしたたかいただく。イチはたちまちダウンし、のこる3名で来年の予定を練る。


第2日(12月11日)

本日のルートは水生地下駐車場を拠点に天城峠を散策することだ。総距離8.48km、累積登り657m、 累積下り657m。

二日酔いで寝過ごしたがかろうじて目が醒め、おかゆの朝食を摂り、近くのコンビ二でおにぎりを買って冷川 IC、八幡、国士越、湯ヶ島、浄蓮の滝経由水生地下駐車場に10:15到着。国士越の道は1999年に通過したことがあ る。ワサビ田が沢山あるところだ。水生地下駐車場は新、旧天城トンネルへの道が分かれるところにあり、旧天城トンネルから帰るのに便利だ。ここから徒歩で 川伝いに大川端キャンプ場に向かう。

大川端キャンプ場にも駐車可能なことはわかった。ここから谷沿いに二本杉峠に向かい登坂開始。しばらく行 くと霧雨が降りだす。まわりは杉林なのでまるで川端の小説の世界だ。雨具支度をして万歩計をリセットし11:00に本格的に登りだす。暗い谷筋から明るい 尾根筋にでてもきつい山道がつづら折状に続く。江戸幕府が米国駐日総領事タウンゼント・ハリスを 下田に閉じ込めた気持ちがよく理解できる。まるでここから先は外国のように遠く感ずる。日本政府は江戸幕府のやり方をいまだ変えず、パッチ当て政策をくり 返しているとも思う。谷川の音を聞きながら約1時間程のぼるとようやく少し広い平地にでた。東屋がある。どうやら二本杉峠に到着したようだ。道はまっすぐ 下田の方角に伸びている。よくみると大きな杉が二本路傍に立っている。

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二本杉の前で(コンちゃん撮影)

掲示板があり、二本杉峠は明治38年(1905年)に旧天城トンネルが開通するまで多くの人々がゆきかっ た天城越えの峠であった。江戸時代の画家谷文晁(ちょう)、滝沢馬琴、唐人お吉の悲恋相手の ハリス一行、吉田松陰などの歴史上人物がこの峠を越えたと書いてある。

ちょうど正午であったのと、雨が降り続いているので予定を早めて東屋の屋根の下で昼食を摂る。昼食後「伊 豆の踊子」の天城峠に向かって縦走を開始する。道は等高線にそって、尾根の北側につけられているのでアップダウンがなく楽である。ただ道は狭くところどこ ろがけ崩れのところには橋を渡してある。晴天なら富士が見られるのではないかと察せられるが全くの霧のなかである。下田街道をゆく車の音が聞こえる。道中 は殆ど杉の植林の中を進むが、天城峠近くなった落葉樹を植林してあるところがあった。下の道路に土砂崩れさせないための保安林つくりと見受けられた。柵を して鹿の食害に合わないようにしてある。ようやくグリーンウッド氏の持論の落葉樹林への転換が始まったのかと多少嬉しくなる。1時間半かかって、天城峠に 到着する。川端の小説にでてきる旧天城トンネルは 天城峠の直下にあるだけのことでこの峠は下田街道として使われたものではない。ただの尾根にある鞍部にすぎない。記念撮影をしてすぐ下の旧天城トンネルに 向かって坂を下る。30分かかって旧天城トンネル入口に到達する。

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旧天城トンネル

旧天城トンネルは海抜708m地点に穿った長さ446mの切石巻工法のトンネルである。石は大仁町吉田地 区の吉田石を使い1901年貫通、1904年完工と看板に書いてある。わが国最大の石積トンネルということで重要文化財に指定されたとのことだ。夏目漱石 がロンドンから帰って「我輩な猫である」を発表したころ完成したことになる。取り付け道路は舗装してないが、トンネル自体は堅牢で今も通行できる。時々観 光目的のタクシーや自家用車がトンネルからでてくる。突然年配の紳士がひょっこりでてきたのにはビックリした。河津七滝から歩いてきたのだという。これか ら浄蓮の滝まで歩くという。

1978年にNHKが和田勉監督で松本清張の「天城越え」をビデオ化した。大谷直子が色っぽい薄幸の女を演じ、佐藤慶がニヒルな土工を演じて存在感があっ た。真犯人の少年を鶴見辰吾、そしてその老年役は宇野重吉が渋く演じていた。

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旧天城トンネルから水生地に向かって降る(コンちゃん撮影)

水生地下の駐車場にもどったのは15:00で総歩数13,550歩であった。帰路は伊豆中央道、熱函道路経由熱海とした。

旅の後、図書館で日本文学全集の川端康成集を借りて「伊豆の踊り子」を読む。何回か映画で見たことがあるが、初めて小説にふれ、「わたしたちを見つ けた喜びで真っ裸のまま日のなかに飛び出し、爪先で背一ぱいに伸び上がるほどに子供なんだ」という映像化しにくい場面を読んで小説でしか表現できないもの もあると気付いた次第である。時代が変わり、人の価値観も変わったとの感を深くするが、川端って人の女性趣味は少し幼稚なのでではないかという気がしない でもない。さて峠の北口の茶屋とはどこにあったのだろうか。水生地と言われる街道が渓谷を渡るあたりであったろうかと思うが今はなにも残っていない。

スケジュールとパーフォーマンス

場所 予定時刻 実時刻 歩数
ホテル 8:30発 8:45発  
水生地下駐車場 10:00着 10:20  
大川端キャンプ場 10:30着 10:45 0
二本杉峠 11:30着 12:00着、昼食 12:15発 2,340
天城峠 12:30着 13:45着 9,150
旧天城トンネル入口 13:10着 14:15着 10,600
水生地下駐車場 14:10着 15:00着 13,550
JR小田原駅 18:00着 18:00着  

December 12, 2003

Rev. November 23, 2017


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