真のNTT問題

中途半端な光ファイバー化

2000/3/26作成の通信環境整備史にNTTの既存電線のADSL化とNTTの光ファイバー化 (FTTH or Fiber To The Home)について触れたが、半年も経たないうちにその問題点が明らかになりつつある。

FTTHについては、NTTは確かに各家庭に直接光ファイバーを引き込む計画を持っている。しかし、そのシステムは旧来の回線を交換機で切り替える集中システムに囚われているため、光ファイバーの能力を生かしきれていない。分散処理技術すなわち、VoIP技術を使い、音声も他のデータと同じデジタル化し、IPプロトコルを使ったルーターによるパケット交換方式にすれば、光ファイバーの伝送能力を使いきることができるのに、踏み切れていない。

以下に述べるADSL契約をすればWindows XP間で電話が掛け放題となる。VoIP技術はもう実用化されているのである。

NTTは独占に守られ、VoIP構想を積極的に実施する気力が出てこないようである。ならばその独占権を制限し、NTT以外のCATVまたはインターネットプロバイダーが各家庭に光ファイバーを敷設出来るように、規制緩和し、電柱、地中の管路の使用権を開放すべきであろう。NTTをバイパスしたシステムが完成すればNTTも座して何もしないわけにはいかないだろう。

現在でも東京都内には沢山の光ファイバーの敷設が完成しているが、その利用率は低いという。国家予算をITに傾斜投入しても使われない光ファイバーが増えるだけである。既に技術的には死んでいるNTTを更に分割するとか、接続料問題を下げよという議論は行政指導とおなじく時代遅れの手法であろう。ATTの分割問題と同じく時代遅れのピントのはずれた議論である。

規制緩和して電力会社の電柱、国・地方自治体が管理する地中の管路の使用権を開放することの方こそ、日本のIT振興の切り札となるのではないか。

VoIPに関する技術的な詳細はhttp://books.nap.edu/html/coming_of_age/に詳しい。

携帯電話

親がそうなら子のNTTドコモもW-CDMAでも回線を交換機で切り替えるという同じ過ちを犯そうとしている。米国クワルコム社はCDMAの通信技術をベースにしてHDR or High Data Rateという IPベースのパケット交換方式を提案し、ITUに標準化を申請している。無線も分散処理の時代が到来しつつある。HDRに関する技術的な詳細はhttp://www.qualcomm.com/に詳しい。

(2002/5/17現在では米国クワルコム社はHDR or High Data Rateという技術のページは削除し、かわりにQchatという携帯電話機型VoIP製品を紹介している。いずれにせよCDMAをベースにしたVoIP技術である。日本より韓国が先に採用するのではとの危惧がある。DoCoMoのフォーマのWCDMAなど従来技術の延長上にある。いわゆる恐竜型技術でNHKのハイビジョンと同じく革新技術ではない。携帯電話機型VoIP技術は今はニッチ製品であるが小型のねずみのような哺乳類が今人類という種を生みだしたようにいずれ電話網の主役になるのではないかとの予感がする。)

NTTは一番基地局数も多く、通話可能範囲が広いというだけで、マスコミがはやすほどiモードにしろ、世界に受け入れられるような代物ではないことがわかった。

同軸ケーブル回線

NTTは同軸ケーブル回線には興味を持っていない。同軸ケーブル回線で電話も利用できると聞いて早速調べてみたが、鎌倉の回線業者(鎌倉ケーブルテレビ)に問い合わせたところ鎌倉ではまだそのサービスをしていないし、今後も弱小ケーブル会社間の規格統一が難しく、暗い見とおしとのこと。

ADSL化

NTTが採用している中間的な技術のISDNとの干渉問題を解決するため、Annex Cのチップを採用することにし、普及は韓国にも遅れを取っている。しかしYahooの勇気ある決断のおかげで、ADSLのコストパーフォーマンスが2001年秋飛躍的に向上し、米国並になった。今後飛躍的に普及するだろう。ようやく日本にも真のインターネット時代が到来したのだ。

グリーンウッド氏は2001年秋の時点でまだISDN(65kbps)でiアイプラン15時間接続契約している。手持ちのSOHOの連絡をときらせることのできない事情を抱えているためである。近々ISDNを解約してADSL接続に切り替えることを検討している。幸いISDNを解約しても電話番号は変わらない。2001年秋のISDNの評価は電話が同時2本使えるというだけのものになってしまった。NTTがADSLから得る収入は月187円だけである。

マイライン

NTTは料金請求書にマイラインをNTTと契約すれば得するようなパンフレットを同封しているが、冷静に比較してみると、グリーンウッド氏の使い方では東京電話がもっともローコストとなった。世の中の人が次第にこのことに気が付けば契約料は減少するだろう。

グリーンウッド氏のコストセービング試算

グリーンウッド氏がNTT系から民間他社系に契約を変えることによって得られるサービスの向上とコストダウンは下記の通り。

この表にはNTTに支払うプッシュ(トーン)回線月額390円は含まれていない。プッシュ回線のメリットは#ボタンが使えるだけなのでダイアル回線で充分。

NTT系から他民間系への契約変え項目

月当たり節約金額(円)

マイラインをLCR自動から東京電話指定へ

300

OCN/フレッツISDN15時間接続をAsahinet/eAccessADSL(1.5Mbps)常時接続

613

docomo携帯をau CDMAに

1,000

合計

1,913

有線電話でお世話になったNTTであるが、ユニバーサルサービスを継続する会社から脱皮できないのであろう。これはもう路線を決めるNTTのトップマネジメントの能力の問題である。グリーンウッド氏がNTTの株主なら当然問題視するであろう。

2000/10/9

2004/01/15再改定

注)2002年3月、NTT首脳もようやく重い腰を上げ、有線電話への投資を全て停止しIP電話への投資に切り替える経営方針を固めたと新聞発表があった。

NTTの苦境も結局その研究テーマ故首になったAT&Tの異端の研究者、デイビッド・アイゼンバーグがパケットを使ったネットワーク通信を「バカなネットワーキング」と呼んで研究したことに端を発したわけで、歴史の必然であろう。


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