鎌倉プロバスクラブ卓話

太陽由来エネルギーだけで生きる

グリーンウッド

2005年4月12日

鎌倉プリンスホテル

ちょうど1週間前に小川幹事から会長卓話のピンチヒッターとして急遽なにか話してくれと依頼を受けました。趣味のヨットやバイクの話でもということでしたが、ヨットは久保野さんのようなワクワク、ヒヤヒヤするような経験もしておりませんし、バイクも乗っている本人は至って幸せなのですが、まわりの人には迷惑なだけで、自慢できる話ではございません。それにグリーンウッド事務所として開設しているウェブサイトの大改訂中でとても短期間に用意できる話はありません。固辞したのですが、他に引き受け手も見つからないということなので昨夏(2004年6月30日)、亜細亜大学の研究会で行った「グリーン電力」についての話にその後の進展も多少加味して話すことにしました。 「グリーン電力」は現行制度と紛らわしいので「太陽由来エネルギーだけで生きる」と変えました。

パソコン直結のプロジェクターがあれば亜細亜大学で行ったようにパワーポイントのプレゼンテーションからビデオ実演に飛ぶなどという芸当こともできるのですが、鎌倉プリンスのプロジェクター使用料はパソコンが一台買えそうなくらい高価ですので、最低限の図表20枚だけ半分に縮小してプリントしたものを皆様に配布して、それを見ながら話したいと思います。老眼鏡を用意していない人にはかなりきついかもしれませんが、できるだけ言葉で説明しますのでご容赦ねがいます。

さて本論に入ります前に、小川さんのお言葉に甘えてセーリング、バイク・ツーリング、その他、引退後の余生の過ごし方についても多少ふれさせてください。

セーリング

現在私はベルギー製のエタップ24という24フィートのセーリングボートを横浜ベイサイドマリーナに係留してシングルハンドセーリングを時々楽しんでおります。ちょうど4年前、ユーロが今より30%も安かった時に輸入したものです。ヤマハよりずいぶん安かった時です。エタップという会社はFRP製二重殻の間にウレタンの発泡材を充填した不沈構造の船を建造しております。一緒に21フィート艇を輸入したヨット評論家の方が水道水をホースで注ぎ込んで沈 まないかテストしました。沈まないどころか帆を上げてセーリング出来ることまで証明しました。

私は雨が降った、風が吹いた、寒いなどを理由に殆ど海に出ませんので浮かぶ別荘として利用しているといったほうが正しいかもしれません。

エタップ24

横浜ベイサイドマリーナは日本最大のマリーナで1,000隻以上係留されております。私の区画は特別半額の区画でクジ運に助けられました。

私は信州は善光寺平で育ったため、小学校6年生になるまで海というものを見たことはありませんでした。小学校の修学旅行で初めて日本海の水平線を雁木の連なる直江津の街屋の隙間から初めて見ました。その時、水平線が家屋の屋根より高くみえるのに街が水中に没しないのはなぜかといぶかったくらいウブだったのです。それでも船に興味をもったのはなぜかと考えますと伯父が江田島出身の海軍士官だったため、母の話から世界を又にかける海の男にあこがれたためかもしれません。

しかしメシが食える職業としてエンジニアを選択したため、 海には縁がなくなりました。そこで余暇に海に乗り出して冒険しようと思ったわけです。オーナー意識が希薄になる共有は危険という統計データがありますので、財政的にはきついのですがシングルハンドという方針を貫きました。といっても皆でワイワイすることは嫌いではありませんから、オーナーシップが明確な久保野さんのシエラザードに声をかけられればクルーとして楽しませてもらうというわけです。

日本ではおせっかいにも船長免許を取得しないとエンジン付きの船にはのれません。そこでプロジェクトの端境期に20日の有給休暇をとって取得しました。日本の免許はIMOが音頭を取って締結した国際条約に準拠しておりますので国際的にはプロ免許として通用し、免許講習会 同期のマルハの社員がこれをもってチリでアンチョビ漁の漁船団を編成して船団長になっています。

30年以上前、仕事で英国に3年滞在したときに、1週間有給休暇をとって8人乗りの大型ボートをレンタルして家族や隣人を乗せてテームズ川をオックスフォードまで遡上したことがあります。そのとき木造のガフリグを偽装したセーリングボートをみました。ミラークラスとういうもので、ジャック・ホルトという人がスチッチ・アンド・グルー工法で自作できるように設計したボートです。ちょうどオプティミスト・ディンギーを大きくしたような2枚帆のスループです。組み立てキットを取り寄せて自作し、江ノ島で進水をしました。 その時、七里ガ浜沖の海上から七里ガ浜2丁目の住宅地をみてあのような海浜の土地に住めたらすばらしいと思ったものです。それが思わず実現して今日に至っております。

ミラークラス

この自作ディンぎーをカートップして霞ヶ浦、野尻湖、山中湖、三戸浜でセーリングしました。その後、ヤマハワンデザイン20とかトッパーに乗っていたこともありますが、省略します。

バイク・ツーリング

バイクは55才のころ、引退後船を持てるかどうかわからなかったとき、余生をどう過ごそうかとつらつら考えて始めたものです。若い頃、「イージーラーダー」という米国映画を見て、ピーターフォンダ騎乗の大きなレーキ角を持つロングフォークに細身の前輪をつけたチョッパーにシビレておりました。チョッパーとはハーレー ・ダビッドソンの余分な部品をはずし、泥除けを切り詰めることからそう呼ばれるようになったのです。日本ではいわゆる白バイ型、ポリススタイルにあこがれる方が大部分ですが、私はあくまで 足を投げ出して乗るフォワードコントロールのチョッパー派でした。しかし、ロングフォークは危険ですので妥協してハーレー ・ダビッドソン社純正の漆黒のソフテイルカスタムを選びました。1995年に講習を受け直してを新車を購入いたしました。伝説のショベルヘッドやパンヘッドはすでになく、エボリューション1,340 ccエンジンでした。

よく大きなシリンダー容積に関心があつまりますが、ロングストロークのため、エンジンのトルクが大きく扱いやすいのが特徴です。セカンドから発進することも可能です。ただロングストロークのため、回転数をあげることが出来ず、シリンダー容積の割りに馬力はでません。

日経産業新聞のMyウイークエンド欄

日経産業新聞のMyウイークエンド欄に紹介されたとき、記者にバイクの効用として、A10神経系が刺激されて、脳内麻薬様物質のβ-エンドルフィンが分泌される話をしたところ。群馬ロータリークラブの石原氏が 記事を読んで気にいったと電話をかけてまいりました。それで佐渡にご一緒して以来、石原氏を隊長として全国のロータリークラブ会員の方々を訪ねあるきました。北海道から九州、米国のルート66そしてニュージーランドと 大勢でツーリングを楽しみました。ニュージーランドにはレンタル車が少ないため、自分の車を貨物船で持込みました。

ところでイージー・ライダーで主演したピータ・フォンダがどこかで「フランス人が米国を批判して米国は文化的な砂漠である。人々に文化がない。唯一世界に与えたものは、ロックとハーレー・ダビッドソンだけではないか という。多分その通りだろう、しかしそれ以上なにが必要というのか」

ということを言っていましたが、ハーレーに乗るとこの言葉の意味がわかります。

ついでにイージー・ライダーのなかでジャック・ニコルソンが言う台詞 に

「人は自由はなににもかえがたいという。しかしほんとに自由に振る舞っている人を見ると不安になる」

というのがありますが、最近市民運動家と付き合ってまったくそうだと思うことがありました。

登山

引退間際になって中学時代の同級生が4人集まって毎月山に登ろうということになり、今年で5年たちました。この間に登った山は57座です。ただ私は高所恐怖症で奥穂高の頂上直下の岩場で登頂を断念したことがります。最近は体力の衰えを訓練で維持しようと月、2回にしよう かと試みています。持病の腰痛対策としては有効のようです。

ウエブサイト運営

セーリング、バイク・ツーリング、登山に加え、旅、読書、映画、音楽、自主研究などの楽しみの記録を整理してウエブサイトに公開するのが4っ目の楽しみです。ペンネームをグリーンウッドとし、 グリーンウッド事務所が主催するサイト名をセブンマイル・ビーチ・ファイルとしております。オデッサ・ファイルをもじってつけました。わが御町内にセブンマイル・ビーチという若い女性向けのアクセサリー・ショップが御座いますが、ケイマン諸島のセブンマイルビーチにはSがついておりません。

日本語ページは抄訳して日英のデュアル・ページにしておりましたところケイマン諸島に貸し別荘を所有する米国人の投資コンサルタントからお前のトップページにある写真はケイマン諸島のセブンマイルビーチにしては少し山が高すぎる。セント・トーマス島かジャマイカのようにもみえるが、南太平洋かインドネシアかもしれない。どこのセブンマイルビーチかとの問い合わせが舞い込んだことがあります。我が家の庭で撮影した三浦半島を背景にした七里ガ浜の写真ですので無理もありません。

自宅から七里ガ浜を見晴らせますので 1台の中古パソコンのスイッチを切らずに24時間連続のライブカメラとし、七里が浜の波情報を常時放映しております。ガーデニングのページもありますが、これは女房の趣味の成果を取りまとめたものです。

1998年2月にAOLサーバーにアップし、2002年には100メガバイトを無料で収納してくれるAsahi-netに移転しました。AOLサーバーにも入口を継続しております。両者のトップページの合計ヒット数は

よく皆様から

「広範囲にご興味をお持ちですね」

といわれます。大江健三郎がE・W・ザイード

「現代の知識人はアマチュアたるべきである。アマチュアというのは社会のなかで思考し憂慮する人間のことである」

と言っていると紹介しております。私はこのアマチュアの遊びを大切にしてきました。これからの話もそのアマチュアの興味から出発しております。

今回話する「グリーン電力」は亜細亜大学に発表したものにその後、継続している自主研究成果をウエブサイトに公開したものをまとめたものです。 ご興味を持たれましたなら配布した資料にサイトのURLを書いておきましたのでご利用ください。

地球温暖化

さて前置きはこのくらいにして本題に入りましょう。

海外の天然ガスを冷却液化してタンカーに積み込み、受け入れたLNGを気化して発電用燃料や都市ガスにする基幹 施設のエンジニアリングを家族を養うための生業としてきました。

戦後の高度成長期に石油や石炭などの化石燃料を大量消費するようになってからこれらに含有される硫黄成分のため、大気汚染公害が発生しました。そこで硫黄を含まない天然ガスに切り替えたのです。いまでは少なくとも硫黄酸化物の公害がなくなり、ディーゼルエンジン排気中の煤塵防止が課題として残されるだけとなりました。

ところが天然ガスの主成分がメタンということで水素分が石油の2倍あるといってもやはり炭素は燃えて炭酸ガスになります。石油・石炭からの炭素も含め、結果として大気中の炭酸ガス濃度が上昇を続けております。炭酸ガスは赤外線を吸収します。太陽から地球にとどく光 は地表をあたためます。しかし温まった地表が宇宙に向けて放射する赤外線は炭酸ガスに吸収されて大気を暖めてしまい、温暖化ということが生じております。

温暖化の何が問題か?

気温が数度上昇しても暖かくなるだけだから冷房でも利かせていれば問題ないではないかと思われるかもしれませんが温暖化すると大気循環が盛んになり、現在の米国、南米、オーストラリア中国、日本など中緯度の穀倉地帯が大気循環の下降地帯になり、常時高気圧に覆われ、降雨量が減少し、サハラ砂漠のようになることが危惧されております。 日本に関しては夏だけ小笠原を覆う高気圧が年中日本列島の上に張り出すようになり、旱魃が継続するようになるだろう。結果として飢餓が発生し、現在の世界人口を維持できなくなるという深刻な事態になるのではないかと学者は危惧しております。

これを証明すべく新杉田駅近くに400億円かけた現時点で世界最高速のスパコンが昨年完成しました。科学技術庁が今後の気候変動を予測しようとして開発した地球シミュレータというものです。シミュレータを使って前述のような危惧が実際に生じることになるのかモデル造りしているようですがまだ結果が出たとは聞いておりません。

農産物1kgを生産するに必要な農業用水をリッターで表したものをバーチャル・ウォーターといいます。一番少なくてすむのがトウモロコシ2,000リッターです。風呂桶1盃分です、次に小麦、大豆、鶏肉と続き、米は5,100リッターです。水田がいかに水を必要とするかわかります。雨の瑞穂の国だから可能となる農作物で、農業用水の面からは不効率ということになります。豚肉、牛肉は論外で、日本が輸入する牛肉、豚肉、鶏肉を生産するための農業用水は日本が国内で消費する農業用水の2倍に達しています。温暖化すればこの順であきらめなければならなくなるでしょう。グローバル・トレード体制が維持され ていれば貧しい国から飢餓が襲ってくることになります。でもそのような 危機になれば真っ先にグローバル・トレード体制は崩壊するでしょうから輸出依存の日本経済はガタガタになるのではないでしょうか。

農産物

バーチャル・ウォーター liter/kg

5,100

小麦

3,200

トウモロコシ

2,000

大豆

3,400

鶏肉

4,900

豚肉

11,000

牛肉

100,000

地球温暖化防止対策

対策としては炭酸ガスの排出量削減ということになります。これが1997年12月に京都で行われた国際連合気候変動枠組み条約第3回締約国会議 (COP3) が残した京都プロトコルというものです。排出権取引などは環境の経済への内部化というもので大切ですが、今回は技術的なものに話を限定します。 「日本のエネルギーシステムの炭酸ガス排出構造とその削減」を見てください。これは1993年に私がおこなった化石燃料を使うにしても炭酸ガス 排出量が最小になる利用構造はどのようなものかを最適化手法で求めたときのエネルギー消費構造図です。

メタノール燃料は検討に加えましたが、ヂメチル・エーテル燃料などの人造油や太陽由来エネルギーのうち風力、バイオマスは当時は検討に含めませんでした。 その後、1997年にはヂメチル・エーテルがLPG燃料代替に使えるのではないかと考えはじめOil & Gas Journal等に発表しました。

日本のエネルギーシステムの炭酸ガス排出構造とその削減

炭酸ガスを回収・液化して深海に溶かし込むなどの技術・経済検討もしました。炭酸ガスを回収して深海に溶かし込めば当面は大気中の炭酸ガス濃度の上昇は止められるでしょう。しかしコロンビア大教授、ウォーレス・S・ブロッカー博士が提唱している海水の大循環は1600年で一巡すると言っておりますし、太平洋では湧き上がり側ですのでもっと早くでてきてしまいます。

海洋の藻類による光合成速度は 海表面でした行われず、オホーツク海や親潮が豊饒なのはアムール河が多量の無機栄養を大陸から運んでくるからと言われているように鉄分等の無機栄養の供給速度は陸地からの河川の流れ、海水の大循環による律速であるため、多くは期待できないでしょう。

ウォーレス・S・ブロッカー博士が提唱している海水の大循環

一次エネルギーの世代交代

化石燃料の利用による温暖化も深刻ですが、化石燃料の枯渇はもしかしたらもっと深刻かもしれません。食料生産には水に次いで窒素肥料が必要です。現在の世界人口を支えているのは石油・天然ガスを使う空中窒素固定法があるためです。これなくしては根瘤菌にたよる産業革命前の状態に戻らざるをえません。1992年に国際応用システム解析研究所のナキセノビッチ氏がロジスティック・モデルを適用して一次エネルギーの世代交代 サイクルを非常にきれいに整理してくれました。洋の東西を問わず、産業革命前は燃料は森林から得られる木材でした。それが石炭になり、石油、天然ガスと世代交代をしてきました

ナキセノビッチ氏が使ったロジスティック・モデルはマルサスが唱えた幾何級数的(等比級数的)人口増加予想を修正するために1838年にベルギーの数学者ピエール・ベルハルスト (Pierre Verhulst)によって考案されたものです。人口または個体数は環境収容力以上には増えることはできないというものです。環境収容力は地球の限界と同意味で化石燃料の総埋蔵量、または温暖化が許容できる炭酸ガス濃度と同じです。

石油生産がピークを越した?

ナキセノビッチ氏の予測によりますと石油は1980年にピークを過ぎるとしています。実際には石油は1970年代にOPECにより人為的に作り出されたオイルクライシスによって生産量は一旦減少しま したが、1983年頃から再び増産傾向にありました。しかし1998年になりますとキャンベルという地質学者がシェル社の地質学者ヒューバート博士が米国の油田の生産実績を解析して得られたヒューバート曲線を使い、2005年頃石油生産はピークを迎えるという予測 を1998年3月号のサイエンティフィック・アメリカン誌に発表しました。

OPECなどはまだ生産井戸の弁を絞っているかのごとき言動をしていますが、最近の市場空前の原油高はもしかしたら、世界の生産井の弁はすでに全開ではないかと思わせるものがあります。油田の埋蔵量は有限ですのでヒューバート曲線の教えるところはピークを越えると井戸を掘り増すなどの追加投資を行っても生産量は下がる一方になります。私は1973年にペルシャ湾の石油生産基地であるダス島に飛びましたとき見た海上生産井と20年後に再訪問した時ではまるで違う海かと思うほど生産施設がびっしりと海面を覆っておりました。もう井戸を掘る 隙間がありません。これで石油も終わりだなと感じたものです。

オイルショック後、日本では石油有限説など、OPECが価格吊り上げのためにしていることで心配は不要という楽観論がはびこっています。なぜそう信じられるようになったかというと米国の石油資源専門誌のOil & Gas Journalが毎年行った生産国へのアンケート調査が常に埋蔵量の増加を示していたことにあると思います。ところが本当のところ、新規油田の発見は1980年代をピークに減少しています。 しかしOPEC諸国はカルテルを組んでいるため、自国の生産枠を確保するため自国の公称埋蔵量を増 さねばならぬという誘惑が働きます。というわけで年々架空の埋蔵量が積み増しされてきました。このため、我々は実際よりも大きな架空の埋蔵量で安心しているというアブナイ事態にいたっているのです。各国の政治家もマスコミも、石油が思っているほどないということは聞きたくないので、OPEC諸国の架空の申告を深く詮索はしないのです。もっと知りたい方はキャンベル博士が組織したピーク・オイル研究協会(ASPO)がその後のフォローアップをしておりますのでご紹介します。

地球由来エネルギーは石油後の一次エネルギーの主役になれるか?

石油と天然ガスの生産が減少しはじめても実は石炭が残ります。しかしこれも消費が増えれば1世紀分プラス位ではないでしょうか。ただ先にも説明しましたとおり、石炭は殆ど炭素ですから地球温暖化はますます進行することになり、どのくらい許容できるかわからないのです。人類は炭素税などの対策を採用してこの消費増を抑制せざるを得なくなるのではないでしょうか。

ナキセノビッチ氏によれば天然ガスは2030年ころをピークにして次第に核分裂に道をゆずり、そのあとは太陽電池および核融合に交替してゆくと予測しております。1992年頃はそのように考えられていたわけです。

ところが核分裂利用は政府の役人がなんと言おうとプラントの事故をゼロにはでません。1986年のチェルノブリイ事故ではからずも証明されてしまったように一旦事あると放射性廃棄物による広域汚染が生じ、長期間、人が住めない空間が発生するという事態になります。補償金も一民間電力会社が支払える金額を超えてしまいます。人口過密で住空間の狭い国土の日本には向かないテクノロジーです。それに資源量も化石燃料程度しかなく、これを補うためにプルトニウムを回収利用する高速増殖炉という更に危険な技術にのめりこむことになりますので危険度は更に増します。

核融合はどうかといいますと、日本の原研がかついでいるトカマク方式という磁場核融合方式はディスラプションというプラズマの不安定現象が制御できていません。米国は見限ってさっさと撤退してしまっております。日本政府がトカマク方式をめぐってフランスと誘致合戦を繰り広げておりますが、これは負けるが勝ちなのです。六ヶ所村の振興のために1兆円を無駄使いしてもよいものでしょうか。とにかく日本は撤退がヘタな国です。では米国 が研究しているパワーレーザー・ビームを冷却固化させて落下してくる重水素、トリチウム燃料標的に照射してミニ水爆を爆発させるという慣性核融合なら可能性があるかというと、実用化の目処も立っておらず、核融合を地球上で実現するという人類の夢は幻想にすぎないのではと原子核物理学者の森永先生はおっしゃっております。彼によれば核融合でも放射性廃棄物が生じるので安全の面でも核分裂と大差ないということです。

太陽由来エネルギー

地球由来エネルギーである 核分裂も核融合もだめということであれば、人類には太陽由来エネルギーの利用しか残されていないということになります。すなわち水力、風力、波動エネルギー、海洋温度差、バイオマス、太陽電池です。これらはいずれも大気中の炭酸ガスを増加させないカーボンニュートラルなエネルギーです。バイオマスは燃すと炭酸ガスが発生しますが、それは予め大気中にあった炭酸ガスを光合成で固定化したものですので全地球的規模とタイムフレームでみますと化石燃料のように大気中の炭酸ガスを増しません。そういう意味で カーボンニュートラルなエネルギーです。ただ今世紀発明された太陽電池を除けばみな先祖がえりです。

海洋波動エネルギー、海洋温度差は研究されておりますが、コスト的にどうかとおもわれますので研究しておりませんので今日は省かせてもらいます。

水力発電は有望立地満杯でこれ以上ダムを建設できません。日本のような太平洋のプレートが沈み込む造山帯では雨水が高くなる一方の山を削り、河川がベルトコンベアとなって土砂を海に運ばないと 山は増々高くなるばかりで安定した国土を維持できません。そういう意味でダムは建設してはいけないということになると思います。

風力は昔の風車よりズット効率の良い翼型が利用でき、素材の進歩もあって、上空の風を拾える巨大な風車がつくられるようになりました。おかげで完全にコスト的にも実用域に入ったといえるでしょう。2002年の風力を含む新エネルギーは日本が1.8%未満、米国3.9%、デンマークは10.2%、スエーデンは17%です。

科学技術庁資源調査書の報告によれば、全国の海岸線のうち6,000kmに高さ100mの風車を設置すれば、年間30億〜300億キロワット時(1997年度の日本の総発電量10,000億キロワット時の0.3〜3%に相当)ものエネルギーが得られると試算しています。また、日本の外洋に面した洋上3キロメートル範囲内 に小型の500キロワット級風車を想定した設置容量が約20,000MW、約2,800億キロワット時の発電量となり ます。これは、1997年度の日本の総発電量の28%に相当します。

太陽電池は自分が作り出すエネルギーで自分自身を複製できるという自己増殖性も証明されていますし、エネルギー転換効率も10%以上と高いため、いずれ将来の基幹エネルギーの座を射止めるものと思われます。それに価格を除けば完全に実用になっています。今後、どう価格を下げるかですが、半導体にシリコン以外の酸化物素材をつかい、色素で増感させる素子が成功するかどうかわかりませんが、新規な技術は今後も開発されるだろうし、い づれ安くなるだろうという期待がもてます。原油価格が高騰すれば、火力発電単価が上がり、いずれ、電源の主力に躍り出ると思われます。

バイオマスのエネルギー転換効率は1%以下と低いので太陽由来エネルギーの主力にはなれませんが、未利用の土地があればどこでも可能ということで、発電単価は太陽電池より大幅に低く 、実用化は可能と考えられます。バイオマスの利用としてはよく間伐材の利用が論じられますが、工夫しようとしない林業者と知恵の無い役人の無責任なお題目と思っております。 私は破綻した林業の救済より未利用の広葉樹をバイオマスとすれば展開が開けるのではないかと気がつき、広葉樹発電の単価がどのくらいになるか試算してみました。それを今日説明させてください。 ついでに小型のマキカートを試作したこともご紹介します。

日本には適地はございませんが、世界には平な砂漠は沢山あります。ここで太陽熱で人口風をつくり風力発電するというオーストラリアのプロジェクトも紹介させてください。

日本の林業の問題点と解決法

仲間と登山をするようになって、戦後の拡大造林の国策にそって植林された針葉樹林が尾鷲ヒノキの産地、三重県の速水林業のように成功している例もありますが、輸入材とのコスト競争に負け、間伐もされずに放置されているのを方々でみました。

日本の林業はまっすぐな木材を得るために不可欠といって針葉樹を密植します。そして5-6年継続して広葉樹の芽を切り取る下刈りをします。10年目には除伐、40年間継続して間伐、林道つくりと維持、傾斜地での手持ちエンジンソーによる伐採、ケーブルによる搬出と金がかかります。この伝統的手法 にプラザ合意後の円高で国際価格に太刀打ちできなくなったのです。

外国ではどうしているかと調べますと森林が比較的平坦な土地にある関係でブルドーザーや大車輪タイヤをつけた土木工事機械をベースマシンとする伐採機械(フェラー・バンチャー、ハーベスター)、搬出機械(グラッペル・スキッダー)、粉砕機(チッパー)を使っています。少なくとも手持ちエンジンソーによる伐採、ケーブルによる搬出よりは大分省力化できています。

フェラー・バンチャー

グラッペル・スキッダー

チッパー

これら森林機械は高斜度の日本で使えるか調べましたが、せいぜい左側のハーベスタのように最高30度くらいと思います。それより急傾斜地は右のイラストのようにキャタピラ製テンダーを連結するか、6本足の昆虫型のベースマシンを開発しなければならないでしょう。現在の日本の技術力をもってすれば、需要さえあれば土木機械メーカーは喜んで開発してくれると思います。

フィンランド製ハーベスタ

斜度45度まで伐採できる森林機械

しかし伐採と集荷だけ省力化しても植林費と長期間のメンテナンス費をどうするかという問題が残ります。このようなとき西口親雄氏の「ブナの森を楽しむ」という岩波本に出会いました。氏は戦後、広葉樹を伐採してスギ植林したことに疑問をもち、放置林業を提案している稀有な林業学者です。そして集中豪雨があると山崩れが生じるのはえてして篤林家の山林とのことです。スボラ林家の放置林は崩壊しないというのです。

広葉樹は針葉樹と違い、伐採しても残った幹から枝が出ますし、実から自然発芽します。従って広葉樹林は伐採しても植林は必要ありません。また根もしっかり張りますので山崩れの危険は針葉樹林よりすくなく、落ち葉の保水性もよく、水源涵養にもっとも適した樹種です。材質は硬く、生活スタイルが洋式化した家具の材料にもなるものです。またパルプ材料にもつかえます。この本を読んで 広葉樹発電という着想を得ました。

広葉樹発電

広葉樹発電のビジネス・モデルは二つの特徴を持ちます。まず広葉樹林が対象ということ二つ目は高斜度で使える林業機械の開発と徹底的導入です。

森林確保のため不在地主も含め、広葉樹中心の放置山林所有者からその固定資産税分だけ補償して山地を借り、自然に育つ広葉樹を伐採してチップまたは電力を市場で販売 します。伝統のソフトウッド目的に植林地は対象外です。

もしハードウッドとして西洋風家具などの用材として売れればチップ化せず第一優先で売り、次善の策としてパルプメーカーが使える品質のチップがとれればパルプチップとして販売します。 そして最低限の使い方としてガス化ガスタービン発電所で電力に変換するのです。このボトムラインの採算がとれればおのずと優先順位の高いビジネスは成立するというわけです。

その概念図を配布してあります。ここでは日本特有の高斜度での転倒防止用の幅広テンダーをつけた姿を描きました。伐採機も搬出機も斜面に垂直に上下して伐採と枝つきの木材の搬出をおこな います。自走型チップ化機械は斜面の下の平坦な場所で搬出された木材をチップ化し、チップは直接トラックの容器に噴出させて積み込みます。

発電所は地域の消費センター近くに設置します。冷却水も不要な単純ガスタービンサイクルによる安価な発電所としました。中山間の分散発電所なので住宅への熱併給はせず温泉センター位にとどめます、

広葉樹発電の概念図

自然再生可能な広葉樹林面積と山林固定資産税

経済検討のベースとしてガスタービン発電所には含水量20%の乾燥チップを毎時1.8dry tonとしました。樹木からの生チップの回収率を97.1%とし、24時間連続運転で年間運転日数は320日とすると年間生チップ供給量は22,779green ton/yearとなります。

サステナブルな広葉樹林面積を求めてみましょう。

私が1年かけて鎌倉広町緑地で測定した雑木林の成長速度は5.9green ton/ha/yearですからこれを基準にすれば3,860ha(38.6km2)となります。

山林の賃貸料算出ベースとして安全をみて森林生成速度を2 dry ton/ha/year(生木換算3.2green ton/ha/year)とすると7,118ha(71.2km2)となります。

森林機械の採用は皆伐が前提となります。 40年サイクルは伐採・搬出機械が各1台ですみますが、20年サイクルは各2台必要となりますので、40年サイクルをコスト検討のベースとしました。省力化するためには太らせて皆伐するほうが効率がいいのです。ただ20年サイクルは切り株から ヒコバエが発芽しますが、広葉樹は30年以上放置すると伐採切り株からの萌芽は しにくくなります。したがって40年サイクルの場合はドングリの実からの自然発芽による二次林の再生とします。20年サイクルでも40年サイクルでも樹木の成長速度はほぼ同じとしました。

伐採・搬出・チップ化コスト

緩斜面でつかう機械の初期投資額は米国での1993年の価格の20%増しとし、急斜面のそれはテンダー分含め2倍としました。集材・搬出は伐採地点からチップ化マシンのある数百メートルの範囲にある平地まで枝つきのまま引きずり降ろすという前提です。森林機械関連すべてを含めた伐採・集材・搬出・チップ化コストを計算しました。

人件費は3人の操作員に対し、病気怪我などのための予備要員兼調整・指揮要員として1名加えました。山林賃貸料、林道の補修費は地方自治体の担当として含めません。

山元チップ単価は山林賃貸料、伐採・集材・搬出・チップ化費含めて1,948yen/m3となりました。急斜面での伐採・集材・搬出機の転倒防止用に特製のテンダーを付加しても2,087yen/m3程度です。40kmのトラック輸送費583yen/m3を加えても2,530-2,670 yen/m3程度です。広葉樹のパルプ用チップの市場価格9,300 円/m3より大幅に低いので、パルプ向け広葉樹チップ生産は確実に採算に乗るということになります。

ガス化ガスタービン発電の方式と諸元

山林から運び出したチップは、チップ燃焼火力発電所で電力に変換します。発電所ではチップは屋外に山積みし、自然乾燥で含水量50wt.%を20wt.%近くまで下げます。ガス化炉のエネルギー転換効率は6気圧で運転するとして80.9%であります。発電効率は燃焼圧6気圧、タービン入口温度1,200度C、発電機効率98%として33.6%となります。1.8ton/hのチップから2.38MWの電力が得られます。発電所の初期投資額は7億3,000万円となります。

発電単価試算

試算のネット・キャッシュフローの前提としての資本金、借入金、所得税に関しては伐採・集材・搬出・チップ化とおなじく初期投資額の9.18%としました。その内訳は

項目 単位 数値
資本金/初期投資 % 40
ネット・キャッシフロー割引率(配当+内部留保) % 8
操業期間 years 30
法定償却期間 years 17
償却法 - 定額
法人税率 % 40
借入金年金利 % 4
返済期限 years 10
借入金返済方式 - 元利合計均等返済
残存価値/初期投資 % 0

発電単価をさげるため24時間定格出力を仮定しました。運転員は1直2名で3交替、4直としました。

項目 単位 急傾斜
発電プラントの初期投資額 million yen 732
資本金、借入金、所得税関連ネット・キャシュフロー:初期投資額の9.18% million yen/year 67
7,118haの山林の固定資産税(初期投資額の1.4%) million yen/year 10
一般管理費(初期投資額の1%) million yen/year 7
保険料(初期投資額の0.5%) million yen/year 4
保守費(初期投資額の2%) million yen/year 15
潤滑油代 million yen/year 6
人件費(6operators x 6million yen/year/person) million yen/year 36
山林賃貸料 million yen/year 29.9
伐採・集材・搬出・チップ化費 million yen/year 65.2
チップ輸送経費 million yen/year 27
年間キャッシュフロー million yen/year 266.6
発電単価 yen/kWh 14.6

急斜面のテンダー追加コストは電力換算で0.4yen/kWhとなります。

まだ風力発電より多少高価ですが、石油の価格が高騰すれば、対抗できます。

日本の国土の面積は377,907km2でその66%は森林です。仮にこの全てを広葉樹転換して発電対象にすれば15,400MWの発電が可能となります。年間発電量は1997年度の日本の総発電量10,000億キロワット時の12%に相当します。 先に説明しましたように外洋に面した洋上にそって3キロメートル範囲内の風車設置で得られる28%と合計すれば40%になります。

残りの60%を転換効率10%以上の太陽電池でまかなえば完全に太陽由来エネルギーだけで日本はやってゆけます。核融合技術開発に無駄な国家資金を無駄使いせず、太陽電池の価格を下げる研究に使うべきだと森永先生は言っておられます。

電気自動車にすれば動力は全て電気で供給できます。ただ全セルロースをエタノールに変換できる酵素技術などが実用化されればエタノール自動車も夢ではなくなるでしょう。

ソフトウッド指向の植林一辺倒の林業をやめれば、高度清潔社会が抱えたアレルギー疾患の被害者も減るはずです。それに進化の観点からみますと、針葉樹はジュラ紀の恐竜時代に進化した裸子植物で古いタイプです。新陳代謝はゆっくりしていて巨木に育ちますが、成長速度は速くなく、私が広町緑地で測定した年間成長速度は3.8%程度です。一方広葉樹は白亜紀以降に進化した被子植物で現在の地球環境に適応し20万種類に及ぶ種です。新陳代謝もはやく成長速度ははやいのでこれを利用しない手はありません。スダジイなどの年間成長速度は5.2%です。このように広葉樹は日本の気候風土にもっとも適していて放置すれば自然林は広葉樹に遷移するでしょう。ではなぜ日本人は針葉樹が好きかというと柔らかく、加工しやすいためと、まっすぐな巨木になり大型建物を造るに適していたからでしょう。しかし現在は鉄文化ですので巨木は必要なくなっておりますし、広葉樹からパルプをつくる技術があるため針葉樹は必要ないのです。ですから考えることをしない針葉樹中心の日本林業は需要がなくなって困っているわけです。そして補助金ばかり求めています。自業自得といってよいでしょう。

自然の樹木を伐採するのはもっての他とする方には大政正隆著、「自然保護と日本の森林」を読んでい ただきたいと思います。西欧で確立した動的生態学でいう極相林は安定であるという概念は日本のような台風のある亜熱帯では成立せず、クライマックス林は台風などで一斉に倒木し、二次遷移を経て元の森林に帰るのだそうです。遅かれ早かれ、日本の自然の樹木は自然によって取り払われ、腐朽により炭酸ガスに戻るのです。山にはいると自然林の樹齢が意外に低く、同一年齢であることでわかります。

人工台風発電

以上はバイオマス利用関連のグリーンウッド事務所関連の活動のご紹介ですが、もう一つ、ミュンヘン工科大学の原子核物理学科の教授だった森永晴彦氏とのお付き合いから人工台風発電に首を突っ込んでおります。

先生は長く外国で原子核物理学者稼業をやってきたことから日本政府が日本の原子核物理学者達の洗脳により、核融合開発にフランスなどと張り合って巨大な国家予算を注がれていることに批判的です。核融合は決してクリーンなエネルギーではないそうです。むしろ人類の将来のエネルギーは 太陽電池にしなければならないと考えております。

先にも述べましたように太陽電池は太陽由来エネルギーの主力を担う技術であると信じておりますが、なかなか発電単価は下がりません。そこでつなぎに比較的安価な人工台風発電を研究する価値ありと考えました。ただ日本では手ごろな立地が考えられません。というわけでヨーロッパの人々と技術交流しております。今年の9月には イタリア・アルプス、ドロミテ山塊のセラ中峠の山小屋で森永先生が40人程集める私設学会を開催するそうですから研究成果を発表するつもりでおります。

この研究の発端になったのはオーストラリアのエンバイロン・ミッション社がドイツが開発した技術を使って半径 5kmの砂漠をガラスやプラスティックで覆い、空気を35度加熱し、その中心に直径150m、高さ1000mのコンクリート製のドラフト筒を建て、200MWの風車発電を行なう。建設費7億オーストラリア・ドルと公表した新聞記事でした。 かれらはこれをソラータワーと称しております。 早速発電単価試算をしてみますとキロワット時当たり20円になりそうでした。面白そうなので改良研究をしております。

 

エンバイロン・ミッション社の3次元完成イメージ (同社サイトに直接リンク表示)

実はこの構想は西ドイツ研究開発省がスポンサーになって1982-1989年にスペインのラ・マンチャ地方で実験プラントを建設し運転してデータをとりました。お手元にその写真があります。タワー高は200m、タワー径は10m、ソーラーコレクター径は237m、発電量は60kW、建設費は推定2.8億円でした。

私はリバースエンジニアリングのためにプログラムを書き、公表データと一致することを確認しましたので、これを使って今後改良してみようというわけです。リバースエンジニアリングのための計算式は我がHPに掲載しております 。

発電単価比較

既存の発電単価に関しては2003年12月発表の電事連の発電単価試算は下表に整理しました。

種類 発電単価(yen/kWh
原子力(18.9兆円の廃炉、廃燃料の後処理費全て含む、前年より安くなったのはウラン燃料が安くなったため)

5.6

石炭 5.9
天然ガス(LNG) 6.3
石油 10.9
水力 11.0

原子力は安全を理由に電力負荷変動追従型の運転をしないで負荷変動を化石燃料、水力、揚水発電で吸収しております。大菩薩嶺の山塊に埋め込まれた世界一の高低差のある揚水発電所には度肝を抜かれたものです。また新潟などの遠隔地から山間部を貫いて建設された100万ボルト送電線コストと電力損失などはすべて配電コストとされております。結果として大口消費者は12yen/kWh、一般消費者は24yen/kWhを支払っていおります。配電コストを押し上げている原子力関連のコストを意図的に隠して原子力有利の宣伝をしているのではないかと思ってしまいます。 これに未計上のバックエンドコスト(燃料再処理、保管費用は電事連試算によれば1.53円/kWhとなっており、これらを含めれば原子力は7.03円/kWhとなるとのこと。

グリーンウッド事務所が独自に統一基準でおこなった太陽由来エネルギーの発電単価は下表の通りとなります。風力発電はすでに実用化されております。これに広葉樹発電、そして 人工台風発電が続いております 。石油生産量がピークを越えるというキャンベル氏の予想が正しければ、これらが実用域に入るのは近いと感じます。

種類 AM1.5放射照度基準太陽光転換効率(%) 発電単価(yen/kWh
太陽電池 10.6

74.0

人工台風発電 1.1 19.9
広葉樹発電 0.0062 14.6
風力発電(平均風速5m/sec) - 13.1
風力発電(平均風速6m/sec) - 9.4

EC60904-1 AM1.5放射照度太陽光転換効率を比較しました。広葉樹林の成長速度を5.9green ton/ha/yearとすれば、0.0062%と非常に低いものです。それでも10.6%の太陽電池と比べ発電単価が低いのは40年間なにもせず放置しているだけだからです。ちなみに広葉樹の 時間平均実受光量基準の転換効率は0.2%で農業の1%より低いことがわかります。

以上ご説明しましたように皆様に広葉樹発電を評価してもらいたいとおもいます。いずれ時がくればホリエモンのような若いアントレプレヌールが出現して実際に事業化してくれるものと信じております。

以上で本論は終わりますが、参考として北欧のケースと遊び心のある研究も以下に紹介させてください。

環境先進国、北欧の例

参考までに亜細亜大学の大江宏教授がまとめられた環境先進国スエーデンと日本のエネルギー比較をご紹介します。

項目 単位 スエーデン 日本
人口 万人 900 12,767
面積 万km2 45 37
GDP 億US$ 2,403 39,944
一人当たりGDP 万US$ 2.7 3.1
税金・年金等の国民負担率 % 75.5 38.4
消費税率 % 25 5
環境税導入年 西暦 1991 ?
耕地、森林、その他 % 6, 62, 32 12, 66, 22
石油・石炭、天然ガス、水力、原子力、その他 % 35, 1, 13, 34, 17 71, 12, 3, 13, 1
炭酸ガス排出量 t-CO2/人・年 5.3 9.1
人間開発指数/女性参画指数 世界順位 2/3 9/44

低い化石燃料依存率を達成するために風力など17%は世界一を誇っておりますが、原子力依存度も34%と高くなっております。

森林面積は62%と日本と互角ですが、その95%が伐採後の再生二次林で林業が高度に発達しております。スエーデンには急斜面の山が少なく、森林機械が利用しやすいためと考えられ ます。80年サイクルの伐採方針としているそうですが、トナカイ放牧を業としているサーメ族はトナカイ が樹齢100年以上の木に生えるコケを主食としているため、80年サイクルの伐採には不満を持 っているそうです。

これにくらべ日本の森林のうち人工林が40%しかないのは急斜面のため守られてきたと考えてさしつかえないだろう。

水力の比率が高いのは広大な土地があるために可能となっているわけです。にもかかわらずダムを作らない河川を4本ももっております。これは日本の1本(四万十川)より多い のです。

マキカート試作

バイオマス利用の一環としてNPO、「えがお・つなげて」が(社)国土緑化推進機構が緑の募金公募事業に「間伐材で木炭自動車やインディアンテントをみなで作ろう」というテーマで応募し、若干の資金をもらって間伐材ガス化発電を計画しておりました。観光農園 弁慶果樹園が所有している長さ2m、幅0.8mのカートにマキガス化炉を搭載してマキカートに改造しました。エンジン定格は4サイクル、170cc、単気筒、1,800rpm 前進1段、後進1段です。遠心クラッチ、ギヤボックス・ブレーキつきでした。私は得意の熱力学平衡計算からエンジニアリング計算まですべてエクセルで設計ソフトを開発しました。

エンジン定格の吸入混合気量は9.18m3/hです。ガソリンを燃料にすれば出力4.5PS。過剰空気率5%、圧縮容積比6とすれば、熱効率34.6%です。マキガス燃料では過剰空気率5%、圧縮比10とすれば、定格熱効率は33.0%となり、エンジン出力は3.53PSになります。ガス発生炉直径は200mm、マキ容器深さは50cm、反応部深さは30cm、全高80cmでした。

以下は完成した試作機と試運転のもようです。

完成車と燃料の木材チップ

手持ち送風ブロアーでガス化炉の昇温中

送風量を絞って発生ガスに着火

燃え尽きたマキ

酢 (ph=4)

火床のスロート部の内径と転用するガソリンエンジンのチョーク内径の比率が非常に重要だということを学びました。木炭よりマキの方がエネルギーロスが少ないこともわかりました。

マキ風呂発電

マキカート試作の知見をもとにホンダの携帯用ガソリンエンジン発電機を使った別荘用風呂兼自家発電機の試設計をし、開発費を試算して、平成16年度新連携対策委託事業(パイロット事業)へ応募しました。配電網のない山奥でも外部電力に頼らずバッテリー起動ができるようにしました。 残念ながら理解はえられませんでした。

含水量30wt%木材チップ9.3kgのチャージで5.1時間の運転可能。エンジン発電機はHONDA EU9i/JNE 50cc, 6,000rpm、AC出力575W、DC出力96W 8Aを採用。ディープサイクル・バッテリーは12V 80Ah、正弦波インバーターは800Wとしました。

 

ガス化炉内部構造と流れ図

マキガスタービン発電

構想はさらに飛翔し、トラック用ジーゼルエンジンのターボ−チャージャーを使った別荘用風呂兼自家発電機のコンセプトもまとめてみました。

ガス化工程をパスしてマキ生焚でガスタービンを駆動します。燃料のマキはバッチ供給としました。ガスタービンの回転数の自動制御はせず、燃焼空気量で概略制御し、回転数は成り行き式とするためにバッテリー充電式を採用します。インバーターで交流変換して利用することになります。ガスタービン廃熱で風呂沸かしをするわけです。

自家用に小型風車を使っていますが、風車は風任せで回転数が変りますので直流発電してバッテリー充電してからインバーターで交流変換して夜間の防犯灯電力として使っています。この方式を採用したわけです。
 

マキ・ガスタービン発電システム

謝辞

以上日ごろ考えて、セブンマイルビーチファイルで公表していることをご紹介させていただきました。国内はもとより、海外からも直接問い合わせやコメントを頂いております。

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April 25, 2005

Rev. June 3, 2009


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